養育費受け取り支援
最大60万円、不払い分を立て替え/兵庫・明石市
2018/12/26 3面
 離婚した父親から、子どもを育てるために必要な養育費を受け取っている母子世帯が4人に1人を下回るなど、深刻な問題になっている。養育費の不払いは、ひとり親家庭の経済状況を悪化させ、「子どもの貧困」を生む要因にもなりかねない。課題解決に挑む自治体の先進的な取り組みを追った。

■全国初のモデル事業

離婚相手が子どもの養育費を支払わなかった場合は、立て替えます――。兵庫県明石市は11月から、ひとり親家庭の養育費を保証する全国初のモデル事業をスタートさせた。市が重視する、両親が離婚した子どもの養育を支援する取り組みの一つ。

まず、別居親(離婚相手)と養育費の取り決めをしているひとり親が、市が業務委託している保証会社と養育費の保証契約を締結。不払いが発生した月に保証会社が同額を立て替えて支払う。保証会社は別居親に立て替え分を督促して回収する【図参照】。

保証期間は1年で更新も可能。立て替え額は月5万円を上限に、累積で最大60万円まで保証する。別居親から支払いがあった場合は、その分が累積額から差し引かれる仕組み。初回の保証料は5万円まで市が負担する(2年目以降は自己負担)。

モデル事業では、養育費立て替えによる家計状況の変化を継続的に調査するため、年内いっぱいまでモニターを募集。調査は今後の制度設計に役立てる。

市が間に入って保証契約を結ぶ理由について、市市民相談室の能登啓元室長は、「行政に対する安心感や信頼感によって、ひとり親が制度を利用しやすくなる効果が見込める」と話している。

■母子世帯の受給4人に1人

現在、母子世帯は123万2000世帯(2016年、推計)に上り、ひとり親家庭の大半を占める。

厚生労働省の調査によると、母子世帯における養育費の受給率は24・3%【グラフ参照】。この十数年は増加傾向だが、4人に1人も受け取っていないのが実情だ。

そもそも養育費は、子どもが自立するまでの生活や教育、医療などに必要な費用であり、民法でも、離婚の際に夫婦が話し合いで分担を取り決めるよう定めている。しかし、「相手と関わりたくない」などの理由で取り決めをしない人も多く、母子世帯の取り決め率は5割にも満たない。

■口座情報など開示命じる制度を検討

国はこれまで、養育費支払いの責務を法律で定め、強制執行手続きの改善や裁判費用の貸し付けなど養育費の確保に向けた施策を講じてきた。07年度には、養育費の相談を電話やメールで受け付ける支援センターを創設。身近な場所でも相談に応じられるよう、社会福祉士などの専門相談員を自治体に配置する補助事業も実施している。

ただ、強制執行については、ひとり親が自ら離婚相手の預金口座を突き止める必要がある上、相手が勤務先を変えた場合は給与の差し押さえもできず、泣き寝入りするケースが多い。

そこで現在、裁判所が金融機関や自治体に対し、相手の預金口座や勤務先について情報提供を命じることができるよう、民事執行法の改正に向けた検討が進められている。

■日本にも専門機関つくるべき/早稲田大学 棚村政行教授

日本では養育費の受給率が約24%と非常に低く、母子世帯の子どもたちは厳しい経済状況に置かれている。取り決めを促すのは大事だが、実際に不払いが発生した際、ひとり親が単独で強制執行の手続きをするのは大変な労力だ。

その点、海外では、行政が相手の居所や勤務先を調べて督促・取り立てを代行し、ひとり親への立て替えもする。その結果、オーストラリアでは約98%、米国では約75%のひとり親世帯が養育費を確保するなど、総じて水準が高い。

これらの国では、養育費の不払いは親の責任放棄と見なされるだけでなく、反社会的行為として犯罪扱いになる。日本では、家庭の問題に行政が介入するべきではないとする考え方が根強く、位置付けが大きく異なる。

養育費については、まず子どもの利益を第一に考えるべきだ。日本でも、相談から実際の履行確保までを一貫して支援する専門機関が求められる。

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