大津市議会議員 佐藤弘

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個人情報保護法が大きく変わります ——「緩める改正」と「締める改正」

情報 政治 生活 行政 / 2026年9月8日

2026年(令和8年)7月10日、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、7月17日に公布されました。施行は原則として公布から2年以内(令和10年〔2028年〕7月まで)です。

今回の改正の特徴は、同意を求める場面を減らす「緩和」と、リスクの高い取扱いを締める「強化」を同時に進めた点にあります。市政の現場でも、子どもに関する事務、業務委託・指定管理、事故対応、マイナンバー事務に影響が及びます。


 


■ なぜ改正されたのか

個人情報保護法には「3年ごと見直し」の仕組みがあり(令和2年改正法附則第10条)、令和5年11月から検討が始まりました。令和8年1月9日に「制度改正方針」が公表され、4月7日に閣議決定・国会提出、7月10日成立という流れです。

改正の趣旨について、個人情報保護委員会事務局の資料はこう述べています。

デジタル技術の急速な進展に伴い、個人情報を含むデータの利活用に対する需要が高まっている一方で、個人情報の違法な取扱いにより個人の権利利益が侵害されるリスクも高まっている。

「使いたい」需要と「守らなければならない」リスクが同時に大きくなったため、片方だけでなく両方を動かす改正になったわけです。骨太方針2025や人工知能基本計画(令和7年12月23日閣議決定)も、AI開発の円滑化に資する本人同意の在り方の検討を求めていました。

出典:個人情報保護委員会事務局「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」(令和8年7月)

■ 大津市で必要となる対応

※以下は公式資料を踏まえた筆者の分析です。

大津市は令和3年改正を受けて旧条例を廃止し、「大津市個人情報保護法施行条例」(令和4年条例第43号、令和5年4月施行)と施行細則・各機関規程を整備しています。今回は法律本体の改正なので条例改正が直ちに必要とは限りませんが、法の条番号を引用する細則・規程・要綱・様式は広く影響を受けます。

(1)16歳未満の子どもに関する事務 —— 影響が最も大きい

第71条の3の読替により、利用目的の明示(62条)、漏えい等の本人通知(68条2項)、目的外利用・提供の同意(69条2項1号)の相手方が「本人」から**「本人の法定代理人」**になります。学校・教育委員会、保育、放課後児童クラブ、母子保健、子ども家庭相談、就学援助など対象は広く、同意書様式と窓口フローの点検が必要です。加えて第125条の2で「最善の利益を優先して考慮する」責務が課されます。

一方で、いじめ・虐待・ヤングケアラー相談など子ども本人が保護者に知られたくない場面をどう整理するかは、今後の委員会規則・ガイドラインを注視すべき論点です。

(2)業務委託・指定管理 —— 契約書の全面点検が必要

第30条の3により、市が委託した民間事業者に「委託業務の範囲を超えて取り扱ってはならない」義務が直接課されます(再委託も対象)。さらに第58条の2は、契約書にどこまで書くかによって受託者に適用される法律上の義務が変わるという新しい仕組みです。窓口業務委託、システム運用保守、健診、コールセンター、指定管理などの契約書・仕様書の「個人情報取扱特記事項」を見直す必要があります。

(3)事故対応・統計データ活用

第68条2項の改正で本人通知を代替措置に代えられる一方、「どの事案なら代替措置で足りるか」の庁内判断基準が要ります。また第69条2項4号の「統計の作成」が「統計作成等」に拡大し、EBPMや健康・防災データの活用に道が開きますが、第72条の3で公表義務・目的外利用禁止・再提供禁止が課されます。

(4)職員の罰則強化 —— 対応の前倒しが必要

行政機関等職員の個人情報ファイル不正提供罪は2年以下・100万円以下から3年以下・150万円以下へ、保有個人情報の不正提供等罪は2年以下・100万円以下へ引き上げられ、「損害を加える目的」による提供も処罰対象に加わりました。これらは令和9年1月17日に先行施行されるため、服務・研修の周知は他項目より早く進める必要があります。

(5)顔特徴データ —— 市は直接の名宛人ではないが地域に影響

顔特徴データ等の周知義務(21条の2)は条文上、民間の個人情報取扱事業者に向けたもので、行政機関等に同種の規定はありません。ただし、市が委託・指定管理により民間事業者に顔認証を含む業務を担わせる場合や、自治会など地域団体が防犯カメラに顔認証機能を使う場合は、その団体自身が義務を負います。なお該当範囲は政令で定められる予定で、単なる顔写真や録画映像がそのまま該当するわけではありません。

(6)マイナンバー(番号法)

第19条16号への「相当の理由」の追加、16歳未満の特定個人情報の法定代理人読替(43条の2)などが設けられました。住民記録・税・福祉の基幹事務に直結するため、事務取扱要領と特定個人情報保護評価の点検が必要です。

準備のスケジュール

時期 取り組むべきこと
令和8年度中 委員会規則・ガイドラインの動向把握、保有個人情報・委託契約・子ども関連事務の洗い出し
令和9年1月17日まで 罰則強化に対応した服務・研修の周知
令和9年度 例規・様式・契約書ひな形の改正、システム改修と研修の予算措置
令和10年7月まで 全面施行への対応完了

政令・規則の公表を待ってから予算とシステム改修を検討したのでは間に合わない可能性があります。令和9年度当初予算にどこまで織り込むのか、議会としてもしっかり確認していきたいと思います。


【参考資料・出典】