選択的夫婦別姓制度の勉強会が行われました
公明党では早稲田大学名誉教授 棚村政行氏を講師にお招きして、選択的夫婦別姓制度の勉強会が行われました。
内容の要約は以下のとおりです。
## 20250220 選択的夫婦別姓勉強会 議事録整理
**開催日時:** 2025年2月21日 午後9:09 – (61分21秒)
**講師:** 棚村政行 (弁護士法人早稲田大学リーガルクリニック法律事務所所長、弁護士、早稲田大学名誉教授)
**主催:** 公明党 新制度導入推進プロジェクトチーム、地方議会局
**参加者:**
*矢倉克夫 (参議院議員、選択的夫婦別姓制度導入推進プロジェクトチーム座長)
* 伊藤たかえ (参議院議員、事務局長)
* 竹谷とし子 (女性委員長)
* 鰐淵洋子 (衆議院議員、オンライン参加)
* その他地方議員
**目的:**
* 選択的夫婦別姓制度についての理解を深める
* 地方議会での意見書提出を促す
* 党内議論を深め、合意形成を目指す
### 内容概要
1. **主催者挨拶:**
* 公明党は選択的夫婦別姓制度導入推進の立場であること
* 制度実現に向けた課題について検討を進めていること
* 地方議会での意見書提出を推奨すること
2. **矢倉克夫氏挨拶 (プロジェクトチーム座長):**
* 制度導入は全ての人にとって重要な問題であり、選択肢を広げる社会のあり方に関わること
* 党として合意形成に全力を尽くすこと
3. **竹谷とし子氏挨拶 (女性委員長):**
* 地方議員の関心が高いテーマであること
* 地方議会からの声を国に届け、形にしていくこと
4. **棚村政行氏講演:**
* 選択的夫婦別姓制度の概要
* 法制審議会での議論の経緯 (1996年)
* 各政党の動き
* 制度導入の意義 (賛成論)
* 制度導入への懸念 (反対論)
* 世論調査の結果
* 海外の状況
* 通称使用拡大の是非
* 子供の姓の問題
* 戸籍制度への影響
* 地域差と別姓への賛成度合いの相関関係
5. **質疑応答**
### 詳細内容
**1. 選択的夫婦別姓制度の概要**
* 現行民法750条: 婚姻の際、夫婦はどちらかの姓を選択し、婚姻中は同じ姓を名乗る
* 選択的夫婦別姓制度: 希望する場合、婚姻後も旧姓を名乗り続けられる選択肢を設ける
**2. 法制審議会での議論の経緯**
* 1996年: 法制審議会で選択的夫婦別姓制度導入を取りまとめ
* 自民党内の反対により国会提出に至らず
* 民主党政権下でも法案準備はされたが、閣議決定されず
**3. 制度導入の意義 (賛成論)**
* 女性の社会進出が進み、旧姓使用の不便さが増している
* キャリアの継続性の維持
* 個人の人格尊重
* ダイバーシティ&インクルージョン (多様性と包容性) の推進
**4. 制度導入への懸念 (反対論)**
* 夫婦同姓は古くからの伝統・慣習であり、国民生活に定着している
* 家族のまとまりを示す公的な名称である
* 個人の名前を超えた絆や国民感情の問題
* 子供の姓が親と異なる場合、子供の福祉に反する可能性
* 家族がバラバラになるという懸念
**5. 世論調査の結果**
* 国立社会保障・人口問題研究所などの調査で、賛成派が増加傾向
* 連合調査: 64%が賛成
* 日本経済新聞、テレビ東京調査: 69%が賛成
* 朝日新聞調査 (1月末-2月): 63%が賛成 (反対29%)
* 内閣府の世論調査では、質問方法の変更により結果が変化
**6. 海外の状況**
* イスラム圏以外の国では、夫婦同姓を義務付けている国は日本以外にほぼ存在しない
* 国際会議などで、日本の状況は疑問視されることが多い
* インド、タイなどアジア諸国でも選択制が導入されている
**7. 通称使用拡大の是非**
* 通称使用拡大は、別姓制度導入の代替案として議論されている
* 高市早苗氏、稲田朋美氏などが提唱
* メリット: 夫婦同姓を維持しながら、旧姓使用を認める
* デメリット: コストがかかる、ダブルネームの問題、国際的な本人確認の困難さ
* 棚村氏: 通称使用拡大よりも、選択的夫婦別姓制度の方が合理的
**8. 子供の姓の問題**
* 夫婦別姓の場合、子供の姓をどうするかという問題がある
* 産経新聞調査: 6割が反対 (ただし、調査方法に疑問あり)
* 別姓夫婦の子供からは、特に問題ないという声も
* 兄弟は同じ姓を名乗るべきという意見が多い (約7-8割)
* 子供の姓の決定方法について、くじ引きではなく、事前に夫婦で話し合って決めておくことが重要
**9. 戸籍制度への影響**
* 法務省の試算では、制度導入による戸籍の変更は最小限
* 韓国は戸籍制度を廃止し、個人単位の家族関係登録制度に移行
**10. 地域差と別姓への賛成度合いの相関関係**
* 都市部やLGBTQへの理解が進んでいる地域では、別姓への賛成度合いが高い
* 女性議員や女性社長が多い地域では、改革が進んでいる傾向がある
* 男性中心的な地域では、過疎化や経済低迷が進んでいる傾向がある
### 質疑応答
**質問 (河野氏):**
* 男女共同参画基本計画で通称使用の拡大が示されているが、通称使用の法的根拠は何か?
**回答 (棚村氏):**
* 通称使用は法的根拠に基づくものではなく、企業が独自に認めてきた慣行
* 省令などで旧姓使用が認められるケースもあるが、限定的
* 通称使用の拡大は、別姓制度が認められないための代替手段
* しかし、コストや手続きの煩雑さ、国際的な理解の得にくさなど、多くの問題を抱えている
**質問 (矢倉克夫氏):**
* 別姓制度導入後も、すでに通称使用している人が使い続けることは可能か?
* コストがかかるかもしれないが、経済的な意味合いも含めて、通称使用を併存させるべきか?
**回答 (棚村氏):**
* 通称使用と選択的夫婦別姓は、どちらか一方に整理していくべき
* 名前は社会的な識別機能を持つため、複数持つことは問題がある
* 経過措置として、一定期間通称使用を認めることは可能
* 法律を改正すれば、通称使用のための省令などは不要になる
* 通称使用のために戸籍名と通称名を併記するコストは、無意味である
### 結論
棚村氏は、選択的夫婦別姓制度の導入によって、女性がより生きやすく、働きやすい社会を実現できると主張した。通称使用の拡大は、コストや手続きの面で非効率であり、国際的にも理解を得にくいと指摘。制度導入に当たっては、子供の姓の問題や戸籍制度への影響について議論を深める必要があるとした。