避難所の課題
浸水被害が深刻だった地域では、避難生活が長期化する恐れがある。朝晩は特に冷え込むようになり、体育館の冷たい床の上での生活は、体調を崩さないか心配だ。
政府は、自治体の要請を待たずに物資を送るプッシュ型支援で、飲食料品や段ボールベッド、毛布などを届けている。過酷な避難所環境が一日も早く改善するよう、対応を加速すべきである。
同時に、公営住宅の空室や民間の空き家などを活用し、より安心できる住まいの確保を急いでほしい。
日本では災害のたびに、避難所の質の問題が浮上する。内閣府は3年前に避難所運営ガイドラインを策定し、各自治体も支援物資の備蓄などを進めているものの、まだまだ十分とは言えない。
避難所にいてもストレスなく過ごせる環境を、どう整えるか。国際赤十字などが紛争や災害を想定して作った「スフィア基準」が参考になる。
例えば、「1人当たりの居住空間は最低3・5平方メートル」「トイレは20人に一つ以上、男女比は1対3」などの例示とともに、被災者の尊厳ある生活を守るための理念や考え方が示されている。
避難所に身を寄せた被災者が少しでも前向きになれるよう、環境改善に不断の努力を重ねてもらいたい。
今回の台風では、避難勧告・指示の対象者が膨大な人数に上ったため、避難所の収容力に限界があることが浮き彫りになった。
8万人以上が避難した東京都では、避難所が満員で別の避難所に移ってもらったり、臨時の避難所を急きょ開設した地域もあった。
広域災害の場合、自治体の施設だけで全ての避難者を受け入れるのは困難だろう。大型商業施設など民間にも協力してもらい、受け入れ能力を強化しなければならない。
災害の危険性は場所や状況によって異なるため、避難所に行くより自宅にいた方が安全な場合もある。一人一人がハザードマップ(災害予測地図)をよく確認し、具体的な避難行動を考えておきたい。