当事者に寄り添った認知症施策に

■本人の声、尊重し反映を/自治体調査の結果 計画作りに参画ごく少数
報告会には、各地から行政関係者や認知症当事者ら220人余りが集い、熱心に耳を傾けた。席上、自身も当事者である藤田和子JDWG代表理事があいさつに立ち、「誰もが認知症になってからも自信を持って暮らせるよう、本人の視点からの施策推進が大切だ」と強調した。
続いて、厚生労働省の18年度老人保健健康増進等推進事業を受託したJDWGが、認知症の人の意見を基に、認知症施策を改善するための方法を探る調査研究事業の内容を報告。「自治体における認知症本人の施策や事業への関わり調査」で、全ての都道府県と、市区町村の約6割から回答を得た結果概要が発表された。
このうち、施策の計画作りに関する当事者本人の参画状況について、委員会などに入ってもらい意見を聞いているのは、都道府県の12・8%、市区町村では1%未満にとどまる実態が浮き彫りとなった【表参照】。また、今後の施策などで本人に意見聴取をするかどうかについては、18年度中に計画があるのは都道府県で34%、市区町村で6・2%。来年度以降に検討すると答えた都道府県は53・2%、市区町村は53%だった。
認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子部長は、これらの調査結果から、「施策に当事者の意見を反映する動きは出てきている。スタート地点に立った段階で、これからが重要だ」と解説した。
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一方、研究事業では、静岡県や11市町村で、試行的に当事者が参画して施策などを企画・立案し実施したプロジェクトについて、自治体関係者らが報告した。
このうち、長崎県諫早市の担当者は、当事者が日頃から望んでいることを知るために実施したアンケート結果に基づき、本人が安心して外出できる地域づくりをめざした模擬訓練や、認知症支援に携わる関係者同士のネットワーク構築のための多職種協働研修などに取り組んだと説明。その上で「当事者の思いが分かり、その方々に優しい街をめざす重要性を市民と共有できた」などと成果を語った。
報告会で発言した認知症当事者の声を紹介する。
■周囲の支えが励み/長崎県佐世保市・福田人志さん
私は、5年前に若年性アルツハイマーと診断された。認知症は治らない、二度と働けないと思い込み、生きる気力を失った時期もあった。でも、そばで見守ってくれる人や同じ苦しみを持つ人の励ましが私の心を少しずつ解かし、自らの思いや希望を皆に伝えて前を向いて生きようと思えた。
そんな時、長崎県諫早市の関係者との出会いに恵まれた。当事者も家族も市民も安心して暮らせる地域づくりに、私も参画している。
当事者だから見えること、分かりにくいこともあれば、行政や医療関係者、市民だから見えることもある。互いの視点を持ち寄ることで、それが道しるべとなり、私たちがより良く生きていくための環境づくりが進むと思う。
■公明、基本法制定に全力
認知症の人の意思が尊重され、自分らしく暮らせる社会をめざす――。これは、政府が掲げる認知症施策の国家戦略(新オレンジプラン)を貫く理念だ。
政府は同プランに基づき、認知症を正しく理解して本人や家族を支える「認知症サポーター」の養成や、認知症が疑われる人に対し医師ら専門家が早期に対応する「認知症初期集中支援チーム」の展開などに力を入れている。中でも、当事者の意見を施策に反映させる取り組みとして、本人たちが思いを率直に語り合う「本人ミーティング」の全国での普及をめざしている。
このほか、19年度予算案では、厚労省管轄の関連費用を前年度比で2割以上増やし、取り組みを加速させる。今後は、「共生」と「予防」の視点を柱に、今年6月までに同プランを改定する方針だ。
公明党は、新オレンジプランの策定をリードするとともに、当事者らと意見交換などを重ねて政府に提言するなど、一貫して施策の強化を求めてきた。さらに、認知症の人が尊厳を保ち、本人の意思を尊重した温かな共生社会を築くため、独自で「認知症施策推進基本法」の条文案を作成。各党の幅広い合意の下、早期成立をめざしている。

