日本の安全保障政策 北側副代表の講演から
公明党の北側一雄副代表が27日に日本記者クラブで行った日本の安全保障政策に関する講演などの要旨は次の通り。
国際情勢が激変、備え必要
北朝鮮のミサイル技術向上など
【日本の安全保障環境】
わが国を巡る安全保障環境は厳しさを増している。十数年前と比べると、わが国周辺のパワーバランスが大きく変化しているからだ。十数年前の中国のGDP(国内総生産)は日本と、ほぼ変わらなかったが、今は日本を、はるかに超え、世界で有数の経済力を備えた。今や中国の国防費は日本の6倍を超え、経済成長の果実を国防の増強に使っている状況だ。
さらに、ロシアが国際法に違反してウクライナへの侵略を続けている。また、北朝鮮のミサイル発射技術は極めて高度化してきた。変則軌道のミサイルがそうだ。列車や潜水艦、車両などからの移動式の発射は事前に探知がしにくい。近々、核実験をするのではないかという報道もある。
戦い方では、武力侵攻前にサイバー攻撃が行われ、宇宙など新しい領域も出てきた。軍事力が量的にも質的にも大きな変化を遂げている。この現実を前に、わが国も備えを万全にしていかざるを得ない。抑止力、防衛力を高めなくてはならない。
こうしたことを踏まえ、年末に向けての大きな政治課題である「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定へ議論を進めていきたい。
日米同盟の抑止力強化を
反撃能力、専守防衛の堅持が前提
【ミサイル防衛】
日本は北朝鮮を念頭に、ミサイル防衛システムを築いてきた。しかし、北朝鮮のミサイル技術の急速な進展に対し「今のミサイル防衛システムだけで全て迎撃が可能なのか。迎撃が困難となる場合があるのではないか」との懸念がある。
これまでの日米同盟で日本は「盾」、米国は「矛」という役割分担をしてきた。この役割分担を維持しながら、わが国が相手方領域内のミサイル基地などに対して反撃できる能力を保有することは、抑止力の強化につながるのではないかとの問題意識は共有できる。
こうした反撃能力を保有したとしても、攻撃対象の正確な位置情報がなければ反撃はできず、米国との連携が欠かせない。反撃能力とは、日米同盟の連携を強化し、役割分担を維持しながら、一部こうした能力を保有していくという議論だ。
ただ、先制攻撃は国際法で禁止されている。憲法9条の下、専守防衛の理念は堅持しなければならない。反撃能力の行使は、外部から武力攻撃の開始があるのが大前提だ。
その攻撃の着手をどう判断するのか。さまざまな情報を収集し、先制攻撃とならないようにすることが大事だ。また、反撃する対象は、どこでもいいというわけにはいかない。必要最小限の措置でなければならない。
【継戦能力、サイバー防衛】
防衛力の整備で優先順位が高いのは、継戦能力の維持も同様だ。部品不足などの理由で稼働していない防衛装備品は多く、装備品の稼働率を高めていく必要がある。有事の際の弾薬や燃料、部隊や装備品などの輸送力もしっかり確保しなければならない。
今は毎日のように、すさまじいサイバー攻撃が起きているが、それを全て排除することは不可能だ。ウイルスが入っても、それをしっかり管理できるようにする。こうしたサイバー攻撃に対する強靱性を平時から備えることが大事だ。
先端技術の活用促進も
政府全体で予算確保すべき
【防衛力整備のための財源】
防衛力整備へ財源をどう手当てするかが大きな論点だ。中心になるのは防衛省だが、政府全体で総合的な安全保障体制を構築することが重要だ。
例えば、科学技術関係予算のうち防衛省が占めている割合は、わずか4%程度だ。AI(人工知能)や量子技術などの先端技術は、民生だけでなく、軍事面でも活用しないと、わが国の安全保障が確保できない。
公共投資でも、有事の際に自衛隊が空港や港湾を使うことを想定して整備していく必要がある。わが国の領海を常に警戒監視している海上保安庁も、安全保障体制の一端を担っているわけで、予算を強化していかねばならない。
こうした施策の財源は、いっときの歳出ではなく、恒久的な財源が求められる。全て国債発行で賄うのは、あまりにも無責任だ。だが、今の経済情勢で、直ちに増税はできない。歳出削減の努力を前提に、当面は国債発行で賄うとしても、その後、恒久財源を手当てしていくことが重要だ。
歳出削減に向けては、防衛装備品の高コスト構造の是正や、装備品の「ライフ・サイクル・コスト」(取得から廃棄までの総費用)の削減などが大事だ。こうした費用を工夫して削減していかなければ、国民の理解は得られない。
一方で、防衛省のさまざまな施設の整備に向けた建設国債の発行は選択肢になるだろう。
日中首脳対話で信頼高めよ
【日中関係】
日本にとって最大の課題は、隣国・中国との向き合い方だ。台湾有事は簡単に起こるとは思っていないが、備えをしっかりとしなくてはならない。台湾有事が起きた場合、日本にも甚大な影響があると言わざるを得ない。世界経済にも大きな打撃を与えるだろう。中国と2カ月間、サプライチェーンが分断されると、日本のGDPの1割が失われるという報告もある。
一方で、偶発的な衝突が起こらないよう信頼醸成の仕組みをしっかりとつくっていかなければならない。外交が果たす役割は、中国との関係では大きい。来月開かれるG20サミット(20カ国・地域首脳会議)などの機会を活用して、日中の首脳が対話をしてもらいたい。米国としっかり連携しながら、不測の事態が起こらないよう、粘り強く外交的な努力をすることも日本の大きな役割だ。









