中東情勢が直撃・建設資材の高騰不足で何が起きているか【第二弾】~設備工事費の急騰と発注者・施主への緊急のお願い~
前回の記事では、中東情勢を背景とした建設資材の高騰と不足の現状についてお伝えしました。多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。
今回は「第二弾」として、特に深刻化している設備工事費の急騰と、民間事業者・施主の皆さまへの具体的なお願いについてお伝えします。
■ まず確認——建設コストは今どこまで上がっているのか
日本建設業連合会(日建連)が2026年5月に発表した最新資料(「建設資材高騰・労務費の上昇等の現状〔四半期版〕2026年春版」)によると、建設資材物価は2021年3月と比較してこの5年間で37%上昇しています(一般財団法人建設物価調査会の推計)。
直近の2年間に絞ってみても、2024年3月比で7%上昇(建設総合平均)しており、特に土木部門では10%上昇と、上昇が止まらない状況が続いています。
主な品目の上昇率(直近2年間:2024年5月号→2026年5月号、東京)は以下のとおりです。
| 品目 | 上昇率(2年比較) |
|---|---|
| 600Vビニル絶縁電線 IV 1.6mm単線 | 55%上昇 |
| アルミ地金 | 43%上昇 |
| ストレートアスファルト | 29%上昇 |
| 生コンクリート | 20%上昇 |
出典:一般財団法人建設物価調査会「建設物価」2024年5月号・2026年5月号掲載価格(東京)の比較
■ 労務費(職人さんの賃金)も急上昇
「公共工事設計労務単価(全国・単純平均)」は、この2年間で9.5%引き上げられ、全国全職種加重平均値が25,834円となり、初めて25,000円を超えました(2026年2月27日・国土交通省発表)。
また、国土交通大臣と日建連を含む建設関係4団体は、2026年の技能労働者の賃上げ目標を**「おおむね6%」**と申し合わせており、現場の人件費はさらに上昇する見込みです(国土交通省不動産・建設経済局建設業課長通知、2026年3月25日)。
材料費割合を50〜60%、労務費率を30%と仮定した場合、この2年間の資材高騰・労務費上昇の影響で、全建設コストは平均4.4〜5.1%上昇しています(土木部門5.8〜6.8%上昇、建築部門3.7〜4.3%上昇)。
■ 特に深刻——設備工事費の「別次元」の高騰
ここからが今回の本題です。設備工事(電気・空調・衛生・昇降機など)の費用上昇は、建設資材の平均的な指数をはるかに超えています。
日建連が大手建設会社12社を対象に調査した結果(2020年12月→2026年3月比較)では、特注品等の設備機器の価格上昇率は以下のとおりです(出典:「設備工事費上昇等の現状について 2026年春版」日建連発行)。
| 設備の種類 | 上昇率(約5年間) | 物価調査会の汎用品指数との比較 |
|---|---|---|
| 空調機類(特注品) | 111%上昇 | 物価調査会:約23%上昇 |
| 自動制御 | 126%上昇 | 物価調査会:約57.8%上昇 |
| 変電設備 | 71%上昇 | 物価調査会:数値なし |
| 自家発電装置 | 94%上昇 | 物価調査会:数値なし |
| エレベーター(特注品) | 98%上昇 | 物価調査会:数値なし |
| ダクト類 | 74%上昇 | 物価調査会:約23.8%上昇 |
※数値は大手建設会社12社(一部11社)の調査価格を平均したもの。個々の機器の値上がり状況を示すものではありません。
なぜこんなに高いのか? 主な理由は以下のとおりです。
- 大規模建築物では特注品が多く、汎用品ベースの物価調査会指数に反映されない
- 全国で工場・データセンター・大型再開発が同時進行し、設備工事の需給が極めてタイトになっている
- **時間外労働の上限規制(2024年度適用)**により、追加経費が発生している
- 遠方からの技能労働者の宿泊費・交通費など、現場経費も上昇している
■ 中東情勢が追い打ちをかけている
2026年4月24日時点(日建連会員ヒアリング)によると、中東情勢の影響により、建設資材・設備を問わず広範な品目で納期遅延・価格改定・受注停止が発生しています(出典:「中東情勢による建設資材の調達への影響について」日建連発行)。
特に深刻なのが、石油系素材を使った製品への影響です。防水材(アスファルト防水・ウレタン防水)、シーリング材、塗料・シンナー類、樹脂配管・樹脂バルブ、断熱材(スタイロフォーム等)など、内装・仕上・設備の幅広い分野で「価格改定・納期遅延・受注制約」が同時に発生しています。
■ エレベーターは「今すぐ発注しても2027年度以降」
昇降機(エレベーター)の需給ひっ迫は特に顕著です。同資料によると、首都圏の場合の対応可能時期は次のとおりです。
- 15人乗りを超えるエレベーター(特注品):原則として2027年度以降着工(メーカーによっては2033年度以降)
- 超高層建物用エレベーター(特注品):原則として2029年度以降着工(メーカーによっては2033年度以降)
今からご計画の建物に大型エレベーターが必要な場合、工期全体への影響を含めた早急な相談が不可欠です。
■ 発注者・施主の皆さまへ——今すぐ必要な対応
日建連は、民間事業者・施主の皆さまに対して、以下の点について理解と協力を求めています。
1. 設備工事費の適正な価格での発注を
上述のとおり、設備工事費は物価調査会の平均指数を大幅に上回っています。各建設会社から個別説明を受けた上で、実態に即した価格での発注をお願いします。
2. 早めの相談・発注を
設備協力会社はすでに多くの工事を抱えており、すぐに着工できる状態ではありません。少しでも早い段階での相談が、コスト増を抑え、適切な工期確保につながります。
3. 適正な工期の確保を
設備協力会社においても、建設業の時間外労働上限規制に対応した「4週8閉所(週休2日)」の取り組みが進んでいます。工期が短すぎる案件は受注を回避される傾向があります。余裕のある工期設定をお願いします。
4. 設計変更・着工時期変更はできるだけ避けて
設計段階での仕様変更、着工後の設計変更、着工時期の変更は、工期遵守の上で大きな負担・コスト増につながります。できる限り早期に仕様を確定させてください。
■ 国への対応策も求められている
こうした事態は、個々の発注者・施主と建設会社だけの問題ではありません。建設資材の安定供給確保、労務費の適正反映、工期・工費の適正化に向けた国レベルの政策対応も引き続き求められています。
現在、国土交通省においても建設資材の安定供給確保に向けた取り組みが進められていますが、中東情勢や円安、世界的な資源価格の高騰が続く中、さらなる対策の強化が必要です。
■ まとめ
| 項目 | 現状 |
|---|---|
| 建設資材物価(5年間) | 37%上昇(建設総合平均) |
| 建設資材物価(2年間) | 7%上昇(建設総合平均) |
| 公共工事設計労務単価(2年間) | 9.5%引き上げ |
| 全建設コスト(2年間) | 4.4〜5.1%上昇(平均) |
| 設備工事費(特注品・約5年間) | 71〜126%上昇(品目による) |
| エレベーター着工可能時期(首都圏) | 2027年度以降〜2033年度以降 |
建設工事を計画している事業者・施主の皆さまには、最新の建設コストの実態をご理解いただいた上で、早期相談・適正価格・適正工期での発注計画を立てていただくことが、今もっとも重要な対応策です。

【参考資料・出典】
- 「建設資材高騰・労務費の上昇等の現状〔四半期版〕2026年春版」(一般社団法人日本建設業連合会、2026年5月発行)
- 「設備工事費上昇等の現状について 2026年春版」(一般社団法人日本建設業連合会、2026年5月発行)
- 「中東情勢による建設資材の調達への影響について」(一般社団法人日本建設業連合会、2026年4月24日時点ヒアリング)
- 建設資材物価指数:一般財団法人建設物価調査会「建設物価」各号
- 公共工事設計労務単価:国土交通省(2026年2月17日発表)
この記事は上記資料をもとに作成しています。個別案件の工事費・工期については、必ず担当建設会社にご確認ください。