大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

6月通常会議 一般質問の答弁と検証〜避難行動要支援者名簿のデジタル化を問う〜

地域活動 災害 生活 行政 議会 防災 / 2026年6月28日

6月通常会議での私の一般質問(初問)に対する答弁書です。

今回も避難行動要支援者名簿の扱いについては残念な答弁でした。

避難行動要支援者名簿は、平時は同意を得られた方の名簿のみが地域に提供されます。同意をされていない方の名簿は、災害が発生し避難支援が必要になった場合に限り、避難支援のために提供・使用することができます。

しかし、多くの名簿が発災時に突然紙媒体で地域に提供されたとしても、数百人規模の対応をするには時間がかかります。

一方で、ケアマネジャーや相談支援専門員は、業務として利用者の安否確認を行っています。これらの専門職が把握する安否確認情報を、地域の自主防災会や民生委員と共有できれば、安否確認から避難支援までをより効果的に行うことができます。今回の質問は、こうした情報共有を運用できるシステムの整備を求めるものでした。

これに対し市は、地域提供用のデジタル共有システムについて、「平常時において秘匿性の高い個人情報をデータで提供することは情報セキュリティポリシー上厳しく制限されており、災害時であってもその後の流出等のリスクを考慮する必要があることから、現時点では困難である」と答弁しました。また、紙媒体で十分対応できるかという問いに対しては、「発災時にはインフラの状況が不明な点を踏まえると、紙媒体による提供が確実な方法である」と答弁しています。

しかし、私が求めているのは紙媒体を否定することではなく、紙とデータ提供を併用する仕組みです。データ提供が困難だからといって、紙媒体だけで安否確認情報の共有も含めて十分対応できるとする市の論理には疑問が残ります。

そもそも、データであればリスクがあり、紙媒体であればリスクがないという整理自体に説明が必要です。紙媒体であっても、紛失や誤配布等による情報流出のリスクは存在します。データと紙のリスクを比較した上での説明がなければ、納得感のある答弁とは言えません。

もっとも重要なことは、災害時にいかに早く要支援者の安否確認を行うかです。そのためには、要支援者名簿を地域の方々が平時から効率的に使える状態にしておくことを、市はあらためて検討すべきです。


 

                                               


所属名:福祉政策課、長寿福祉課

1 個別避難計画が未作成の避難行動要支援者に対する安否確認・避難支援等の実働体制について

(1)避難行動要支援者名簿と安否確認情報の共有の仕組みについて

①避難行動要支援者名簿の収集すべき情報の不足について市はどのように認識しているのか伺います。あわせて、同居状況や緊急連絡先を充実させた名簿づくりに向けた今後の対応をお聞かせください。

②ケアマネジャーや相談支援専門員が行った安否確認の情報を、行政や関係機関等と共有する運用ルールが本市にあるのかどうか、またあるとすればそのルールの内容について、なければルールを設ける必要性についての見解を伺います。あわせて、保健福祉支援班は具体的にどこから、どのような安否確認情報を収集し、その後、庁内の関係部署や消防などの救助機関との連携にどう生かすのか、伺います。

③行政内部で安否確認情報をデジタルで共有するシステムの構築について伺います。

(2)地域提供名簿と自主防災組織・民生委員による活用について

①避難行動要支援者名簿の受領学区をさらに広げていく取り組みについて、市はどのように考えているのか伺います。

 ②行政内部システムとも連動した地域提供用デジタル安否確認共有システムの構築と地域への提供について、市の見解を伺います。あわせて、安否確認等を中心となって担う自主防災組織や民生委員が、平時からこのシステムの使用方法を理解し、習熟しておく取り組みも必要と考えますが、市の見解をお聞かせください。

③仮に、デジタル共有名簿の提供ができない場合、事業所のケアマネジャーや災害対策本部などからの情報共有は難しくなります。そのような状況で、多くの避難行動要支援者の速やかな安否確認が、紙媒体の資料でも十分に可能とお考えか、市の見解を伺います。

                                               

1点目の避難行動要支援者名簿と安否確認情報の共有の仕組みについてのうち、1つ目の避難行動要支援者名簿の収集すべき情報の不足の認識についてでありますが、例えば地域への名簿提供にかかる同意確認書の緊急連絡先の欄について、頼ることができる人がいないなどの理由で未記入で提出される場合などは、名簿に空欄が生じているものと考えております。

また、名簿の充実についてですが、同居状況については、同居の方の個人情報をどの程度まで収集できるかなどの課題があると認識しておりますが、昨年度には同意確認書の様式を見直し、新たに対象となる方に送付した結果、返送のあった方の約9割が緊急連絡先を記載いただいております。今後とも、名簿の充実に向けて工夫してまいります。

2つ目の、ケアマネジャー等が行った安否確認情報を市と関係機関等が共有する運用ルールがあるのか及び安否確認情報をどのように収集し、関係機関との連携にどのように活かすのかについてでありますが、現在のところ明確な定めはございませんが、情報収集、情報提供、協力依頼等を円滑かつ適切に行えるよう、今後、防災部局や関係所属等と協議してまいります。

また、保健福祉支援班において、初動支所班や避難所の担当職員等から情報を収集し、安否確認が取れない方について、当該家屋の被災状況や、家族等との連絡の可否など、詳細な状況を聞き取り、消防局や高齢・障害分野等の関係所属と共有することで、各所属が保有する情報を活用しながら安否確認を行うことなどを検討しているところです。

3つ目の、行政内部で安否確認情報をデジタルで共有するシステムの構築についてでありますが、今後、共有する所属や情報の範囲、共有方法などについて、検討してまいります。

2点目の地域提供用名簿と自主防災組織・民生委員による活用についてのうち、1つ目の避難行動要支援者名簿の受領学区をさらに広げていく取組についてでありますが、これまでから、学区自主防災組織をはじめ各種地域団体へ説明を行ってきたところであり、今後も名簿の提供が進むよう努めてまいります。

2つ目の、地域提供用のデジタル共有システムの構築及び名簿の提供、使用方法習熟のための取組についてでありますが、平常時において、秘匿性の高い個人情報をデータで提供することは、大津市情報セキュリティポリシーにおいて厳しく制限されていることや、災害時であっても、その後の流出等のリスクを考慮する必要があることから、現時点では困難であると考えておりますが、今後、国が推奨しているクラウド型被災者支援システムを活用した取組等を調査研究してまいります。

3つ目の、避難行動要支援者の速やかな安否確認が、紙媒体の資料で十分かについてでありますが、活用時における利便性に課題があると認識しておりますが、現時点では地域へのデータ提供は困難であることや、発災時においてインフラの状況が不明な点を踏まえると、紙媒体による提供が確実な方法であると考えております。

以上、私からの答弁といたします。


所属名:危機・防災対策課

(3)避難行動支援者連絡会議と避難支援プランの実効性について

① 避難行動支援者連絡会議について、これまでどのような取り組みを行ってきたのか伺います。あわせて、関係機関との会議ではどのような意見や課題が示されてきたのかお聞かせください。

② 現在のプランの記述は、役割分担される担当課における災害時の具体的な動きの手順まで踏み込んだ内容になっているのか、市の認識を伺います。

③ 複数の主体から入手される安否情報の取りまとめについて、現在のプランの記述が、関係者が迷わず動ける具体的な内容になっているのか、市の認識を伺います。

                                                

3点目の避難行動支援者連絡会議と避難支援プランの実効性についてのうち、1つ目の避難行動支援者連絡会議のこれまでの取り組み及びどのような意見や課題が示されたかについてでありますが、平成27年3月に大津市避難行動要支援者避難支援プラン(全体計画)を作成して以降、毎年度会議を開催し、関係所属からハザードマップの更新に伴う個別避難計画の優先作成対象者の増加、避難行動要支援者名簿の地域提供に関する課題等が示されました。

2つ目の避難支援プランの記述が、具体的な手順になっているか及び3つ目の安否情報の取りまとめが、具体的な内容になっているかについてでありますが、本市が作成した大津市避難行動要支援者避難支援プランについては、避難行動要支援者の支援を行うための全体計画であるため、詳細な手順や方法は定めておりませんが、具体的な対応については、地区防災計画に定めることを促すなど、地域との連携による取組を進めてまいります。

以上、私からの答弁といたします。

                                               


管理者答弁

所属名:企業戦略・危機対策室、ガス計画整備課、ガス管理課

2 大津市ガス事業の安全・安定供給と持続可能性について

(1)ガス保安の責任体制と実効性について

①緊急時の保安・修繕業務の委託について、指揮命令系統や事故時の報告ルール、出動基準などの基本事項を、契約上どのように整理しているのか伺います。

②通報からの初動対応や現場での処置を適正に実施しているか、どのように確認しているかお聞かせください。

③市がガス事業の運営を担う新会社等に出資している場合、市は株主と監督者の二つの立場を持つこととなります。そこで、市としてそれぞれの立場をどのように整理されているのかを、外部の専門機関による監視も含めお聞かせください。

(2)技術継承と委託依存リスクの管理について

①現在、本市においてガス主任技術者免状を受けておられる方は何名で、ガス主任技術者として選任されている方は何名なのか伺います。あわせて、委託先の業務の履行が不能となった場合や契約終了時に、代わりの緊急保安体制をどのように確保する想定としているのかお聞かせください。

②委託依存が進む中で、市の側にガス保安に関する知見や判断力をどのように蓄積し、維持していくのか伺います。

③経済産業省が推進するスマート保安について、今後どのように取り組んでいくのか伺います。

(3)老朽化した敷地内埋設管の安全対策について

①本市の供給区域内において、敷地内の白ガス管の腐食に起因するガス漏れは、過去3か年で何件発生しているのか、あわせて、現在残存している白ガス管の件数について伺います。また、今後のガス漏れのリスクをどのように評価しているのかお聞かせください。

②ガスメーター以降の敷地内配管について、法定点検で老朽化が確認された場合、利用者に対してどのような対応を行っているのか伺います。あわせて、点検で不具合が確認されたにもかかわらず、市民の対応が困難なケースを、市としてどのように対応しているのかお聞かせください。

③敷地内配管の改善工事について、敷地が広い場合や舗装撤去を伴う場合の自己負担が重く、またガスメーター以降の敷地内配管は補助対象外となっています。費用負担が困難な高齢世帯や低所得世帯への支援について、市としてどのように考えているのか見解を伺います。

(4)託送料金制度と事業財政の持続可能性について

①令和6年度決算では、託送供給の単価が1立方メートル当たり25.8円、原価が24.5円で、その差は1.3円でした。今後もコスト上昇が続いた場合、原価が供給単価を上回る時、どのように対応するのかお聞かせください。

②人口減少・需要減少が進む中で、長期的なガス需要の見通しを市としてどのように捉えているのか伺います。あわせて、将来的な導管の更新などについて、どのような課題を認識し、今後どのように検討していくのかお聞かせください。

(5)カーボンニュートラル・グリーントランスフォーメーションへの対応について

①本市のガス事業として、2050年カーボンニュートラルに向けた対応方針をどのように定めているのか伺います。あわせて、合成メタンやバイオガスの導入について、今後の方向性をお聞かせください。

                                        

ご質問にお答えいたします。

2項目めの1点目、ガス保安の責任体制と実効性についてのうち、1つ目の、緊急時の保安・修繕業務の委託について、基本事項の契約上の整理についてでありますが、本市の保安規程における保安組織の一部として「企業局保安センター」を位置づけるとともに、当該センター業務をびわ湖ブルーエナジー株式会社に委託し、ガス漏洩等の通報内容の緊急度や事故の規模に応じて報告及び出動することとしています。

2つ目の、通報からの初動対応や現場での処置の実施及び確認についてでありますが、修繕日報及び修繕現場において、通報内容やガス漏れの状況に応じた対応がなされていることを確認しております。

3つ目の、株主としての立場と監督者としての立場の整理についてでありますが、本市は、株主として、株主総会や取締役会等において、びわ湖ブルーエナジー株式会社の経営状況を確認しております。

監督者としては、契約書や要求水準書等に基づき、小売業務や保安、修繕業務等の実施状況について、定期的に業務報告を受け、モニタリングを行っております。

また、外部有識者で構成する検証委員会において、本市のモニタリング結果が、客観性や公平性を確保できているのか、検証及び助言をいただいております。

2点目の技術継承と委託依存リスクの管理についてのうち、1つ目の、本市におけるガス主任技術者の状況についてですが、ガス主任技術者免状の交付を受けている者は4名であり、ガス主任技術者として選任している者は1名であります。

また、委託先の業務の履行が不能となった場合や契約終了時の緊急保安体制の確保についてでありますが、まずは、委託先の業務が適切に履行され、保安体制が維持されるようモニタリングにおいて助言や指導を行っているところであり、契約終了時の緊急保安体制については、今後、委託の継続を含めて、検討していくこととしております。

2つ目の、市側にガス保安に関する知識や判断力をどのように蓄積し維持していくのかについてですが、本市職員が、大量にガスを使用する工場等の専用ガス施設の点検や、市内のガスバルブや整圧器の専門的な操作を実施していること、また、びわ湖ブルーエナジー株式会社に委託している保安業務に関して、修繕工法について協議を行い、モニタリングにおいて日報や出動記録を確認することにより、ガス保安に関する知見の蓄積等に努めております。

3つ目の、経済産業省が推進するスマート保安に関する取組についてでありますが、本市においては、既に、平成17年度にガス整圧器遠隔監視制御システムを、令和6年度に他工事受付システムを導入しております。

また、今年度、緊急保安の現場状況をリアルタイムに映像と音声で把握できる映像通話システムの整備を予定しており、引き続き、技術の進展などの動向を注視してまいります。

3点目の、老朽化した敷地内埋設管の安全対策についてのうち、1つ目の、敷地内の白ガス管の腐食に起因する過去3年のガス漏れ件数と現存する白ガス管の件数についてでありますが、令和5年度が40件、令和6年度が46件、令和7年度が32件で、現存する白ガス管の件数は、令和7年度末で約18,000件であります。

また、今後のリスクをどのように評価しているのかについては、昭和62年以前まで採用されていた白ガス埋設管は、埋設環境と経年劣化により腐食しやすいことから、早期の改善が必要と認識しております。

2つ目のうち、ガスメーター以降の敷地内配管で、法定点検において老朽化が確認された場合の対応についてですが、まずは、4年に一度の法定点検時において、敷地内に白ガス管が埋設されているお客様に対しては、全てパンフレットを配布し、早期にポリエチレン管等へ交換していただくようお願いしておりますが、その中で点検時に老朽化が確認された場合は、危険性を丁寧に説明し、速やかな交換をお願いしております。

次に、2つ目のうち、不具合確認時に市民の対応が困難なケースについて、及び3つ目の費用負担が困難な高齢世帯等への支援につきましては、敷地境界からガスメーターまでは、ガス漏れによる火災等の防止のため補助制度を設け、白ガス管の交換を促進しておりますが、ガスメーター以降の敷地内は、ガスメーターがガスを遮断し、安全を確保できることから、補助対象外としているものです。

費用負担が困難な場合は、まずは、白ガス管交換の必要性を丁寧に説明した上で、指定ガス工事店から安価な工法の提案をされているところであります。

4点目の託送料金制度と事業財政の持続可能性についてのうち、1つ目の、託送供給原価が供給単価を上回る時の対応についてでありますが、まずは、導管更新時における口径のダウンサイジングなど経費削減や、保有資産や資金の有効活用による収益向上などさらなる経営努力を行った上で、なお、持続的な事業運営に影響が生じると判断した際には、託送料金の見直しを検討することもあり得ます。

2つ目の、長期的なガス需要の見通しについてでありますが、人口減少や省エネ機器の普及、ガス機器の性能向上などにより、ガス需要は今後減少すると見込んでおります。将来的な導管の更新などについては、老朽化による更新需要の増加に対応するための人員体制の確保等が課題と考えており、引き続き、効率的な工事発注手法の検討を進めるとともに、口径のダウンサイジングを図りながら耐久性の高いポリエチレン管等への更新を行うなど、適切に課題に対応してまいりたいと考えております。

5点目のカーボンニュートラル・グリーントランスフォーメーションへの対応についてでありますが、「大津市ガス事業中長期経営計画」において、ガスの脱炭素化に向けた動向を注視していくこととしております。合成メタンやバイオガスにつきましては、国において託送料金制度との関係を含めた導入促進策の検討が進められていることから、一般ガス導管事業者として、引き続き国の動向や制度設計の状況について情報収集に努めてまいります。

以上、私からの答弁といたします。

人口減少の日本を支える「技人国」とは

生活 産業 / 2026年6月25日

― 見えにくい“選抜なき定住化”のリスクと、これからの受け入れのあり方

日本では人口減少が加速し、あらゆる産業で人手不足が深刻化しています。 大津市でも、介護・建設・飲食・物流など、地域の暮らしを支える現場で外国人の姿が当たり前になりました。

その中心となっているのが、在留資格「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」です。 実はこの「技人国」、単なる“専門職ビザ”ではなく、日本への定住ルートとして急速に存在感を増していることをご存じでしょうか。

しかし制度の裏側では、本人にも地域社会にも見えにくいリスクが積み重なっています。

技人国とは?

本来は「専門的・技術的な知識を持つ外国人」のための在留資格です。 ITエンジニア、事務職、通訳、営業など幅広い職種が対象で、2025年時点で45万8千人以上がこの資格で働いています。

特徴は次の3つです。

  • 長期滞在が可能(更新回数に上限なし)
  • 家族帯同ができる
  • 永住申請にもつながる

つまり、働きに来た人が、そのまま日本に住み続けることが制度上自然に起こる仕組みです。

しかし今、「静かな歪み」が起きている

東京財団の記事では、技人国が抱える課題として次の点が指摘されています。

① 建前は“専門職”、実態は“人手不足の穴埋め”

専門職として受け入れられているはずが、現場では実質的に一般労働力として扱われるケースが増加。 制度の建前と現場の実態が乖離しています。

② 能力確認が不十分なまま定住へ

技能実習や特定技能と違い、

  • 技能試験
  • 日本語試験

といった明確な基準がありません。 そのため、生活力や日本語力が十分に確認されないまま長期滞在へ進むことが起きています。

③ 仲介が分断され、リスクが本人に集中

来日前後のプロセスには、

  • 日本語学校
  • 送り出し機関
  • 行政書士
  • 派遣会社
  • 受け入れ企業

など多くの主体が関わりますが、誰も全体の責任を負わない構造になっています。 その結果、求人の齟齬、孤立、生活困難などのリスクが移住者本人に転嫁されます。


【参照元】 【特集】世界人口デーに寄せて―人口減少社会における外国人受け入れの条件―在留資格「技人国」が問う「選抜なき定住化」 | 研究プログラム | 東京財団

徹底比較!食料品消費税ゼロが非効率な理由と「今夏8万円給付」のメリット

政治 生活 / 2026年6月20日

検討ばかりで遅すぎる?食料品消費税減税の3つの「非効率性」

政府が検討している「2年間限定の食料品消費税ゼロ」には、主に以下の3つの問題点が指摘されています。


1. 圧倒的なスピード感の欠如
最大の弱点は、実施までに時間がかかりすぎることです。法案提出は早くても秋、実際に減税が始まるのは「来年の今頃」になると予想されています。今すぐ生活費に困っている国民に対して、1年後の対策では遅すぎます

2. 莫大コストと事業者の手間

税率をゼロ(あるいは1%など)にするためには、全国の小売店でのレジシステム改修などが必要となり、数千億円規模の莫大なコストがかかると想定されています。さらに、税率が「0%、8%、10%」と三通りになることで制度が複雑化し、免税事業者である農家の支払い済み消費税を還付する新たな仕組み作りなど、事業者に強いる手間や社会的な無駄が大きすぎます

3. 消費喚起効果への疑問

「2年限定」といった時限的な措置の場合、期間終了後には再び増税されることが見えているため、将来の負担増への懸念から国民が消費を控え(恒常所得仮説)、期待されるほどの経済効果が得られない可能性も専門家から指摘されています

◆実効性とスピードを重視!岡本政調会長が提案する「今夏8万円給付」

こうした消費税減税の非効率性を国会で厳しく追及したのが、中道改革連合の岡本三成議員(政調会長)です
岡本議員は、システム改修や複雑な制度設計に時間をかけるくらいなら、よりシンプルで確実な支援を行うべきだとし、「2年間で10兆円かかるんだったら、国民の皆さん全員にこの夏8万円ずつ配れます」と提案しました
この「8万円給付」には、消費税減税にはない以下のメリットがあります。
  • 圧倒的な即効性:

    来年を待つことなく、今年の夏に現金を届けることで、今まさに苦しんでいる家計を直接支援できます
    第一生命経済研究所のレポートでも、迅速な還元を優先するのであれば給付金の方が有効であると述べられています

  • 無駄なシステム改修コストの削減:

    全員への現金給付であれば、莫大な費用をかけてレジを改修したり、外食との税率ギャップに悩まされたり、農家への還付システムを新設したりする無駄を省くことができます
    複雑な制度設計や事業者への負担を強いることなく、シンプルに支援を届けられます


◆今すぐ国民を助ける政策を!

何年も給料が上がらない中で物価だけが上がり続ける今の日本において、国民が求めているのは「検討」ではなく「実行」です何千億円ものシステム改修費をかけて来年から消費税をゼロにするのか、それともその財源を直接国民に「8万円」として配り、今すぐの生活を助けるのか。費用対効果やスピード感を考えれば、岡本議員が提案する給付金の方が、はるかに理にかなった物価高対策と言えるのではないでしょうか。


ゴミ入れBOXの修理をしました

ボランティア 地域活動 環境 生活 / 2026年6月10日

長年使ったゴミ入れBOXの不具合がしばしば起こります。

今回の不具合は、バンパーを付けて(これも修理してくれた)開け閉めが良くなったのですが

今度はその支持するところが外れて、閉めきらなくなってしまいました。

初めは、多少空いていても大丈夫かと思っていたのですが

最近、ゴミを持っていくと、BOXの前にゴミが散らかっているのを見かけるようになりました。

その時は原因が分からなかったのですが

なんと、カラスが潜り込んで引き出しているところを家内が見たというのです。

それも、うちの捨てたゴミも引き出されて、みるとうちのゴミであることが分かったのです。

これは一大事。

なんとかしなければとBOXの不具合をみると、なんとか修理できそうな方法がひらめいた。

鉄板開けの3.2mmのドリルは以前購入したのがある。

さっそく、プレートと鉄板用の4mmのビスを購入。

上手く合うかなと、心配はしたが、穴も空き、ビスも丁度良い太さだ。

これで、プレートを取り付けたら、バッチリ上手くいきました。

 

消費税を下げても、実際の物価はあまり下がらない可能性大

生活 / 2026年6月9日

政府が検討する「食料品の消費税を8%→1%へ引き下げる案」。 理論上は 食料品価格が7%下がる はずですが、実際には そこまで下がらない可能性が高い と指摘されています。

理由は明確で、2027年4月に多くの事業者が値上げを予定しているためです。

減税で一時的に価格が下がるタイミングは、事業者にとって「値上げしても買い控えが起きにくい」絶好の機会になります。 そのため、減税と同時に値上げが重なり、値下がり幅が小さくなるという逆転現象が起きかねません。

■ 減税の効果は「約1年3か月」で消えてしまう

食料品の値上げペースは、2022〜2026年の平均で 年5.8%。 このペースが続くと、減税による7%の値下げ効果は 約1年3か月で相殺されます。

つまり、 4.3兆円の財源を使っても、効果は1年ちょっとで消える ということになります。

■ 減税の裏で発生する“見えないコスト”

減税は「税収が減る」だけではありません。

  • 社会保障財源の減少
  • 地方税収の減少
  • 政府全体で▲4.3兆円の減収
  • レジ改修・システム対応など事業者側の負担
  • → 結局、事業者支援のための追加予算が必要になる

つまり、減税は「財源が減る」だけでなく、 追加の支出も必要になる“コストの大きい政策” です。

■ そして2年後、税率を戻すときにはさらに大きな混乱が

仮に2027年に1%へ引き下げたとして、 その後も物価上昇が続けば、再び8%へ戻すときに大きな混乱が起きます。

  • 価格表示の再変更
  • レジ・システムの再改修
  • 事業者の負担増
  • 消費者の混乱
  • 物価が高止まりする中での“増税ショック”

減税→再増税の往復は、 事業者にも消費者にも大きな負担を残すことになります。

■ 本当に必要なのは「物価の根本原因」への対策

DLRIの分析でも指摘されているように、 食料品の物価高の主因は 海外インフレと円安 です。

  • 輸入原材料の高騰
  • 海外の人件費上昇
  • 日本の食料自給率は38%(62%を輸入に依存)

つまり、 円安が続く限り、食料品の値上げは止まらない のが現実です。

必要なのは、

  • 円高を促す経済政策
  • 持続的な賃上げ
  • 物流・エネルギーコストの抑制
  • 国内生産力の強化

といった 根本的な物価対策 です。



参考資料:消費税減税だけでは 食料品値下がり幅は▲7%より小さい可能性~2027年4月に値上げ品目が増えそうだ~

地域のつながりが「寿命」に影響する?

介護 地域活動 生活 福祉 高齢者 / 2026年6月2日

高齢化が進む日本では、「どうすれば健康に長生きできるのか」が大きなテーマになっています。
食事や運動はもちろん大切ですが、最近の研究では “地域のつながり” が寿命に関係している ことが分かってきました。

東京都足立区で行われた大規模調査(75,000人以上が参加)では、 地域の信頼や一体感が強いほど、特に男性の死亡リスクが下がる という興味深い結果が出ています。



🔍 ソーシャル・キャピタルって何?

ソーシャル・キャピタルとは、 「人と人とのつながりが生み出す力(社会的な資源)」 のこと。

この研究では、特に次の2つを測定しました。

  • 近隣凝集性(Cohesion) 近所への信頼、地域への愛着、地域の一員だという感覚
  • 近隣ネットワーク(Network) 近所の人との交流の頻度(挨拶・立ち話・相談など)

📊 7万人を5年間追跡した結果は?

🔵 男性:地域の信頼が高いほど長生き

地域の「近隣凝集性」が高いほど、男性の死亡リスクは明確に低下しました。

特に 65〜74歳の男性では、死亡リスクが17〜18%低下

地域に信頼や一体感があると、安心感やストレス軽減につながり、健康行動も続けやすいと考えられます。

🔴 女性:大きな差は見られず

女性はもともと個人のつながりが豊かで、地域差の影響が出にくいと考えられています。

🧠 なぜ「地域のつながり」が寿命に関係するのか?

研究者たちは、次のような効果を指摘しています。

  • 安心して暮らせる → ストレスが減る
  • 困ったときに助け合える → 孤立を防ぐ
  • 外出や交流が増える → 健康行動が続く
  • 地域に居場所がある → 心の健康が保たれる

特に男性は退職後に人間関係が減りやすいため、 地域環境そのものが健康を支える“土台”になる のです。

🏡 地域づくりが「健康づくり」になる時代

この研究が示すのは、 「個人の努力だけでは健康は守れない」 ということ。

地域の信頼やつながりを育てることが、 これからの健康政策やまちづくりの重要なポイントになります。

例えばこんな取り組みが効果的

  • ちょっとした挨拶や声かけ
  • 多世代が集まれる場づくり
  • 見守り活動やサロン
  • 地域イベントや交流会
  • 公園・商店街など“出会いの場”の活性化

参考:

「長寿のカギ」は、信頼し合える地域にあり!大規模データから地域のソーシャル・キャピタルが高い地域に住む男性で死亡リスクが低いことを確認

2045年の郊外住宅地はどうなる?「右肩上がり」からの脱却と次世代向け循環型モデル

まちづくり 子育て 家族 生活 高齢者 / 2026年6月1日

日本の高度経済成長期、人々の憧れであり暮らしの拠点として次々と開発された郊外住宅地(ニュータウン)。
しかし、誕生から約50年が経過した現在、深刻な構造疲労と社会情勢とのミスマッチに直面しています

こうした問題について、住宅生産団体連合会がまとめた『郊外住宅地の再生に向けた考察2045』の内容をもとに、2045年に向けた課題と、次世代(Z世代)を見据えた新たな居住モデルについて解説します

1. 迫り来る「プライマリー空き家」の危機とトリアージ

現在の郊外住宅地は、人口や世帯数の減少、高齢化によるコミュニティの活力低下といった存亡に関わる課題を抱えています。 とりわけ危惧されているのが「プライマリー空き家」の問題です

  • 子育てを終え夫婦のみとなった世帯において、やがて介護施設への入所などにより、相続発生前であっても実質的な空き家状態が生じます

  • これが放置されると、建物の劣化進行や犯罪リスクの上昇を招き、住宅地全体の価値を毀損してしまいます

すべての郊外住宅地をそのまま存続させることは難しく、1981年の新耐震基準などを指標とした客観的な「トリアージ(優先順位付けと診断)」が不可欠となっています

2. 価値観が変わる「Z世代」に選ばれる住宅地とは?

2045年に社会の主役となるのは現在のZ世代です。彼らは、かつての団塊世代のように同一の価値観で動くマス・マーケットではありません

  • 世帯所得の格差拡大や、単身・夫婦のみといった家族形態の多様化が進むと想定されます

  • 自然に親しみ自分の時間を大切にする彼らは、客観的かつ合理的に居住地を選択します

  • 郊外住宅地においては、取得可能な価格帯(300〜500万円の世帯年収層向け)の中古住宅の流通や、低所得層向けシェアハウスなど、所得と価値観に合わせた多様な受け皿と行政の支援策が求められます

3. 持続可能な「循環型居住モデル(IH2.5)」

従来のように、子育て住宅を「在宅介護仕様」にリフォームしてしまうと、次の世代が住み継ぐ際の魅力を損ない、再市場化が困難になってしまいます

そこで提唱されているのが、地域内(徒歩圏のネイバーフット)でライフステージに合わせて住み替える「循環型居住モデル」です

  • 子供が独立したシニア世代はエリア内のコンパクトな住宅へ転居し、元の子育て住宅は次のファミリー世代へ引き継ぎます

  • これにより、地域コミュニティや相互見守りの関係性を維持しながら、住宅資産を循環させることができます

  • また、単身からファミリー、シニアまで多様なニーズに壁の配置等で可変的に対応できる平屋ベースの「インクルーシブ・ハウジング2.5(IH2.5)」という新たな住宅スペックも提案されています

4. 現実と向き合い、豊かな環境を再構築する

人口・経済が縮小するフェーズに入った日本において、右肩上がりの成長幻想を捨て、適正な密度へと都市環境を再構築する時期が来ています。空地を里山に還すプロジェクトなど、かつての自然破壊を修復し、豊かな住環境を取り戻す取り組みも構想されています

最も重要なのは、住民同士が客観的なデータ(真実)を共有し、自分事としてまちの将来を議論・行動していく「当事者意識」です


賃貸で暮らす人へ。知っておくと安心の“住まいの権利”

情報 生活 / 2026年5月25日

オーナーが変わっても、借りている人は守られます

賃貸住宅に住んでいると、まれに「建物の所有者が変わりました」という通知が届くことがあります。
そんなとき、 「急に退去を求められるのでは?」 と不安になる方も多いのではないでしょうか。
現在の法律では、賃借人(借りて住んでいる人)の権利はとても強く守られていますので、もしもの時のために知っておくと助かります。

どうして賃借人の権利が強くなったの? ― 歴史的な背景

明治時代、賃借権を守るためには「登記」が必要でした。 しかし実際には、

  • 土地所有者が協力してくれない
  • 費用が高い
  • 手続きが難しい

といった理由で、ほとんど登記されませんでした。

その結果、土地が売買されるたびに住民が立ち退きを迫られるという問題が全国で発生しました。 建物が次々と壊され、まるで地震の後のようだったため、 「地震売買」 と呼ばれ、社会問題になりました。

この反省から、賃借人を守るための法律が整備されていきました。

⚖️ 現在のルール:住んでいれば賃借権を主張できる

現在は「借地借家法」や「民法」により、次のように保護されています。

  • 登記がなくても、建物を引き渡され住んでいれば賃借権を主張できる
  • オーナーが変わっても、賃貸借契約は自動的に新オーナーへ引き継がれる
  • 賃借人の承諾は不要
  • 契約条件(家賃・期間など)はそのまま

つまり、 オーナー変更=退去ではありません。

市民の皆さんが知っておくと安心なこと

  • オーナー変更の通知が来ても、退去を求められることは基本的にない
  • 契約内容はそのまま引き継がれる
  • 不安なときは、自治会・市役所・法律相談などに気軽に相談できる

賃貸で暮らす方が安心して生活できるよう、法律はしっかり整備されています。

✏️ まとめ

  • 昔は「地震売買」という深刻な問題があった
  • その反省から、賃借人保護の法律が整備された
  • 今はオーナーが変わっても、賃借人は強く守られる

住まいは生活の基盤です。 知っておくだけで、いざというときの安心につながります。


中東情勢が直撃・建設資材の高騰不足で何が起きているか【第二弾】~設備工事費の急騰と発注者・施主への緊急のお願い~

建設 生活 経済 / 2026年5月19日

前回の記事では、中東情勢を背景とした建設資材の高騰と不足の現状についてお伝えしました。多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。
今回は「第二弾」として、特に深刻化している設備工事費の急騰と、民間事業者・施主の皆さまへの具体的なお願いについてお伝えします。


■ まず確認——建設コストは今どこまで上がっているのか

日本建設業連合会(日建連)が2026年5月に発表した最新資料(「建設資材高騰・労務費の上昇等の現状〔四半期版〕2026年春版」)によると、建設資材物価は2021年3月と比較してこの5年間で37%上昇しています(一般財団法人建設物価調査会の推計)。

直近の2年間に絞ってみても、2024年3月比で7%上昇(建設総合平均)しており、特に土木部門では10%上昇と、上昇が止まらない状況が続いています。

主な品目の上昇率(直近2年間:2024年5月号→2026年5月号、東京)は以下のとおりです。

品目 上昇率(2年比較)
600Vビニル絶縁電線 IV 1.6mm単線 55%上昇
アルミ地金 43%上昇
ストレートアスファルト 29%上昇
生コンクリート 20%上昇

出典:一般財団法人建設物価調査会「建設物価」2024年5月号・2026年5月号掲載価格(東京)の比較


■ 労務費(職人さんの賃金)も急上昇

「公共工事設計労務単価(全国・単純平均)」は、この2年間で9.5%引き上げられ、全国全職種加重平均値が25,834円となり、初めて25,000円を超えました(2026年2月27日・国土交通省発表)。

また、国土交通大臣と日建連を含む建設関係4団体は、2026年の技能労働者の賃上げ目標を**「おおむね6%」**と申し合わせており、現場の人件費はさらに上昇する見込みです(国土交通省不動産・建設経済局建設業課長通知、2026年3月25日)。

材料費割合を50〜60%、労務費率を30%と仮定した場合、この2年間の資材高騰・労務費上昇の影響で、全建設コストは平均4.4〜5.1%上昇しています(土木部門5.8〜6.8%上昇、建築部門3.7〜4.3%上昇)。


■ 特に深刻——設備工事費の「別次元」の高騰

ここからが今回の本題です。設備工事(電気・空調・衛生・昇降機など)の費用上昇は、建設資材の平均的な指数をはるかに超えています。

日建連が大手建設会社12社を対象に調査した結果(2020年12月→2026年3月比較)では、特注品等の設備機器の価格上昇率は以下のとおりです(出典:「設備工事費上昇等の現状について 2026年春版」日建連発行)。

設備の種類 上昇率(約5年間) 物価調査会の汎用品指数との比較
空調機類(特注品) 111%上昇 物価調査会:約23%上昇
自動制御 126%上昇 物価調査会:約57.8%上昇
変電設備 71%上昇 物価調査会:数値なし
自家発電装置 94%上昇 物価調査会:数値なし
エレベーター(特注品) 98%上昇 物価調査会:数値なし
ダクト類 74%上昇 物価調査会:約23.8%上昇

※数値は大手建設会社12社(一部11社)の調査価格を平均したもの。個々の機器の値上がり状況を示すものではありません。

なぜこんなに高いのか? 主な理由は以下のとおりです。

  • 大規模建築物では特注品が多く、汎用品ベースの物価調査会指数に反映されない
  • 全国で工場・データセンター・大型再開発が同時進行し、設備工事の需給が極めてタイトになっている
  • **時間外労働の上限規制(2024年度適用)**により、追加経費が発生している
  • 遠方からの技能労働者の宿泊費・交通費など、現場経費も上昇している

■ 中東情勢が追い打ちをかけている

2026年4月24日時点(日建連会員ヒアリング)によると、中東情勢の影響により、建設資材・設備を問わず広範な品目で納期遅延・価格改定・受注停止が発生しています(出典:「中東情勢による建設資材の調達への影響について」日建連発行)。

特に深刻なのが、石油系素材を使った製品への影響です。防水材(アスファルト防水・ウレタン防水)、シーリング材、塗料・シンナー類、樹脂配管・樹脂バルブ、断熱材(スタイロフォーム等)など、内装・仕上・設備の幅広い分野で「価格改定・納期遅延・受注制約」が同時に発生しています。


■ エレベーターは「今すぐ発注しても2027年度以降」

昇降機(エレベーター)の需給ひっ迫は特に顕著です。同資料によると、首都圏の場合の対応可能時期は次のとおりです。

  • 15人乗りを超えるエレベーター(特注品):原則として2027年度以降着工(メーカーによっては2033年度以降)
  • 超高層建物用エレベーター(特注品):原則として2029年度以降着工(メーカーによっては2033年度以降)

今からご計画の建物に大型エレベーターが必要な場合、工期全体への影響を含めた早急な相談が不可欠です。


■ 発注者・施主の皆さまへ——今すぐ必要な対応

日建連は、民間事業者・施主の皆さまに対して、以下の点について理解と協力を求めています。

1. 設備工事費の適正な価格での発注を

上述のとおり、設備工事費は物価調査会の平均指数を大幅に上回っています。各建設会社から個別説明を受けた上で、実態に即した価格での発注をお願いします。

2. 早めの相談・発注を

設備協力会社はすでに多くの工事を抱えており、すぐに着工できる状態ではありません。少しでも早い段階での相談が、コスト増を抑え、適切な工期確保につながります。

3. 適正な工期の確保を

設備協力会社においても、建設業の時間外労働上限規制に対応した「4週8閉所(週休2日)」の取り組みが進んでいます。工期が短すぎる案件は受注を回避される傾向があります。余裕のある工期設定をお願いします。

4. 設計変更・着工時期変更はできるだけ避けて

設計段階での仕様変更、着工後の設計変更、着工時期の変更は、工期遵守の上で大きな負担・コスト増につながります。できる限り早期に仕様を確定させてください。


■ 国への対応策も求められている

こうした事態は、個々の発注者・施主と建設会社だけの問題ではありません。建設資材の安定供給確保、労務費の適正反映、工期・工費の適正化に向けた国レベルの政策対応も引き続き求められています。

現在、国土交通省においても建設資材の安定供給確保に向けた取り組みが進められていますが、中東情勢や円安、世界的な資源価格の高騰が続く中、さらなる対策の強化が必要です。


■ まとめ

項目 現状
建設資材物価(5年間) 37%上昇(建設総合平均)
建設資材物価(2年間) 7%上昇(建設総合平均)
公共工事設計労務単価(2年間) 9.5%引き上げ
全建設コスト(2年間) 4.4〜5.1%上昇(平均)
設備工事費(特注品・約5年間) 71〜126%上昇(品目による)
エレベーター着工可能時期(首都圏) 2027年度以降〜2033年度以降

建設工事を計画している事業者・施主の皆さまには、最新の建設コストの実態をご理解いただいた上で、早期相談・適正価格・適正工期での発注計画を立てていただくことが、今もっとも重要な対応策です。



【参考資料・出典】


この記事は上記資料をもとに作成しています。個別案件の工事費・工期については、必ず担当建設会社にご確認ください。

中東情勢が直撃!建設資材の高騰・不足で何が起きているか

生活 産業 / 2026年5月8日

⚠ 緊急レポート

中東情勢が建設資材を直撃!ー資材の高騰・不足で住宅等の建設に大きな影響

【参照資料・出典】
① 一般社団法人 全国建設業協会「中東情勢に伴う建設資材の需給に関する緊急要望」(令和8年4月30日)
② 同協会「全建緊急アンケート ─ 中東情勢に伴う建設資材の需給に関する緊急調査結果」(令和8年4月、回答15社)
いずれも 一般社団法人 全国建設業協会(全建) 公式ウェブサイト掲載資料

ホルムズ海峡の実質的な封鎖に伴う原油供給不安が、建設業界に深刻な影響を与えています。燃料費の上昇にとどまらず、製造過程で燃料・電力・石油化学原料(ナフサ)を使用するほぼ全ての建設資材に価格高騰と供給不足が波及しています。

全国建設業協会(全建)が令和8年4月に実施した緊急アンケート(土木・建築専門委員会委員企業18社対象、回答15社)の結果と、同協会が政府に提出した緊急要望書をもとに、現状と対応策を整理します。

同協会のアンケート調査結果でも明らかなように、資材の高騰・供給不足により工事の遅れが常態化しており、資金繰りの悪化から倒産の危機に直面している事業者も出始めています。また、個人の住宅についても、建築途中で資材が入荷できず工事が止まってしまうケースや、資器材がいつ届くか見通しすら立たない状態が続いているとの報道もされています。こうした事態は、住宅の建築を依頼した個人(建築主)にとっても、引渡し遅延・追加費用・ローン計画の狂いなど、深刻な問題に直結することは間違いありません。

1 何が起きているか ── アンケートで明らかになった実態

調査対象資材
71種
主要建設資材を網羅的に調査
回答企業数
15社
全国の土木・建築専門委員企業
調査実施時期
R8.4
令和8年4月(緊急実施)

① 価格高騰の状況

アンケートによると、特に深刻な価格上昇が確認された資材とその上昇幅は以下の通りです(会員企業の報告に基づく)。

シンナー・塗料・仕上げ材70〜80%上昇
断熱材・防水材30〜50%上昇
EPS(発泡スチロール系)40%以上上昇
ゴム・シート類30%以上上昇
塩ビ管・配管材20〜30%上昇
AS合材(アスファルト)18〜30%上昇
鋼材15〜20%以上上昇
ダンプ輸送単価(10t)57,000→70,000円

※ 上記数値は全建緊急アンケート調査(令和8年4月)の会員企業回答をもとにしています。

② 入荷遅延・供給不足の状況

⚠ 深刻な供給停滞が発生中
  • シンナー・塗料等:通常数日で入手できたものが入荷未定・長期化
  • 電線・設備機器:納期未定・数か月単位の遅延
  • 住宅設備機器(ユニットバス・トイレ等):2〜3か月以上の遅延や受注停止
  • 海外輸入資材(タイル等):中東情勢による航路変更で約1.5か月追加遅延
  • 断熱材・樹脂製品:出荷制限により納期不透明
  • AS防水材・AS合材:販売停止・受注停止・予約制へ移行

アンケートでは「納期未定の資材が増加し、工程計画の見通しが立たない」「入荷遅延は解消せず、構造的に長期化する見込み」という見解が示されており、一時的な混乱ではなく、継続的・構造的な問題として捉える必要があります。


2 全国建設業協会の緊急要望(令和8年4月30日)

全建は令和8年4月30日付で政府に対して緊急要望書を提出しています。要望の核心は以下の4点です。

緊急要望 4項目(全文要旨)

1 石油製品の供給目詰まり解消(経産省への働きかけ)
塗料・住宅設備・仕上げ材・塩ビ管・接着剤・シーリング材等の供給を改善し、円滑な工事実施を確保すること。
2 価格転嫁の適切な実施
公共工事では実勢価格調査の頻度引上げと単品スライドの適時実施。民間工事では「おそれ情報」に基づく価格転嫁の実施。またスライド条項の手続簡素化・閾値(1%要件)の撤廃または引下げによる受注者負担軽減。
3 工事一時中止・工期延長・代替資材変更の柔軟な実施
資材が供給されない場合、速やかに工事の一時中止・工期延長・代替資材への変更を実施し、それに係る費用を設計変更で見込むこと。
4 資金繰り悪化防止のための部分払い実施
工期延長による支払遅延を避けるため、受注者の求めに応じた部分払いを適宜実施し、キャッシュフロー改善に努めること。

※ 上記は「中東情勢に伴う建設資材の需給に関する緊急要望」(全建、令和8年4月30日)の要旨です。


3 建設事業者が直面する問題と対応のポイント

アンケートでは会員企業から「資材高騰により資金繰りの悪化・利益確保が困難」「小規模事業者を中心に倒産リスクが顕在化」という深刻な声も寄せられています。

建設事業者への対応チェックポイント
スライド条項の活用・申請
公共工事では単品スライド条項・インフレスライド条項を積極的に活用する。手続きが複雑であっても放置すると損失が確定するため、早期に発注者と協議を開始することが重要です(全建は閾値1%要件の撤廃・引下げを要望中)。
工事一時中止・工期延長の協議
資材が入手不能な状況で工事を強行すれば追加コストと品質リスクを招きます。発注者に対して、正式な工事一時中止または工期延長の申請を書面で行い、記録を残しておくことが重要です。
代替資材の検討と設計変更申請
当初の設計仕様の資材が入手できない場合、代替資材の使用について発注者・設計者と協議し、設計変更手続きを進める。記録・証拠の保全が後のクレーム対策にもなります。
部分払い・前払い金の活用
工期が延長される場合、資金繰り悪化を防ぐために部分払いや前払い金の増額を発注者に申請する。要望書でも明記されている正当な手続きです。
見積有効期限の短縮・価格変動条件の明記
新規見積・契約においては有効期限を短く設定し、資材価格変動を理由とした価格変更条項を明記する対応が広がっています。
民間工事での価格転嫁交渉
民間工事では価格転嫁が進みにくい実態がありますが、全建の「おそれ情報通知書」制度を活用して状況を書面で発注者に通知し、適切な協議の場を設けることが求められます。

4 住宅を建築中・計画中の個人(建築主)への影響と対応

業者側だけの問題ではありません。現在、個人の住宅建築においても、工事が途中で止まったり、資器材の入荷見通しが立たないケースが報告されています。建築主として、以下の点を確認・対応することが重要です。

⚠ 建築主(個人)が直面しやすい問題
  • 住宅設備機器(ユニットバス・トイレ等)の納期が2〜3か月以上遅延し、引渡しが大幅に後ろ倒し
  • 断熱材・塗料・シーリング材などの入荷が見通し不明のまま工事が止まる
  • 資材価格の高騰により、請負金額の追加変更を求められる可能性
  • 引渡し遅延により、仮住まいコストや住宅ローン実行スケジュールが狂う
  • 施工業者が資金繰り悪化で工事継続困難に陥るリスク
建築主(個人)の対応チェックポイント
工事請負契約書の内容を確認する
「工期延長」「価格変更」に関する条項を確認してください。特に、資材高騰・供給遅延を理由とした工期変更・費用増額が認められる条項があるか確認し、不明な点は施工会社に書面で問い合わせましょう。
引渡し時期の遅延リスクを早めに想定する
アンケートが示すように設備機器を中心に2〜3か月の遅延は珍しくない状況です。賃貸契約の退去スケジュールや住宅ローン実行時期について、余裕を持った計画への見直しを検討してください。
施工会社から資材調達状況の報告を定期的に受ける
現在の工事の進捗と資材の調達状況について、月に一度程度の書面または口頭での報告を施工会社に求めましょう。問題が発生した場合の連絡体制を事前に確認しておくことも重要です。
追加費用を請求された場合は根拠を確認する
資材高騰を理由とした追加費用を請求された場合、具体的にどの資材がどの程度値上がりしたかの根拠資料の提示を求めることは正当な権利です。全建のアンケート結果等を参考に、価格上昇の実態と照らし合わせて確認してください。
住宅ローンの実行スケジュールを金融機関に早めに相談
工期延長が見込まれる場合、住宅ローンの実行(融資実行)時期についても金融機関に早めに相談し、柔軟な対応が可能かどうか確認しておきましょう。

5 状況の見通し ── これは一時的ではない

全建のアンケートは「価格高騰は一時的ではなく、構造的・継続的に続く見込み」「入荷遅延は解消せず、構造的に長期化する見込み」と結論づけています。

ホルムズ海峡問題が短期間で解決する見通しが立たない中、燃料費・物流費の上昇、石油化学系資材の供給制約は当面継続すると考えるべきです。行政・発注機関においては、全建の要望書が示す4点(供給改善への働きかけ、価格転嫁、工期延長・工事中止の柔軟対応、部分払いの実施)を迅速に検討・実施することが求められています。

事業者・建築主ともに「待っていれば解決する」という前提ではなく、今の状況を前提にした契約・スケジュール管理が必要な局面です。