大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

夏の「節電要請」が出なくなったのはなぜ? ─ 電力需給の現状とこれから(2026年)

エネルギー 生活 産業 / 2026年9月29日

東日本大震災の後、夏になると毎年のように「節電のお願い」がありました。ところが近年は、「熱中症予防のためにエアコンを適切に使いましょう」という呼びかけが中心です。電気が余るようになったのでしょうか。

国(経済産業省・資源エネルギー庁)と、全国の電力需給を監視する電力広域的運営推進機関(以下「広域機関」)の資料をもとに整理しました。詳しい数値は図解をご覧ください。

■ 今年の夏も「節電要請なし」

2011年には、東京電力・東北電力管内で、大口需要家に15%の削減を義務付ける「電力使用制限」が行われました【出典1】。その後の対応は、数値目標のない「要請」、さらに「呼びかけ」へと緩やかになりました。2024年度以降は、事前の節電要請は行われていません【出典2・3】。

今年も国は5月20日、「全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる」として、節電要請を見送りました【出典4・5】。予備率とは、電力需要に対する供給力の余裕の割合です。

大津市を含む関西エリアの予備率は、最も厳しい9月前半の夕方(17時)で4.2%の見通しでした【出典6・7】。


■ 節電要請が不要になった4つの理由

  1. 原子力発電の回復  原子力の発電電力量は2014年度にゼロになりましたが、2024年度には全体の9.4%まで回復しました【出典8】。再稼働済みの原子炉は15基で、うち7基が関西電力の発電所です【出典9】。
  2. 太陽光発電の増加  2012年に固定価格買取制度(FIT)が始まって以降、導入が進みました【出典10】。太陽光の発電電力量は、2010年度の35億kWhから2024年度には981億kWhに増えています【出典8】。ただし、夕方は出力が減るため、予備率は17時ごろに低くなりやすくなっています【出典6】。
  3. 省エネ・節電の定着  全国の最終電力消費は、2010年度の10,354億kWhから2024年度には8,808億kWhに減りました【出典8】。
  4. 全国で電気を融通しあう仕組み  2015年に広域機関が創設されました。東日本と西日本の間で電気を送る周波数変換設備も、120万kW(2011年)から210万kWに増強されています【出典11】。

■ それでも国は「予断を許さない」

国は、国際情勢の変化、異常気象、発電所の休廃止、火力発電所の沿岸部への集中などを挙げ、「電力需給は予断を許さない状況」としています【出典4】。

  • 供給が減る: 2026年度中に、火力発電371万kWが休廃止されます【出典12】。
  • 需要が増える: データセンター・半導体工場の新増設などにより、全国の夏の最大需要電力は、2035年度に16,460万kWまで増える見通しです【出典12・13】。
  • 関西も例外ではない: 広域機関の評価では、関西を含む中部〜四国エリアで、2028〜2030年度に停電リスクの指標が国の目標水準を超える見通しです。この評価は、前提が変われば結果も変わるとされています【出典12】。

これに対し国と広域機関は、次の対策を進めるとしています【出典4・6・12】。

  • 発電事業者への保安管理の徹底要請
  • 需給の監視
  • 電源投資の促進
  • 地域間連系線の整備

2040年度には、再エネ4〜5割、原子力2割、火力3〜4割程度の電源構成を見込んでいます【出典14】。


■ まとめ

節電要請がなくなったのは、電気が余るようになったからではありません。原子力の回復、太陽光の増加、省エネの定着、全国での融通の強化が重なり、猛暑でも「最低限の余裕」を確保できるようになったためです。

ただし今後は、火力の休廃止と需要の増加により、再び厳しくなるおそれがあることが国の資料で示されています。暮らしに直結する電力の安定供給について、引き続き国の動向を注視してまいります。


【参考資料・出典】

  1. 電気事業法第27条・電気使用制限等規則(平成23年経済産業省令第28号)。内容は、日本経済新聞(2011年9月)、イミダス「電力使用制限令」(2011年7月)による
  2. 資源エネルギー庁「2025年度夏季の電力需給対策について」資料9(2025年5月23日)  https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/pdf/001_09_00.pdf
  3. 経済産業省「2025年度夏季の電力需給対策を取りまとめました」(2025年5月23日)  https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250523008/20250523008.html
  4. 経済産業省「2026年度夏季の電力需給対策を取りまとめました」(2026年5月20日)  https://www.meti.go.jp/press/2026/05/20260520001/20260520001.html
  5. 資源エネルギー庁「2026年度夏季の電力需給対策について」資料5(2026年5月20日)  https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/pdf/006_05_00.pdf
  6. 電力広域的運営推進機関「電力需給検証報告書(2026年5月)」  https://www.occto.or.jp/houkokusho/2026/denryokujukyukensho_20260520.html
  7. 電力広域的運営推進機関「最近の需給状況について」(2026年5月19日)  https://www.occto.or.jp/assets/hyougiinkai/002779/2026_1_houkoku_1.pdf
  8. 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」(2026年4月14日)  https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2024fykaku.pdf
  9. 資源エネルギー庁「原子力政策に関する最近の動向について」資料1(2026年3月31日)  https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/048_01_00.pdf
  10. 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルについて」(2023年4月)  https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/disposal_recycle/pdf/001_02_00.pdf
  11. 資源エネルギー庁「電力システム改革の概要について」資料3(2024年7月5日)  https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001271861.pdf
  12. 電力広域的運営推進機関「2026年度供給計画の取りまとめについて」(2026年3月27日)  https://www.occto.or.jp/assets/various/kyoukei/torimatome/260330_kyokyukeikaku_torimatome/260330_kyoukei_hyogiiinkai.pdf
  13. 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」(2026年1月21日)  https://www.occto.or.jp/assets/news/juyousoutei/260121_juyousoutei_r1.pdf
  14. 経済産業省「第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました」(2025年2月18日)  https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html

第三回「大江の集い」に参加しました

保健 地域活動 文化 高齢者 / 2026年9月28日

瀬田学区 地域レポート

第三回「大江の集い」に参加しました
~楽しく学ぶ認知症予防と、フルート&ピアノの調べ~
9月27日(日)、瀬田学区社会福祉協議会主催の第三回「大江の集い」が瀬田公民館で開かれ、来賓としてご挨拶の機会をいただきました。講演とコンサートの二部構成で、秋の半日を皆さんと楽しく過ごしました。

■ 開催概要
日時:2026年9月27日(日)9:45~12:00
会場:瀬田公民館 3階大ホール
主催:瀬田学区社会福祉協議会
対象:瀬田学区にお住まいの皆さま(参加無料)


第一部 講演「認知症について、楽しく認知症を予防しよう」

講師は琵琶湖中央リハビリテーション病院の理学療法士・戸谷隆之先生(大津市リハビリテーションセラピスト出前講座)。大津市長寿福祉課、瀬田あんしん長寿相談所の方々にもご参加いただきました。ポイントは次の3つです。

① 高齢者の約3.6人に1人が「認知症」か「その手前」
国の研究班の推計(2022年)では、65歳以上の認知症の方は約443万人(12.3%)、軽度認知障害(MCI)の方は約559万人(15.5%)。あわせて27.8%にのぼります。[出典3・4]

② MCIの段階なら、健康な状態に戻れる人も
福岡県久山町の研究では、MCIと診断された人の約3割が、5年以内に正常な認知機能に回復していたと報告されています。早めの気づきと取り組みが大切です。[出典5]

③ 予防のカギは「脳トレ+運動」
会場では、頭と体を同時に使う体操を全員で体験しました。

・色読み(文字ではなく色を答える)
・後出しじゃんけん(両手とも勝つ)
・足踏み+干支(「う」の付く干支で拍手)
・両手で指揮(右手2拍子・左手3拍子)
・あべこべ鳴き声(犬→「ニャー」)
「失敗しないことが目的ではない」「みんなで笑い合う」「無理は禁物」――続けるコツも教わり、会場は笑い声でいっぱいでした。

本日のおみやげ情報
犬を飼っている高齢者は、飼っていない人に比べ要介護認知症の発症リスクが約4割低い(東京都大田区の高齢者約1万1千人の調査)。散歩による運動習慣や、ご近所との交流が効いている可能性があるそうです。[出典6]

第二部 フルート&ピアノ コンサート

フルートの高野真吏さん、ピアノの森上智子さんによる演奏。誰もが耳にしたことのある名曲の数々に、会場全体が聴き入りました。

第三回大江の集い フルート&ピアノコンサートの様子

♪ 最後はみんなで「琵琶湖周航の歌」
フィナーレの様子を音声でお届けします(約56秒)


おわりに

学んで、体を動かして、笑って、歌う。認知症予防に大切な要素がぎゅっと詰まった集いでした。企画・運営に当たられた社会福祉協議会の皆さま、講師・演奏者の皆さまに心より感謝申し上げます。もの忘れなどで気になることがあれば、お近くの「あんしん長寿相談所」にご相談ください。

【出典・参考資料】
1. 瀬田学区社会福祉協議会「第三回『大江の集い』参加者募集のご案内」(令和8年9月)
2. 戸谷隆之(琵琶湖中央リハビリテーション病院)「認知症について~楽しく認知症を予防しよう~」令和8年度 大津市リハビリテーションセラピスト出前講座 講演資料(2026年9月)
3. 厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」(研究代表者:九州大学 二宮利治教授、2024年5月公表)https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf
4. 内閣官房 認知症施策推進関係者会議(第2回)資料9 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ninchisho_kankeisha/dai2/siryou9.pdf
5. 九州大学 二宮利治教授ら「久山町研究」におけるMCIから正常認知への回復率の報告。紹介記事:メディカルノート https://medicalnote.jp/nj_articles/251125-003-OE
6. 谷口優(国立環境研究所)ら、Preventive Medicine Reports(2023年10月)。紹介記事:JSTサイエンスポータル(2023年12月14日)https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20231214_n01/

子どもの脳を“傷つけない”言葉掛け ― 親として知っておきたいこと

子育て / 2026年9月26日

「つい強い言葉で叱ってしまった」――子育て中なら誰にでもある経験かもしれません。しかし、そうした言葉が日常的に続くと、子どもの脳そのものに影響が及ぶことが研究で分かってきています。

9月26日付の公明新聞に、小児精神科医で福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美特命教授への取材記事が掲載されました。要点をご紹介します。

■ 言葉の暴力は脳を傷つける

怒鳴る・罵倒する、存在を否定する、きょうだいと比べる――こうした言葉の暴力や、体罰、ネグレクト(育児放棄)など、子どもへの避けたい関わりを総称して**「マルトリートメント(マルトリ)」**と呼びます。子どもの前での配偶者や祖父母への悪口も含まれます。

記事によると、継続的に言葉の暴力を受けると、音の情報を処理する**「聴覚野」が異常に肥大**し、普段の会話が脳まで届きにくくなるおそれがあります。友田氏とハーバード大学の研究では、親からの暴言の頻度が高いほど聴覚野が大きくなる傾向が示されています。

■ 叱るときは「人格」ではなく「行為」に

最も避けたいのは、子どもの人格を否定する言葉です。友田氏が勧めるのは、

  1. 「腹が立ったんだね」とまず気持ちを受け止める
  2. 理由を聞き、何があったか一緒に振り返る
  3. 次に同じことがあったらどうするか、一緒に考えて具体的に示す

という流れです。思春期以降は自尊心も育つため、人前で叱るのは避けることが大切とされています。

■ 脳は回復できる ― 三つのコミュニケーション

傷ついた脳も、適切な関わりによって回復する可能性が十分にあるといいます。

関わり方 効果
① 繰り返す(共感) 安心感と心のつながりを育む
② 行動を言葉にする 子どもが自分の行動への理解を深める
③ 具体的に褒める 親子共に良い気分になり、関係が温かくなる

また、感情的に叱ってしまったときは、自分を責め続けるより、早めに言い過ぎたことを謝る**「リカバリー(関係の修復)」**が大切です。大人が間違いを認める姿は、「失敗してもやり直せる」ことを子どもに伝えます。

■ おわりに

完璧な親はいません。大切なのは、言葉の影響を知り、「行為に着目して伝える」「言い過ぎたら修復する」を意識することだと感じます。子育て中の皆さまの参考になれば幸いです。

「生活習慣病」は“予防”から“共生”へ ― 日本学術会議の提言と、特定健診・健康データの「切れ目」を考える

保健 医療 / 2026年9月25日

令和8年(2026年)9月18日、日本学術会議が「生活習慣病対策の再構築に関する提言 ― ライフコースを通じた包括的な対策に資する、多職種連携と統合データ基盤の確立 ―」を公表しました。1996年の用語導入から約30年、生活習慣病対策の考え方そのものを見直そうという提言です。

本稿では、この提言の要点と、市町村が保険者となる国民健康保険にも関わる「特定健診」をめぐる課題を整理します。あわせて、健康保険組合連合会(健保連)が令和8年6月に公表した、レセプト(診療報酬明細書)データの分析報告書からも、健康・医療データ活用の実例をご紹介します。


■ 提言の意義 ―「予防」だけでなく「共生」へ

提言は、生活習慣病を「予防すべき対象」にとどめず、適切な医療を受けながら生涯にわたり「共生」する健康課題として再定義する段階にあるとしています(要旨・p.11)。

背景として、提言は次の変化を挙げています(p.11)。

変化 提言の記述
人口・疾病構造 高齢化率は1978年当時の約8.6%から30%に迫る水準へ。主要死因の約8割を慢性疾患が占める
社会的要因への認識 個人の行動変容のみでは健康格差を是正しきれないとのエビデンスが蓄積
デジタル環境 スマートフォンやウェアラブル機器により生活ログの連続的な可視化が可能に

また、がん対策基本法で示された「がんとの共生」と同様に、病を抱えながらも安心して暮らすことを支える視点が重要だとしています(p.2)。

(出典)日本学術会議「生活習慣病対策の再構築に関する提言」(令和8年9月18日)


■ 提言が指摘する3つの課題

① 支援体制の縦割りと「支援の空白」 母子保健・学校保健・職域保健・地域保健が年齢区分や所管ごとの縦割りで設計されているため、就学・就職・結婚・出産・転職・退職などの移行期に支援が途切れやすいと指摘しています(要旨)。

② 健康データの断絶 健康記録は管理主体がばらばらで、提言によれば学校の「健康診断票」も、事業主が作成する労働者の「健康診断個人票」も、法定保存期間は5年間とされています。その結果、大半の健康診断情報が保存期間経過後に廃棄されるか、各管理主体に埋没していると述べています(p.7)。

③ 「生活習慣病」という用語の課題 対象疾患の範囲が医学的・行政的に統一されていないこと、国際的な概念(NCDs)との不一致、そして発症の責任を本人に帰属させる印象を与え、自己責任論やスティグマ(偏見)を助長するおそれがあることを挙げています(p.16〜17、表1)。


■ 特定健診をめぐる課題(提言の記述から)

提言は特定健診について、次のような構造的課題を指摘しています。

論点 提言の記述 掲載箇所
保険者間の受診率の差 国民健康保険では、組合健保等に比べて特定健診受診率が著しく低い p.4
40歳未満の空白 企業の定期健診の対象とならない国保被保険者(自営業者、短時間労働等の非正規雇用労働者、無職者等)や生活保護受給者等には、40歳の特定健診開始まで国の標準的な健診・保健指導の仕組みがない p.6〜7
若年健診の低迷 一部自治体の若年者(30歳代等)向け健診は任意の受診勧奨にとどまり、受診率が低迷 p.7
健診後のフォロー 有所見者を医療・保健指導へ確実につなぎ、継続状況を追跡・評価すべきところ、専属の産業保健スタッフ不在の事業場や紙媒体管理の現場では機能しにくい p.6〜7
受動的支援の限界 案内通知に応じた自発的受診に頼る仕組みでは、支援を必要とする層ほど効果が現れにくい p.4

提言は、こうした状況が健康格差の固定化につながっているとし、行政が企業やNPO等と連携して支援の届きにくい層へ能動的に関わる「アウトリーチ型支援」の必要性を示しています(p.4)。


■ 課題解決に向けた3つの提言

提言 主な内容 宛先
(1) 切れ目のない多職種連携支援体制 医療・地域・職域・学校の保健医療職、教育職、福祉・介護職、行政担当者が協働できる制度的基盤を厚労省中心に整備し、専門職養成教育を文科省と連携して推進 文部科学省、厚生労働省
(2) 統合データ基盤と未来志向のヘルスプラン 健康情報を制度間・多職種間・本人と共有できる統合データ基盤を構築。本人同意を前提とした安全な連携の標準化、プライバシー保護、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)への対応とガバナンス体制を確立 内閣府、デジタル庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、こども家庭庁
(3) 用語に関する学際的・社会的議論 「生活習慣病」という用語の社会的影響について調査・研究を推進し、社会学・倫理学・哲学・言語学等も含めて国民との対話を通じた合意形成を図る 文部科学省、厚生労働省

(出典)同提言「5 提言」(p.19)

なお提言は、デジタル技術を使いこなせない方や経済的に困難な方への配慮として、Webアクセシビリティ規格への準拠や公的窓口での端末利用環境の提供など、最低限のデジタルアクセスを公的に保障する仕組みも求めています(p.13)。


■ データ活用の実例 ― 健保連のレセプト分析

提言が求める「データに基づく施策」の一例として、健保連の「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅶ」(令和8年6月、概要版)があります。

※なお、この報告書は特定健診そのものを評価したものではありません。テーマは①外来医療のばらつき、②医療機関の機能に応じた医療費の分配、③死亡前の診療行為の分析の3つです。

分析には、国のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から、医科・DPCレセプトの0.3%(約100万人分)を無作為抽出したデータセット(2022年度)が用いられています(p.13)。

このうちテーマ③では、2022年7月〜12月に死亡の記録がある延べ13,914人について、死亡前1週間以内の蘇生術・人工呼吸などの実施状況を分析しています(p.8)。結果として、

  • 蘇生術・人工呼吸とも、年齢階級別では59歳以下で特に実施されやすい
  • 悪性新生物(がん)の診断がある患者では、蘇生術のオッズ比が0.32、人工呼吸が0.31と、実施されにくい傾向

が示されています(p.10)。がん領域では緩和ケアなどの考え方が浸透していることがうかがえる一方、非がん疾患の人生の最終段階をどう支えるかは、提言の言う「共生」とも通じる論点といえます(この結びつけは筆者の見方です)。

なお同報告書は、様々な限界点があり追加の分析・検討を要すること、また意見は健保連の判断であることを明記しています(p.2、p.13)。



■ まとめ

項目 ポイント
提言の意義 生活習慣病を「予防」に加え「共生」する健康課題として再定義
最大の課題 制度の縦割りとデータの断絶による「支援の空白」
特定健診 国保の受診率の低さ、40歳未満の空白、健診後フォローの不十分さ
解決の方向 多職種連携、本人も使える統合データ基盤、用語の見直し議論
データ活用 NDB等を用いた分析は政策立案の基礎となるが、限界の明示も不可欠

大津市は国民健康保険の保険者として特定健診を実施する立場にあります。提言が示す「40歳までの空白」や「支援の届きにくい層へのアウトリーチ」は、市の保健事業にとっても身近な課題です。国の動向を注視しつつ、市の取組についても今後確認していきたいと考えます。


【参考資料・出典】

暑さに強い体は「つくれる」のか

環境 / 2026年9月20日

今年の夏も熱中症が心配される日々でした。気温上昇の影響はもちろんですが、「暑ければエアコンをつける」「暑ければ外に出ない」という暮らしが、私たちの体を暑さに弱くしている面はないのか、という疑問も抱いていました。

そんな折、読売新聞の連載「地球を読む」(ジャレド・ダイアモンド氏)を読み、考えさせられました。

■ 記事のポイント

記事は、日本の生理学者・久野寧(1882〜1977年)の研究を紹介しています。

  • 汗腺の数は、誰もが胎内でほぼ同じ数が形成される。ただし、実際に汗を出す「活発に機能する汗腺」は、1人あたり寒い地域の人で平均140万個、その他の日本人で200万個、アジアの熱帯地方の人で300万個近くと異なる
  • この違いは遺伝ではなく、生後約3年間に受ける暑さの刺激で決まる。熱帯で生まれた日本人の子どもは現地の人とほぼ同じ数の汗腺が活発で、3歳を過ぎて熱帯に移り住んでも、活発な汗腺は少ないままだった

ダイアモンド氏は、3歳以下の幼児に毎日20分程度汗をかく機会をつくること、エアコンをかけすぎないことなどを提案しています。とはいえ、3歳までに子どもを暑さに慣れさせるのは、現実にはなかなか難しいことです。

■ 暑さに慣れる「暑熱順化」

一方、体を暑さに慣らすことは「暑熱順化」と呼ばれ、熱中症予防の考え方として知られています。国立環境研究所が運営する気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)では、次のように紹介されています。

  • 「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度の運動(ウォーキング等)を毎日30分程度続けることなどで獲得でき、実験的には数日後から起こり、2週間程度で完成するといわれる
  • 入浴など、日常生活で無理のない範囲で汗をかくことも重要
  • 暑さへのばく露が中断すると、4日後には顕著な喪失が始まり、3〜4週間後には完全に失われる

■ おわりに

稲などの作物では、高温に強い品種改良が進められています。人間の品種改良はできませんが、暑さへの強さが環境や習慣にも左右されるのであれば、「暑さに慣れた体づくり」も熱中症対策の一つとして大切だと感じます。

もちろん無理は禁物です。エアコンの適切な利用や水分補給と組み合わせながら、地域全体で考えていきたいと思います。

【参考資料・出典】

  • ジャレド・ダイアモンド「地球を読む 汗の大切さ 日本人が解明」(1面)「3歳までの環境 重要に」(2面)(読売新聞、2026年9月20日付)
  • 「記録的猛暑の時代を生き抜く!熱中症から身を守る”暑熱順化”のすすめ」(気候変動適応情報プラットフォーム A-PLAT〔国立環境研究所〕)

災害時、子どもの「居場所」はありますか? ~こども家庭庁「災害時のこどもの居場所づくり」手引きより~

子育て 災害 / 2026年9月18日

先日、学区自主防災会の防災訓練を企画していたところ、「小さい子どもを連れて行ってもよいか」というお問い合わせをいただきました。当然、発災時には子どもも一緒に避難するわけで、はっとさせられました。

ちょうど同じ頃、こども家庭庁から「『災害時のこどもの居場所づくり』手引き」が発出されました。今回はそのポイントをコンパクにご紹介します。

■ 手引きの背景

「こどもの居場所づくりに関する指針」(令和5年12月22日閣議決定)で災害時の居場所づくりの重要性が指摘されたことを受け、令和6年度の調査研究事業(学校法人東洋大学実施)を基に作成されました。全国13か所の被災地域の実態調査から、災害時の子どもの居場所が有効な支援策であること、それには平時からの備えが不可欠であることが明らかになったとされています。

■ 子どもにとっての「災害」

発災後、子どもたちの生活は一変し、恐怖体験や生活環境の急変にさらされます。一方でおとなも対応に追われ、子どもの変化に気づきにくくなるとされています。多くの子どもはストレス反応を示しますが、これは異常事態における正常な反応であり、安全・安心と日常が戻れば大半は落ち着きを取り戻していくとされています。ただし、PTSD等の症状が残る子どもは全体の30~40%との報告もあり、おとなが知識を持っておくことの重要性が強調されています。

■ 居場所に期待される役割

手引きでは、次の3点が挙げられています。

  • 人とのつながりの場となり、災害の影響を少なくする
  • 発災前の「日常」を取り戻し、子どもの回復する力(レジリエンス)を引き出す
  • ケアが必要な子どもを早期に発見し、支援につなぐ

内閣府「避難所運営ガイドライン」でもキッズスペース設置が推奨されていますが、令和6年の内閣府調査(全国1,313市区町村対象)では、避難所運営マニュアルに記載があるのは231市区町村(17.6%)にとどまるとされています。

大津市の「大津市避難所運営マニュアル」にも、避難者受入れスペースの例として「キッズスペース」が明記されているほか、子どもの保育・心のケア・活動支援が担当班の業務として位置づけられています。ただし、こうしたキッズスペースや子どもの避難について心がけている人は少ないのではないでしょうか。マニュアルに記載があることと、実際の現場でそれが機能することの間には、まだ距離があるように感じます。

■ 居場所づくりのポイント

  • 開始時期:できれば発災当日、遅くとも2~3日以内
  • 設置場所:各避難所に1か所を基本に、公民館・児童館なども活用
  • 活動内容:遊び・学習・食事・相談支援など多様な機会を提供。「毎回特別なことをする必要はなく、顔なじみのスタッフが穏やかに声をかける日常の繰り返しが安心感につながる」とされています
  • こどもの権利:災害時であっても意見表明・参加の機会を保障することが求められています

また、親を亡くした子ども、アレルギーのある子ども、障害のある子ども、外国語を母語とする子どもなど、多様な特性・事情への個別配慮も具体的に示されています。

■ 平時の備えが要

手引きが繰り返し強調するのは「平時からの取り組みが不可欠」という点です。行政には、地域防災計画等への位置づけ、支援窓口の事前決定、地域団体との「顔の見える関係」づくりが求められます。長野市では、官民が連携する子ども支援ネットワークが設立され、行動規範の整備やコーディネーター育成が進められている事例も紹介されています。

■ おわりに

避難というと「大人が主体」で考えてしまいがちですが、避難所を利用するのは赤ちゃんからお年寄りまで、地域に暮らすすべての方です。当然、子どもたちも含まれます。

公明党議員団としても、令和9年度に向けた政策要望の議論の中で、この視点を地域の防災計画にしっかりと反映させていきたいと考えています。

【参考資料・出典】

  • 「『災害時のこどもの居場所づくり』手引き」(こども家庭庁、令和6年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業「災害時におけるこどもの居場所づくり調査研究」〔学校法人東洋大学〕を基に作成)
  • 「こどもの居場所づくりに関する指針」(令和5年12月22日閣議決定)
  • 内閣府「避難所運営ガイドライン」(2016年、2019年改定)
  • 内閣府(防災担当)「避難所における生活環境の確保に向けた取組事例集」(令和6年3月)

高齢期は「痩せすぎ」に要注意 ~健康寿命を延ばす“適糖生活”とは~

保健 生活 高齢者 / 2026年9月17日

「メタボ対策」として、痩せることを良しとする考え方が長く浸透してきました。しかし高齢期に限っては、事情が異なるようです。公益財団法人 全国精糖工業会・糖業協会が発行する情報誌『砂糖類・でん粉情報』2026年9月号に掲載された、公益社団法人日本栄養士会常任理事・西村一弘氏の解説をもとに、高齢期の健康づくりのポイントをご紹介します。

■ 高齢者のBMI目標値、引き上げの理由

厚生労働省「日本人の食事摂取基準」では、高齢者のBMI(体格指数)の目標下限値が引き上げられました。

基準 従来 改定後
50歳以上 18.5 20.0
65歳以上 18.5 21.5

同基準に基づくBMIと死亡率のグラフでは、65歳以上を対象とした場合、BMIが高くても死亡率は上昇しない傾向が示されているとのことです。つまり、高齢者は「痩せすぎ」が寿命を縮める可能性があるということです。

また、2020年版の基準で紹介された研究では、次の点が指摘されています。

  • BMIが変化なく維持されることが、最も認知症リスクが低い
  • 過体重・肥満の人でBMIが急速に減少すると、認知症のリスクとなる
  • BMIの10%以上の減少が、認知症のリスクとなる

■ メタボ対策から「フレイル予防」へ

2000年代以降のメタボ対策の浸透により、「痩せ=健康」という考えが広まり、高齢者にも過度な減量志向が見られるようになりました。しかし記事では、次のような目安が示されています。

  • 75歳以降:無理な減量はやめ、体重を現状維持する
  • 若い頃から痩せ型(BMI20未満)の人:50歳を超えたら、体重を増やす方向へ切り替える

超高齢社会において、要介護の手前の状態である「フレイル(虚弱)」の予防が重要な課題とされる中、痩せすぎがかえってフレイルを招くケースがあると指摘されています。

■ 糖質は「優れたエネルギー源」

記事では、炭水化物(糖質)が体内で最も早くエネルギーとして利用される栄養素であり、たんぱく質を筋肉に利用する際にも糖質が必要だと説明されています。

極端な糖質制限を行うと、相対的に高脂質・高たんぱくの食生活になり、次のようなリスクが懸念されるとのことです。

  • 心血管疾患:LDLコレステロールの増加による動脈硬化の進行
  • 腎臓:過剰なたんぱく質の分解に伴う老廃物処理の負担増加
  • 認知症:低血糖・高血糖のいずれも認知症リスクに関わる可能性

記事は、糖質制限を行う場合は自己流ではなく、医療機関や管理栄養士など専門職の指導のもとで行うことを勧めています。

■ 糖尿病の増加と、糖質摂取率の低下

厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、「糖尿病が強く疑われる人」の数は年々増加傾向にあります。

一方で、同調査に基づく資料では、日本人のエネルギー摂取量に占める炭水化物の割合は1970〜80年代の60%超から低下傾向にあり、2024年調査では55.8%となっています。

記事では、糖尿病の増加は糖質摂取量そのものよりも、運動量の低下、食物繊維摂取量の低下、脂質摂取量の増加などが影響している可能性があると指摘されています。

■ 実践のヒント:“スローカロリー”という工夫

記事で紹介されている、糖質の吸収をゆるやかにする工夫(スローカロリー)の例です。

  • 食事の際に牛乳を摂る(低GI効果)
  • 一汁三菜をそろえ、ゆっくり食べる習慣を持つ
  • 吸収速度が遅い糖質(パラチノースなど)を活用する

こうした生活習慣は「適糖生活」と呼ばれています。

■ まとめ

ポイント 内容
高齢者のBMI目標 65歳以上は21.5以上を目安に(下限引き上げ)
対策の重心 メタボ対策 + フレイル予防の両立へ
糖質の役割 極端な制限はかえってリスクに
実践法 牛乳・一汁三菜など「スローカロリー」で適糖生活

痩せすぎを避け、糖質を上手に、ゆっくりと摂る「適糖生活」が、高齢期の健康寿命を延ばす一つの鍵になりそうです。

 



【参考資料・出典】

  • 西村一弘「健康寿命を延ばすには?~適糖生活のすすめ~」『砂糖類・でん粉情報』2026年9月号(独立行政法人農畜産業振興機構〔alic〕発行)
  • 記事内引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」「日本人の食事摂取基準2025」
  • 記事内引用:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」
  • 記事内引用:糖尿病ネットワーク「糖尿病と認知症の危険な関係」(2016年6月13日、第59回日本糖尿病学会年次学術総会)

※本記事は上記資料の内容に基づき作成しています。数値・データの引用元は各項目に記載のとおりです。

避難行動要支援者名簿のデジタル化 ── 「紙が確実」から「電子データを共有」へ、9月通常会議の答弁と経団連の規制改革要望

情報 政治 議会 防災 / 2026年9月16日

9月通常会議の一般質問で、避難行動要支援者名簿の電子データの扱いについて取り上げました。

そのさなかの9月15日、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)が「2026年度規制改革要望」を公表しました。その「防災・国土強靭化」の分野に、No.39「避難行動要支援者名簿および個別避難計画におけるデジタル化の推進」 という項目が置かれています。読んでみると、私が議場で取り上げた問題と、根っこのところで同じことを指摘していました。

自治体の現場で突き当たっていた課題が、経済界から国への要望としても示されたことになります。この機会に、議会でのやり取りとあわせてご報告します。


■ 経団連の要望が指摘したこと ── 「自治体ごとに解釈が分かれている」

要望が問題にしているのは、国の二つの文書の間にある食い違いです。

① 国の取組指針は、クラウドでの管理を想定している

内閣府の「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(令和3年5月改定)」では、災害により市町村の機能が著しく低下する可能性を踏まえ、名簿情報および計画情報をクラウド上でデータ管理することによるバックアップ体制の構築が規定されています。

② しかしセキュリティのガイドラインには、その規定がない

一方で「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和8年3月版)」には、名簿情報・計画情報のクラウド管理について明確な規定がありません。要望本文は、その結果として次の状況が生じていると述べています。

セキュリティポリシーに反するとの見解から名簿情報および計画情報を紙で管理する従来の運用を続ける自治体がある等、自治体毎に解釈が異なりデジタル化が進展しない現状がある。

(出典:経団連「2026年度規制改革要望」No.39)

③ そのために起きていること

場面 生じている支障
災害発生時 浸水時や停電時に情報共有や集計作業が進まず、要支援者の状況や避難所の情報等を迅速に収集・展開することが困難な事例が生じている
平常時 紙で管理する運用により、名簿登録依頼書の印刷や発送作業をはじめ、名簿情報・計画情報の作成・更新・共有に係る作業が自治体職員の業務を圧迫している

出典:経団連「2026年度規制改革要望」(2026年9月15日)No.39

④ 求めていること

要望が国に求めているのは、次の二点です。

  • セキュリティポリシーのガイドラインにおいても、取組指針と同様に、名簿および個別避難計画に関する情報をクラウド上で管理することが可能である旨を明確化し、自治体によって解釈が分かれることのないよう見解を統一すること
  • 名簿情報・計画情報の管理が認められるクラウドの基準や条件についても明確化すること

■ 大津市議会で私が質したこと

6月通常会議でのやり取り

6月通常会議では、発災時に地域が速やかに安否確認を行えるよう、避難行動要支援者名簿の電子データの提供を求めました。これに対して市からは、発災時においてインフラの状況が不明な点を踏まえると、紙媒体による提供が確実な方法である、との答弁をいただきました。

経団連の要望が挙げている「紙で管理する従来の運用」と、まさに同じ論点です。

9月通常会議で改めて取り上げた点

そこで9月通常会議では、名簿の電子データについて、次の点を市に質しました。

  1. 名簿を扱う職員の位置づけ ── 安否情報を扱う職員が、不同意の方を含む避難行動要支援者名簿を用いて分析と判断を行うことを、災害対策基本法第49条の11第1項に基づく内部利用として明確に位置づけること
  2. データの中身と新しさ ── 職員が用いる名簿の電子データに、災害リスクや区域の区分など、対象となる方の絞り込みに必要な項目を備えること。また名簿の更新のつど最新のものが用いられるようにすること
  3. 手順の明文化 ── 避難行動要支援者名簿の電子データを用いて対象となる方を絞り込むための分析の手順を、マニュアルとして定めること
  4. 通信が途絶えたときの備え ── 平時から支所に最新の名簿を電子データで保存し、インターネット通信が使えない状況でも参照できるようにすること。およびその保存と管理の方法をルールとして定めること

申し上げたかったのは、紙かデータかという二者択一ではないということです。通信が途絶えても使える形でデータを持ち、その上で紙も併せて備えておく。その両方があって初めて、どのような状況でも安否確認が動きます。


■ 市の答弁 ── 「紙が確実」から「電子データを共有」へ

今回、市から次の答弁がありました。3か月前とは明らかに内容が変わっています。

電子データの共有と、支所への職員の配置

現在、避難行動要支援者名簿を使用する大規模災害時に、保健福祉支援班と支所及び各関係所属において、市内部のネットワークを用いて名簿の電子データを共有し、的確に名簿データを取り扱うことのできる職員を支所に配置の上、地域からの安否確認情報を収集することや、健康福祉分野の各所属が介護事業所等から安否情報の提供を受けるなど、保健福祉支援班を中心とした効率的・効果的な安否確認体制について検討を進めております。

(令和8年9月通常会議 部長答弁)

6月の「紙媒体による提供が確実な方法」という答弁からの変化が、はっきり見て取れます。

職員の配置については、危機・防災対策課からも重ねて答弁がありました。

安否確認を行う上では、防災拠点となる施設に担当職員を配置することが最善であると考え、当該プランへの記載方法も含めて、現在、福祉部局と協議を進めているところです。

(令和8年9月通常会議 危機管理監答弁)

データの中身、手順、通信途絶時の備え

残る三点についても、次の答弁を得ました。

求めた内容 答弁
データに必要な項目を備え、最新のものを用いる 要介護度や障害者手帳等級などの個人の情報や、お住まいの地域の土砂災害の危険度など、使用する際に必要となる項目を検討するとともに、名簿の更新に合わせて、できる限り最新の情報を反映することを含め、検討してまいります
分析の手順をマニュアルとして定める 発災時に的確な対応ができるよう、必要な手順について検討を進め、保健福祉支援班活動マニュアルに反映させてまいります
通信が使えない状況でも参照できるようにする そのような状況も想定し、共有する電子データをUSBメモリー等の電子記録媒体に保存し活用することを検討してまいります

出典:令和8年9月通常会議 一般質問に対する答弁(部長答弁・福祉政策課)

手順のマニュアル化については、「保健福祉支援班活動マニュアルに反映させてまいります」と、受け皿となる既存の文書まで示されました。 通信が途絶えたときの備えについても、「セキュリティ上できない」ではなく、電子記録媒体での保存を検討するという方向が示されています。


■ 残された論点 ── 「どの災害のときに、どの範囲で使えるのか」

一方で、名簿をどの場面でどこまで使えるのかという基準の部分は、今回は明確になりませんでした。

私は、土砂災害や浸水災害のように危険の及ぶ区域があらかじめ定められている災害であれば、その区域に住む方に対象を限ることで、法が求める「必要な限度」にとどめながら名簿を活用できるのではないか、と提案しました。これに対する答弁は次のとおりです。

大津市避難行動要支援者避難支援プランに例示している、阪神・淡路大震災や特別警報級の大雨に至らないような災害における名簿提供の基準は、状況に応じた判断になると考えており、居住地等で抽出したデータの提供については、個人情報保護の観点から慎重な取り扱いが求められます。

(令和8年9月通常会議 危機管理監答弁)

また、名簿を扱う職員が不同意の方を含む名簿を用いて分析と判断を行うことを、災害対策基本法上の内部利用として明確に位置づけることについては、

避難行動要支援者名簿に記載のある個人情報の利用については、災害対策本部等で適切に判断し、対応するものと考えております。

との答弁でした。

ここで、一つ気になる点があります。名簿の項目としては「お住まいの地域の土砂災害の危険度」を備える方向で検討する一方、その区域で絞り込んで使うことについては慎重な姿勢が示されている、ということです。整えたデータを、いざというときにどう使ってよいのか ── そこが定まらなければ、備えは備えのままで終わってしまいます。


■ 二つが重なるところ

経団連の要望は「国がガイドラインを明確化すべきだ」という話であり、私が議場で申し上げたのは「市として運用のルールを定めるべきだ」という話です。向いている方向は違います。

しかし、止まっているところは同じです。名簿の電子データをどういう場合にどこまで扱ってよいのかについて、拠りどころとなる明確な基準がない。 だから現場は判断を先送りせざるを得ない。国のレベルでも、市のレベルでも、同じことが起きているわけです。

今回、大津市は「電子データで共有する」「扱える職員を支所に置く」「手順をマニュアルに反映する」というところまで進みました。残っているのは、まさに経団連が国に求めている「基準の明確化」と同じ部分です。

そして、どちらか一方だけでは進みません。国が見解を統一しても、市の側に「誰が、どのデータを、どういう場合に、どこまで扱うのか」というルールがなければ、発災時には動けません。逆に、国の明確化を待っているだけでは、市の備えはいつまでも始まりません。


■ 今後に向けて

避難行動要支援者名簿は、発災直後に「あの方は無事か」を確かめるための、いちばん基礎になる情報です。それが紙の束のまま、浸水した支所の保管庫に眠っている、ということがあってはなりません。

今回の答弁で、電子データを共有し、扱える職員を配置し、手順を定めるという方向は示されました。あとは、それをいつ、どの場面で、どこまで使えるのかという基準です。国の動きを注視しつつ、引き続き市の体制整備を求めてまいります。


【参考資料・出典】

  • 一般社団法人 日本経済団体連合会「2026年度規制改革要望」(2026年9月15日公表) Ⅱ.2026年度規制改革要望 / 戦略分野 (7) 防災・国土強靭化 / No.39「避難行動要支援者名簿および個別避難計画におけるデジタル化の推進」 https://www.keidanren.or.jp/policy/2026/049_honbun.html#n39
  • 上記要望が根拠法令等として挙げているもの
    • 災害対策基本法 第49条の10、第49条の11、第49条の14、第49条の15
    • 避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針 第Ⅱ部 第2 2(3)、第Ⅲ部 第2 2(10)(内閣府、令和3年5月改定)
    • 地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン 図表22(令和8年3月版)
  • 大津市議会 令和8年9月通常会議 一般質問に対する答弁(危機管理監答弁:危機・防災対策課/部長答弁:福祉政策課)
  • 大津市議会 令和8年6月通常会議 一般質問に対する答弁(令和8年6月17日)
  • 大津市「大津市避難行動要支援者避難支援プラン(全体計画)」(平成27年3月作成、令和7年4月修正)
  • 大津市「大津市地域防災計画【震災対策編】」「同【風水害等対策編】」(令和8年3月、大津市防災会議)

※本記事のうち経団連の要望に関する記述は、上記「2026年度規制改革要望」No.39の記載に基づいています。市議会での質問および答弁に関する記述は、9月通常会議において実際に発言した内容および答弁書の記載によるものです。

副首都とは何か ― 二つの論考から

まちづくり 行政 防災 / 2026年9月15日

2026年7月24日、いわゆる「副首都法」が成立しました。正式名称は「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」(令和8年法律第78号)です。報道では「大阪が副首都になるのか」という切り口が目立ちましたが、そもそも副首都とは何を指すのかは、必ずしも共有されていないように思います。

副首都構想を論じた二つの論考を読む機会がありましたので、法律そのものの内容とあわせて、要点を整理しておきます。取り上げるのは、地理学者・戸所隆氏(高崎経済大学名誉教授)の「国土形成計画と整合しない理念なき副首都構想」(世界経済評論IMPACT、2026年9月14日)と、人口減少問題を専門とする河合雅司氏(東京財団シニア政策オフィサー)の「【論考】誰のための副首都構想なのか、見極めが必要だ」(東京財団、2026年1月6日)です。いずれも執筆者個人の見解であり、掲載機関の公式見解ではありません。

■ 1. 法律は何を定めたか(参議院・議案情報より)

項目内容
正式名称国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律
法律番号令和8年法律第78号(衆法・議員発議)
議決衆議院 令和8年7月15日 修正議決/参議院 令和8年7月24日 可決
公布・施行令和8年7月31日公布、公布の日から起算して3か月以内で政令で定める日に施行

(出典:参議院「議案情報 第221回国会(特別会)」令和8年7月31日現在)

議案要旨によれば、この法律は大規模災害に備え、副首都の整備をはじめ国家社会機能の継続性が確保された国土の形成を図る施策を推進し、公共の福祉の確保、国民生活の向上、多極分散型経済圏の形成を通じた経済成長に資することを目的としています。制度は二階建てで、首都中枢機能の「一部」を代替する首都中枢機能代替地域と、「全部又は大部分」を代替し多極分散型経済圏の中核を担う**副首都(道府県)**が置かれます。いずれも東京圏との同時被災の可能性が低いことが要件です。

指定は、内閣総理大臣が人口・経済の集積状況などの要件を定め、該当する地域を含む道府県を副首都に指定する仕組みで、内閣に推進本部が置かれ、政府は実施状況を毎年国会に報告します。あわせて、特別区を設ける副首都の名称を「都」に変更する手続のため、大都市地域における特別区の設置に関する法律が改正されました。

要するに、指定要件もどこが副首都になるかも、今後策定される基本方針に委ねられているというのが現在の状態です。


■ 2. 戸所隆氏 ― 国土計画との整合性を問う(成立後の論考)

戸所氏の指摘の中心は、この構想が現行の国土計画体系に位置づけられていない点にあります。

国づくりの総合的・長期的方向性を定める最も重要な計画は、2023年7月に閣議決定された第三次国土形成計画です。同計画は「新時代に地域力をつなぐ国土」を国土像とし、その実現手段として「シームレスな拠点連結型国土」の形成を掲げています。戸所氏は、国土形成計画が目指すのはコンパクト&ネットワークを基盤とする水平ネットワーク型の国土構造であるのに対し、副首都構想は大都市中心の階層ネットワーク型につながるもので、両者は本質的に異なり、過疎過密や地域間格差を深刻化させる懸念があるとします。

もう一点は、決め方の問題です。20世紀末の首都機能移転論議が10年にわたり議論されたのに対し、副首都法は短期間で成立し、基本理念や基本方針は今後、政令で定められます。国会での議論や広範な国民的議論が期待されていないように見える、というのが戸所氏の見方です。有事における三権の相互関係や皇居のあり方が示されていないこと、建設に膨大な国費を要することにも言及しています。

なお戸所氏は指定要件を「人口200万人以上の都市」と説明していますが、成立した法律の要旨では指定の単位は道府県とされ、具体的な要件は今後定められることとなっています。


■ 3. 河合雅司氏 ― 人口減少社会からの疑問(成立前の論考)

河合氏の論考は法案協議が始まった段階のもので、連立合意書が掲げた副首都の必要性、すなわち(1)首都の危機管理機能のバックアップ体制の構築、(2)首都機能分散および多極分散型経済圏の形成――の2点を検証しています。

(1)バックアップについて。 必要性自体は否定しないものの、その手段が副首都であるべきかは意見が分かれるとします。最も重要なのは住民の命であり、副首都を設けても東京に住む人々の命が救われるわけではなく、莫大な費用を投じる余裕があるなら東京の減災強化を優先すべきだという指摘です。またバックアップは日常的に業務を行う人がいてこそ機能するのであって、建物だけでは非常時に動かない。東京と離れた場所で日常業務をこなす体制を組むなら国家公務員を増やさざるを得ないとも述べています。すでに立川市には政府関係機関を集約した広域防災基地があることにも触れています。さらに、南海トラフ地震では東京圏から大阪圏までが同時被災すると想定されるため、副首都を一つに固定すると「首都も副首都も機能しない」事態が起こり得るとして、複数の政令指定都市を候補都市としてあらかじめ順位づけする方式を提案しています。

(2)多極分散について。 政府機関の一部移転で一極集中は解消せず、副首都が経済成長を牽引すれば人口集中が進み、生まれるのは「ミニ東京」であって、結果は二極化であり多極分散ではないとします。しかもその集中は東京からの移住ではなく地方圏からの流入で起こり、地方の人口減少をかえって加速させるという見立てです。その関連で、農林水産省の「地域計画」(2025年4月末現在)で10年後の耕作者が決まっていない農地が全体の31.7%(133.9万ヘクタール)に及ぶこと、東京都の推計で都の人口が2030年にピークを迎えることを挙げ、目指すべきは各地に「人口減少対応型都市」を置く多軸型国家だと結論づけています。


■ 4. 二つの論考の比較

論点戸所隆氏河合雅司氏
執筆時期2026年9月(成立後)2026年1月(成立前)
視点国土計画・都市地理学人口減少・地域政策
一極集中是正への評価階層ネットワーク型国土構造を強化し格差を深刻化「ミニ東京」の建設であり多極分散ではなく二極化
目指すべき国土像水平ネットワーク型(拠点連結型国土)多軸型国家(人口減少対応型都市)
手続への評価国会・国民的議論が不足期限を切らず腰を据えた議論が必要

視点は異なりますが、両氏とも東京一極集中の是正という目的自体は否定していません。問われているのは、副首都という手段がその目的に適合しているのか、という点です。


■ まとめ

  • 法律は成立・公布されたが、指定要件も対象地域も、今後の基本方針に委ねられている
  • 副首都の指定単位は「道府県」であり、東京圏との同時被災の可能性が低いことが共通の要件
  • 政府は施策の実施状況を毎年国会に報告することとされている
  • 二つの論考はいずれも、防災上の実効性と分散効果の両面から検証の必要を提起している
  • 制度の中身はこれから具体化されます。賛否を論じる前段として、法律が何を定め、何を定めていないのかを確認しておきたいと考え、資料を整理しました。

【参考資料・出典】

  • 参議院「議案情報 第221回国会(特別会)『国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律案』」(令和8年7月31日現在) https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221090221027.htm
  • 戸所隆「国土形成計画と整合しない理念なき副首都構想」世界経済評論IMPACT No.4554(2026年9月14日) http://www.world-economic-review.jp/impact/article4554.html ※ 同サイト掲載の論文・コラム等の内容は執筆者の個人的見解であり、国際貿易投資研究所(ITI)および文眞堂の公式見解を示すものではありません。
  • 河合雅司「【論考】誰のための副首都構想なのか、見極めが必要だ」東京財団(2026年1月6日) https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4848 ※ 同サイト掲載の発表内容や意見は筆者個人の見解であり、東京財団としての見解を必ずしも示すものではありません。

論考中で引用されている二次資料

  • 第三次国土形成計画(全国計画)(2023年7月閣議決定)※戸所論考が参照
  • 農林水産省「地域計画」策定状況(2025年4月末現在)※河合論考が引用
  • 東京都の人口推計(人口ピークは2030年)※河合論考が引用
  • 大都市地域における特別区の設置に関する法律 ※河合論考が参照、副首都法により改正

本記事は上記の公表資料に基づき、内容を整理したものです。数値・事実は各出典の記載に従い、記事作成者による推計・加工は行っていません。

避難行動要支援者の安否確認体制に関する一般質問 質問と答弁の整理

議会 防災 / 2026年9月14日

本質問は、避難行動要支援者の安否確認体制の明確化と地域組織との連携について、危機管理監(危機・防災対策課)と福祉政策課長(部長)に対して行ったものです。以下、論点ごとに質問の要旨と答弁を整理し、あわせて答弁に対する私の評価を記します。

なお、「検討を進めている」「検討してまいります」といった答弁表現は、質問に対して前向きに取り組んでいく意味と受け止め、特に福祉政策課長(部長)の答弁については、大きな成果と受けとめています。

■ 総括

福祉政策課長(部長)からは、保健福祉支援班を中心とした効率的・効果的な安否確認体制の検討、名簿の電子データへの必要項目の付加と最新化、分析手順のマニュアル化、支所での電子データ保存とオフライン参照、他都市事例の調査など、具体的な検討を進めるとの答弁があり、前向きな成果と受けとめています。

一方、危機管理監の答弁については、関係団体との会議体やプランへの記載の必要性を低いとする点、自主防災会会長へ連絡する判断基準が示されない点、名簿の運用・電子データの取扱いを「状況に応じた判断」とするにとどまる点など、実際に災害が起きたときに地域と連動して動くための考えが十分でないと評価しています。

■ 危機管理監(危機・防災対策課)への質問と答弁

(1) 地域防災計画における安否確認と体制構築の主体について

【質問①】 安否確認を行う「市民部及び避難行動要支援者対応に係る者」は市職員であり、災害発生時には地域の防災拠点に配置して対応することになると考えるが、どのような担当者を配置するのか。あわせて、避難支援プランの市民部局(各市民センター)の災害時の役割に「避難行動要支援者の安否確認」を加え、担当課の欄にも明記することについて問う。

【答弁】 安否確認を行う上では、防災拠点となる施設に担当職員を配置することが最善と考え、プランへの記載方法も含めて、現在、福祉部局と協議を進めている。

【評価】 担当職員の配置を「最善」と認め、プランへの記載方法も含めて福祉部局と協議を進めているとの答弁であり、前向きな検討として受けとめる。

【質問②】 安否確認体制を構築するのは市であることは明白であり、社会福祉協議会、民生委員児童委員、介護サービス提供事業者、障害者団体、自治会、自主防災組織等との協力・連携体制を構築するには、これらの関係団体との会議等が必要と考える。あわせて、避難支援プランに会議名や担当部署を明記することについて問う。

【答弁】 関係団体とは日頃より協力・連携体制を築いていることから、改めて会議体を立ち上げたり、プランへ記載したりする必要性は低いものと認識している。

【評価】 この答弁には納得がいかない。日頃の協力・連携があることと、発災時に実効性をもって動ける体制が構築されていることは別である。関係団体が一堂に会して役割と手順を確認する会議体がなく、プランにも明記されないままでは、いざというときに誰が何をするのかが定まらない。会議体の設置とプランへの明記は、体制を実効あるものとするために必要と考える。

(3) 発災時における自主防災組織との連携のあり方について

【質問①②】 発災時に市として地域と連携を図るのであれば、自主防災会等の自主的な行動に任せるのではなく、その学区の想定される被害の状況等から安否確認等が必要と判断した場合には、自主防災会会長もしくは地域の代表等に連絡をして、安否確認体制としての連携をとる必要がある。あわせて、様々な災害の発生時に対応した協力・連携の方法を地域と協議し、実効性のある協力・連携体制を構築することについて問う。

【答弁】 現在、本市から避難指示を発令する際には、該当地域の自主防災会会長に連絡を入れることとしており、災害発生時には地域団体と協力・連携し、対応することとしている。今後も地域の防災組織と連携を密にし、発災時の体制構築に努めてまいる。

【評価】 避難指示の発令時に自主防災会会長へ連絡を入れるとの答弁であったが、どのような状況判断で連絡を入れることにしているのか、その判断基準が不明確である。避難指示に至らない段階でも安否確認の連携が必要な場面はあり、「どの時点で・どういう基準で」会長に連絡するのかが定まっていなければ、地域は動きようがない。この判断基準を問う再質問ができなかったことが悔やまれる。次の機会に改めて質したい。

(4) 避難行動要支援者名簿の運用と電子データのあり方について(危機管理監所管分)

【質問①】 土砂災害や浸水災害のように危険区域があらかじめ定められている災害では、その区域に居住する要支援者について、対象を区域に限ることで「必要な限度」にとどめられる。避難支援プランのリスク区分や、個別避難計画の作成優先度の判断基準(土砂災害警戒区域・浸水想定区域)を、災害時の名簿情報の提供範囲を判断する基準としても用いることについて問う。あわせて、地震のように被害範囲を特定しにくい災害では、被害状況を把握しながら優先順位を付け、対象を絞り込んで地域の支援者に個別に伝え、連携して安否確認にあたる形が確実と考えるが、見解を問う。

【答弁】 プランに例示している、阪神・淡路大震災や特別警報級の大雨に至らないような災害における名簿提供の基準は、状況に応じた判断になると考えており、居住地等で抽出したデータの提供については、個人情報保護の観点から慎重な取り扱いが求められる。地震のように被害範囲を特定することが困難な災害についても同様と考えている。

【評価】 私は、災害の種類や被害状況に応じて、名簿情報を「どの範囲まで・どう提供するか」の判断のあり方を定めておくべきという趣旨で質問したが、答弁は「状況に応じた判断」「個人情報保護の観点から慎重に」とするにとどまり、回答になっていない。あらかじめ判断の枠組みを整えておかなければ、発災時にその都度迷い、対応が遅れる。危機管理監の答弁は、実際に災害が起きたときに地域と連動して動くための考えが十分でないと評価する。

【質問②】 安否情報を扱う職員が、不同意の方を含む避難行動要支援者名簿を用いて分析と判断を行うことを、災害対策基本法第49条の11第1項に基づく内部利用として明確に位置づけることについて問う。

【答弁】 避難行動要支援者名簿に記載のある個人情報の利用については、災害対策本部等で適切に判断し、対応するものと考えている。

【評価】 法的な位置づけを明確にしておくことを求めたのに対し、「災害対策本部等で適切に判断」とするにとどまった。平時から内部利用としての位置づけを明確にしておかなければ、発災時に職員が名簿を使ってよいか迷うことになりかねない。ここも、状況に応じた判断に委ねるのではなく、あらかじめ定めておくべきという趣旨が十分に受け止められていない。

■ 福祉政策課長(部長)への質問と答弁

以下の答弁は、いずれも具体的な検討を進めるとの前向きな内容であり、大きな成果と受けとめている。

(2) 初動支所班もしくは担当職員による安否情報の取りまとめ体制について

【質問①②】 各学区の初動支所班もしくは担当職員を支所に配置し、対策本部の保健福祉支援班とリアルタイムで安否情報を共有できるようにすること、保健福祉支援班が消防局や高齢・障害分野等の関係所属と情報を共有し、介護事業所からも情報収集できる仕組み・体制にすべきと考える。あわせて、6月通常会議の答弁にあった、保健福祉支援班と初動支所班などとの情報収集の検討状況も含めて問う。また、安否情報の電子データを効果的に扱う方法を習得した職員を配置できるようにしておく必要があると考えるが、見解を問う。

【答弁】 大規模災害時に、保健福祉支援班と支所及び各関係所属において、市内部のネットワークを用いて名簿の電子データを共有し、的確に名簿データを取り扱うことのできる職員を支所に配置の上、地域からの安否確認情報を収集することや、健康福祉分野の各所属が介護事業所等から安否情報の提供を受けるなど、保健福祉支援班を中心とした効率的・効果的な安否確認体制について検討を進めている。

【評価】 支所への職員配置、内部ネットワークによる電子データ共有、介護事業所からの安否情報の収集など、質問の趣旨に沿った体制を、保健福祉支援班を中心に検討しているとの答弁であり、大きな前進と受けとめる。

(4) 避難行動要支援者名簿の運用と電子データのあり方について(福祉政策課所管分)

【質問③】 安否情報を扱う職員が用いる名簿の電子データを、災害リスクや区域の区分など、対象者の絞り込みに必要な項目を備えたものとすること、また名簿更新のつど最新のものが用いられるようにすることについて問う。

【答弁】 要介護度や障害者手帳等級などの個人の情報や、土砂災害の危険度など、使用する際に必要となる項目を検討するとともに、名簿の更新に合わせて、できる限り最新の情報を反映することを含め、検討してまいる。

【評価】 必要項目の付加と最新化について、具体的な項目にまで踏み込んで検討するとの答弁であり、成果と受けとめる。

【質問④】 電子データを用いて対象者を絞り込むための分析の手順を、マニュアルとして定めておくことについて問う。

【答弁】 発災時に的確な対応ができるよう、必要な手順について検討を進め、保健福祉支援班活動マニュアルに反映させてまいる。

【評価】 分析手順を保健福祉支援班活動マニュアルに反映させるとの明確な答弁であり、大きな成果と受けとめる。

【質問⑤】 平時から支所に最新の名簿を電子データで保存し、インターネット通信が使えない状況でも参照できるようにすること、およびその保存・管理の方法をルールとして定めることについて問う。

【答弁】 そのような状況も想定し、共有する電子データをUSBメモリー等の電子記録媒体に保存し活用することを検討してまいる。

【評価】 オフライン環境での参照について、記録媒体への保存という具体的方法まで示して検討するとの答弁であり、前向きな成果と受けとめる。

(5) 他都市の災害における名簿の取り扱いの検証について

【質問①】 他都市における名簿の取り扱いの課題や対応について、これまでどのように情報を収集し、本市の取り組みに生かしてきたのか。あわせて、今後どのように情報収集を進め、対応策の検討につなげていくのか問う。

【答弁】 これまでも他都市との情報照会において相互に情報提供や共有をしてきたが、より実効性のある名簿活用の仕組みとなるよう、被災された自治体の情報について調査してまいる。

【評価】 被災自治体の情報を調査し、実効性のある仕組みに生かすとの答弁であり、前向きな成果と受けとめる。

■ 今後に向けて

福祉政策課長(部長)の答弁で示された前向きな検討が、実際の体制整備として着実に進むよう、引き続き注視していく。

一方、危機管理監の所管する、関係団体との会議体の設置とプランへの明記、自主防災会会長へ連絡する判断基準の明確化、災害の種類・被害状況に応じた名簿情報の提供範囲の判断の枠組み、名簿の内部利用としての法的位置づけについては、いずれも「状況に応じた判断」「必要性は低い」とするにとどまった。これらは、発災時に地域と連動して動くために、平時からあらかじめ定めておくべき事項である。特に、自主防災会会長への連絡の判断基準については、再質問ができなかったことが悔やまれるところであり、次の機会に改めて質していきたい。

20260910_.9月議会答弁書 ⬇