大津市議会議員 佐藤弘

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避難所だけが避難じゃない―在宅・車中泊避難の支援も必要です

防災 / 2026年4月22日

避難所だけが避難じゃない―在宅・車中泊避難の支援も必要です

はじめに

大規模な災害が起きたとき、誰もが指定避難所へ向かえるわけではありません。自宅の損壊が軽微だった、乳幼児やペットがいる、プライバシーが心配、そういった事情から、在宅や車中泊を選ぶ方は実際に多くいます。

平成28年(2016年)熊本地震では、熊本市が実施したアンケートで市民の約4割が車中泊を経験したと回答しており Nikkei、その数の多さが全国的に注目を集めました。しかし一方で、車中泊中のエコノミークラス症候群による死亡事例も確認され、「避難所の外にいる人をどう支援するか」は長年の課題でした。

1.国の方針が変わった――令和6年6月の防災基本計画修正

内閣府は令和6年(2024年)6月28日、「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」を公表しました。在宅避難者や車中泊避難者に対しては、同日修正された国の防災基本計画においても物資の提供など支援の取り組みが位置づけられました。 Newton-consulting

この背景には、熊本地震に加え、令和6年能登半島地震での教訓がありました。避難所に来られない方々が支援から取り残されるという問題が、改めて全国の課題として浮かび上がったのです。

2.「場所への支援」から「人への支援」へ

これまでの災害支援は「避難所という場所」に集まった方を対象とするものが中心でした。今回の方針転換の核心は、どこにいても、支援が必要な人に必要な支援を届けるという考え方への転換です。

在宅避難・車中泊避難には、次のようなメリットがあります。

  • プライバシーの確保:大勢での集団生活が困難な方も、自分のペースで生活できる
  • ペットと一緒に過ごせる:避難所では難しいペット同伴が可能
  • 感染症対策としての分散避難:人が集中する避難所のリスクを分散できる

支援拠点の開設により、避難所にいる避難者と同じような支援(食料・物資・情報の提供)が在宅や車中泊の方にも届けられるよう、仕組みづくりが求められています。 Newton-consulting

3.地域(自治会・自主防災組織)の役割が不可欠

大規模災害時には行政の対応能力にも限界があります。全ての支援を行政だけで担うことは不可能であり、自治会や自主防災組織を中心とした「共助」の力が欠かせません。

在宅避難への支援では、地域住民が協力して、身近な公園や公民館などに小規模な「支援拠点」を設け、安否確認・物資配布・情報伝達を自主的に行うことが期待されます。

車中泊避難への支援では、避難者同士が声を掛け合い、食事の準備や巡回・清掃を協力して行う「自主運営」が基本です。体を動かすことはエコノミークラス症候群などの健康リスク低減にもつながります。

平時から地域住民への啓発や行政職員の人材育成等を行い、在宅避難者や車中泊避難者の自助・共助の取組が進むよう備えておくことが重要とされています。 Bousai

4.熊本市の取り組み――全国が注目する「くまもとモデル」>大津市には公式アプリ「ポケットおおつ」があります

熊本市は、熊本地震の深刻な教訓を活かし、令和6年4月に**「熊本市車中泊避難者支援ガイドライン」**を策定しました。このガイドラインは、崇城大学・BosaiTech株式会社・熊本市の3者による連携協定に基づき策定されたもので、大規模災害時にやむを得ず車中泊避難を行う市民の安全を守ることを目的としています。 Kumamoto City

この取り組みの特徴は以下の通りです。

①デジタル技術の活用 避難者は入場の際にスマートフォンなどでQRコードを読み取り、調査票に名前・住所・避難人数などを記入し、健康に関する情報も入力します。必要に応じて保健師の観察を受けたり、福祉避難所や医療機関に移ったりできる仕組みです。 Kumanichi

②車中泊避難専用の受け入れ場所の確保 市は2か所に避難場所(車計300台受け入れ)を7日間を目処に開設し、スマートフォンで利用できる支援システムで一人一人の情報を把握し、適切なサポートにつなげる体制を整えています。 Nikkei

③「くまもとアプリ」との連携 アプリ内の避難状況登録機能では、車中泊や自宅避難など避難形式を選択でき、登録者の位置情報も確認できるため、どのあたりにどのくらいの方が避難されているかをリアルタイムで把握し、物資提供に関する連絡をプッシュ通知で届けることができます。 Digital

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5.市民の皆さんへ――今からできること

災害はいつ起こるかわかりません。在宅避難・車中泊避難への支援の仕組みが整ってきた今、市民の皆さんにも平時からの備えをお願いします。

  • 備蓄の確認:食料・水・衛生用品・医薬品など、最低3日分(できれば1週間分)の準備を
  • 地域の防災訓練への参加:自治会・自主防災組織の訓練に加わり、顔の見える関係をつくる
  • 「くまもとアプリ」の活用:平時から操作に慣れておくことで、いざというときに迷わず使える
  • 避難先の事前確認:指定避難所だけでなく、在宅・車中泊も含めた家族の避難計画を決めておく

避難所に行くことだけが「正しい避難」ではありません。自分の状況に合った避難の選択肢を知り、地域とつながりながら備えることが、命を守る第一歩です。



参考資料リンク一覧

① 内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(令和6年6月) 内閣府防災情報ページ(資料一覧) https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/index.html ※手引き本文PDF(6.3MB)は同ページからダウンロード可


② 防災基本計画修正(令和6年6月28日)の概要 内閣府・中央防災会議(第44回)資料 https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/44/pdf/shiryo1.pdf


③ 熊本市「熊本市車中泊避難者支援ガイドライン」(令和8年4月公表) 熊本市公式防災サイト https://www.city.kumamoto.jp/bousai/kiji00370044/index.html ※ガイドライン本文PDF・概要編PDF・避難マニュアルいずれも同ページからダウンロード可


④ デジタル庁ニュース「くまもとアプリ」記事(令和7年1月) https://digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-01-21