境港市議会議員 たぐち俊介 

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二つの決議案と、議会の矜持 ~6月議会を振り返って~

未分類 / 2015年7月8日

去る7月3日(金)に閉会した境港市議会6月定例会最終日に、会派きょうどう、日本共産党境港市議団他の提案による「安保関連法案の慎重審議を求める決議」が賛成多数(賛成8、反対6)で可決されました。この決議案に対し、公明党境港市議団は独自に「平和安全法制整備法案等の慎重かつ国民に対して誠実な審議を求める決議(案)」を起案し、会派みなとみらい(自民系)と共に提案したのですが残念ながら賛成少数で否決されました。

 

今回、この件で様々な声やお問合せなどをいただいており、また、新聞の報道では事の真意がいまひとつ伝わっていないと感じるところもあるため、この場で少し今回の経緯を振り返ってみたいと思います。

 

まずはじめに、現在、国会においていわゆる「安全保障法制」について議論が重ねられていることは説明するまでもないことですが、この度の境港市議会6月定例会にはこの「安保法案」に反対するよう求める請願・陳情が提出されていました。そして、これを採択するかどうかをめぐっては、境港市議会でも法案に賛成反対それぞれの立場から非常に活発な議論があり、委員会の採決ではこの請願・陳情については採択、不採択のどちらも過半数にならないという結果になっていました。つまり、境港市議会の中においてこの「安保法案」については激しく意見が分かれていたということになります。

 

そして、問題はここからになるのですが、この請願・陳情の議論とは別に、我々公明党と自民系の2会派を除くその他の会派などで冒頭の「安保関連法案の慎重審議を求める決議(案)」提出の準備が進められていたようです。もちろん、我々2つの会派には決議案作成について正式にはなんの相談もありませんでした。

 

ここで、市議会における「決議」について説明させていただきますが、「決議」とは、議会が行う事実上の意思形成行為で、議会の意思を対外的に表明することが必要である等の理由でなされる議決のことです。議員が発案して本会議にはかりますが、可決されても通常、どこかに提出するということはありません。

また、同じように議会の意思を表すものに「意見書」がありますが、こちらは地方自治法第99条の規程により、国会または関係行政庁に提出することが出来ます。

 

このようにその扱いには多少の違いがありますが、これらはいずれも「議会全体」の意思を示すものであるため、結果的に多数決で可決されたとしても、意見の集約や案文の作成についてはまず、議会全体での合意を図るのが本来のあるべき姿といえます。現実的には意見書については請願・陳情に付随するものが多く、賛否が分かれる場合はありますがそれでも意見書案については所管の委員会等で内容について大方の合意をされたものが議案となりますし、議員や会派からの提案であっても会派間での合意形成を図るのは当然のことです。

 

ところが今回の決議案は、前にも述べたとおり一部の会派のみで話し合われ作成されたもので、しかも、議員提出議案として提案されたのが議会最終日の3日前の議会運営委員会というタイミングでした。これはどういうタイミングかといえば、我々としては初めて目にする議案であるにもかかわらず、中身を審議する実質的な機会もなく(議案に対する「質疑」は出来ますが・・・)、賛成か反対かの意思表示しか出来ないということです。そして、その内容は安保法案に反対する立場からのみの意見が連ねてあるもので、到底議会全体の意思を反映したものとはいえないものでした。

 

重ねて言いますが、「決議」や「意見書」はその「議会としての意思」を表明するものであり、特に今回のように意見が激しく分かれている問題であれば尚更、議会全体での合意形成・意見集約の努力は必要です。協議に協議を重ねた上で、それでもなお意見がわかれ主張の異なる2つの案を多数決で選ぶというなら、それは議会運営として健全な姿であると言えますが、はじめから過半数を見込める中で異なる意見の者を議論から排除して(これについては後で、あちらの議案の提案者の某議員から、こちらとは「協議するまでもなかった」といわれましたので間違いないですが)、一方的に「議会の意思」が決められるなどということはそれこそ議会制民主主義の破壊に繋がる行為であり、中味について審議する時間も与えられず後は採決で多数派が押し切る・・・これは世間でいうところの「強行採決」そのものです。(よく問題になる、国会で「強行採決」と言われるものでも、採決までに議案の審議時間をきちんと取るだけまだましかも知れません)

 

こちらとしても安保法案についてはしっかりとした審議を行っていくべきとの思いは同じです。そこで、急遽ではありましたがこちら側からの対案として「平和安全法制整備法案等の慎重かつ国民に対して誠実な審議を求める決議(案)」を作成し、議員提出議案として提案させていただきました。このことについては、あちら側からは自分たちの決議案に対抗して法案賛成の立場を主張したものと受け取られた方が多かったようですが、決議案をよく読んでいただければわかるように(最後に、こちらの決議案全文を掲載します)、決議文の中に法案について賛成の立場での記述は極力省き、出来るだけ起きている事実のみを記載する形のものになるよう考えました。つまり、安保法案に対する是非を超えた内容になるよう工夫をしたということです。(なので、一部の新聞報道にある「法整備は必要との立場」からの対案、というのは正しく理解されておらず残念ですが・・・)

 

それは何故か。

それは、ひとつは元々、議会の中で賛否が激しく割れている事案であること。そしてもうひとつはそれでもなお「議会としての意思」を表す「決議」とするなら党派や主義主張、また賛否を超えて「議会として」合意でき得るものにしなければならないと思ったからです。やはり、議会で決議するのであればそこをまずは、目指していかなければ意味がありません。

たかだか15名しかいない議会の合意形成を「協議するまでもない」とやりもしないうちから否定し、議案の審議をする時間もなく多数派で押し切ることは戦略としては認められることかもしれません。しかしそれは合議体として、言論の府としての議会の矜持を捨てることにほかならないと思うからです。

 

ともあれ、2つの決議案は採決され、我々の決議案は否決されました。もとより、その中味を審議されることもなく、提案理由の説明も十分に意を尽くせたとはいえませんでしたが、きちんと対案を示した上での結果ですので決して「数の横暴だ」などというつもりもありません。何故なら、議会制民主主義において最後は多数決で事を決することに何の問題もありませんし、我々はそういう世界に身を置いているのですから。

ただ、そこに至るまでの過程は、境港市議会が合議体として、言論の府としてはまだまだ未熟であること露呈してしまったといわざるを得ないことが残念でなりません。

 

今回の出来事を通じ、境港市議会も合議体として、また、言論の府として、まだまだレベルアップをしていかなくてはいけないと強く思った次第です。もちろん、自分自身のレベルアップも含めて。

 

大変長い文章になりましたが、最後に僕が起案した「決議(案)」を再掲します。

 

「平和安全法制整備法案等の慎重かつ国民に対して誠実な審議を求める決議(案)」

 

現在、衆議院において「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」いわゆる「国際平和支援法案」と、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」いわゆる「平和安全法制整備法案」の2法案の審議が行われている。

今回のこれらの法整備の背景には、国際社会はもとより我が国を取り巻く安全保障環境の変容と、直面する複雑かつ重大な国家安全保障上の課題がある。これらは前政権の下でも議論が進められており、切れ目のない法整備については一部の野党を除いて、その必要性そのものは否定されていないところである。

このような視点から、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守りぬくとともに、国際協調主義に基づいて国際社会の平和と安定に積極的に貢献するための国内法制の整備については与野党の枠を超えて、「政治家」の負う責務として真摯に国民に向き合い議論されるべきである。

これまでの国会での審議については、国民の多くが抱く疑問や不安に対し十分に答えているとは言えず、法案の中身が国民に理解されるよう、政府は丁寧な説明に努めるとともに、野党側も政府案について異論があれば対案を示すことで国民に有益な法整備となるよう努めるべきである。

我々、境港市議会は航空自衛隊美保基地を有し、市内に自衛隊員も多く居住する自治体の議会として、今回の法整備に対する国民の不安が払拭されるよう、政府及び与野党国会議員に対し、この法案の慎重かつ国民に対して誠実な審議を強く求めるものである。

 

以上、決議する。