民生委員の担い手不足が全国的な課題となる中、厚生労働省の補助を受けた一般財団法人日本総合研究所が令和8年3月に公表した「持続可能な民生委員制度の構築に向けた調査研究事業報告書」を読み、私も民生委員推薦会のメンバーであったことから、本市の状況はどうなのかと気になり、担当課に確認しました。
今年度の本市の状況は、664人の定数のところ、5月1日現在で645人、19人の欠員が生じています。滋賀県の充足率は91.6%となっています。
また、民生委員推薦会では、退職者友の会・ケアマネージャー・介護事業所・学校(校長)など、従来の自治会・町内会ルート以外にも幅広く候補者の発掘に取り組んでいただいていると担当課から伺いました。関係者の皆様のご尽力に、あらためて感謝申し上げます。

民生委員とはどのような存在か
民生委員は、民生委員法に基づいて厚生労働大臣から委嘱される特別職の非常勤地方公務員です。報酬はなく、年10数万円の活動費が支給されるボランティアとして、高齢者・障害者・子育て家庭などの相談に応じ、行政や専門機関へつなぐ「地域のパイプ役」を務めます。全ての民生委員は児童委員も兼務しており、妊娠中の不安や子育ての悩みにも対応します(出典:厚生労働省ウェブサイト)。
年間の総活動件数は約3,385万件にのぼり、うち相談支援活動は717万件超。1人あたり月平均11日活動し、訪問・連絡調整だけで月約20件をこなしています(出典:厚生労働省「民生委員・児童委員の活動内容」)。
全国で深刻化する「担い手不足」
厚生労働省が2026年2月に公表した令和7年度一斉改選の結果によれば、全国の定数24万971人に対して委嘱者は22万880人にとどまり、欠員数は2万91人と初めて2万人を超えました。充足率は91.7%で、前回2022年度改選時から約2ポイント低下しています。 Nippon.com
民生委員の定数はこの20年で約8,000人増加していますが、これは高齢者の増加に伴う見守り・相談ニーズの拡大が背景にあります。一方で委嘱者数はほぼ横ばいで推移しており、充足率は2007年の97.9%から一貫して低下し続けています。 Nippon.com
なぜなり手が集まらないのか ― 3つの構造的課題
① 活動範囲の拡大による負担増
民生委員の職務は制度発足当初の生活保護世帯への相談・支援から、在宅高齢者の生活支援・児童の健全育成・子育て支援・障害者の自立生活支援など幅広い分野へと拡大しています。活動範囲が広がるほど負担感が増大し、私生活とのバランスが保てなくなるため、1期3年で退任する例も増えています。 Ncs-gakkai
② 高齢化と候補者層の変化
厚労省によると、2022年時点の民生委員の年齢構成は70代以上が37%、60代が46%で、60歳未満の委員は全体の約2割にすぎません。企業の定年延長により、かつて退職後に担い手となっていた60代前半が在職中であるケースが増えており、従来の推薦候補者層が縮小しています。 Nippon.com
③ 地域コミュニティの希薄化
厚生労働省の令和5年度委託調査研究では、地域住民とのつながりが希薄化したことで担い手候補者にアプローチすることが難しくなっており、町会など既存の推薦候補者の輩出母体に固執するために地域活動の縮小とともに候補者が見つけにくくなっているという課題が指摘されています。 Ministry of Health, Labour and Welfare
求められる対応策
① 推薦ルートの多元化
本市で既に取り組まれているように、退職者友の会・ケアマネージャー・介護事業所・学校(校長)など、多様なネットワークを通じて候補者を探すことが有効です。同調査研究では、充実した民生委員が多い地域では肯定的な口コミが広がり、自発的に推薦したい人を探し出す動きにつながっていることも報告されています。「やりがい」の見える化と積極的なPRが重要です。 Ministry of Health, Labour and Welfare
② 活動負担の軽減
厚生労働省の検討会(2024年6月始動)では、民生委員の在り方そのものも含めた制度改革の議論が進められており、制度の持続可能性を高めるための改革が求められています。活動のデジタル化(報告書類のオンライン化等)や、行政・社会福祉協議会との役割分担の見直しも重要な論点です。 Tokyo Nikkei
③ 選任要件の柔軟化
厚生労働省は「民生委員・児童委員の選任要件に関する検討会」を設置し、要件の見直しについて検討を進めています。働く世代が担えるよう、活動時間帯の工夫や複数人での担当区域のカバーなど、弾力的な運用を可能にする仕組みが求められます。
おわりに
一人暮らしの高齢者が増加し、国が在宅医療・介護を推進する方向にある中、民生委員の存在意義はむしろ高まっています。しかしその基盤はじりじりと弱まっており、欠員が増え続けると行政の福祉サービスが行き届かず、感染症流行時や災害時の支援体制も脆弱になる恐れがあります。 Nikkei
本市の充足率は全国・県平均を上回っているとはいえ、19人の欠員という現実は重く受け止めなければなりません。民生委員の方々が安心して活動を続けられる環境整備と、地域全体でこの制度を支えていく意識の醸成が急務です。引き続き議会でも取り上げてまいります。
【主な参考資料】
- 厚生労働省「令和7年度民生委員・児童委員の一斉改選結果」(2026年2月公表)
- nippon.com「民生委員:25年度の一斉改選で初の欠員2万人超え 充足率91.7%」(2026年2月5日)
- 厚生労働省「民生委員・児童委員の活動内容について」(厚労省ウェブサイト)
- 厚生労働省委託「令和5年度民生委員・児童委員の担い手確保の推進に関する調査研究報告書」(2024年3月)
- 参議院常任委員会調査室「民生委員制度の現状及び今後の課題」(立法と調査 2019年11月 No.417)