夏休みは、子どもに「思いっきり遊んでもらう」季節に
もうすぐ夏休み。子どもたちにとって、長期休業期間は学校とは異なる環境の中で、自分の判断で過ごし方を選び、多様な学びや体験に触れることができる貴重な機会です。
ともすれば「夏休み=机上の学習を進める期間」というイメージが先行しがちですが、国や東京都の直近の発信を見ると、むしろ「遊び」や「体験活動」そのものを充実させようという方向性が明確に打ち出されています。今回は、文部科学省の事務連絡と東京都子供政策連携室の発表という2つの公式資料をもとに、この夏、子どもにどう「大いに遊んでもらう」かを考えます。
■ 国の動き:長期休業期間中の学び・体験の充実を要請
文部科学省総合教育政策局地域学習推進課は、令和8年7月3日付の事務連絡「長期休業期間中等の学び・体験の充実について(要請)」を、各都道府県・指定都市の教育委員会(社会教育主管課、生涯学習・青少年教育主管課)宛てに発出しました。
この事務連絡はまず、長期休業期間について、子供や家庭の判断で自由に過ごし方を選択でき、日常とは異なる環境の中で多様な学びや体験に触れることができる貴重な機会であると位置づけています。その一方で、近年は家庭環境の多様化などを背景に、多様な学び・体験活動の機会を充実させることが課題になっているとも指摘しています。
背景には、令和8年5月15日にこども家庭庁など関係省庁が連名で発出した「夏季休業期間中の酷暑対策及び食支援に係る各施策の活用について」という別の事務連絡があります。今回の要請は、この関係省庁連名事務連絡の趣旨も踏まえたものとされています。
要請の主な内容(5項目)
事務連絡は、各教育委員会に対して、地域の実情に応じて次の5点への積極的な対応を求めています。
| 項目 | 内容の概要 |
|---|---|
| ①学校施設・社会教育施設の開放及び積極的活用 | 学校施設、公民館、図書館、青少年教育施設、スポーツ・文化施設、科学館等について、子供が安心して学び、活動し、過ごせる場としての活用。特に酷暑時は空調設備を備えた施設の活用を検討すること |
| ②学び・体験活動等の充実 | 放課後子供教室、社会教育団体による体験活動、公民館事業、読書・文化芸術・スポーツ・自然体験・科学技術体験活動等の充実。スポーツ活動時は熱中症対策など安全管理への配慮 |
| ③子供や保護者への周知・情報提供 | 長期休業開始前の適切な時期に、学校・教育委員会・社会教育施設を通じて情報を周知。文部科学省の体験活動ポータルサイトの周知も含む |
| ④地域における様々な関係者の連携・協力の推進 | 社会教育主事、社会教育士、地域学校協働活動推進員等が中心となり、学校・社会教育施設・関係団体・企業・大学・NPO等との連携をコーディネート |
| ⑤ニーズ把握及び好事例の共有 | 子供や保護者等のニーズ把握と、効果的な取組事例の域内での情報共有 |
(出典:文部科学省総合教育政策局地域学習推進課「長期休業期間中等の学び・体験の充実について(要請)」令和8年7月3日付事務連絡)
なお、この要請は夏季休業期間に限定したものではなく、冬季休業・春季休業を含む長期休業期間全般を対象としている点も明記されています。
現場の好事例に見る「遊び」の効果
同事務連絡には別添資料として、公民館・図書館・青少年教育施設・地域学校協働活動の好事例が多数紹介されています。その中でも注目したいのが、青少年教育施設の事例です。
妙高青少年自然の家(新潟県)と吉備青少年自然の家(岡山県)が連携して実施した「吉備高原と犬島でのキャンプ」(6泊7日)では、野外炊事やイカダ作成、島探検などの体験活動を通じて、主体性やコミュニケーション力とあわせて非認知能力を育成することを目的として掲げています。また、赤城青少年交流の家(群馬県)の「あかぎ無限大キャンプ」でも、計画的な話し合いと協働的体験を軸に主体性と多様性理解を育むことを目指し、参加者自身が活動内容や目標を決定・合意形成する機会を重視しているとされています。
(出典:同事務連絡 別添「青少年教育施設事例~夏休み等の活動充実~」)
こうした事例からは、体験活動や遊びが、学力とは異なる「非認知能力」(主体性、協働性、合意形成力など)を育む場として国レベルでも位置づけられていることが読み取れます。
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■ 東京都の動き:専門家の声で「外遊び」を後押し
同じ時期に、東京都子供政策連携室も動いています。令和8年7月8日、東京都は「夏を思いっきり楽しもう!『夏の子供の外遊び』をテーマとした動画を公開~専門家インタビュー編~」と題するプレスリリースを発表しました。
東京都は、夏の暑い時期でも子供が体験活動・遊びを思い切り楽しめるよう、ハード・ソフト両面から暑さ対策に取り組み、子供の健やかな育ちを支援するとしています。その一環として、「暑さ対策をしながら夏でも外遊びを楽しむ」という切り口での普及啓発コンテンツを順次発信していく方針で、第一弾として小児科専門医と保育アドバイザーへのインタビュー動画を公開しました。
動画の内容
| テーマ | 出演者 | 解説内容 |
|---|---|---|
| 熱中症対策と外遊び | 首里京子先生(日本小児科学会認定小児科専門医・指導医、東京都医師会理事、サニーガーデンこどもクリニック院長) | 効果的な水分補給、暑熱順化の大切さ、外遊びの注意点 |
| 夏の外遊びの楽しみ方 | 野村直子先生(保育アドバイザー、new education LittleTree代表) | おすすめの外遊び、遊びに適した時間帯、水分補給と服装 |
(出典:東京都「夏を思いっきり楽しもう!『夏の子供の外遊び』をテーマとした動画を公開~専門家インタビュー編~」令和8年7月8日発表)
動画は子供政策連携室ホームページ、公式YouTube、公式Instagram(cfoo〈クフー〉)のほか、Web広告やデジタルサイネージ等でも発信されるとしています。この取組は「2050東京戦略」の戦略1「子供(Children):子供目線に立った政策の推進」を推進するものと位置づけられています。
■ 見えてくる共通のメッセージ
2つの公式資料を並べると、次のような共通の方向性が見えてきます。
- 長期休業期間は「学力の補習」だけでなく、遊びや体験そのものに価値があるという前提に立っていること
- ただし近年の酷暑を踏まえ、安全に遊べる環境づくり(空調設備のある施設の活用、熱中症対策の周知)が不可欠であること
- 遊びや体験活動には、主体性・協働性・合意形成力といった非認知能力を育む側面があること(文部科学省の好事例より)
■ まとめ
| 資料 | 発信元 | 発表日 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 「長期休業期間中等の学び・体験の充実について(要請)」 | 文部科学省総合教育政策局地域学習推進課 | 令和8年7月3日 | 学校・社会教育施設の開放、体験活動の充実、周知、連携、ニーズ把握の5項目を要請 |
| 「夏を思いっきり楽しもう!『夏の子供の外遊び』をテーマとした動画を公開」 | 東京都子供政策連携室 | 令和8年7月8日 | 小児科専門医・保育アドバイザーによる外遊びの安全・楽しみ方の解説動画を公開 |
机の前で過ごす時間だけでなく、暑さ対策をしながら思い切り体を動かし、自然や人と関わる体験の中で、子どもたちが自ら考え、決め、乗り越える経験を積むこと。それが今夏、国・都が共通して後押ししている方向性だと言えます。ご家庭や地域でも、この夏、安全に配慮しながら子どもの「遊ぶ時間」を意識的に確保していただければと思います。
【参考資料・出典】
- 文部科学省総合教育政策局地域学習推進課「長期休業期間中等の学び・体験の充実について(要請)」(令和8年7月3日付事務連絡) https://www.mext.go.jp/content/20260707-mxt_chisui-000050931_2.pdf
- 東京都子供政策連携室「夏を思いっきり楽しもう!『夏の子供の外遊び』をテーマとした動画を公開~専門家インタビュー編~」(令和8年7月8日発表) https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/07/2026070803