地域公共交通が直面する、コロナ後の一大危機と抜本改革への道
コロナ禍という未曾有の危機がようやく収束した今、私たちの生活の足である「地域公共交通」が、実はさらなる重大な分岐点に立っています。
一般財団法人 地域公共交通総合研究所が2026年8月に発表した「第11回公共交通経営実態調査報告書」からは、現場の事業者たちが直面している極めて深刻な最新実態と、これからの地域社会が避けては通れない「移動の確保」という大きな課題が浮かび上がっています。
今回の記事は、この調査結果をもとにした、地域のバスや鉄道、旅客船が置かれている現状と、未来に向けた改革の方向性の概要についてまとめました。
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1. コロナ禍が去っても、なぜ「一難去ってまた一難」なのか?
観光地が賑わいを取り戻した一方で、地域の公共交通事業者が口を揃えて発するのが「一難去って、また一難」という言葉です。
コロナという危機は去りましたが、その後に待ち受けていたのは、より構造的で深刻な課題です。
コロナという危機は去りましたが、その後に待ち受けていたのは、より構造的で深刻な課題です。
- 人口減少と日常需要の回復遅れ
- 深刻を極める運転士・船員などの人手不足
- 歴史的な物価高騰(燃料費・修繕費・車両更新費)
- 限界に達しつつある路線維持の体制
観光需要は一定の回復を見せる一方で、地域住民の通勤・通学といった「基礎的需要」はコロナ前の水準に戻りきっていません。
さらに、日銀短観などで運輸業界全体の景況感は堅調と報道される一方で、地域公共交通に絞った業況判断(DI)は極めて厳しく、一般の景況感との間に「大きな乖離」が生じているのが実態です。
さらに、日銀短観などで運輸業界全体の景況感は堅調と報道される一方で、地域公共交通に絞った業況判断(DI)は極めて厳しく、一般の景況感との間に「大きな乖離」が生じているのが実態です。
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2. 数字が語る、地域交通の「静かなる崩壊」
報告書に示された具体的なデータは、私たちの足元で地域交通の維持が急速に困難になっていることを如実に示しています。
- バス路線の廃止キロ数が「3倍」に急増
全国の一般路線バスの廃止距離は、2023年度から急増し、2024年度には3,887kmに達しました。これは2015年度(1,312km)と比較して約3倍という驚くべき数字であり、地域交通が存続の分岐点にあることを象徴しています。 - 凄まじい「人手不足」の衝撃
経営上のリスクとして、バス事業者の実に7割以上が「従業員の減少・人手不足」を1位に挙げています(中規模以上78%、小規模71%)。現在の人的体制のまま路線を維持することが「困難」と回答した割合は、中規模以上のバス事業者で75%、小規模でも55%にのぼり、もはや運行を維持したくても物理的に「運転士がいない」という極限状態に達しています。 - 慢性的な赤字体質
営業利益が「赤字」であると答えた事業者は、バスで52%(中規模以上)、鉄軌道で59%(中規模以上)、旅客船で69%(中規模以上)を占め、小規模事業者に至っては旅客船の87%が赤字に陥っています。さらに、営業している路線の「90%以上が赤字(ほぼ全線赤字)」と回答した事業者が、各モードで最多となっています。
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3. 「路線を守る」から「地域の移動手段を確保する」へ
これほどまでに深刻な危機に対し、民間事業者単独の自助努力や、その場しのぎの赤字補填(補助金)だけでは対応できません。
こうした中、地域公共交通総合研究所の代表理事である小嶋光信氏は、従来の「路線を守る」という狭い発想から、「地域の移動手段を確保する」という広い概念への転換を訴えています。
国の「骨太の方針2026」にもその方向性が反映され始めており、以下のような新しいアプローチへの期待が高まっています。
国の「骨太の方針2026」にもその方向性が反映され始めており、以下のような新しいアプローチへの期待が高まっています。
- AIデマンド交通やライドシェア、自動運転の積極活用: 「バスが走らない地域」でも住民の移動を保障する柔軟なネットワークの構築。
- 公設民営方式や民間委託への移行: 自治体がインフラや車両(船舶)を保有し、民間が運行を担うことで、事業者が過度な設備投資や赤字リスクに怯えず、運行努力に専念できる環境づくり。
- デュアルユース(平時・有事の双方活用): 災害時や国家安全保障の観点からも公共交通を重要インフラと位置づけ、平時・有事の双方で活用する仕組み。
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4.公共交通は道路と同じ「社会インフラ」である
道路や水道が公的に維持されるように、公共交通もまた、地域経済を支え、人々の暮らしや命を守る不可欠な「社会インフラ」です。
今回の調査報告書は、私たち利用者にとっても他人事ではありません。誰もが自由に移動できる持続可能な社会を維持するために、国、地方自治体、事業者、そして私たち住民が手を取り合い、地域交通の未来を真真剣に考え、再構築していく抜本的な改革が今こそ急務となっています。
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