大津市議会議員 佐藤弘

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制度で給付されない支援機器は、どうすれば本人に届くのか

福祉 / 2026年4月28日

制度で給付されない支援機器は、どうすれば本人に届くのか

⑧ALSに負けるな!(再掲)

― 調査の趣旨と具体事例から見える、実用化までのアプローチ

公的制度で給付される補装具や日常生活用具だけでは、障害のある人の暮らしを十分に支えきれない場面があります。近年は、スマートフォンアプリ、ゲーム用アクセシビリティ機器、一般製品の工夫的活用、ICT・AIを活用した機器など、制度の対象外でも生活の質を大きく高める支援機器が増えてきました。今回の調査は、そうした**「制度で給付されない支援機器」**が、実際にどのような経路で障害当事者に届き、購入・活用に至っているのかを明らかにするために行われたものです。調査では、障害当事者19名、支援者6名へのヒアリング、支援機関等3件の現地調査を通じて、情報収集から継続使用までの流れと、その途中にある障壁が整理されています。日本総合研究所 報告書

参考図版として、調査元の記事には「制度対象外の支援機器が当事者に届くまでの一連の流れ」を示した図が掲載されています。全体像をつかむのに非常に分かりやすい図です。
障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連の流れ
日本総合研究所 コラム記事

この調査の趣旨は、「機器があるのに、必要な人に届かない」実態を可視化すること

この調査のポイントは、単に「便利な機器を紹介する」ことではありません。むしろ重要なのは、制度の対象外であるために、機器の存在を知ること、相談すること、試してみること、買って使い続けることのすべてが、本人や家族の自助努力に大きく依存しているという現実を明らかにした点です。報告書では、制度外の支援機器が確実に当事者のもとへ届き、有効に使われるための普及啓発方法を検討することが調査目的だと示されています。日本総合研究所 報告書

「制度で給付されない支援機器」とは何か

報告書では支援機器を、障害当事者の生活を支援する幅広い範囲の機器の総称として捉えています。そのうえで、今回の調査対象には、福祉機器に限らず、一般製品やユニバーサルデザイン製品、障害者向けに開発されたが給付制度の対象外となっている製品などが含まれています。たとえば、スマートスピーカー、ゲーム用アクセシビリティツール、食事介助ロボット、歩行支援スマートフォンアプリ、会話可視化ツール、認知行動療法アプリ、軽い力で使えるハサミ、スマホ用首下げストラップなどが該当します。つまり、制度外支援機器とは「高価な専用機器」だけを指すのではなく、本人の困りごとを具体的に解決するものであれば、一般製品の工夫的利用も含まれるというのが重要な視点です。日本総合研究所 報告書 日本総合研究所 ストーリー集

活用に至るまでの流れは、一直線ではなく「気づき」から始まる

調査では、支援機器が本人に届くまでの流れを、概ね「きっかけ」「情報収集」「機器選定」「購入」「使用」「適合・継続使用」という段階で整理しています。最初の出発点は、本人や家族が困りごとに気づく場合もあれば、支援者の助言、SNSや動画、当事者コミュニティ、展示会、店舗で偶然見かけることがきっかけになる場合もあります。その後、インターネット検索、口コミ、実演動画、相談支援、試用体験などを通して、「これは自分の生活に本当に合うのか」「お金を出す価値があるのか」を見極め、ようやく導入に至ります。つまり制度外機器の普及では、製品そのものの性能だけでなく、“出会い方”と“試せる機会”が極めて重要だということです。日本総合研究所 報告書 日本総合研究所 コラム記事

具体事例1:発達障害のある子どもが使う「布張りの箱型筆箱」

ストーリー集で印象的なのは、発達障害のある子どもの筆箱の事例です。本人には「周囲と同じような見た目の布製筆箱を持ちたい」という思いがある一方で、実際には物の配置が分かりやすく整理しやすい構造が必要でした。そこで選ばれたのが、外見は周囲と馴染みやすく、中は整理しやすい布張りの箱型筆箱でした。この事例が示しているのは、支援機器の価値は「機能」だけでは決まらず、本人が受け入れやすい見た目や、学校生活の中で浮かないことも同じくらい重要だということです。支援とは、できることを増やすだけでなく、本人らしさや尊厳を守ることでもあります。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例2:ALSのある人が使う「フットスイッチ付きドライヤー固定台」

ALSのある人の事例では、本人が日常の不便さを「当たり前」と受け止めてしまい、困りごととして自覚していなかったところに、支援者の問いかけが入りました。その結果、ドライヤーを自分で使いにくいことが課題として浮かび上がり、固定台とフットスイッチを組み合わせることで、自分で操作しやすい形が実現しました。さらにその工夫は、別のスイッチ操作にも応用されていきました。この事例から見えるのは、支援機器の導入は「本人が最初から欲しいと言っていたものを買う」だけではなく、支援者が潜在的な困りごとを一緒に言語化することで始まる場合が多いということです。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例3:脳性麻痺のある人が見つけた「軽い力で使えるハサミ」

脳性麻痺のある人の事例では、「軽い力で使えるハサミ」が必要になり、本人がインターネット検索や動画、口コミを通じて情報を集め、価格と使い勝手を比較しながら購入に至っています。ここで注目したいのは、制度外機器の導入では、動画などで実際の使用場面を見られることが購入の後押しになる点です。福祉機器に限らず、使っている姿がイメージできることは、「自分にも使えそうだ」という納得感を生みます。日本総合研究所 ストーリー集 日本総合研究所 コラム記事

具体事例4:導尿道具のために選ばれた「一般のポーチ」

胸髄損傷のある人の事例では、導尿に必要な道具を持ち運ぶために、いわゆる福祉用具ではなく、一般の雑貨店で見つけたポーチが活用されていました。サイズ感や使いやすさに加えて、「いかにも福祉用具に見えないこと」が大きな価値になっていた点が特徴です。この事例は、制度外支援機器の世界では、一般製品の中から本人の生活感覚や美意識に合うものを見つける視点が非常に大切だと教えてくれます。日本総合研究所 ストーリー集

具体事例5:精神障害のある人が使う「認知行動療法アプリ」

精神障害のある人の事例では、リワーク施設などで認知行動療法に触れたことをきっかけに、複数のアプリを試しながらセルフケアの手段を探していった経緯が紹介されています。制度では給付されにくいデジタルアプリも、本人の生活に合えば日々の自己管理や心理的安定を支える重要な道具になります。この事例は、支援機器を「モノ」に限定せず、アプリやソフトウェアも含めて生活支援の手段として捉える必要性を示しています。日本総合研究所 ストーリー集


一般論として見えてくるアプローチ手法

では、制度で給付されない支援機器を本人に届け、活用につなげるには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。今回の調査から見えてくるのは、単に「情報を並べる」だけでは不十分で、発見から継続使用までを段階的に支えることが必要だという点です。日本総合研究所 報告書

まず重要なのは、本人が必要性に気づく“きっかけ”を増やすことです。本人や家族が困りごとを言語化できていない場合も多いため、医療・教育・就労・相談支援の現場で、日常生活の小さな不便さに目を向ける対話が欠かせません。支援者が「こういう方法もあるかもしれません」と選択肢を示すこと自体が、導入の出発点になります。日本総合研究所 報告書

次に必要なのは、情報を本人に届く形に翻訳することです。制度外機器は、製品名やスペックだけ見ても価値が伝わりにくいことが少なくありません。本人にとっては、「何ができるか」よりも「自分の暮らしのどの場面がどう楽になるか」が分かることのほうが大切です。そのため、実演動画、活用事例、当事者の口コミ、失敗例も含めたリアルな情報提供が効果的です。日本総合研究所 コラム記事 日本総合研究所 報告書

さらに、試用や伴走支援の仕組みも不可欠です。制度外機器は、買って終わりではなく、「自分の身体や生活に本当に合うか」を使いながら確かめる必要があります。試せる機会、調整を相談できる相手、導入後の困りごとに対応できる場があるかどうかで、継続使用のしやすさは大きく変わります。本人の状態変化や環境変化に合わせて見直せる支援があってこそ、活用は定着します。日本総合研究所 報告書

また、今回の事例からは、“福祉機器らしさ”にとらわれない発想も重要だと分かります。本人が使いたいと思えるデザイン、周囲に溶け込む見た目、一般製品の応用、アプリやソフトウェアの活用など、選択肢を広く捉えることが、結果として本人の自立や参加を支えます。支援機器とは、特別な製品の名前ではなく、その人の生活課題を解決する手段そのものなのだと考えることが大切です。日本総合研究所 ストーリー集 日本総合研究所 報告書

最後に、支援を個人の熱意や偶然の出会いに委ねないためには、地域差を減らす仕組みづくりが求められます。報告書でも、医療機関、教育機関、就労先、相談窓口など、本人や家族が必ず関わる場での情報提供体制や、全国どこでも一定水準の支援が受けられる仕組みの必要性が指摘されています。制度外機器の普及に必要なのは、製品の開発だけではなく、知る・試す・相談する・使い続けるための社会的な回路を整えることです。日本総合研究所 報告書


まとめ

この調査が教えてくれるのは、制度で給付されない支援機器の問題は、単なる「自己負担の問題」ではないということです。本当に大きいのは、必要な人が、必要なタイミングで、その機器の存在を知り、試し、納得して使い始め、使い続けられるかどうかです。支援機器を本人に届けるには、製品の良し悪しだけでなく、気づき、情報提供、試用、調整、継続支援までをつなぐアプローチが必要です。制度の内か外かではなく、その人らしい暮らしを支えるかどうかを基準に支援を考えることが、これからますます重要になるでしょう。日本総合研究所 コラム記事 日本総合研究所 報告書