インタビュー 焦点を聞く
がん教育、中学校で本格実施
教科書に専用のページ/東京大学総合放射線腫瘍学 中川恵一特任教授
2021/04/29 2面
 国民の死因1位であるがんを巡って、新学習指導要領に基づき、中学校では今年度から保健体育の教科書が改訂されるなど「がん教育」が本格的に始まる。また、高校では来年度から本格実施となる。変更点やポイントについて、文部科学省「がん教育の在り方に関する検討会」の委員などを歴任した東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学の中川恵一特任教授に聞いた。

――がんを巡る現状は。

中川恵一特任教授 生涯で日本人が、がんになる確率は男性で65・5%、女性で50・2%と、2人に1人以上の割合だ。また年間約38万人の死亡者数は、人口10万人当たりで米国の2倍。1990年代から減少傾向にある欧米に比べ、増え続けている。

これは日本人が、がんの正しい知識を依然として知らないからだ。昨年はコロナ禍で、がん検診の受診率が前年比で3割減った。これは、早期発見できたはずの1万人以上のがんが、今も進行している可能性があるということだ。感染症に関係なく、がん検診は受診するべきだが、誤解されている。

■(経験者の講師活用も促進)死亡減らす重要な一歩

――本格実施される教育のポイントは。

中川 これまでは生活習慣病と関連して扱われていたため埋没していたが、改訂された教科書は出版社ごとに異なるものの、初めてがんに関する項目が立てられ、2~4ページにわたって取り上げられている。「がんの進行度に応じた5年生存率」など、大人が読んでも十分参考になる内容が盛り込まれており、今後の死亡者数を減らす重要な一歩になるだろう。

もう一つのポイントは、外部講師の活用に関するガイドライン(指針)の改訂だ。専門医や経験者の話は、がんへの理解を深める上で非常に重要だが、何らかの資格や認可が必要との風潮が一部にあったため、今回の改訂では「特定の資格や認定を要するものではない」と明記された。資格などよりも“心を込めて伝える”ことが最も重要だ。

■公明党の支援で取り組みが充実

――公明党も、がん教育を推進してきた。

中川 「がんを学校で教えるべきだ」との私の主張に共感し、取り組みを推進してきたのが公明党であり、2008年に私が初めて中学校で授業した現場も視察してくれた。その後、がん教育に関する記述が基本法や対策推進基本計画に盛り込まれるなど、がん対策の中で教育が重要な位置を占めるようになったのは、公明党の支援が大きかった。

――今後の課題は。

中川 保健は体育とセットにされ、授業時間が確保されにくい実情がある。しっかり学校現場でがんを教えるよう後押ししてほしい。また、がん教育に取り組んだ自治体では、検診受診率が急増したケースもあった。子どもが親に受診を促したためだが、大人へのがん教育にも引き続き取り組んでもらいたい。

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