トラック事業に許可更新制と適正原価が導入
物流業界に大きな変革をもたらす「トラック事業適正化関連法」が、2025年6月4日に成立、6月11日に公布されました。
の法律は、私たちの生活や経済活動に不可欠なトラック運送事業の健全な発展と、より安全な輸送体制の構築を目指すものです。
物流・輸送を取り巻く現状と課題
私たちの消費活動や企業の生産活動は、モノがスムーズに運ばれることによって支えられています。
この物流・輸送において、トラック運送は非常に重要な役割を担っています。
しかし、トラックドライバーの労働環境や、安全確保への取り組みなど、多くの課題が存在しているのも事実です。
トラック事業適正化関連法の成立
こうした課題を解決し、トラック運送事業の適正な事業環境を整備するため、「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(以下、「改正貨物法」)と、新たな法律である「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」(以下、「トラック適正化法」)が制定されました。
改正貨物法の主なポイント
- 一般貨物自動車運送事業の5年ごとの許可更新制の導入: これまで原則として無期限だった許可が、5年ごとの更新制となります。これにより、事業者は常に法令遵守と安全運行への意識を高める必要があります。
- 国土交通大臣が適正原価を定め、運賃・料金が適正原価を下回らないことの義務化: 運送事業者が持続可能な経営を行うために、適正な運賃・料金の設定が重要となります。
- 再委託の回数を2回以内に制限(努力義務): 多重下請け構造の是正を図り、責任の所在を明確化することが期待されます。
- 許可を持たない違法な有償トラック運送の禁止: 無許可での運送に対する罰則が強化され、より公平な競争環境が整備されます。
- トラック事業の無許可営業について荷主等に是正指導を実施: 荷主企業も、委託先の選定において法令遵守状況を確認する責任が求められます。
- ドライバーへの適正な賃金支払い、適切な処遇の確保: ドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが推進されます。
事業者は、許可更新の際に、車両や人員の確保、過労運転の防止、車庫の管理、社会保険料の納付など、事業を適確に遂行するための基準を満たす必要があります。
トラック適正化法の主なポイント
改正貨物法の円滑な施行を支えるため、以下の内容が定められました。
- 貨物自動車運送事業の適正化のための基本方針の策定
- 許可更新の事務や事業適正化支援体制の整備
- 法制上の措置を改正貨物法施行後3年以内を目途に実施
- 許可更新手数料などを財源として確保
- 物流政策推進会議、物流政策推進関係者会議の設置
トラック適正化法は、公布の日から施行されます。
適正で安全な運送の実現に向けて
物流は社会インフラであり、その健全な発展は私たちの生活と経済活動に不可欠です。今
回の法改正と新法制定は、トラック運送事業における長年の課題解決に向けた大きな一歩となるでしょう。
許可更新制の導入は、法令遵守を徹底し、安全運行に真摯に取り組む事業者のみが生き残れる時代を意味します。
運送事業者だけでなく、荷主企業、そして私たち消費者一人ひとりが、より良い物流のあり方を考えていく必要があるでしょう。
今後の法改正の動向に注目し、トラック運送業界の変革をしっかりと見守っていきましょう。
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出典
- ※1:
- 衆議院「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案(内閣提出、第217回国会)」
- 衆議院「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律案(内閣提出、第217回国会)」
- ※2:国土交通省『自動車輸送統計年報』『鉄道輸送統計年報』『内航船舶輸送統計年報』『航空輸送統計年報』(いずれも2023年度分)をもとに弊社算出
- ※3:国土交通省『貨物自動車運送事業者数(規模別)』
- ※4:厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』をもとに弊社算出
- ※5:運輸事業者が安全管理体制の構築・改善を行うための枠組み。経営トップの責務やPDCAサイクルを活用した継続的な見直し改善等による安全文化の醸成を求めている。