大津市議会議員 佐藤弘

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日本の土地政策の最前線:不適切な土地利用を防ぎ、地域の未来を拓く産業用地をどう創るか?

まちづくり 政治 生活 / 2026年8月18日

日本の土地政策が、今、大きな転換期を迎えています。

かつての高度経済成長期やバブル期には「いかに宅地を供給するか」「いかに地価高騰を抑えるか」が主なテーマでした。しかし現在、人口減少に伴う土地需要の低下を背景に、私たちの関心は「いかに土地を適正に管理・利用し、地域経済の受け皿として有効活用するか」へと移行しています。

今回は、2026年現在の最新の動向を示す2つの重要な公的資料を基に、日本の土地をめぐる「課題の整理」と「未来への取り組み」を分かりやすくまとめました。


1. 【課題の整理】今、日本の土地をめぐって何が起きているのか?

現在、日本の土地をめぐっては、大きく分けて2つの課題が顕在化しています。1つは、法規制の“隙間”をついた不適切な土地利用による住民生活や環境への脅威。もう1つは、地域活性化の鍵となる産業用地の深刻な不足です。

課題A:法規制の隙間をつく「不適切な土地利用」

近年、全国各地の住宅地近隣で、以下のようなトラブルが相次いで発覚し、社会的な懸念が高まっています。

  • 危険・騒音を伴う利用:住宅地に近接する土地での廃棄物や土砂の積み上げ、スクラップヤードの建設による安全面への懸念、騒音・悪臭・水質汚濁などの周辺への悪影響。
  • 生活環境の悪化:住宅地に近接する土地が大型車両の駐車場として利用され、周辺住民から生活環境への懸念の声が上がる。
  • 不適切な開発:法令に基づく許可等の手続を経ずに大規模な森林伐採や開発が行われ、周辺の自然環境に悪影響を及ぼす。

これらの事案は、土地の取得段階で利用目的の把握が十分にできず、土地の開発や使用が開始された段階で初めて発覚するため、行政の対応が後手に回りやすいという共通の特徴があります。また、現行の「国土利用計画法」では、届出対象が一定規模以上の大規模な土地取引に限定されているため、小規模な土地取引や相続、無償譲渡などは監視の目を抜けてしまうという課題(把握範囲の不十分さや無届事案など)がありました。

課題B:地域活性化を阻む「産業用地の不足」

一方で、国内投資の拡大や中堅企業の成長が期待される中、多くの地方自治体や企業は**「新たな事業を始めるための産業用地が足りない」**という深刻な問題にも直面しています。

せっかく企業誘致のチャンスがあっても、受け皿となる適切な土地がなければ、地域経済の活性化は進みません。また、使われずに眠っている「低未利用地」をいかに有効な産業用地として再開発し、国内投資の受け皿にするかも、自治体にとって大きなハードルとなっています。


2. 【取り組み】土地の未来を守り、活かす、官民の挑戦

こうした課題に対し、国や地方自治体、専門組織が、法制度の改革(適正管理)と実務的な支援(積極的利活用)の両面から、活発な取り組みを始めています。

取組①:法制度の強化 — 隙間をなくし、継続的に監視する(有識者会議の提言)

政府の「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」は、令和8年8月、不適切な土地利用を未然に防ぎ、問題に幅広く対処するための「国土利用計画法」の抜本的な見直し提言を行いました。

  • 情報把握の「網」を広げる:
    • 届出が必要となる土地の面積要件を引き下げること(全国一律の引き下げに加え、地方公共団体の判断によるさらなる引き下げも可能にする)を検討します。
    • 有償取引だけでなく、相続や無償譲渡についても届出対象として追加することを検討します。
  • 継続的なモニタリング:
    • 取引時点での届出だけでなく、届出後に土地の利用目的を変更する際にも再度の届出を求める仕組みを導入し、継続的なモニタリングを行います。
    • 行政内部で届出情報を円滑に共有する台帳を整備し、地域住民等からの請求があった場合には閲覧を可能とすることで、社会全体での監視機能を高めます。
  • 利用段階での強力な指導・是正命令:
    • これまで「取引段階」のチェックが中心だった同法を、土地の「利用段階」にまで拡張します。不適切な土地利用に対して勧告等を行うだけでなく、災害発生や著しい環境悪化のおそれがある場合には、利用行為 of 差し止めや変更命令、さらには緊急的な行政代執行まで可能とする強力な措置の導入を提案しています。

取組②:実務的な支援 — 眠れる土地を活かし、投資を呼び込む(日本立地センターの活動)

土地利用のルールが厳格化される一方で、優良な産業用地を確保し、地域経済を元気にするための伴走支援も進められています。 一般財団法人日本立地センターは、令和7年度において以下のような多角的なサポートを実施し、確かな成果を上げています。

  • アドバイザリー事業と適地選定調査: 具体的に産業用地整備を目指す全国19件の自治体への「アドバイザリー事業」や、最適な産業団地の候補地選定・開発計画の策定を行う13件の「適地選定調査」を採択し、プロジェクトマネジメントや規制対応をきめ細やかに支援しました。
  • 企業と自治体の「産業用地マッチング事業」: 令和7年6月より、工場適地調査の結果を活用し、土地を探している企業のニーズと自治体の保有する土地情報を結びつけるマッチング事業を本格開始しました。
  • 地域の実情に合わせたプロジェクト支援: 「足柄産業集積ビレッジ構想(神奈川県南足柄市)」の実現に向けた企業誘致ニーズ調査や、全国多数 of 自治体における企業誘致戦略プランの策定支援に参画し、地域の持続可能な発展に貢献しています。

3. まとめ:適正な管理と、積極的な利活用の両立へ

日本の限られた土地資源を守り、かつ活かすためには、不適切な土地利用をシャットアウトする強固な法制度(適正管理)と、眠っている土地を地域の「宝」に変える官民の伴走支援(積極的利活用)を車の両輪として機能させることが不可欠です。

これらが組み合わさることで、日本の地域社会は、安全で安心な環境を維持しながら、新たなイノベーションと投資を呼び込む、持続可能な未来へと歩みを進めることができるでしょう。


【参照元(ソース)のご紹介】

今回の解説記事は、以下の信頼できる2つの公式資料を基に作成しています。詳細な背景や具体的なデータについて深く知りたい方は、ぜひ原文もご覧ください。

  1. 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 提言(令和8年8月発行)
    • 概要:国土交通省が設置した有識者会議による、国土利用計画法の抜本的見直しに向けた提言書。全国で起きている不適切な土地利用の実態を暴き、それに対する法制度面(情報把握の強化、利用段階での規制導入など)からの包括的な解決アプローチを提案しています。
  2. 低未利用地の利活用の促進に関する調査 報告書(令和7年度 一般財団法人 日本立地センター 事業報告書)
    • 概要:深刻化する産業用地不足に対応するため、日本立地センターが実施した自治体・民間企業向けの具体的な伴走支援、適地選定調査、企業とのマッチング事業などの実績をまとめた事業報告書です。