夏の「節電要請」が出なくなったのはなぜ? ─ 電力需給の現状とこれから(2026年)
東日本大震災の後、夏になると毎年のように「節電のお願い」がありました。ところが近年は、「熱中症予防のためにエアコンを適切に使いましょう」という呼びかけが中心です。電気が余るようになったのでしょうか。
国(経済産業省・資源エネルギー庁)と、全国の電力需給を監視する電力広域的運営推進機関(以下「広域機関」)の資料をもとに整理しました。詳しい数値は図解をご覧ください。

■ 今年の夏も「節電要請なし」
2011年には、東京電力・東北電力管内で、大口需要家に15%の削減を義務付ける「電力使用制限」が行われました【出典1】。その後の対応は、数値目標のない「要請」、さらに「呼びかけ」へと緩やかになりました。2024年度以降は、事前の節電要請は行われていません【出典2・3】。
今年も国は5月20日、「全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる」として、節電要請を見送りました【出典4・5】。予備率とは、電力需要に対する供給力の余裕の割合です。
大津市を含む関西エリアの予備率は、最も厳しい9月前半の夕方(17時)で4.2%の見通しでした【出典6・7】。
■ 節電要請が不要になった4つの理由
- 原子力発電の回復 原子力の発電電力量は2014年度にゼロになりましたが、2024年度には全体の9.4%まで回復しました【出典8】。再稼働済みの原子炉は15基で、うち7基が関西電力の発電所です【出典9】。
- 太陽光発電の増加 2012年に固定価格買取制度(FIT)が始まって以降、導入が進みました【出典10】。太陽光の発電電力量は、2010年度の35億kWhから2024年度には981億kWhに増えています【出典8】。ただし、夕方は出力が減るため、予備率は17時ごろに低くなりやすくなっています【出典6】。
- 省エネ・節電の定着 全国の最終電力消費は、2010年度の10,354億kWhから2024年度には8,808億kWhに減りました【出典8】。
- 全国で電気を融通しあう仕組み 2015年に広域機関が創設されました。東日本と西日本の間で電気を送る周波数変換設備も、120万kW(2011年)から210万kWに増強されています【出典11】。
■ それでも国は「予断を許さない」
国は、国際情勢の変化、異常気象、発電所の休廃止、火力発電所の沿岸部への集中などを挙げ、「電力需給は予断を許さない状況」としています【出典4】。
- 供給が減る: 2026年度中に、火力発電371万kWが休廃止されます【出典12】。
- 需要が増える: データセンター・半導体工場の新増設などにより、全国の夏の最大需要電力は、2035年度に16,460万kWまで増える見通しです【出典12・13】。
- 関西も例外ではない: 広域機関の評価では、関西を含む中部〜四国エリアで、2028〜2030年度に停電リスクの指標が国の目標水準を超える見通しです。この評価は、前提が変われば結果も変わるとされています【出典12】。
これに対し国と広域機関は、次の対策を進めるとしています【出典4・6・12】。
- 発電事業者への保安管理の徹底要請
- 需給の監視
- 電源投資の促進
- 地域間連系線の整備
2040年度には、再エネ4〜5割、原子力2割、火力3〜4割程度の電源構成を見込んでいます【出典14】。
■ まとめ
節電要請がなくなったのは、電気が余るようになったからではありません。原子力の回復、太陽光の増加、省エネの定着、全国での融通の強化が重なり、猛暑でも「最低限の余裕」を確保できるようになったためです。
ただし今後は、火力の休廃止と需要の増加により、再び厳しくなるおそれがあることが国の資料で示されています。暮らしに直結する電力の安定供給について、引き続き国の動向を注視してまいります。
【参考資料・出典】
- 電気事業法第27条・電気使用制限等規則(平成23年経済産業省令第28号)。内容は、日本経済新聞(2011年9月)、イミダス「電力使用制限令」(2011年7月)による
- 資源エネルギー庁「2025年度夏季の電力需給対策について」資料9(2025年5月23日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/pdf/001_09_00.pdf
- 経済産業省「2025年度夏季の電力需給対策を取りまとめました」(2025年5月23日) https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250523008/20250523008.html
- 経済産業省「2026年度夏季の電力需給対策を取りまとめました」(2026年5月20日) https://www.meti.go.jp/press/2026/05/20260520001/20260520001.html
- 資源エネルギー庁「2026年度夏季の電力需給対策について」資料5(2026年5月20日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/pdf/006_05_00.pdf
- 電力広域的運営推進機関「電力需給検証報告書(2026年5月)」 https://www.occto.or.jp/houkokusho/2026/denryokujukyukensho_20260520.html
- 電力広域的運営推進機関「最近の需給状況について」(2026年5月19日) https://www.occto.or.jp/assets/hyougiinkai/002779/2026_1_houkoku_1.pdf
- 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」(2026年4月14日) https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2024fykaku.pdf
- 資源エネルギー庁「原子力政策に関する最近の動向について」資料1(2026年3月31日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/048_01_00.pdf
- 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルについて」(2023年4月) https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/disposal_recycle/pdf/001_02_00.pdf
- 資源エネルギー庁「電力システム改革の概要について」資料3(2024年7月5日) https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001271861.pdf
- 電力広域的運営推進機関「2026年度供給計画の取りまとめについて」(2026年3月27日) https://www.occto.or.jp/assets/various/kyoukei/torimatome/260330_kyokyukeikaku_torimatome/260330_kyoukei_hyogiiinkai.pdf
- 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」(2026年1月21日) https://www.occto.or.jp/assets/news/juyousoutei/260121_juyousoutei_r1.pdf
- 経済産業省「第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました」(2025年2月18日) https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html








