大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

障害福祉サービスの現場から見える課題と改善の方向

介護 社会保障 / 2026年6月30日

― 利用者の声と厚労省調査報告から考える「支援の質」と「制度のすき間」 ―

制度の整備が進む一方で、現場の声は届いているか

令和7年度厚生労働省の調査報告書では、全国129自治体を対象に「障害福祉サービス事業者の指定事務」や「総量規制」「意見申出制度」の運用実態が分析されました。 この報告書は、制度の入口である「事業者指定」がいかにサービスの質を左右するかを明らかにしています。 一方、現場の利用者からは「生活が苦しい」「支援が足りない」という切実な声が上がっています。 本記事では、利用者の声・調査データ・改善案を重ね合わせ、今後の支援のあり方を考えます。

◆障害福祉サービス事業者等の指定の在り方に関する調査研究 報告書
◆障害福祉サービス利用者等の生活実態調査

【利用者の声】生活のリアルな困りごと

  • 「食費や光熱費が上がって、月末は本当にギリギリ」
  • 「年金だけでは暮らせない。働きたいけど体調が続かない」
  • 「家事ができないのに、支援時間が短くて困っている」
  • 「夜間に発作が起きた時、頼れるところがない」
  • 「お金の管理ができず、詐欺が怖い」
  • 「一人暮らしで話し相手がいない」

こうした声は、在宅で障害福祉サービスを利用する人々の生活の現実です。 支援の量・質・制度の運用が、生活の安定に直結しています。

【データで見る現状】数字が示す課題

項目 内容
生活が「苦しい」と回答  37.1%
平均月収  約10万円(年金+工賃)
工賃中央値  約1万円
貯蓄中央値  約30万円
医療的ケアが必要な人  18.9%
金銭管理が自分でできる人  32%
単身者割合  約33%
居宅介護利用時間  平均22.6時間/月(中央値10時間)

これらの数字は、生活基盤の脆弱さと支援量の不足を示しています。


【図表】家計と支援量のイメージ

【在宅利用者の家計イメージ】

収入(月平均)
--------------------------------
障害年金    :約 7〜8万円
工賃(中央値) :約 1万円
その他収入   :数千円〜数万円
--------------------------------
合計      :約 10万円前後

支出(月平均)
--------------------------------
住居費     :約 20,000円
食費      :約 30,000〜35,000円
光熱費     :約 10,000〜15,000円
医療費     :数千円〜1万円
日用品     :約 10,000円
--------------------------------
合計      :約 8〜10万円
(※貯蓄が難しい構造)



【訪問系サービスの利用量】

居宅介護(身体介護・家事援助)
--------------------------------
平均利用時間 :22.6時間/月
中央値    :10時間/月
必要量の声  :「30〜50時間は必要」

重度訪問介護
--------------------------------
利用者の声  :「夜間の見守りが不足」
「医療的ケアに対応できる事業所が少ない」
--------------------------------

【厚労省報告書の要点】制度運用の課題と改善方向

報告書では、自治体の指定事務や関連制度の運用に以下の課題が指摘されています。

1. 指定事務のばらつき

自治体ごとに確認項目や審査方法が異なり、サービスの質確保に差がある。 → ガイドライン整備による平準化が必要。

2. 総量規制の実施率の低さ(約2割)

供給量が見込量を超えても規制に踏み切れない自治体が多い。 → 地域ニーズを反映した見込量の算出と公募制の併用が有効。

3. 意見申出制度の活用不足

都道府県では半数が活用または検討中だが、指定都市・中核市ではほぼ未活用。 → 制度の周知と実効性ある条件付与の仕組みが必要。

4. サービスの質確保策

事前説明会・管理者面談・指定前研修など、制度理解を深める取組が効果的。 → 指定段階での質確保を制度化すべき。


【改善案】行政・地域が取り組むべき方向

① 生活基盤の支援強化

  • 住居費・光熱費の補助
  • 食費支援や生活支援金の拡充
  • 工賃向上と就労支援の強化

② 訪問介護・外出支援の拡大

  • 必要量に応じた支援時間の確保
  • 買い物・外出支援の充実
  • 単身者への重点支援

③ 医療的ケアに対応できる体制整備

  • 医療的ケア対応の訪問介護・看護の拡充
  • 夜間・緊急時の支援体制の構築
  • 医療と福祉の連携強化

④ 相談支援の質向上

  • 本人中心の計画作成
  • 医療・就労・家族との連携を計画に組み込む
  • モニタリングの強化

⑤ 孤立防止の地域支援

  • 地域の見守り体制
  • 交流の場の整備
  • 常設の相談窓口の充実

⑥ 制度間の不整合の解消

  • 障害福祉サービスの自己負担軽減
  • 生活保護基準との整合性改善
  • 交通費・医療費の負担軽減

【まとめ】「制度」と「生活」をつなぐ視点を

厚労省の報告書が示すように、制度の整備は進んでいます。 しかし、利用者の生活実感に寄り添う運用がなければ、支援の質は担保されません。 今後は、制度の入口(指定)から出口(生活支援)まで一貫した質の確保が求められます。 地域の声を政策に反映し、誰もが安心して暮らせる障害福祉サービスの仕組みを築いていくことが、次の一歩です。