ナフサ不足の現状、政府の“最低限の確保”とは?
ホルムズ海峡の実質封鎖をきっかけに、日本の化学産業の最上流にあるナフサの供給不安が急速に高まっています。 ナフサはプラスチック、医薬品、タイヤ、包装材など、生活のあらゆる製品の原料となる重要物資です。
しかし今、日本では供給量の大幅減少と価格高騰が同時に進んでいます。
大和総研レポートのレポートを参考にまとめてみました。
1. ナフサ不足の現状(数字で見る“ひっ迫”)
大和総研レポートによると、2026年4月時点で:
- 中東産ナフサ輸入:前年同月比 ▲80%
- 世界全体からの輸入:▲45%
- 国内生産:▲23%
- 国内向け販売量:▲36%
つまり、 輸入も国内生産も大きく落ち込み、流通量が3割以上減っている状態です。
その結果、ナフサ価格は 年初比+83%まで急騰。
川上の化学製品も50〜70%上昇し、 今後は川中・川下の製品価格にも波及すると見込まれています。
2. 日本は原油を輸入してナフサを精製できる。しかし“量が足りない”という構造問題
ここが誤解されやすい重要ポイントです。
日本は原油を輸入し、国内の製油所で ガソリン・軽油・灯油・ナフサなどを同時に精製できます。
しかし、レポートが示す通り:
- 国内で精製されるナフサは全需要の39%しかない
- 残り61%は“完成品として輸入”に依存
つまり、
国内で精製できるナフサ量は、必要量を全く満たしていない。 だから輸入が止まると一気に不足する。
原油を多く輸入しても、 製油所の設備や原油の性質上、 ナフサだけを増やすことはできないという制約があります。
3. 政府は「最低限の量は確保」と説明。しかし“最低限”とは?
政府は「年度を越えて供給継続が可能」と説明しています。 ただし、この“最低限”には注意が必要です。
政府の言う“最低限”とは:
- 供給がゼロにならない程度の量
- 完全停止を避けられる量
- 代替調達+備蓄で“継続”はできる量
つまり、
“通常操業できる量”でも“需要を満たす量”でもない。 あくまで「止まらない」ための最低ライン。
現実には、販売量▲36%という数字が示す通り、 現場では実質的な不足が起きているのが実態です。
4. なぜ“最低限は確保”と言いながら不足感が強いのか
理由は3つあります。
● ① 流通量そのものが大幅に減っている
供給が半分近く減れば、当然川上で詰まります。
● ② 価格高騰で取引が停滞
ナフサ価格+83%では、買えない企業も出てきます。
● ③ 過剰発注・売り渋りが発生
不安心理が流通をさらに悪化させています。
5. 今後のリスク:供給半減ならGDP▲0.43%押し下げ
レポート試算では、 ナフサ供給が半減すると実質GDPは▲0.43%。
影響が大きいのは:
- 合成樹脂
- 医薬品
- プラスチック・ゴム製品
- 農業(化学肥料)
など、生活に直結する分野です。
