地域の足どう確保

赤字の影響で、15年度までの10年間に廃止されたバスの路線は約1万6000キロ。国交省の担当者は「地方では、黒字収入を確保することが難しい実態が浮き彫りになっている」と語る。
■住民がミニバンで送迎/秋田・横手市
秋田県横手市では、プロの運転手ではなく、国認定の講習を受けた地域住民がハンドルを握る。
同市増田町狙半内地区では昨年11月から、市と住民が連携して、ミニバン(7人乗り)を使って高齢者らの移動を支援している。
豪雪地帯でもある同地区には、約430人が暮らす。その多くが高齢者で、日々の買い物を移動販売に頼る人も少なくない。
市はこれまで、バス会社に委託して路線バスを走らせてきたが、「利用客は5年で3割減少。最近では1便に1人のときもあった」(市総合政策部経営企画課)といい、不採算を理由に今年9月末で廃止した。
ミニバンの送迎は、住民でつくる「狙半内共助運営体」に市が運行を委託。週4日、運行している。運賃は200~700円で、申し出があれば利用者の自宅近くまで送迎する。利用者は月50人程度だ。市は事業費を年間約330万円と見込んでいる。利用者の高橋フミさんは「自宅近くで乗り降りでき、荷物を運ばなくて済むので便利」と笑顔を見せた。
■乗り合いタクシーを運行/宮崎市
一方、宮崎市高岡町では、住民主体の協議会が運営する乗り合いタクシー「高岡きずな号」が走る。
住民協議会とタクシー会社が業務委託契約を交わし、13年4月から本格運行を始めた。利用者の自宅から同町中心部にある医療機関や公共施設など26地点を結ぶ。利用できるのは70歳以上で、事前登録(費用は3000円)が必要だ。
1台に3人まで乗車可能で、通常よりも安い250~600円で利用できる。17年度は延べ4009人が利用し、初年度に比べて約20倍に増えた。市担当者は「昨年度、市の補助は運行経費の6割に当たる約260万円。運賃と補助を合わせて収支はほぼ同じ」と話す。
また、「きずな号」は高齢者の孤立防止にも一役買っている。同町に住む山田真司さんは「待ち時間では利用者同士でおしゃべりをすることもある。それが楽しみで外出することも増えた」と語った。
■国交省 定額運賃の実証実験
国交省は10月から12月21日まで、北海道や関東、九州などの6都道県7地域のタクシー事業者と連携して、路線バスが廃止された地域の高齢者らが割安に利用できる定額運賃の実証実験を行っている。
今回の実証実験では、利用者とタクシー会社が事前に取り決めた地点や地域を、通常よりも約1割安い運賃で利用できる。各社とも高齢者の通院や、子どもの通学などで利用することを想定している。
7地域の一つである福岡県では、北九州市や中間市を対象に、乗降場所に応じて最短ルートを設定した後、実際に走行して運賃を決定。その運賃に当たる回数券を販売している。10枚分の料金で11枚分買うことができる。国交省の担当者は実証実験の狙いについて、「新たなサービスを生み出す機会にしてもらいたい」と語っている。
■自治体は主体的に交通網構築を/一橋大学大学院 山内弘隆教授
人口減少により、すでに地方では、鉄道やバスなど公共交通の乗客減少による運賃収入の減少と、経費削減によって、運行頻度をはじめサービスが低下し、さらに乗客が減っていくという“負のスパイラル”に陥っている交通事業者が増えている。
こうした中、各地でさまざまな取り組みが進んでいるが、住民参加型であることが大切だ。
交通事業者に頼る「他人任せ」ではなく、自治体が地域の問題として積極的に関与した上で計画を策定し、自治体独自の工夫を凝らしながら、持続可能な公共交通ネットワークを構築することが求められている。国も先進事例を紹介していくなど、情報発信を不断に行っていくことが重要だ。
