大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

認知症や孤立のリスク ー いま知っておきたい「難聴」の早期発見と最新対策

医療 生活 福祉 高齢者 / 2026年7月31日

日本医療政策機構(HGPI)がまとめた最新の政策提言をもとに、私たちの生活に密接に関わる「難聴」の現状と、これから期待される対策についてお伝えします。

【参照元記事】 ライフコースを通じた切れ目のない難聴対策の実現に向けた政策提言

難聴は「認知症」の最大のリスク因子?

現在、世界の人口の約5%にあたる4.3億人が難聴への介入を必要としています。 世界的医学誌「Lancet」の2017年の報告では、難聴は認知症の最大のリスク因子であると指摘されています。また、社会的孤立やうつ病などのリスクとの関連も示唆されており、ただ「耳が聞こえにくい」という枠に留まらない重大な課題です

日本でも2030年には難聴者が約2,275万人に増加すると見込まれています。しかし、補聴器による介入が必要な人が多いにもかかわらず、日本の補聴器所有率は15.6%にとどまっており、先進国の中で最低水準にあるのが現状です

切れ目のない支援へ向けた「4つの重要ポイント」

誰もが適切な聴覚ケアを受けられる社会にするため、今回の政策提言では大きく分けて以下のポイントが示されています。

  • ネガティブなイメージを変え、早期介入を推進 「難聴=恥ずかしい」という社会的スティグマ(偏見)を払拭することが重要です。実際、補聴器所有者の95%が「補聴器の使用によってQOL(生活の質)が向上した」と回答しており、前向きな理解を広める必要があります

  • 日常生活の中で気づける「スクリーニング」体制 テレビなどの機器使用時に聴力低下に気づける仕掛けづくりや、高齢者向けの聴力検査を健診に組み込むなど、より広い世代が早期発見できる体制の整備が求められています

  • 専門家へのアクセスと連携の強化 難聴を自覚しても受診へのハードルが高いのが現状です。耳鼻咽喉科医や言語聴覚士など、専門人材の育成と適切な医療にスムーズにつながる仕組み作りが提言されています

  • 軽度・中等度難聴者への公的支援の拡大 現在、補聴器購入の公的補助は主に身体障害者が対象ですが、補装具費支給の対象外となっている軽度・中等度の難聴の成人にも、介護保険などを活用した段階的な公的支援の導入が検討されるべきとされています

まとめ

難聴は、若者からお年寄りまであらゆる世代で起こりうる身近な問題です。「聞こえ」に不安を感じたら、放置せずに早めに専門家に相談することが、豊かな人生を送るための第一歩になります。

今後、誰もが安心して聴覚ケアにアクセスできる社会に向けて、日本の制度がどのように変わっていくのか、引き続き注目していきたい。

<政策提言>ライフコースを通じた切れ目のない難聴対策の実現に向けた政策提言ーすべての人が適切な聴覚ケアにアクセスできる社会の構築を目指してー

自治体のデジタル化最前線!陸前高田市とたつの市から学ぶ「地域の守り方」

介護 家族 災害 生活 福祉 行政 高齢者 / 2026年7月29日

今回は、総務省が公開している事例集から、私たちの街でもぜひ参考にしたい「自治体のデジタル化」の取り組みを2つピックアップしてご紹介します。

デジタル化というと「スマホが使えないと取り残されるのでは?」と不安に思うかもしれませんが、今回ご紹介するのは、誰もが安心して暮らせる「地域の守り方」をテクノロジーで優しくサポートする素晴らしい事例です。

参考資料:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第5.0版】(総務省)

1. 黒電話でもOK!AIと電話で災害時の安否確認【岩手県陸前高田市】

大雨や台風などの災害時、迅速な避難指示と安否確認は命に関わる重要な課題です。陸前高田市では、最新のクラウド・AI技術と、昔ながらの「電話」を組み合わせた自動音声一斉配信システムを導入しました。

  • スマホがなくても大丈夫: 音声のみの応答で完結する設計のため、スマホを持たない高齢者や、黒電話を使っているご家庭でも確実に情報を受け取れます。

  • 一斉発信で逃げ遅れを防止: 災害の恐れがある際、事前に登録した連絡先へ一斉に電話やSMSを発信し、必要な情報を即時に届けます。

  • 市職員の負担を大幅カット: 手作業で行っていた安否確認が自動化され、職員が他の重要な災害対応に集中できるようになりました。

まさに「デジタルとアナログの融合」で、住民を誰一人取り残さない防災を実現している事例です。

2. 離れていても安心。高齢者への「ゆるやかな見守り」【兵庫県たつの市】

コロナ禍以降、地域との繋がりが減少し、高齢者の「新しい孤立」が問題となりました。
そこでたつの市は、ICT機器を活用して、離れて暮らす家族が高齢者を無理なく見守れる仕組みを導入しました。

  • 生活の様子を自然に確認: 高齢者がテレビ等で動画を視聴したタイミングや、部屋の温度・起床情報などが、離れて暮らす家族のスマホアプリに届きます。

  • お互いに負担のない「ゆるやかさ」: 監視されているという抵抗感を感じさせず、お互いのプライバシーを尊重しながら自然な安否確認ができます。

  • 行政からの直接サポート: 必要に応じて、行政からフレイル(虚弱)予防などの最適な情報を、対象者へ直接発信することも可能です。

テクノロジーが家族の絆をそっと繋ぎ直し、温かくサポートしてくれる優しい取り組みです。

まとめ

陸前高田市とたつの市の事例から見えてくるのは、デジタル化の目的は単に効率化することではなく、「地域の安心と繋がりを守る」ことだということです。 最新技術を使いながらも、住民の目線に徹底的に寄り添う工夫が、地域の安全に直結しています。私たちの住む街でも、こうした温かいデジタル化のアイデアが広がっていくと良いですね!

草津養護学校大津地区PTAの皆様との意見交換会

社会保障 福祉 行政 議員活動 / 2026年7月28日

昨日、草津養護学校 大津地区PTAの会長、副会長、そして大津市の担当者の皆様と、2026年度の要望書について意見交換会を行いました
市議会議員として私も参加させていただき、子どもたちとそのご家族が安心して暮らせる環境づくりに向けた切実な声をお伺いしました。
今回の要望書には、これまで継続して要望されている項目に加え、実態に即したいくつかの「新規」の要望が含まれています
まずは、その新規要望のポイントを簡単にご報告します。
  • 放課後等デイサービスの整備:医療的ケア児や重度障害児が利用できる事業所や、土日利用が可能な事業所の拡充
  • 看護職員配置事業所の拡充と人材確保:卒業生が安心して利用できる看護職員を配置した事業所の拡充と、看護学生等への障害福祉分野の魅力周知
  • 就労支援事業所の品質チェック体制の構築:適切な支援が提供されているかを継続的に把握し、安心してサービスを受けられる環境整備
  • ユニバーサルシートの整備:市内商業施設等において、車椅子に乗ったまま入室できない、介助者が付き添うためのスペースがないなど、実際の利用場面を想定した設備に
  • 手続きのデジタル化・共通様式化:福祉サービス申請や「おむつ券」のデジタル化、および事業所ごとに異なるアセスメントシート等の共通様式化による保護者負担の軽減
  • 災害時の備え(経管栄養剤等の備蓄):災害時でも衛生的に使える「使い切りパウチ型」の経管栄養剤や容器を、備蓄用として購入する際の公的助成の創設
このように、日々の生活の質を向上させるための具体的な要望が多く寄せられました。
また、本日(28日)付の公明新聞の主張では、医療的ケア児の改正支援法の成立と、ケア児に対する親の負担軽減の重要性が取り上げられていました。
今回の要望書の中にも、まさにこの「保護者の負担軽減」に直結する
ショートステイ事業所の拡充(継続要望)が盛り込まれています
睡眠障害により夜間に覚醒するお子さんの介助を続ける保護者の皆様は、十分な休息が取れず、心身ともに限界に近い状態にあるレスパイト(休息)支援を強く必要とされています
しかし現状では、小学生が安全に利用できるショートステイや、緊急時に受け入れてくれる施設が市内で不足しています
公明新聞の主張にもある通り、医療的ケア児を育てるご家族の負担軽減は社会全体で取り組むべき急務です。ショートステイの拡充は、保護者の皆様が倒れてしまう前に対策を講じるための「命綱」でもあります。
今後も、現場のリアルな声をしっかりと受け止め、市と県、そして国とのネットワークを活かしながら、医療的ケア児とご家族を支える制度の拡充に全力で取り組んでまいります。

大津市議会公明党議員団で「美輪湖マノーナファーム」を視察しました!

生物 産業 福祉 議員活動 / 2026年7月23日

 

22日、大津市議会公明党議員団で、社会福祉法人美輪湖の家大津が運営する「美輪湖マノーナファーム」を視察してまいりました。
農業と福祉を掛け合わせた「農福連携」の素晴らしい取り組みについてお話を伺いましたので、その内容をご報告します。

■ マノーナファームの事業内容

マノーナファームでは、就労継続支援B型、就労移行支援、就労定着支援、そして大津市北部では唯一となる就労選択支援の4つのサービスを展開しています。

①水耕栽培を中心とした農業を通じた就労支援 ほうれん草や水菜、空心菜などの水耕栽培を行っており、種まきから約4週間で出荷しています。生産された野菜は、生協や市場をはじめ、平和堂やバロー、道の駅など、広く一般流通に乗せて出荷されています。

②地域の農家さんと繋がる「施設外就労」 施設内での水耕栽培だけでなく、人手不足や高齢化に悩む地域の農家さんに出向いて作業をお手伝いする「施設外就労」にも積極的に取り組まれています。現在では農家さん同士の繋がりから「うちの収穫も手伝ってほしい」と口コミで広がり、先方からお声をかけていただけるようになっているそうです。

③一人ひとりに寄り添う支援と高い就労定着率 過去に生きづらさを抱えていた方にも、「自信が持てるよう褒める」「安心できる居場所を確保する」といった丁寧な支援を行っています。作業工程でも、一人ひとりに合った工夫(計量器の小数点を隠して分かりやすくするなど)を取り入れており、その結果、多くの利用者を一般企業への就労へ導き、就職1年後の定着率は97.6%(ほぼ100%)という驚異的な実績を誇っています。

■ 質疑応答・意見交換

事業概要の説明を受けた後、私たち議員団と施設代表者の方とで活発な意見交換を行いました。

Q. 他市では、企業内での就労で高い工賃を得ている事例もありますが、そういった展望はありますか? A. マノーナファームでも現在、一部の企業様に通わせていただいています。一般企業での経験は、利用者の皆さんの特性の見極めや自信に繋がり、工賃向上という点でも非常にありがたいです。今後そういった機会がさらに増えればと願っています。

Q. 大変素晴らしい取り組みですが、入所を希望する方の受け入れ枠に余裕はありますか? A. 大変ありがたいことに人気があり、就労継続支援B型は定員20名に対して23名が在籍するなど、常に満杯に近い状態です。一般就労へ移行して空きが出ることもありますが、緊急時の受け入れ枠の確保や、職員の配置などの運営面とのバランスを考えながら対応しています。

■ 視察を終えて

今回の視察を通して、土や自然に触れる「農業」が持つ不思議な力と、利用者の皆さんの可能性を信じて寄り添う職員の方々の情熱に深く感銘を受けました。

公明党議員団として、現場で伺った切実な声や先進的な事例を、今後の大津市における障害者就労支援の充実や、農福連携のさらなる推進にしっかりと活かしてまいります!

地域のつながりが「寿命」に影響する?

介護 地域活動 生活 福祉 高齢者 / 2026年6月2日

高齢化が進む日本では、「どうすれば健康に長生きできるのか」が大きなテーマになっています。
食事や運動はもちろん大切ですが、最近の研究では “地域のつながり” が寿命に関係している ことが分かってきました。

東京都足立区で行われた大規模調査(75,000人以上が参加)では、 地域の信頼や一体感が強いほど、特に男性の死亡リスクが下がる という興味深い結果が出ています。



🔍 ソーシャル・キャピタルって何?

ソーシャル・キャピタルとは、 「人と人とのつながりが生み出す力(社会的な資源)」 のこと。

この研究では、特に次の2つを測定しました。

  • 近隣凝集性(Cohesion) 近所への信頼、地域への愛着、地域の一員だという感覚
  • 近隣ネットワーク(Network) 近所の人との交流の頻度(挨拶・立ち話・相談など)

📊 7万人を5年間追跡した結果は?

🔵 男性:地域の信頼が高いほど長生き

地域の「近隣凝集性」が高いほど、男性の死亡リスクは明確に低下しました。

特に 65〜74歳の男性では、死亡リスクが17〜18%低下

地域に信頼や一体感があると、安心感やストレス軽減につながり、健康行動も続けやすいと考えられます。

🔴 女性:大きな差は見られず

女性はもともと個人のつながりが豊かで、地域差の影響が出にくいと考えられています。

🧠 なぜ「地域のつながり」が寿命に関係するのか?

研究者たちは、次のような効果を指摘しています。

  • 安心して暮らせる → ストレスが減る
  • 困ったときに助け合える → 孤立を防ぐ
  • 外出や交流が増える → 健康行動が続く
  • 地域に居場所がある → 心の健康が保たれる

特に男性は退職後に人間関係が減りやすいため、 地域環境そのものが健康を支える“土台”になる のです。

🏡 地域づくりが「健康づくり」になる時代

この研究が示すのは、 「個人の努力だけでは健康は守れない」 ということ。

地域の信頼やつながりを育てることが、 これからの健康政策やまちづくりの重要なポイントになります。

例えばこんな取り組みが効果的

  • ちょっとした挨拶や声かけ
  • 多世代が集まれる場づくり
  • 見守り活動やサロン
  • 地域イベントや交流会
  • 公園・商店街など“出会いの場”の活性化

参考:

「長寿のカギ」は、信頼し合える地域にあり!大規模データから地域のソーシャル・キャピタルが高い地域に住む男性で死亡リスクが低いことを確認

手摺りのちょっとした工夫で快適に!福祉用具に利用者の本音は?

福祉 高齢者 / 2026年5月30日

「据置式の手摺りの土台プレートが眩しい」という声がありました。
そこで、歩行路に合わせてビニルのマットを敷いてみることにしました

このマットは素材が薄いのに重みがあり、少し柔らかくてゴムに近い感触なので、滑り止めとしても効果が期待できるベストチョイスでした!
加工もしやすいので、同じように据置式の手摺りを設置しているお家の参考になれば嬉しいです。
ちなみに材料費は1mあたり2580円で、今回は4.2m購入してぴったり収まりました
さて、こうした日々の環境調整を行う中で、ふと「利用者様は福祉用具の利用に対して、どう感じているのだろう?」と考えることがあります。
福祉用具の貸与(レンタル)サービスは非常に便利ですが、利用者様の視点に立つと、利用をためらったり、購入への切り替えを検討したりする「いくつかの心理的・物理的なハードル」があることが分かっています。

1. 中古品を利用することへの心理的な抵抗感
貸与品は他の人も使用したものであるため、どうしても「人が使用したものが嫌」「新品を気持ちよく活用したい」といった、中古品に対する心理的な抵抗感を持つ方がいらっしゃいます

2. 定期的な訪問や継続的な関わりへの抵抗感
福祉用具を安全に利用するためには定期的なモニタリング訪問が必要ですが、利用者様の中には「定期的に訪問されることが煩わしい」と感じるケースも少なくありません

3. 毎月継続して発生するランニングコストへの負担感

身体状況が安定しており長期的な利用が見込まれる場合、毎月のレンタル料金の支払いに負担を感じ、「長い目で見れば購入してしまった方が得である」「毎月の支払いを無くしたい」と考える利用者様がいらっしゃいます

4. 紛失・弁償への不安や手続きの煩雑さ

「物忘れなどで用具を紛失してしまったら弁償しなければならない」というリスクを避けるために最初から自分の所有物にしたいと考えるケースや、レンタル契約時の書類手続きが煩雑であることを負担に感じる方もいます
福祉用具は利用者様の生活を支える大切な存在ですが、その裏には「できれば新品がいい」「毎月の訪問は気を使う」といったリアルな本音が隠れています。
今回のように、「プレートが眩しいからマットを敷く」といった小さな配慮や環境調整が、利用者の心理的・物理的なハードルを少しでも下げることにつながればと思っています。
これからも利用者様の声にしっかりと耳を傾け、より快適で安心できる在宅生活を一緒に作っていきたいです。

地域を支える「民生委員」の担い手不足をどう乗り越えるか

ボランティア 人権 地域活動 生活 福祉 / 2026年5月1日

民生委員の担い手不足が全国的な課題となる中、厚生労働省の補助を受けた一般財団法人日本総合研究所が令和8年3月に公表した「持続可能な民生委員制度の構築に向けた調査研究事業報告書」を読み、私も民生委員推薦会のメンバーであったことから、本市の状況はどうなのかと気になり、担当課に確認しました。
今年度の本市の状況は、664人の定数のところ、5月1日現在で645人、19人の欠員が生じています。滋賀県の充足率は91.6%となっています。
また、民生委員推薦会では、退職者友の会・ケアマネージャー・介護事業所・学校(校長)など、従来の自治会・町内会ルート以外にも幅広く候補者の発掘に取り組んでいただいていると担当課から伺いました。関係者の皆様のご尽力に、あらためて感謝申し上げます。


民生委員とはどのような存在か

民生委員は、民生委員法に基づいて厚生労働大臣から委嘱される特別職の非常勤地方公務員です。報酬はなく、年10数万円の活動費が支給されるボランティアとして、高齢者・障害者・子育て家庭などの相談に応じ、行政や専門機関へつなぐ「地域のパイプ役」を務めます。全ての民生委員は児童委員も兼務しており、妊娠中の不安や子育ての悩みにも対応します(出典:厚生労働省ウェブサイト)。

年間の総活動件数は約3,385万件にのぼり、うち相談支援活動は717万件超。1人あたり月平均11日活動し、訪問・連絡調整だけで月約20件をこなしています(出典:厚生労働省「民生委員・児童委員の活動内容」)。


全国で深刻化する「担い手不足」

厚生労働省が2026年2月に公表した令和7年度一斉改選の結果によれば、全国の定数24万971人に対して委嘱者は22万880人にとどまり、欠員数は2万91人と初めて2万人を超えました。充足率は91.7%で、前回2022年度改選時から約2ポイント低下しています。 Nippon.com

民生委員の定数はこの20年で約8,000人増加していますが、これは高齢者の増加に伴う見守り・相談ニーズの拡大が背景にあります。一方で委嘱者数はほぼ横ばいで推移しており、充足率は2007年の97.9%から一貫して低下し続けています。 Nippon.com


なぜなり手が集まらないのか ― 3つの構造的課題

① 活動範囲の拡大による負担増

民生委員の職務は制度発足当初の生活保護世帯への相談・支援から、在宅高齢者の生活支援・児童の健全育成・子育て支援・障害者の自立生活支援など幅広い分野へと拡大しています。活動範囲が広がるほど負担感が増大し、私生活とのバランスが保てなくなるため、1期3年で退任する例も増えています。 Ncs-gakkai

② 高齢化と候補者層の変化

厚労省によると、2022年時点の民生委員の年齢構成は70代以上が37%、60代が46%で、60歳未満の委員は全体の約2割にすぎません。企業の定年延長により、かつて退職後に担い手となっていた60代前半が在職中であるケースが増えており、従来の推薦候補者層が縮小しています。 Nippon.com

③ 地域コミュニティの希薄化

厚生労働省の令和5年度委託調査研究では、地域住民とのつながりが希薄化したことで担い手候補者にアプローチすることが難しくなっており、町会など既存の推薦候補者の輩出母体に固執するために地域活動の縮小とともに候補者が見つけにくくなっているという課題が指摘されています。 Ministry of Health, Labour and Welfare


求められる対応策

① 推薦ルートの多元化

本市で既に取り組まれているように、退職者友の会・ケアマネージャー・介護事業所・学校(校長)など、多様なネットワークを通じて候補者を探すことが有効です。同調査研究では、充実した民生委員が多い地域では肯定的な口コミが広がり、自発的に推薦したい人を探し出す動きにつながっていることも報告されています。「やりがい」の見える化と積極的なPRが重要です。 Ministry of Health, Labour and Welfare

② 活動負担の軽減

厚生労働省の検討会(2024年6月始動)では、民生委員の在り方そのものも含めた制度改革の議論が進められており、制度の持続可能性を高めるための改革が求められています。活動のデジタル化(報告書類のオンライン化等)や、行政・社会福祉協議会との役割分担の見直しも重要な論点です。 Tokyo Nikkei

③ 選任要件の柔軟化

厚生労働省は「民生委員・児童委員の選任要件に関する検討会」を設置し、要件の見直しについて検討を進めています。働く世代が担えるよう、活動時間帯の工夫や複数人での担当区域のカバーなど、弾力的な運用を可能にする仕組みが求められます。


おわりに

一人暮らしの高齢者が増加し、国が在宅医療・介護を推進する方向にある中、民生委員の存在意義はむしろ高まっています。しかしその基盤はじりじりと弱まっており、欠員が増え続けると行政の福祉サービスが行き届かず、感染症流行時や災害時の支援体制も脆弱になる恐れがあります。 Nikkei

本市の充足率は全国・県平均を上回っているとはいえ、19人の欠員という現実は重く受け止めなければなりません。民生委員の方々が安心して活動を続けられる環境整備と、地域全体でこの制度を支えていく意識の醸成が急務です。引き続き議会でも取り上げてまいります。


【主な参考資料】

  • 厚生労働省「令和7年度民生委員・児童委員の一斉改選結果」(2026年2月公表)
  • nippon.com「民生委員:25年度の一斉改選で初の欠員2万人超え 充足率91.7%」(2026年2月5日)
  • 厚生労働省「民生委員・児童委員の活動内容について」(厚労省ウェブサイト)
  • 厚生労働省委託「令和5年度民生委員・児童委員の担い手確保の推進に関する調査研究報告書」(2024年3月)
  • 参議院常任委員会調査室「民生委員制度の現状及び今後の課題」(立法と調査 2019年11月 No.417)

制度で給付されない支援機器は、どうすれば本人に届くのか

福祉 / 2026年4月28日

制度で給付されない支援機器は、どうすれば本人に届くのか

⑧ALSに負けるな!(再掲)

― 調査の趣旨と具体事例から見える、実用化までのアプローチ

公的制度で給付される補装具や日常生活用具だけでは、障害のある人の暮らしを十分に支えきれない場面があります。近年は、スマートフォンアプリ、ゲーム用アクセシビリティ機器、一般製品の工夫的活用、ICT・AIを活用した機器など、制度の対象外でも生活の質を大きく高める支援機器が増えてきました。今回の調査は、そうした**「制度で給付されない支援機器」**が、実際にどのような経路で障害当事者に届き、購入・活用に至っているのかを明らかにするために行われたものです。調査では、障害当事者19名、支援者6名へのヒアリング、支援機関等3件の現地調査を通じて、情報収集から継続使用までの流れと、その途中にある障壁が整理されています。日本総合研究所 報告書

参考図版として、調査元の記事には「制度対象外の支援機器が当事者に届くまでの一連の流れ」を示した図が掲載されています。全体像をつかむのに非常に分かりやすい図です。
障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連の流れ
日本総合研究所 コラム記事

この調査の趣旨は、「機器があるのに、必要な人に届かない」実態を可視化すること

この調査のポイントは、単に「便利な機器を紹介する」ことではありません。むしろ重要なのは、制度の対象外であるために、機器の存在を知ること、相談すること、試してみること、買って使い続けることのすべてが、本人や家族の自助努力に大きく依存しているという現実を明らかにした点です。報告書では、制度外の支援機器が確実に当事者のもとへ届き、有効に使われるための普及啓発方法を検討することが調査目的だと示されています。日本総合研究所 報告書

「制度で給付されない支援機器」とは何か

報告書では支援機器を、障害当事者の生活を支援する幅広い範囲の機器の総称として捉えています。そのうえで、今回の調査対象には、福祉機器に限らず、一般製品やユニバーサルデザイン製品、障害者向けに開発されたが給付制度の対象外となっている製品などが含まれています。たとえば、スマートスピーカー、ゲーム用アクセシビリティツール、食事介助ロボット、歩行支援スマートフォンアプリ、会話可視化ツール、認知行動療法アプリ、軽い力で使えるハサミ、スマホ用首下げストラップなどが該当します。つまり、制度外支援機器とは「高価な専用機器」だけを指すのではなく、本人の困りごとを具体的に解決するものであれば、一般製品の工夫的利用も含まれるというのが重要な視点です。日本総合研究所 報告書 日本総合研究所 ストーリー集

活用に至るまでの流れは、一直線ではなく「気づき」から始まる

調査では、支援機器が本人に届くまでの流れを、概ね「きっかけ」「情報収集」「機器選定」「購入」「使用」「適合・継続使用」という段階で整理しています。最初の出発点は、本人や家族が困りごとに気づく場合もあれば、支援者の助言、SNSや動画、当事者コミュニティ、展示会、店舗で偶然見かけることがきっかけになる場合もあります。その後、インターネット検索、口コミ、実演動画、相談支援、試用体験などを通して、「これは自分の生活に本当に合うのか」「お金を出す価値があるのか」を見極め、ようやく導入に至ります。つまり制度外機器の普及では、製品そのものの性能だけでなく、“出会い方”と“試せる機会”が極めて重要だということです。日本総合研究所 報告書 日本総合研究所 コラム記事

具体事例1:発達障害のある子どもが使う「布張りの箱型筆箱」

ストーリー集で印象的なのは、発達障害のある子どもの筆箱の事例です。本人には「周囲と同じような見た目の布製筆箱を持ちたい」という思いがある一方で、実際には物の配置が分かりやすく整理しやすい構造が必要でした。そこで選ばれたのが、外見は周囲と馴染みやすく、中は整理しやすい布張りの箱型筆箱でした。この事例が示しているのは、支援機器の価値は「機能」だけでは決まらず、本人が受け入れやすい見た目や、学校生活の中で浮かないことも同じくらい重要だということです。支援とは、できることを増やすだけでなく、本人らしさや尊厳を守ることでもあります。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例2:ALSのある人が使う「フットスイッチ付きドライヤー固定台」

ALSのある人の事例では、本人が日常の不便さを「当たり前」と受け止めてしまい、困りごととして自覚していなかったところに、支援者の問いかけが入りました。その結果、ドライヤーを自分で使いにくいことが課題として浮かび上がり、固定台とフットスイッチを組み合わせることで、自分で操作しやすい形が実現しました。さらにその工夫は、別のスイッチ操作にも応用されていきました。この事例から見えるのは、支援機器の導入は「本人が最初から欲しいと言っていたものを買う」だけではなく、支援者が潜在的な困りごとを一緒に言語化することで始まる場合が多いということです。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例3:脳性麻痺のある人が見つけた「軽い力で使えるハサミ」

脳性麻痺のある人の事例では、「軽い力で使えるハサミ」が必要になり、本人がインターネット検索や動画、口コミを通じて情報を集め、価格と使い勝手を比較しながら購入に至っています。ここで注目したいのは、制度外機器の導入では、動画などで実際の使用場面を見られることが購入の後押しになる点です。福祉機器に限らず、使っている姿がイメージできることは、「自分にも使えそうだ」という納得感を生みます。日本総合研究所 ストーリー集 日本総合研究所 コラム記事

具体事例4:導尿道具のために選ばれた「一般のポーチ」

胸髄損傷のある人の事例では、導尿に必要な道具を持ち運ぶために、いわゆる福祉用具ではなく、一般の雑貨店で見つけたポーチが活用されていました。サイズ感や使いやすさに加えて、「いかにも福祉用具に見えないこと」が大きな価値になっていた点が特徴です。この事例は、制度外支援機器の世界では、一般製品の中から本人の生活感覚や美意識に合うものを見つける視点が非常に大切だと教えてくれます。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例5:精神障害のある人が使う「認知行動療法アプリ」

精神障害のある人の事例では、リワーク施設などで認知行動療法に触れたことをきっかけに、複数のアプリを試しながらセルフケアの手段を探していった経緯が紹介されています。制度では給付されにくいデジタルアプリも、本人の生活に合えば日々の自己管理や心理的安定を支える重要な道具になります。この事例は、支援機器を「モノ」に限定せず、アプリやソフトウェアも含めて生活支援の手段として捉える必要性を示しています。日本総合研究所 ストーリー集


一般論として見えてくるアプローチ手法

では、制度で給付されない支援機器を本人に届け、活用につなげるには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。今回の調査から見えてくるのは、単に「情報を並べる」だけでは不十分で、発見から継続使用までを段階的に支えることが必要だという点です。日本総合研究所 報告書

まず重要なのは、本人が必要性に気づく“きっかけ”を増やすことです。本人や家族が困りごとを言語化できていない場合も多いため、医療・教育・就労・相談支援の現場で、日常生活の小さな不便さに目を向ける対話が欠かせません。支援者が「こういう方法もあるかもしれません」と選択肢を示すこと自体が、導入の出発点になります。日本総合研究所 報告書

次に必要なのは、情報を本人に届く形に翻訳することです。制度外機器は、製品名やスペックだけ見ても価値が伝わりにくいことが少なくありません。本人にとっては、「何ができるか」よりも「自分の暮らしのどの場面がどう楽になるか」が分かることのほうが大切です。そのため、実演動画、活用事例、当事者の口コミ、失敗例も含めたリアルな情報提供が効果的です。日本総合研究所 コラム記事 日本総合研究所 報告書

さらに、試用や伴走支援の仕組みも不可欠です。制度外機器は、買って終わりではなく、「自分の身体や生活に本当に合うか」を使いながら確かめる必要があります。試せる機会、調整を相談できる相手、導入後の困りごとに対応できる場があるかどうかで、継続使用のしやすさは大きく変わります。本人の状態変化や環境変化に合わせて見直せる支援があってこそ、活用は定着します。日本総合研究所 報告書

また、今回の事例からは、“福祉機器らしさ”にとらわれない発想も重要だと分かります。本人が使いたいと思えるデザイン、周囲に溶け込む見た目、一般製品の応用、アプリやソフトウェアの活用など、選択肢を広く捉えることが、結果として本人の自立や参加を支えます。支援機器とは、特別な製品の名前ではなく、その人の生活課題を解決する手段そのものなのだと考えることが大切です。日本総合研究所 ストーリー集 日本総合研究所 報告書

最後に、支援を個人の熱意や偶然の出会いに委ねないためには、地域差を減らす仕組みづくりが求められます。報告書でも、医療機関、教育機関、就労先、相談窓口など、本人や家族が必ず関わる場での情報提供体制や、全国どこでも一定水準の支援が受けられる仕組みの必要性が指摘されています。制度外機器の普及に必要なのは、製品の開発だけではなく、知る・試す・相談する・使い続けるための社会的な回路を整えることです。日本総合研究所 報告書


まとめ

この調査が教えてくれるのは、制度で給付されない支援機器の問題は、単なる「自己負担の問題」ではないということです。本当に大きいのは、必要な人が、必要なタイミングで、その機器の存在を知り、試し、納得して使い始め、使い続けられるかどうかです。支援機器を本人に届けるには、製品の良し悪しだけでなく、気づき、情報提供、試用、調整、継続支援までをつなぐアプローチが必要です。制度の内か外かではなく、その人らしい暮らしを支えるかどうかを基準に支援を考えることが、これからますます重要になるでしょう。日本総合研究所 コラム記事 日本総合研究所 報告書


「認知症の人をケアする家族等を取り巻く認知症施策のこれから」政策提言から

政治 社会保障 福祉 / 2026年4月28日

認知症の人を日々支える家族の負担は、制度が整ってきた今もなお大きく、見えにくいまま残されています。 特に、診断直後の不安、情報の届きにくさ、働きながらの介護、心理的負担、地域の支え合いの弱体化など、家族を取り巻く課題は多岐にわたります。

こうした現状を踏まえ、日本医療政策機構(HGPI)は2026年4月に 認知症の人をケアする家族等を取り巻く認知症施策のこれから」政策提言 を公表しました。

本記事では、この提言の中核となる 「7つの提言」 を、

  • なぜ必要なのか(課題)
  • 何を目指すのか(必要性)
  • どんな内容なのか(提言の内容) を、わかりやすい図解で整理して紹介します。その下にもテキストで一覧表にしました。

提言 課題 必要性 提言の内容
① オンライン・リンクワーカー 診断直後に情報が届かず家族が迷子になる 初期の不安・孤立を防ぎ、早期支援につなぐため 全国共通のオンラインナビサイトを整備し、診断直後から情報をプッシュ通知。相談窓口・地域資源へ確実に接続
② 家族支援の「報酬化」 家族支援が制度で評価されず、現場の善意に依存 支援の質を安定させ、継続的な家族支援を可能にするため 医療・介護で家族支援を報酬化。アセスメント〜支援〜再評価を加算として評価
③ 選べる認知症カフェ(機能タグ化) カフェの内容が分かりにくく参加しづらい 孤立防止の場として活用しやすくするため カフェに機能タグを付与し、自治体・医療機関が紹介しやすい仕組みを整備
④ 職域から届く家族支援 働きながら介護する人が職場で孤立 企業が早期発見・相談につなぐ役割を担うため 保険者単位で相談機能を整備し、企業がゲートキーパーとして地域につなぐ
⑤ 家族への心理支援の標準化 家族のうつ・疲弊が深刻だが支援が標準化されていない 心理的負担の軽減がケアの質向上につながるため CBT等の科学的根拠に基づく心理支援を標準化し、アクセス経路を整備
⑥ つながるケアDX 医療・介護・家族の情報がつながらず家族が“情報の運び屋”に 空白期間の孤立防止や早期対応のため 医療・介護・家族が共有できる情報基盤を整備し、継続的支援を実現
⑦ 未来に届く互助システム 地域の支え合い活動が担い手不足で持続困難 制度だけでは支えきれず地域の互助が不可欠 地域の相互扶助活動を継続できる財源・人材・運営の仕組みを整備

「孤独でいる権利」と「介入の正当性」——孤独・孤立対策の前に立ち止まって考える

人権 生活 福祉 / 2026年4月21日

孤独・孤立の問題には何とか対応してあげたい——そう思い続けてきた。しかし支援する側の「善意」が、当事者の権利を侵害することにならないか。東京財団の最新論考をきっかけに、この問題を根本から考え直したい。

現状:孤独は世界的な公衆衛生課題

39.3%
孤独感が「ある」国民
内閣府・令和6年全国調査
+29%
社会的孤立による死亡リスク上昇
Holt-Lunstad 2015
+31%
孤独感による認知症リスク上昇
Luchetti 2024
87万人
孤独関連の年間死亡推計(世界)
WHO報告書 2025

20〜50歳代が高齢者より孤独感が高く、暮らし向きが「大変苦しい」層では14.2%に達する。社会経済的格差との強い相関も確認されており、80・50問題に象徴されるように孤独は中高年にも深刻に広がっている。


問い直し:孤独はすべて「解消すべき問題」か

哲学者ハンナ・アーレントは、孤独を「solitude(内省的孤独)」「loneliness(望まない孤絶)」「isolation(社会的排除)」の三つに区別した。J.S.ミル『自由論』(1859年)が示すように、他者に危害を及ぼさない限り個人は主権的であり、本人の選択に基づく孤独への介入の正当性は自明ではない。

劇作家・平田オリザ氏も『わかりあえないことから』(2012年、講談社現代新書)で、「つながりは善、孤独は悪」という二項対立を超え、バラバラな人間がうまくやっていく「社交性」の文化的基盤を問うている。


核心:「見守り」はどこから「介入」になるのか

孤独・孤立対策推進法(令和5年法律第45号、2024年4月施行)は国・自治体の責務を定めるが、個人への介入の法的根拠や限界は必ずしも明確でない。ウェアラブルデバイスで孤独感を検出するデジタルバイオマーカー技術は、日本国憲法第13条が保障するプライバシーの権利の核心に触れる。

善意に基づく「見守り」が監視構造を帯びるリスク——この問いを政策設計の中心に置く必要がある


考える三つの原則

対策を進める際には、①本人同意の確保、②テクノロジーデータの利用目的の限定と透明性、③「孤独でいる自由」を尊重しながら助けを必要とする人が声を上げやすい環境の整備——この三点が不可欠だと考える。

「loneliness(望まない孤絶)」への対処は社会的公正の課題であり続ける。しかしそれは、一切の孤独を画一的に解消しようとすることとは根本的に異なる。この違いを政策の言葉に落とし込む作業を続けていきたい。

※主な参照:東京財団政策研究所・藤田卓仙「孤独に寄り添う社会的処方やAIを含むテクノロジー」2026年4月20日公表
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4942