カンボジアの学校贈呈式に参加
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8月28日、カンボジア王国スワイリエン州のトロピアンコンプ小学校の贈呈式典に参加してきました。
大田区議会は、超党派の全議員で毎年8月15日に「平和祈念コンサート」を実施し、その収益金にてNPO法人JHP・学校をつくる会を通じてカンボジアの学校建設に寄付してきました。
そして、本年5月に大田区議会寄付による2校目の学校が開校しました。
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JHPより学校贈呈式実施の連絡があり、大田区議会の超党派の社会経済状況調査団で贈呈式参加を兼ねて8月27日~31日の日程で、カンボジアおよびタイの社会経済状況の調査を進め、社会貢献のあり方や教育政策、産業政策など、大田区の地域政策を深めるため視察調査を行ってまいりました。
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・8月27日(火)
在カンボジア日本大使館を訪問。
隈丸優次特命全権大使より、カンボジア王国の歴史、政治体制、政治・経済情勢などの概況と日柬関係における歴史、外交、文化交流について話を伺いました。
インフラ(道路、橋)の重要性、識字率の低さ(73%)などの課題をはじめ、日本に対して負の歴史はなく、製造業、農業などの企業進出はカンボジアは歓迎しており、Win-Winの関係が持てているとのことが印象的でした。
また外交においては、中国は文化的な生活に根付いているものがあり、米国に対しては憧れ、先進国として好意を抱く国であるとのこと。
日本のODA(政府開発援助)によるインフラ整備や、大田区議会が支援する教育分野に対して御礼の言葉をいただきました。
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その後、贈呈式を行う学校方面のベトナム国境近くの宿泊先まで、プノンペンから約150kmの舗装された一本道を、約4時間半かけて自動車にて移動。
乗用車は日本のトヨタ製が多く、トラックの荷台に数十人立ったままの乗車や1台のバイクに家族5人乗りなどの光景は当たり前で、この舗装された道路がカンボジアの幹線道路として、経済の生命線になっていることを実感しました。
信号機も無く、交通ルールはあってないようなものの、日本でいう譲り合いの反対「譲り合わない」という精神がうまく交通ルールとして成り立っていることに驚きました。
また、プノンペン市内のレストランや宿泊したホテルなどに三国志の関羽の像が祀ってあり、生活面の中国文化の影響を感じました。
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・8月28日(水)AM
スワイリエン州のトロピアンコンプ小学校での贈呈式にホテルから乗用車で向かいます。
改めてインフラ整備の重要性と貧富格差を感じました。
贈呈式典は、僧侶の読経にはじまり、カンボジア国歌斉唱、郡教育局長挨拶、大田区議会議長挨拶、JHP・学校を作る会のスピーチ、教育省次官のスピーチと続き、生徒代表の誓いの言葉、メダル・感謝状贈呈、記帳、植樹と感動的な式典でした。
式典でのリー・ソムニー教育省次官の挨拶で、
日本は敗戦で大きな被害を受けたが、日本国民が努力をしてきて経済大国にまでなった。カンボジアも支援をいただきながら日本のような発展をしていきたい。そのためには人材育成、教育が重要であり、そういう教育への支援をしてくださった大田区議会に感謝したい。
との主旨の言葉をいただきました。
また、子どもたちには勉学に励むように、保護者の皆さんには子どもたちを学校へ通わせるようにとの話がありました。
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なお、式典の挨拶・スピーチの内容は、同時通訳で手元のラジオから流れてきます。
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生徒代表の誓いの言葉では、
1.よい知識を得るためしっかり勉強いたします。2.この新しい校舎をきれいに大切に使っていきます。3.よい学生、よい友だち、よい子どもになることを誓います。
ポル・ポト政権時代に85%の教育者が虐殺をされ、教育という芽を断ち切られたということは想像以上のダメージであったと思いますが、人材の育成、教育の力で立ち上がろうとしているカンボジアに対し、大田区議会がわずかながらも支援を継続してきていることを誇りに思うとともに平和祈念コンサート開催の意義も深く感じました。
贈呈品のノートとペンを直接こどもたちに手渡したときの笑顔が忘れられません。
この子どもたちが世界平和のために貢献していく立派な大人に成長されていくことを願います。
また、そのために大田区ができることを継続していきます。
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・8月28日(水)PM
プノンペン市内に移動し、CCH(Center for Children’s Happiness)「幸せの子供の家」と呼ばれる児童養護施設の視察を行いました。
親を病気で亡くしたり、育児放棄された子どもたち92名(男子46名、女子46名)がここで共同生活をしております。
施設内の壁には英語と日本語訳の対応表がたくさん貼られており、到着すると日本語の歌などで歓迎をされました。
ここでは、いままで203名の子どもたちを支援し、98名の子どもたちが自立、中にはプノンペン大学に進学した子どももいるとのことで、ここにいる子どもたちの希望になっていることと思います。
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・8月29日(木)AM
在タイ日本大使館を訪問。
佐藤重和特命全権大使より、タイ王国の政治・経済情勢、日泰関係、近年の洪水被害などについて伺いました。
日本はタイにとって安心できる人気のある国で、ビザの発給制度の変更により、年間130万人の往来があり双方向の交わりを実感しているとのことです。
また、タイの人たちは、あるものが話題になると集中して熱を上げる気質があり、買物好き、ブランド好きなので、今後のタイ航空の直行便就航増とあわせて、双方向の経済・人間の交流がますます広がっていくことへの期待とともに、東南アジア最大の日本企業拠点として日本とのパートナーシップを発展させていくとの思いを語られました。
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・8月29日(木)PM
日本貿易振興機構(JETRO)バンコクセンターを訪問。
井内摂男所長、田中一史次長よりASEANの経済概況、タイへの投資状況などの話を伺いました。
バンコク一箇所に集中して零細企業が増加し、飲食店等、サービス業も多くなってきている。
それに伴い、銀行や信用金庫15~20行がタイへ来て融資先を増やしていること。
地方(北海道~沖縄)の副知事などが農産物のトップセールスをしてくる動きがあり、尖閣諸島の影響で中国離れをしてタイへ流れてきている。
整備されたインフラ・陸路による販売網で、ラオス、ベトナムなどの周辺国に分工場を作るなど、インドネシアやフィリピンなどの島国に比べて地理的な優位性がタイにはあり、法人税免除などの外資優遇政策や日系企業へのサポート体制の充実などにより企業進出が続いているとのことです。
・8月30日(金)AM
アマタナコーン工業団地内にある、オオタテクノパークを訪問し大田区の中小企業の海外展開現場を視察しました。
このオオタテクノパークは、タイ国最大の工業団地開発運営企業「アマタコーポレーションPCL社」が全面出資し2006年6月に開設され、中小企業向け賃貸集合工場として運営されており、現在まで撤退は0社、独立は1社です。日本語対応のできる現地スタッフがいて、この施設の概要説明をしてくれました。
さらにここで起業した西居製作所(本社:大田区千鳥町)と、ここを独立して新たに工業団地内で2倍の敷地に拡張された南武(本社:大田区萩中)の2社を訪問しました。
タイ人の定着率の悪さ、価値観の違いをはじめ、大企業の製造拠点が海外移転する中でいかに中小企業が生き残るかといった課題など、タイ国での起業のエピソードをさまざま伺いました。
不満があればすぐに耳を傾け、とにかく話を聞いてあげコミュニケーションを取ってきたこと。
リーマンショックで他社が大量に解雇するところ「人が大切」と一切解雇せず社内でスキルアップに努め、リーマンショック復帰後に仕事が入ってきたとき人を切った会社は対応できなかった中、人を確保していたためすぐに対応でき、一気に伸びあがることができたことなど。
特に南武のマネージャーの
「(定着率の悪い)タイ人をバカにした会社は伸びない。逆にタイ人をほめている会社は伸びている、発展している。」
といった言葉が印象に残りました。
その実践のとおり、南武ではタイ人の定着率がとても良いとのことです。
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・8月30日(金)PM
バンコクの市内を視察。
10数年前にバンコクを観光したことがありましたが、西洋人観光客の多さが目立ち、レンタル自転車の配備や市内の鉄道網の発展、インフラの整備により、移動が大変便利になっていました。
特に驚いたのがスカイトレインと呼ばれる市内を結ぶ高架鉄道で乗車券は切符ではなく磁気カードで裏面に路線図の表示があるため、普段乗りなれていない観光客などには非常に役に立つものでした。
また乗車はしませんでしたが、地下鉄も開通しており、高架鉄道と組み合わせて乗車をすれば、有名なバンコクの渋滞を回避して都市部を縦横無尽に移動することができる観光客に喜ばれる魅力的な街に発展していました。
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・まとめ
カンボジアの教育環境の実情からはじまり、タイ王国での日本の中小企業支援の視察という流れでしたが、同じ東南アジアにおける貧富の差を感じたものの、日本からの支援がその発展に寄与している姿を直接目にすることができ、また、両国の全権特命大使と懇談することもでき、非常に貴重な経験をすることができました。
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日本国内においては東日本の復興支援の重要性を感じていたが、世界規模でのこのカンボジアの様な国への支援の重要性を痛感しました。
“国際都市”を名乗る大田区の国際感覚を磨き、今後も学校建設、教育物資支援、人間交流などを継続させていきたいと思います。
また、外務省と経産省、日本貿易振興機構(JETRO)、現地の日系企業との相互連携へのきっかけづくり、小さいながらもネットワークづくりの架け橋になれたのではないかと実感しております。
東京都で唯一、国際空港を有する海外の窓口の大田区として、世界からの観光客(人)やビジネス(企業)を呼び込める魅力ある都市環境づくり、大田区のモノづくり技術と世界の技術との交流や中小企業の支援等、さまざまな課題への手がかりとなる事例を目にしてくることができました。
東南アジアへの支援を継続し、その発展の歩みを見つめるとともに、今回の視察調査にて得てきたものが、どのような事例で参考にできるのか、どのような変化をもたらすことができるのか検証、研究し、大田区、そして日本の政策に生かしてまいりたいと思います。
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以上