介護する子どもヤングケアラー
加重な負担、心身に不調/厚労省、全国規模で初の実態調査へ
2020/10/18 3面
 病気や障がい、精神的な問題を抱える家族を介護している18歳未満の子ども――「ヤングケアラー」の支援のあり方が問われている。年齢や成長の度合いに見合わない加重負担によって心身が疲弊し、学業や進路に影響するケースもある。厚生労働省は具体的な支援策を検討するため、12月にも教育現場を対象にした初の全国的な実態調査を始める。

■問われる支援のあり方/学業や進路に影響も。孤立しがちで表面化せず

日本では、ヤングケアラーの明確な定義はない。厚労省は、昨年の国会答弁で「本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」を指すとしている。

ケアが必要なのは主に、障がいや病気のある親や祖父母だが、きょうだいや他の親族の場合もある。日本ケアラー連盟は、具体例として「家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている」などの10類型を示している【図参照】。

背景には、家族形態の多様化や高齢化の影響が考えられている。ケアを担う大人が減少し支え手が十分でない場合、子どもが引き受けざるを得ない状況が生じる。

全国のヤングケアラーの人数や実態に関する公的データはないが、大阪府の公立高10校を対象に行われた2016年の研究調査では、生徒の5・2%が家族を介護していた。若い世代で見れば、総務省の就業構造基本調査によると15歳以上30歳未満で介護を担う人は、12年の17万7600人から17年には21万100人と3万人以上増えた。

ヤングケアラーを支援する上では、行政や学校など関係機関の理解が欠かせない。

とはいえ、各自治体が虐待児などを支援するため設置している要保護児童対策地域協議会(要対協)を対象にした、厚労省の19年度調査研究事業の報告書によれば、ヤングケアラーの概念を「認識していない」は25%だった。18年度調査で72・1%に上ったことを踏まえれば認知度は向上したが、十分とは言えない。

■SOSに気付く体制が必要

また、18年度調査で要対協が把握しているヤングケアラーの学校生活への影響を見ると、「学校等にもあまり行けていない(休みがちなど)」が31・2%で最も多かった。進学や就職に支障をきたす場合もあり、学校や地域が連携して早期に子どものSOSに気付く仕組みづくりが求められている。

一方、ヤングケアラーは同世代に悩みを共有できる人が少なく、孤立しがちだ。さらに、「手伝い」と「過度なケア」の線引きが難しかったり、介護が日常となって「支援が必要な状況」を子ども自身が認識していないケースも多く、表面化しにくいことが支援を難しくさせているという。

■条例制定の動きも

埼玉県では、ヤングケアラーも含めたケアラーを支援する全国初の条例が今年3月に制定され、県内の実態調査を進めている。同様に条例の制定をめざす自治体もあるほか、民間レベルでも、子ども同士が介護体験を語り合う集いを開催するなど、具体的な取り組みが始まっている。

■現状把握し具体策検討

今回の実態調査で厚労省は、都道府県や市区町村の教育委員会を通じ、ヤングケアラーの把握や支援の状況などをできる限り網羅的に調べたい考えだ。

厚労省の調査研究事業として18、19年度に実施した調査は、範囲が限定的だったため、実態を掘り下げるには子どもの状況を、より把握している教育現場への調査が必要だと判断した。

担当者によると今後、事業者を選定し、検討委員会でアンケート内容や調査方法などの詳細を詰めて、「教育現場の負担に配慮しつつ、早ければ12月から開始したい」としている。来年3月までに調査結果をまとめ、具体的な支援のあり方を検討する方針だ。

日本ケアラー連盟が15年に新潟県南魚沼市内の小中学校の教職員を対象に行った実態調査では、調査をきっかけに、教職員や保健師、民生委員など関係者の中で、ヤングケアラーへの認知度が高まったという。厚労省の担当者は、調査の副次的作用として、ヤングケアラーの存在が現場で広く認識されることに期待を寄せる。

同時に、自治体へのヒアリングの中で優良な取り組み事例があれば、周知を図っていく予定だ。

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