幸齢社会❗
先端技術が開く「幸齢社会」

■超小型の機械が体内で病気を発見し、治療も
「人生100年時代」が到来しようとしている。
厚生労働省によると、2018年の日本人の平均寿命は女性が87・32歳、男性が81・25歳となり、ともに過去最高を更新。100歳以上となる高齢者も増え続けており、19年9月15日時点で、初めて7万人を突破した。
一方、介護を必要としたり、寝たきりになったりせずに生活できる「健康寿命」の平均は、16年の時点で女性が74・79歳、男性が72・14歳にとどまる。
健康寿命を延ばすには、体調管理を心掛け、上手に年を重ねていく「ウェルエイジング」が重要だ。
今、ウェルエイジングを簡単に行えるようにするための医療技術が、飛躍的に進歩している。それを支えているのが、AIをはじめ、さまざまな機器をインターネットにつなぐIoT、次世代の高速通信規格「5G」、「4K」や「8K」といった超高精細映像などの新技術だ。
例えば、5Gの導入で、遠隔医療の普及が本格化すると期待されている。過疎地で暮らす高齢者が家にいながら、都市部の病院の専門医に診療してもらう。そんなことが普通に行われるようになるかもしれない。
5Gは、超高速で大容量のデータのやり取りが可能で、遅延もほとんどない上に、多くの端末や機器をインターネットにつなぐことができる多数同時接続を特徴とする。
患部の映像は4Kや8Kで撮影されたものになり、細部まではっきりと分かるため、正確な診察が可能となる。こうした映像を地方の診療所と都市部の高度な医療機関が共有すれば、地方の患者が都市部に足を運ぶ必要もなくなる。
また、診察だけにとどまらず、遠隔手術を可能とする技術も既にある。
例えば、米国製の医療支援ロボット「ダヴィンチ」は、患者の体に小さな穴を複数開け、そこに入れた内視鏡カメラやメスの付いた機械のアームを医師が操縦し、患部の切除などができる。一般の手術より出血量が少ないことも利点だ。
さらに、遠隔操作用の装置を医師に持たせれば、その医師が内視鏡カメラの映像を見ながら、遠隔地からでもダヴィンチを操縦し、手術することもできる。
■高精度なAI診断、進化する人工臓器
コンピューター断層撮影装置(CT)や、磁気共鳴画像装置(MRI)、X線、内視鏡などで撮影された画像から、病気を見つけ出すAIも進化している。
例えば、東京大学の研究室のメンバーが立ち上げたエルピクセル株式会社の医療用AIが注目されている。大腸や肺、肝臓、乳房のがんの患部などを画像診断で発見するAIで、医師よりも発見確率が高い。
がんが早期に発見できて、患部も小さければ、発見したその日のうちに患部を切除することもできる。
また、将来的には、空想科学小説(SF)の技術が実現するかもしれない。
生体と機械を融合する「サイボーグ」技術は、その一つだ。人間の体になじむ素材で人工心臓や人工眼などの臓器をつくり、心臓病患者や失明した人に埋め込む。人工臓器の状態などを、遠隔で医師が監視する。
さらに、薬剤などを搭載した超小型のカプセルのような機械が、人体の血管内を駆け巡り、がんや認知症などの重大な疾患を、使用者が気付かぬうちに早期に発見し、治療までする仕組みも研究中だ。
こうした機械は、50ナノメートル(1ミリの2万分の1)ほどのナノマシンだ。体内で診断、治療し、遠隔で監視する医師とも連携できる機能を持つことから、「体内病院」とも呼ばれる。使用者が何もしなくても自然と健康が維持される技術だ。
■予防医療への活用に期待集まる/株式会社ロボットメディア代表取締役 小林賢一氏
AIの技術を最も取り入れやすい分野の一つが医療だ。これにより、特に、病気の予防のための技術が進歩しており、健康寿命の延伸に役立てることが期待できる。
AIが精度の高い判断を行えるようになるには、膨大な量の情報や映像などをAIに記憶させ、学習させる深層学習が必要だ。医療の場合、これが比較的容易に行える。
医療分野は、外科や内科、小児科などに細かく分かれ、各分野ごとで使われる専門用語も決まっているため、AIが学習すべき言葉を絞りやすい。MRIや内視鏡カメラなどで撮影された画像の学習も同様だ。病気の患部についての画像はパターン化して整理でき、AIに学習させやすい。
一方、普及が遅れそうなのは、高齢者の低下した身体機能を補佐するロボットのようなハードウエアだ。動作の微妙な調整が難しく、機敏に動くことが、逆に高齢者の体を壊してしまいかねない。介護の仕事をする人が、高齢者を抱えるときなどに使うなど、健康な人に用いるのが現実的だ。