大津市議会議員 佐藤弘

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「知ってから考える」市民参加のあり方を問う

まちづくり / 2026年4月19日

先日、株式会社日本総合研究所のオピニオンコラム「思考が生まれる参加へ」(譚林宣氏、2026年4月14日)を読みました。市民参加の質について深く考えさせられる内容で、私自身が日頃から感じていることと重なる部分が多く、ぜひ皆さんと共有したいと思います。


参加しているのに、考えていない?

このコラムで著者の譚氏は、自治体が企画した市民参加ワークショップに参加した経験から、ある違和感を率直に語っています。付箋に書き、貼り、まとめていくという形式の場で、「参加しているのに、考えていない」という感覚が徐々に強まったというのです。

参加の「量」は確保されているのに、その「あり方」には問題が残る——。市民参加の目的は本来「住民の声を聴くこと」にあるはずが、方法が形式化するにつれ、手続きそのものが前面に出て、熟考のプロセスが後景に退いてしまっている、と著者は指摘します。

この指摘は、私には非常に鋭く響きました。


SNSの「炎上」と、置き去りにされる現実

自治体が何らかの議案や方針を示すと、SNS上で批判の声が一斉に上がることがあります。「けしからん」「ひどい」——そういった言葉が飛び交い、あっという間に炎上状態になることも珍しくありません。

しかし、その批判の多くが、十分な情報を持たないまま発せられているケースが少なくないと感じています。

例えば、水道料金の値上げ。「なぜ上げるのか」という怒りは理解できます。しかし、全国の水道事業が老朽化した管路の更新費用と人口減少による収入減という二重の課題に直面し、料金を据え置いたままでは経営が立ち行かなくなる自治体が相次いでいることも事実です。背景を知った上であれば、「やむを得ない」と受け止める方も多いのではないでしょうか。

また、幼稚園の運営をめぐる問題も同様です。これまでいくつもの自治体で、子どもたちが保育園に通うことが主流となり、幼稚園の園児数が大きく減少しています。幼稚園のあり方そのものを見直し、統合も含めて検討することはやむを得ない選択であり、その中で職員の処遇をどう考えるかは、単純に「けしからん」と断じられるような話ではなく、複雑な課題が絡み合っています。背景を知らないまま批判することは、問題の本質を見えにくくしてしまいます。


情報が変える「意見」

「討論型世論調査(Deliberative Poll)」という手法があります。スタンフォード大学のジェームズ・フィシュキン教授が提唱したもので、最初に政策課題についてアンケートを取り、次に参加者に賛否両面の客観的な情報を提供したうえで熟議を行い、再度アンケートを実施するというものです。この手法では、情報提供と熟議を経ることで、最初の意見から大きく変化するケースが確認されています。

つまり、人の意見というものは、持っている情報の量と質によって変わり得るものです。「反対」が唯一の答えではなく、十分な情報と熟慮のもとで判断を更新できることを、この研究は示しています。


「参加」の質を高めるために

コラムの中で著者は、北海道森町での「100スケッチ」というワークショップの取り組みを紹介しています。10年後の自分と周囲の風景を絵で描くというこの試みでは、10代から80代まで101人が参加し、絵を描く前に十分に考える時間を設けることで、参加者一人ひとりが自分の思いをゆっくりと掘り起こしながら表現することができたといいます。著者はこれを、「まだ言葉になっていない思考や感覚」を場に出すためのプロセスとして評価しています。

このエピソードが示しているのは、参加とは単に「その場にいること」「意見を言うこと」ではないということです。考える時間と情報が与えられて初めて、参加は意味を持つのだと思います。

市民が行政や政策に参加することは、民主主義の根幹です。しかし情報なき参加は、時として建設的な議論を妨げ、本来解決すべき課題の本質から目を逸らせてしまうことがあります。コラムの言葉を借りれば、「民意が政策に届かないと感じられているのは、声が不足しているのではなく、思考が十分に育まれる前に収集されてしまっているから」かもしれないのです。

私自身も議員として、「もっと丁寧に現状を説明しなければ」と痛感する場面が多くあります。批判を受け流すのではなく、背景にある事実をわかりやすく伝え、ともに考える関係を築くこと——それが地方自治に携わる者の責任だと考えています。

SNSで流れてくる情報だけで結論を出す前に、ぜひ一度、公式の資料や行政の説明資料にも目を向けてみてください。そして疑問があれば、議会や行政窓口にご相談いただければと思います。対話こそが、「思考が生まれる参加」への第一歩だと信じています。


参考: 譚林宣「思考が生まれる参加へ」株式会社日本総合研究所 オピニオンコラム(2026年4月14日) https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/16573/