中東情勢が直撃!建設資材の高騰・不足で何が起きているか

中東情勢が建設資材を直撃!ー資材の高騰・不足で住宅等の建設に大きな影響
ホルムズ海峡の実質的な封鎖に伴う原油供給不安が、建設業界に深刻な影響を与えています。燃料費の上昇にとどまらず、製造過程で燃料・電力・石油化学原料(ナフサ)を使用するほぼ全ての建設資材に価格高騰と供給不足が波及しています。
全国建設業協会(全建)が令和8年4月に実施した緊急アンケート(土木・建築専門委員会委員企業18社対象、回答15社)の結果と、同協会が政府に提出した緊急要望書をもとに、現状と対応策を整理します。
同協会のアンケート調査結果でも明らかなように、資材の高騰・供給不足により工事の遅れが常態化しており、資金繰りの悪化から倒産の危機に直面している事業者も出始めています。また、個人の住宅についても、建築途中で資材が入荷できず工事が止まってしまうケースや、資器材がいつ届くか見通しすら立たない状態が続いているとの報道もされています。こうした事態は、住宅の建築を依頼した個人(建築主)にとっても、引渡し遅延・追加費用・ローン計画の狂いなど、深刻な問題に直結することは間違いありません。
1 何が起きているか ── アンケートで明らかになった実態
① 価格高騰の状況
アンケートによると、特に深刻な価格上昇が確認された資材とその上昇幅は以下の通りです(会員企業の報告に基づく)。
※ 上記数値は全建緊急アンケート調査(令和8年4月)の会員企業回答をもとにしています。
② 入荷遅延・供給不足の状況
- シンナー・塗料等:通常数日で入手できたものが入荷未定・長期化
- 電線・設備機器:納期未定・数か月単位の遅延
- 住宅設備機器(ユニットバス・トイレ等):2〜3か月以上の遅延や受注停止
- 海外輸入資材(タイル等):中東情勢による航路変更で約1.5か月追加遅延
- 断熱材・樹脂製品:出荷制限により納期不透明
- AS防水材・AS合材:販売停止・受注停止・予約制へ移行
アンケートでは「納期未定の資材が増加し、工程計画の見通しが立たない」「入荷遅延は解消せず、構造的に長期化する見込み」という見解が示されており、一時的な混乱ではなく、継続的・構造的な問題として捉える必要があります。
2 全国建設業協会の緊急要望(令和8年4月30日)
全建は令和8年4月30日付で政府に対して緊急要望書を提出しています。要望の核心は以下の4点です。
緊急要望 4項目(全文要旨)
塗料・住宅設備・仕上げ材・塩ビ管・接着剤・シーリング材等の供給を改善し、円滑な工事実施を確保すること。
公共工事では実勢価格調査の頻度引上げと単品スライドの適時実施。民間工事では「おそれ情報」に基づく価格転嫁の実施。またスライド条項の手続簡素化・閾値(1%要件)の撤廃または引下げによる受注者負担軽減。
資材が供給されない場合、速やかに工事の一時中止・工期延長・代替資材への変更を実施し、それに係る費用を設計変更で見込むこと。
工期延長による支払遅延を避けるため、受注者の求めに応じた部分払いを適宜実施し、キャッシュフロー改善に努めること。
※ 上記は「中東情勢に伴う建設資材の需給に関する緊急要望」(全建、令和8年4月30日)の要旨です。
3 建設事業者が直面する問題と対応のポイント
アンケートでは会員企業から「資材高騰により資金繰りの悪化・利益確保が困難」「小規模事業者を中心に倒産リスクが顕在化」という深刻な声も寄せられています。
公共工事では単品スライド条項・インフレスライド条項を積極的に活用する。手続きが複雑であっても放置すると損失が確定するため、早期に発注者と協議を開始することが重要です(全建は閾値1%要件の撤廃・引下げを要望中)。
資材が入手不能な状況で工事を強行すれば追加コストと品質リスクを招きます。発注者に対して、正式な工事一時中止または工期延長の申請を書面で行い、記録を残しておくことが重要です。
当初の設計仕様の資材が入手できない場合、代替資材の使用について発注者・設計者と協議し、設計変更手続きを進める。記録・証拠の保全が後のクレーム対策にもなります。
工期が延長される場合、資金繰り悪化を防ぐために部分払いや前払い金の増額を発注者に申請する。要望書でも明記されている正当な手続きです。
新規見積・契約においては有効期限を短く設定し、資材価格変動を理由とした価格変更条項を明記する対応が広がっています。
民間工事では価格転嫁が進みにくい実態がありますが、全建の「おそれ情報通知書」制度を活用して状況を書面で発注者に通知し、適切な協議の場を設けることが求められます。
4 住宅を建築中・計画中の個人(建築主)への影響と対応
業者側だけの問題ではありません。現在、個人の住宅建築においても、工事が途中で止まったり、資器材の入荷見通しが立たないケースが報告されています。建築主として、以下の点を確認・対応することが重要です。
- 住宅設備機器(ユニットバス・トイレ等)の納期が2〜3か月以上遅延し、引渡しが大幅に後ろ倒し
- 断熱材・塗料・シーリング材などの入荷が見通し不明のまま工事が止まる
- 資材価格の高騰により、請負金額の追加変更を求められる可能性
- 引渡し遅延により、仮住まいコストや住宅ローン実行スケジュールが狂う
- 施工業者が資金繰り悪化で工事継続困難に陥るリスク
「工期延長」「価格変更」に関する条項を確認してください。特に、資材高騰・供給遅延を理由とした工期変更・費用増額が認められる条項があるか確認し、不明な点は施工会社に書面で問い合わせましょう。
アンケートが示すように設備機器を中心に2〜3か月の遅延は珍しくない状況です。賃貸契約の退去スケジュールや住宅ローン実行時期について、余裕を持った計画への見直しを検討してください。
現在の工事の進捗と資材の調達状況について、月に一度程度の書面または口頭での報告を施工会社に求めましょう。問題が発生した場合の連絡体制を事前に確認しておくことも重要です。
資材高騰を理由とした追加費用を請求された場合、具体的にどの資材がどの程度値上がりしたかの根拠資料の提示を求めることは正当な権利です。全建のアンケート結果等を参考に、価格上昇の実態と照らし合わせて確認してください。
工期延長が見込まれる場合、住宅ローンの実行(融資実行)時期についても金融機関に早めに相談し、柔軟な対応が可能かどうか確認しておきましょう。
5 状況の見通し ── これは一時的ではない
全建のアンケートは「価格高騰は一時的ではなく、構造的・継続的に続く見込み」「入荷遅延は解消せず、構造的に長期化する見込み」と結論づけています。
ホルムズ海峡問題が短期間で解決する見通しが立たない中、燃料費・物流費の上昇、石油化学系資材の供給制約は当面継続すると考えるべきです。行政・発注機関においては、全建の要望書が示す4点(供給改善への働きかけ、価格転嫁、工期延長・工事中止の柔軟対応、部分払いの実施)を迅速に検討・実施することが求められています。
事業者・建築主ともに「待っていれば解決する」という前提ではなく、今の状況を前提にした契約・スケジュール管理が必要な局面です。