大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

「それはうちの部署じゃない」をなくす!全庁的立場で災害対応体制を構築しよう

まちづくり 災害 行革 防災 / 2026年6月6日

はじめに――なぜ「全庁体制」が機能しないのか

能登半島地震をはじめ、過去の大規模災害の振り返りでは、毎回同じ課題が繰り返し指摘されています。

「災害対応は一部の部局が行うものという認識が強く、全庁体制で対応する意識が希薄だった」
令和6年能登半島地震対策検証報告書(石川県)

知事が「非常事態宣言」を発令しても、各部局の動きが変わらなかった――これは石川県だけの話ではありません。東日本大震災、熊本地震、常総市洪水など、全国の災害検証報告書でも同じ課題が繰り返し浮かび上がっています。

では、なぜ「全庁体制」は機能しないのでしょうか。そして、どうすれば変えられるのでしょうか。


自治体に求められる「3つの組織的要件」

三菱総合研究所の分析(自治体の災害対応力を高める職員の「危機対応メタスキル」)によると、自治体の災害対応には以下の3つの要件が求められます。

① 全庁的な指揮・実行体制

  • 防災担当部局だけでなく、すべての部局が「自分事」として動く必要がある
  • 計画・マニュアルに役割を書いても、「当事者意識」がなければ機能しない
  • 災害対策本部の意思決定が各部局に届き、自ら人員・情報・資源を動員できるか

② 部局・分野横断での調整

  • 避難所運営・物資輸送・教育再開・災害広報など、部署をまたぐ課題が同時多発する
  • 「被災者のいのちを守り、社会機能を回復する」という大目標のもとで、縦割りを超えた連携が必要

③ 外部との連携

  • 自衛隊・警察・消防・NPO・応援職員など、多様な外部機関との協働が不可欠
  • 外部からの支援は強力だが、優先順位の設定・地域事情を踏まえた判断は地元自治体が担わなければならない

制度を整えるだけでは足りない

国はこれらの課題に対し、ガイドラインや受援計画の手引きなど制度整備を進めています。能登半島地震では発災後3カ月間で約60団体・7.7万人日もの応援職員が派遣されました。

しかし、制度は「整えるだけで自動的に動く」ものではありません。制度を使いこなす職員の力があってこそ、仕組みは機能するのです。


カギを握る「危機対応メタスキル」とは

防災知識だけでなく、あらゆる危機対応に通底する基盤的な能力=「危機対応メタスキル」を平時から育てることが重要です。

土木学会の研究をベースに、以下の6つの能力が提唱されています。

能力 内容 関連する組織要件
① 意思決定力 難しい決断をやりきる力 全庁的な指揮・実行体制
② プロジェクト推進力 決断したことを着実に進める力 部局横断の調整・実行
③ 組織形成力 状況に応じた対応チームをつくる力 部局横断の調整
④ 人材登用力 適任者を見つけ登用する力 外部との連携
⑤ 情報共有力 地域内の情報と人材をつなぐ力 外部との連携・全庁対応
⑥ 受援力 外部の支援を受け止めて活用する力 外部との連携

これらは災害時だけに使う特殊スキルではありません。平時の行政運営やまちづくりの中で、日々少しずつ磨かれる能力です。


実践事例:静岡県袋井市の「官民共創まちづくり」

静岡県袋井市では、部局横断・官民連携の「官民共創ワーキング」を定期的に開催。複数の部署と民間が一堂に集まり、分野横断テーマについて議論しています。

この取り組みは、災害対応力の観点からも非常に示唆的です。

  • 情報共有力・人材登用力の実践的な訓練の場になっている
  • ワーキングをきっかけに部局横断・官民連携の事業が実際に動いており、意思決定力・プロジェクト推進力・組織形成力・受援力の実地鍛錬にもなっている
  • 2026年度施行の「第3次袋井市総合計画」では、官民共創を全庁的な行政経営方針として位置づけ

「平時のまちづくり=有事の災害対応力」という視点が、ここに凝縮されています。


まとめ――「全庁の当事者意識」をどう育てるか

「それはうちの部署じゃない」という意識を変えるのは、マニュアルの改訂でも訓練の追加でもありません。平時から全庁で「危機対応メタスキル」を磨き続ける文化を築くことが本質的な解答です。

現在、政府は2026年度中の防災庁設置を進めており、「防災大学校(仮称)」の設置も検討されています。防災人材の育成においても、知識の習得だけでなく、この「メタスキル」を全庁的に育む視点を組み込むことが強く求められています。