大津市議会議員 佐藤弘

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防災士会と自主防災会、それぞれの立場で見えてきた課題 ―瀬田学区の会合・班長会から―

地域活動 市民協働 防災 / 2026年8月3日

8月1日には瀬田学区防災士会の会合、8月2日には自主防災会の班長会(今回は救出救護班・避難誘導班)が開催されました。
地域防災の運営体制が今年から大きく変わる中で、それぞれの場で率直な意見交換が行われましたので、その内容と、そこから見えてきた課題についてご報告します。

■ 運営体制の変化と防災士会の役割

これまで瀬田学区の防災訓練は、防災士会が中心となって計画・準備・運営のすべてを担ってきました。しかし今年度からは、自主防災会が中心となって訓練を進める体制に移行しています。今年度の防災士会の会合では、この体制変更を受けて、防災士会と自主防災会がどのように連携していくかを打ち合わせる場を数回持ちました。

この体制移行に伴って浮かび上がってきたのが、防災訓練はもとより、自主防災組織全体の運営を今後誰が担っていくのかという人材の課題です。防災士という専門性を持つ人材と、自治会・自主防災会という地縁組織との役割分担、そして次の担い手をどう育てていくかは、瀬田学区に限らず多くの地域が直面している課題だと考えます。

■ 班長会で出された意見と課題

8月2日の班長会では、救出救護班と避難誘導班のそれぞれで役割の説明を行い、班長の皆さんと意見交換をしました。出された意見の中から、特に課題と感じた点を整理します。

① 自治会員以外の住民への対応について

「自治会員以外の人についてはどう対応するのか」という意見が出されました。以前から、自治会・自主防災会がなぜ自治会員以外の人まで対応する必要があるのかという声はありました。

普段から付き合いのある隣近所であれば、自然と声を掛け合う関係ができているはずです。この点については、行政や組織が一律のルールを示すというより、地域住民一人ひとりが自分自身で考え、行動を起こすべき性質の問題だと考えています。実際、大津市においても、安否確認は初動時の支所班では行わず、自主防災会をはじめとする地域団体に委ねられているのが現状です。行政の初動体制の限界を踏まえると、地域における互助の仕組みづくりが一層重要になります。

② 一時避難所での個別確認の方法

「一時避難所に集まった際、自治会員の世帯や人数は把握できるが、個別の確認はどう行うのか」という意見も出されました。一時避難所については、火災など特別な事情を除けば、私自身はその必要性についてやや疑問を感じている部分もあり、今後の議論の中で運用の在り方を整理していく必要があると考えています。

③ 他地域の被災経験からの学び

「東北、能登半島、熊本などで発生した災害の際、現地の自治会・自主防災会の活動における課題や成功事例を周知してほしい」という意見がありました。これは私自身も最も重要だと考えている点です。

制度や訓練プログラムを整えるだけでなく、実際に被災した地域の自治会・自主防災会がどのような判断を迫られ、何に苦労し、何がうまくいったのかを知ることは、平時の備えの質を大きく左右します。今後、こうした事例を学区内で共有していく機会づくりについて、行政とも相談しながら検討していきたいと考えています。

④ チェーンソーの使用指導・訓練について

防災訓練でのチェーンソーの使い方の指導・訓練を求める声も出されました。この点は検討課題とした上で申し上げると、実際に地域住民が倒木の処理などの本格的な救出活動を行うことは、安全面から見ても難しいというのが率直な認識です。

むしろ重要なのは、救出救護班として地域住民が担える活動の範囲はどこまでで、専門的な対応が必要な状況ではどう行政・消防・自衛隊などにつなぐべきかを、行政側からきちんと説明し、理解してもらうことだと考えます。役割の境界線を明確にすることが、かえって住民の安全確保につながります。

■ 平時の関係づくりが非常時を支える

今回の会合・班長会でのやり取りを通じて、改めて重要だと感じたのが、平時からの関係構築の大切さです。

この点について、東京財団政策研究所が2026年7月31日に発表した論考「地域は『正解のない問い』とどう向き合うか」(元テレビ朝日報道局プロデューサー・江野夏平氏、シニア政策オフィサー)が示唆に富む指摘をしています。この論考は、熊本県での最大震度7の地震を受けた災害情報基盤の重要性を論じたもので、九州朝日放送(KBC)が主催する「防災ネットワーク会議」への取材をもとにしています。

論考の中で紹介されている、九州大学大学院人間環境学研究院・杉山高志准教授の指摘が印象的です。防災には消火器の使い方やAEDの操作方法のように訓練で習得できる「正解がある問題」と、避難指示のタイミングや高齢者施設の避難開始時期のように、唯一の正解が存在しない「正解がない問題」があるという整理です。避難指示を早く出せば「何も起きなかった」と批判され、遅れれば人命に関わる。その判断の是非は、災害が終わった後でさえ明確にならないことが少なくないと論考は指摘しています。

そして、この論考が示す結論は次の一文に集約されています。

「自治体、研究者、気象の専門家、地域放送局などが、平時から課題を共有し、互いの役割を理解し、信頼関係を築いておくことである。その積み重ねが、非常時の情報共有や意思決定を支える基盤となる。」

これは自治体や専門機関の連携に限った話ではありません。今回の防災士会・自主防災会・班長会での議論も、まさに「正解のない問い」に向き合う場だったと感じています。自治会員以外への対応、一時避難所の運用、救出救護班の活動範囲——これらはいずれも、行政が一律のマニュアルで答えを示せる問題ではなく、平時から地域で議論を重ね、それぞれの立場を理解し合いながら、その時々の最善解を探し続けるべき課題です。

■ おわりに

瀬田学区の防災体制は、防災士会から自主防災会中心への移行という転換期にあります。この変化を単なる運営主体の交代で終わらせず、次の担い手をどう育てるか、自治会員以外の住民とどう関係を築くか、他地域の経験からどう学ぶかといった課題に、行政と地域が共に向き合っていく必要があります。

今回出された意見の一つひとつを大切にしながら、地域がより良い方向に進むよう、引き続き行政と地域の橋渡し役を担ってまいります。



【参考資料・出典】

  • 江野夏平「【論考】地域は『正解のない問い』とどう向き合うか ― KBC防災ネットワーク会議に見る新たな公共性 ―」東京財団政策研究所、2026年7月31日発表(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=5014)