解説
地域共生社会の実現へ「断らない」相談窓口
複雑化する住民の悩みに一元的に応じる体制構築
2020/03/29 3面
 政府は、新しい地域福祉のあり方として「地域共生社会」という考え方を提唱している。これは、高齢者や障がい者、子どもなど、全ての世代のあらゆる境遇の人たちが、お互いに支え合うことができる社会である。その実現に向け、「断らない」相談窓口を整備するための社会福祉法などの改正案が今月、閣議決定され、今国会での成立がめざされている。

■社会福祉法などを改正

現行の地域福祉の体制は、各自治体の相談窓口が多岐にわたっている。

親の介護であれば高齢者福祉サービス、障がい者の場合は障害福祉サービス、ひきこもりに対しては生活保護や精神保健、貧困問題については生活困窮者自立支援、子どものいる家庭には子育て支援など、それぞれの分野ごとに相談先となる自治体の担当課が分かれている。

ところが、現実は、複雑かつ複合的な悩みを抱えている住民が多い。

例えば、子どものひきこもりが長期化し、就職しないまま50代になってしまった中高年と、高齢化して80代となった親が同居し、生活に行き詰まる「8050問題」が顕在化している。

また、介護と育児の問題を同時に抱えて、負担が過重になってしまう「ダブルケア」に苦しむ家庭もある。

さらに、公的な福祉サービスの対象ではないが、体力が衰えるなどして、普段のように仕事をしたり、料理や掃除をしたりするのが難しくなり、困っている人もいる。

これまでは、相談窓口が分かれているために、複数の問題に悩む人が、たらい回しにされるうちに相談を諦めてしまうこともあった。また、それぞれの相談窓口の担当者間で情報が共有されず、必要な支援が行き届かないことも少なくない。

そこで、今回の改正案では、地域住民のさまざまな悩みに包括的に対応するため、相談窓口を一本化する市町村の取り組みを後押しするとしている。

一本化された窓口の大きな特徴は、「断らない相談支援」を目標としているという点である。

世代や分野で分けずに、地域住民のどのような内容の相談にも一元的に応じることで、現行の制度では対応できなかった要望への取り組みも進めることをめざす。これにより、誰にも相談できないまま地域から孤立して、問題を深刻化させてしまう人が生じることを防ぐ。

寄せられる相談の中で、市町村だけでは解決が難しい問題については、地域の福祉を担う非営利組織(NPO)をはじめ、企業や商店街などとも連携して対策を進める。例えば、失業などによる生活困窮者が住まいを見つけ、就労して自立するまでの息の長い支援を行ったり、高齢者の見守りを実施したりできるような体制を構築する。

さらに、市町村は、住民同士の交流も促進し、お互いの暮らしを支え合う地域づくりを進める。

こうした事業を推進する市町村に対して、国と都道府県は交付金を支給し、財政的に支援する【図参照】。

また、今回の改正案では、福祉サービスの担い手となる社会福祉法人の経営基盤や対応力を強化するため、複数の社会福祉法人が共同で物資を購入したり、人材の採用や育成を行ったりする「社会福祉連携推進法人」の制度を新たに創設するとしている。

■公明が政府に提言し、後押し

公明党は、地域共生社会の実現を強く推進している。「断らない相談支援」についても、公明党の提言を踏まえ、政府がその実現に向けた検討を重ねてきた。

公明党の「就職氷河期世代」支援検討委員会などは昨年5月、菅義偉官房長官と根本匠厚生労働相(当時)に「令和時代の人財プラン」と題した提言を手渡し、同提言の中で、断らない相談支援の充実を要請。これを受け、政府が昨年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)にも、断らない相談支援の充実が明記されている。

また、厚労省の有識者検討会は昨年12月、市町村による断らない相談窓口の設置を後押しするための最終取りまとめ案を了承。ここで示された方針が今回の改正案に反映されている。

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