総務省の最新調査から見えた!成年後見制度の現状と課題
認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分な方の財産や権利を守る「成年後見制度」。
少子高齢化が進み、身寄りのない高齢者が増える中、そのニーズはますます高まっていくと見込まれています。
少子高齢化が進み、身寄りのない高齢者が増える中、そのニーズはますます高まっていくと見込まれています。
しかし、総務省が最近まとめた調査報告書を読むと、制度の利用者数は増えているものの、お住まいの市区町村によって利用状況に大きなばらつきがあることが分かりました。
誰もが安心して制度を利用できるようにするためには、何が必要なのでしょうか?
誰もが安心して制度を利用できるようにするためには、何が必要なのでしょうか?
今回は、総務省の調査結果から見えてきた「3つの壁」と現場のリアルな声、そして行政が今後取り組むべき対応策について解説します。
1. 調査で判明した「利用促進」の3つの壁
制度を本当に必要としている人に届けるためには、まず地域の実態を把握することが重要ですが、調査資料からは以下の3つの壁が浮かび上がってきました。
① 利用ニーズが把握しきれていない 驚くべきことに、約85%の市区町村が、将来想定される「利用ニーズ」を把握していません。必要性は感じつつも、「把握方法や手順が分からない」と悩む自治体が半数以上を占めているのが現状です。アンケート調査は質問の設計が難しく、推計方式は過大な数字が出がちという実務上の難しさがあるようです。
② 地域の相談窓口での「つなぎ」の迷い 高齢者や障害者と直接接する地域包括支援センターなどの「相談支援機関」が、制度の利用が必要な人を専門の「中核機関」へうまくつなげていない現状があります。現場の約2割が「制度が複雑で理解が難しい」と答え、また2〜3割程度が「どのようなケースをつなげばいいか分かりにくい」と回答しています。
③ 家庭裁判所との連携不足 後見人を選任する家庭裁判所と市区町村との連携も十分ではありません。約37%の市区町村が未連携であり、そのうちの約3割が「司法機関である家庭裁判所に依頼することに抵抗感がある」と回答しています。
2. 利用者や現場からの「さまざまな声」
報告書には、実際に制度を利用している親族後見人や、現場の支援スタッフからの切実な声も多数記載されていました。
- 「家庭裁判所に提出する報告書の作成の負担が大きい」
- 「親族後見人の横のつながりがないので講習会等の機会を設けてほしい」
- 「後見人の後見事務に対して、中核機関がどのような支援を行ってくれるのか分からない」
- 「本人や親族に制度のメリットや費用(報酬の目安など)を説明するのが難しい」
特に親族後見人は孤立しがちであり、事務的な負担や精神的な不安を抱えながら活動している実態が浮き彫りになっています。
3. 声に応える!行政が取り組むべき課題と対応策
こうした調査結果や現場の声を受け、総務省は厚生労働省などに対して、以下のような対応策を進めるよう求めています。
① 誰もが分かりやすい「基準」と「説明ツール」の作成 相談支援機関が迷わず必要な人を支援につなげるよう、中核機関へつなぐ際の明確な「基準」や「目安」を作成することが求められています。
また、未利用者への説明のハードルを下げるため、制度のメリットや費用の目安を具体的に示した分かりやすい説明資料の作成も必要です。
また、未利用者への説明のハードルを下げるため、制度のメリットや費用の目安を具体的に示した分かりやすい説明資料の作成も必要です。
② 相談支援機関への研修サポートの強化 国や都道府県が、相談支援機関の職員に向けた実践的な研修を充実させ、現場の制度理解を深めるサポートを強化することが重要とされています。
③ 家庭裁判所と市区町村の「顔の見える関係」づくり 家庭裁判所と市区町村が意見交換の場を設けることで、連携のハードルが大きく下がることが分かっています。
行政は、意見交換の好事例や方法を全国に周知し、両者が連携しやすい環境を促す必要があります。
行政は、意見交換の好事例や方法を全国に周知し、両者が連携しやすい環境を促す必要があります。
④ 親族後見人を孤立させない「寄り添う支援」の構築(重要) 市区町村は親族後見人の連絡先を把握しづらく、支援を届けにくいという大きな課題があります。 これに対し、「家庭裁判所から親族後見人に送付する書類の中に、地域の支援窓口(中核機関)のパンフレットを同封してもらう」ことや、「同意を得た上で、家庭裁判所から中核機関へ連絡先等の情報を提供する」といった仕組みづくりが有効な対応策として提案されています。
おわりに
総務省の調査報告書を読んで、成年後見制度は判断能力に不安を抱える方の生活を守る大切なインフラである一方、まだまだ現場レベルでの連携やサポート体制に課題が多いことが分かりました。
利用者やその家族が孤立せず、未利用者がためらうことなく制度を活用できるよう、行政・司法・地域の福祉機関が一体となった「寄り添うサポート体制」の構築が今後さらに進むことを期待したいです。

【参考資料】 今回読んだ資料はこちらです。
- 成年後見制度の利用促進に関する調査結果(概要) https://www.soumu.go.jp/main_content/001082907.pdf
- 成年後見制度の利用促進に関する調査 結果報告書 https://www.soumu.go.jp/main_content/001082908.pdf