大津市議会議員 佐藤弘

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自治会に入っていてよかった ─ そう思えるまちをつくるヒント

まちづくり / 2026年4月20日

自治会に入っていてよかった ─ そう思えるまちをつくるヒント

加入率25%の現実から考える

私の地域では、自治会に入っている世帯が全体の4分の1ほどになってしまいました。「入らなくても困らない」「何をやっているのか見えない」「付き合いが面倒」──理由はさまざまですが、このままでは災害時の助け合いも、子どもを見守る目も、お祭りや地域行事も、支え手がいなくなってしまいます。

どうすれば「入っていてよかった」と思ってもらえる自治会になれるのか。先日、国立教育政策研究所が令和7年12月に開いたシンポジウム「これからの時代の社会基盤としての社会教育を考える」の報告書を読んで、大きなヒントをもらいました。

「社会教育」という言葉は硬く聞こえますが、中身はとてもシンプルです。人と人がつながり、学び合いながら、自分たちのまちを自分たちで育てていく営みのこと。今日はこの報告書から読み取れたことを、できるだけ普段の言葉に置き換えて紹介し、自治会の活性化にどう活かせるかを考えてみます。


報告書が出した「結論」をひとことで言うと

報告書を貫いているメッセージを、私なりに一言でまとめるとこうなります。

「まちの土台は、便利な制度や立派な施設ではなく、人と人とのゆるやかなつながりと、そこで生まれる学び合いから育つ」

登壇された皆さんが共通しておっしゃっていたのは、次のような考え方でした。

  • 地域の課題は、行政が上から解決するものではなく、住民どうしが顔を合わせて話し、動くなかで解きほぐされていく
  • そのきっかけをつくる「場」と「つなぎ役」がいれば、地域は自然と元気になっていく
  • 学びは教室で教わるものだけでなく、一緒に何かをやる過程で「うっかり」身についていくものでもある

つまり、「まちの土台(社会基盤)をつくる」とは、建物や制度をつくることではなく、人のつながりと、その人たちが育ち合う関係をつくることだ、というのが報告書の結論です。


ヒント1:「防災」は最強の入口。でも、防災だけで終わらせない

「防災」は、たしかに自治会に人を呼び込む最強のテーマです。報告書でも、北海道恵庭市の藤野さんが、胆振東部地震(2018年)の経験をふまえて、とても示唆に富む話をされていました。

藤野さんは防災担当として、各地域で「避難所運営マニュアル」をつくる学習会を開きました。でも、マニュアルを完成させることそのものが目的ではなかったのです。

「マニュアルづくりを通して、この地域がどう変わってほしいか」を意識して取り組んでいた

ここが重要なポイントです。マニュアルをつくるために町内会員や民生委員、福祉施設の人が集まって話し合う。すると、防災の話から始まって、気づけば「そういえば、あの一人暮らしのおばあちゃん、大丈夫かな」「登下校の見守りも手薄だよね」という話に広がっていく。藤野さんはこれを 「こぼれ出た地域活動」 と呼んでいました。

自治会への応用

  • 「防災マニュアルをつくる会」を、単なる作業会にしない
  • 地図を広げて「ここに足の悪い人がいる」「ここの道は冬に凍る」と話すなかで、自然と顔見知りが増える設計にする
  • マニュアルができた後に、そこから派生する活動(見守り、買い物支援、子ども110番など)を歓迎する空気をつくる

自治会員であってよかったと思える瞬間は、「いざというとき助けてくれる人の顔が浮かぶ」という安心感が芽生えたときです。 その安心感は、書類ではなく、一緒に何かをした時間からしか生まれません。


ヒント2:「寛容さ」があるまちに人は残る

島根県の離島・海士町(あまちょう)で長年まちづくりに関わってきた豊田さんの話も印象的でした。

豊田さんが紹介していた調査によると、若い人が地方を離れて都会に出ていく一番の理由は、給料の高さではなく「寛容性の差」だったそうです^2。つまり、「よそ者に冷たい」「新しいことをやろうとすると止められる」「昔からのやり方を押し付けられる」──こうした空気が若い世代を遠ざけている。

豊田さんはこれを 「いいじゃんいいじゃんおじさん(おばさん)」の存在が大事だと表現していました。誰かが何かやりたいと言ったとき、まず「いいじゃん、やってみなよ」と言ってくれる人がいる地域は、若い人も残るし、新しい人も入ってくる。

自治会への応用

  • 新しく入った人や若い世代の提案に、まず「いいね、やってみよう」と言う
  • 「うちの自治会はこうだから」という言葉をぐっと飲み込む
  • できない理由を並べるより、小さくでも試してみる文化をつくる

自治会離れの背景には、「入っても意見が通らない」「決まりごとが多くて息苦しい」という声もあるはずです。寛容さは、加入率を上げるための最も安価で効果的な施策かもしれません。


ヒント3: 「道草」できる場所が、人を育て、まちを育てる

静岡県焼津市で「みんなの公民館まる」を運営している鈴木さんの話は、とてもユニークでした。

この「まる」は、行政ではなく民間(寄付と企業スポンサー)で運営されている公民館です。中高生を中心に、地域の大人や企業も出入りする、いわば「人生の道草を食える場所」。子どもが「飲み会がしたい(ジュースで)」と言い出せば、「いいじゃん、やろう」と大人が本気で付き合う。小学生がイベントで釣りゲームの出店を考える。高校生が新聞を発行する──こんなことが日常的に起きています。

鈴木さんが大切にしているコンセプトは、「自分でつくる・参画する居場所」。誰かがお膳立てした場所ではなく、そこに通う人が一緒につくっていく場所だから、愛着が生まれる。

自治会への応用

  • 自治会館や集会所を、「会議のために集まる場所」から、「ふらっと立ち寄れる場所」へ少しずつ変える
  • 子どもや若い世代が「やってみたい」と言ったことを、多少予算が合わなくても応援する
  • 役員が全部お膳立てするのをやめて、住民に「関わる余地」を残す

人は、自分が少しでも手を入れた場所と活動に愛着を持ちます。 「お客さん」として扱われる自治会より、「一緒につくる仲間」として迎えられる自治会のほうが、辞めにくくなるのは当然のことです。


ヒント4: 「目的」より「きっかけ」を大事にする

報告書のシンポジウムでは、コーディネーターの青山先生が、こんな印象的な言葉を使っていました。

「うっかり学んじゃう」「こぼれ出る活動」

人は、「勉強しろ」「参加しろ」「つながれ」と言われるほど、距離を取りたくなるものです。でも、何か楽しそうなこと、美味しそうなこと、役に立ちそうなことにうっかり関わってしまったら、そこから学びも人間関係も自然に育っていく。

自治会の役員会が「出席義務」の集まりになっているなら、それは一度見直す価値があります。年に数回でいいので、義務感なしに集まれる「うっかりイベント」をつくってみる。たとえば──

  • ご近所ごはん会(各家庭から一品持ち寄り)
  • ハザードマップを見ながらのまち歩き(最後にカフェで休憩)
  • 子どもと一緒にやる夏祭りの準備(完成品より過程を楽しむ)
  • 防災備蓄品の試食会(消費期限前のものをみんなで食べる)

こうした場の副産物として、顔見知りが増え、困ったときに声をかけ合える関係が育ちます。


ヒント5: 地域の「土壌」は、耕しつづけないと固くなる

特別講演をされた東京藝術大学の日比野克彦学長は、こんなことを話されていました。

人の健康を支えるのは、薬や手術といった医学的な処方だけではなく、人とのつながりが処方される 「社会的処方」 であり、さらにその根っこには、文化や芸術にふれる 「文化的処方」 がある。

難しく聞こえるかもしれませんが、要するにこういうことです。

人が元気に生きていくには、薬や病院だけでは足りない。誰かと話す、一緒に何かをつくる、地域のお祭りに出る──そういう「日常のつながりと楽しみ」そのものが、人を健康にしている。

自治会が担ってきた盆踊り、清掃活動、子ども会、敬老の集い。こうした活動は、一見するとお金にも数字にもならない「無駄なこと」に見えるかもしれません。でも、実はこれらがまちに住む人の心と体を静かに支えてきたのです。

この土壌は、耕し続けないと固くなります。そして一度固くなった土壌を、もう一度柔らかく戻すのは、とても時間がかかります。加入率25%というのは、土壌が固くなりかけているサインかもしれません。


まとめ ── 「入っていてよかった」を生むための5つの問い

報告書から学んだことを、自治会活動に置き換えて問いの形にまとめます。役員会や総会で話し合うきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

  1. 顔が見える? ── 防災や見守りを「書類」で終わらせず、一緒に体を動かす場にできているか
  2. 寛容か? ── 新しい提案や若い世代の声に「いいじゃん」と言える空気があるか
  3. 関われる余地はあるか? ── 住民が「お客さん」ではなく「つくり手」になれる場面があるか
  4. うっかり集まれるか? ── 義務ではなく、楽しみで集まれる機会が年に何度かあるか
  5. 土壌を耕しているか? ── 数字にならない営み(挨拶、雑談、お祭り)を大切にしているか

おわりに

報告書のなかで、広島県三次市の豊田さんはこう語っていました。

「帰ってきたい鮭を育てるのか、鮭が帰りたくなる川をつくるのか」

自治会も同じではないでしょうか。「入れ入れ」と呼びかけるだけでは人は増えません。「入りたくなる自治会」を、いまの会員でつくっていくしかない。

その第一歩は、難しい制度や大きな予算ではなく、隣の人に声をかけること、新しい提案に「いいね」と返すこと、一緒に何かをやってみること──そんな小さなことから始まるのだと、この報告書は教えてくれました。

加入率を数字で追いかけるのも大事ですが、まずは「うちの自治会に入っていてよかった」と言ってくれる人を、一人ずつ増やしていきたいと思います。


出典

国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター『令和7年度 教育研究公開シンポジウム これからの時代の社会基盤としての社会教育を考える ~今、なぜ社会教育なのか~』(令和8年3月発行)。
本報告書は令和7年12月13日に開催されたシンポジウムの講演録・調査結果・アンケート結果をまとめたもの。
特別講演:日比野克彦氏(東京藝術大学長)、調査研究報告:志々田まなみ氏(国立教育政策研究所生涯学習政策研究部総括研究官)、シンポジウム登壇者:藤野真一郎氏(恵庭市教育委員会)、豊田庄吾氏(三次市教育委員会)、鈴木貫司氏(NPO法人わかもののまち/みんなの公民館まるセンター長)、コーディネーター:青山鉄兵氏(文教大学准教授)。