介護、ひきこもりなど孤立防ぐ「断らない相談」
地域のNPOも協力 庁内で縦割り超え連携/神奈川・座間市
2019/06/26 3面
 さまざまな悩みを抱え困窮する人を支えるには、福祉や介護、子育てといった行政の縦割りを超えた総合的な支援が重要とされる。「断らない」をモットーに掲げ、総合的な相談支援に当たる神奈川県座間市などの取り組みを紹介する。

生活が困窮する人からの相談には、担当課ごとの対応だけでは解決が難しいケースが少なくない。

80代の親が50代のひきこもりの子を養う「8050問題」などは、その一例だ。親の介護ならば高齢者福祉、ひきこもりならば生活保護や精神保健、就労支援など、相談先は多岐にわたり、内容も複雑だ。このため窓口をたらい回しにされたり、相談を受け止めてくれる場所が見つからず、孤立を深めてしまう。

そこで、神奈川県座間市の生活援護課は、2015年度から「断らない支援」を掲げ、生活困窮者自立支援事業に力を注いでいる。

その狙いについて同課の林星一課長は「少しでも早く相談内容が分かっていれば、深刻化せずに済んだケースが過去にあった。諦めずに何でも相談してもらいたいというメッセージが込められている」と話す。

支援事業は、家計の改善を助言する事業や、ひきこもりの人らが社会復帰するための就労準備など、多くのメニューを用意している。

また、職員向けの研修会を開催したり、相談者の困り事などを記載して、他の担当課と情報共有するための「つなぐシート」を導入し、庁内の連携体制も強化している。

さらに、行政の対応だけでは限界がある問題には、地域のNPO法人などからも力を借りている。例えば、フードバンク事業を行うNPOの協力を得て、困窮者へ未利用の食品を届けている。

こうした「断らない」姿勢が功を奏し、悩みの解決や改善に結び付くケースが増えている。

当初、納税に関する問題の相談で市役所を訪れた60代後半の高齢者から、生活援護課が応対して話を聞く中で、長期間ひきこもり状態の息子がいることを初めて打ち明けられた。その結果、支援の手が入り、息子が就労準備のための施設に通えるようになったケースもある。

同課の倉根悠紀・主任相談支援員は「役所は敷居が高いと感じていた人が、直接、相談に訪れる事例が増えている」と話す。昨年度は新たに437件の相談を受けたという。

林課長は「断らずに解決策を探す中、庁内連携や地域との協力を深め、支援内容を増やすことができた。今後も、支援を充実させていきたい」と説明する。

■“丸ごと支援”各地に

寄せられる相談を断らずに受け止められるよう、部局の垣根を超えたり、地域ぐるみでの“丸ごと支援”に取り組む自治体が増えている。

■三重・名張市

三重県名張市は、保健福祉の相談窓口である「まちの保健室」を、おおむね小学校区単位で整備されている地域づくり組織(15カ所)の事務所に併設している。まちの保健室は、自治会や民生委員、有償ボランティアと連携しながら、住民の生活上の相談に対応している。

さらに、市役所では、複雑化した相談に、部局を横断して対応するための担当職員「エリアディレクター」を配置。まちの保健室とも連携を取りながら問題解決をめざしている。

■秋田・小坂町

秋田県小坂町は地域包括支援センターと、居宅介護支援事業所、障害者相談支援事業所、保健センター、子育て世代包括支援センターの五つの機能を一本化。多世代型地域包括支援センターとして、住民の相談をワンストップ(1カ所)で受ける体制を整備している。妊産婦から高齢者まで、さまざまな課題解決へ円滑に対処できているという。

■共生社会の実現に向け国も議論

厚生労働省の有識者検討会は、地域で困っている人を支え合う地域共生社会の実現に向け、「断らない相談」支援をキーワードの一つに、5月から総合的な支援体制づくりを議論している。

7月に中間報告をとりまとめ、年末に向けさらに議論を深めていく予定。その後の社会福祉法の改正なども見据えている。

公明党は5月、就職氷河期世代などへの支援を求めた「令和時代の人財プラン」を政府に提出。この中で、断らない相談支援の充実を求めた。その結果、6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)に、断らない相談支援の輪を広げることが明記された。

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