高齢者とペットの共生:在宅医療の課題と解決策
高齢者がペットを飼育することは、多くの喜びと健康上の利点をもたらしますが、同時に様々な課題も生じます。
高齢者とペットの共生は、高齢者の生活の質(QOL)を向上させる一方で、様々な課題も伴います。
これらの課題を解決するためには、地域全体での協力と、高齢者とそのペット双方への支援が不可欠です。
在宅医療の現場で直面するペットに関連する問題と、それらを解決するための具体的な対策について
「在宅療養者におけるペットに関する諸問題とその対応方法についての調査研究」を参考にまとめました。
高齢者におけるペット飼育の現状
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、全国の犬の飼育頭数は約684万頭、猫の飼育頭数は約907万頭と推計されています 。
特に、単身高齢者(60~70代)のペット飼育率は高く、犬の飼育率は男性で約3.6%、女性で約5.2%、猫の飼育率は男性で約4.5%、女性で約8.7%に達しています 。
ペット飼育がもたらす高齢者の健康への影響
ペットの飼育は、高齢者の心身に多くの良い影響を与えることが研究で示されています。
東京都健康長寿医療センター社会参加と地域保健研究チームの調査によると、ペットを飼育する高齢者は、フレイル(虚弱)や自立喪失のリスクが大幅に低いことが報告されています 。
また、ペットの飼育は高齢者の介護費用の削減にも繋がり、ペットを飼育している人の毎月の介護費用は、飼育していない人の約半分であるという研究結果もあります 。
在宅医療におけるペット飼育の問題点
一方で、ペットの飼育は高齢者にとって様々な問題を引き起こす可能性もあります。
飼い主の健康状態が悪化すると、ペットの世話が困難になることがあります。
また、多頭飼育、糞尿処理、飼い主が亡くなった後のペットの処遇なども社会的な課題となっています 。
小規模自治体では、これらの問題に対応するための資源が不足している場合が多く、対応が困難です 。
また、ペットの世話を理由に高齢者が施設への入院や入所をためらうケースも少なくありません 。
問題解決のための具体的な対策
これらの課題に対処するために、以下の対策が考えられます。
- 地域全体での協力体制の構築:
- 地域包括支援センター、保健・医療・介護・福祉の専門職、行政機関、動物愛護ボランティアなどが連携し、ペットに関する問題に対処するための体制を整えます 。
- ペット飼育者への支援:
- ペットホテル、ペットシッター、永年預かり、NPOなどの情報を高齢者やその家族に提供します 。
- 不妊・去勢手術やワクチン接種への助成制度がある自治体もありますので、情報を収集し提供します 。
- 早期相談の推奨:
- 高齢者やその家族に対して、早めに相談できる支援者を見つけておくことの重要性を啓発します 。
- 多職種連携による包括的な支援:
- ペットの問題だけでなく、高齢者の生活全般の問題に対応するために、多職種が連携して支援を行います 。
先進的な取り組み事例
岐阜県郡上市や長野県佐久市など、行政が積極的に関与し、支援体制を構築している地域もあります 。
これらの地域では、動物愛護団体やボランティアと連携し、高齢者とペットが共に安心して暮らせる地域づくりに取り組んでいます。