令和6年度 福岡県の予算編成に対する要望書
猛威を振るった新型コロナウイルス感染症が本年5月には5類に移行し、本県の経済は緩やかな回復基調にあると指摘される一方、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した円安・物価高騰が長期化している。特に食品やガソリン、資材の価格高騰は県民の暮らしや中小企業、小規模事業者を直撃し、その対策が急がれている。
また、豪雨災害は毎年のように本県を襲い、本年も7月の豪雨が県内各地に多大な被害をもたらした。豪雨災害に備えた県土の強靭化が必須となるほか、公共施設の長寿命化が必要とされるなど、インフラ整備の着実な促進が望まれる。
さらに、県民の生命と健康な生活を守る福祉施策の推進、少子・人口減少社会における新しい課題への挑戦、人権問題の解決、教育の諸改革など、県政を取り巻く課題は枚挙にいとまがない。安全安心な県民生活を守るためにも、県政の停滞は許されない。
私たち公明党県議団は常に県民の声に耳を傾け、その課題解決のために奔走している。その一環として、県民に安心と希望を与え、活力ある福岡県を構築するため、令和6年度予算編成にあたり以下の事項の実現を強く要望する。
令和6年度予算要望
< 最重点要望 >
1.物価高から県民生活を守る為、持続的な賃上げを実現できるように、政策を総動員し、危機を克服すること。
- 総合経済対策にある重点支援地方交付金を活用した支援策を速やかに実行すること。
- 中小企業等との取引において円滑な価格転嫁が進むよう取り組むこと。 特に、建設業においては、エネルギーや原材料費、労務費等現下の取引価格を反映すること。
- パートナーシップ構築宣言企業の更なる拡大を図るため、補助金申請時の加点措置、公共工事の優先発注などインセンティブを拡充すること。
2.脱炭素社会やデジタル社会への変革が進む中、新たな産業を創出し、雇用の拡大を図るとともに、厳しい経営環境にある中小企業事業者の飛躍、成長に向けた支援を行うこと。事業継続と危機に強い経済構造の実現に向けた政策に取り組むこと。
3.新しい感染症の流行に備え、新型コロナウイルス感染症対策をもとに、感染症対策に万全を期すとともに、新興感染症などの感染拡大に備えた病床確保策や、感染症専門医の増員、感染症患者の看護に対する看護師の確保・教育を進めること。
4.気候変動の影響による豪雨災害が常態化する中、県土の強靭化を図るとともに、治水対策として、流域治水に取り組むこと。また、災害時に高齢者等を迅速に避難させる「個別避難計画」の着実な策定、ハザードマップの活用等、ハード、ソフト両面における事前防災・減災対策を強化すること。
5.少子化対策としてジェンダーギャップ解消へ女性の賃金アップと就業継続率を上昇させる為、リスキリングの普及推進や正規雇用を希望する方へのきめ細かい就職支援に取り組むとともに、結婚や出産などのライフステージが変化しても、女性がキャリアを中断することなく、やりがいをもって働き続けることができるよう就業環境の整備を行うこと。
6.少子化に歯止めをかけるため、①「仕事か、子育てか」の二者択一となっている方への仕事と子育ての両立支援に加え、②結婚したいが出会いの機会に恵まれていない方への結婚支援、AIを活用した支援及び認知度向上。③出産を希望しているが、妊娠に結びつかない不妊治療・プレコンセプションケアの推進、④地域格差のない産前産後ケアの充実、⑤経済的理由から、第2,3子を持つことにためらいがある方への育児負担の軽減、⑥夫の育休取得を促進し、子どもは夫婦で育てる気運の醸成などに、きめ細かく対策を講じること。また、県が独自に行う先進医療による不妊治療の一部助成の拡充や受診できる医療機関を拡げるとともに、治療への企業や県民の理解を促進すること。
< 重点要望 >
7.子どもの人権を社会全体で守っていくため、子どもの貧困、児童虐待、ヤングケアラー対策等、子どもを取り巻く課題に機動的に取り組むこと。児童虐待件数や不登校、いじめ、子どもの自殺者数など、極めて憂慮すべき現状を解消するため、今後、こども未来課・子育て支援課・教育庁など部署横断で重点的に取り組むこと。特にヤングケアラー対策については、県全体の実態を十分に把握するため、小学生と中学生、高校生、大学生等の各学年における全体的な調査を行うこと。併せて、一人親家庭を支援する観点からの対策を進めること。
8.LGBTQ当事者の方々が様々な場面で直面する課題に対し、安心して生活できる環境の整備を図ること。福祉サービス・就労・学校等において生きづらさを感じることのないよう当事者に配慮したきめ細かい施策の推進と県民に対する理解を促進すること。
9.一般市販薬の過剰摂取「オーバードーズ」が若者の間で急増している。本県の実態を調査するとともに、学校現場でODの危険性を指導する薬物乱用防止教育の拡充、販売業者への販売ルールの徹底、特にODの背景にあるとされる若者の孤独・孤立対策を検討すること。
10.全国的な課題でもある高齢透析患者の介護施設入所の問題で、県が、透析医会、高齢者施設、福岡腎臓病患者連絡会相互の情報交換を行い、医療と介護の連携を進め、高齢透析患者の介護施設受け入れが進むよう取り組むこと。併せて高齢者施設入所の透析患者の送迎を支援すること。
11.高齢者の孤独・孤立を防ぐよう地域コミュニティの活性化に努めるとともに、フレイル予防や口腔ケアの推進により健康寿命の延伸を図ること。また、認知症の人が住み慣れた地域で安心して希望を持って暮らすことができるようユマニチュードの普及や認知症サポーターの養成などに取り組むこと。
12.介護離職の防止へ向けて、介護休業制度などの支援策の認知度を上げるため、企業から従業員に対する積極的な周知を図るよう働きかけること。介護現場で相談を受けるケアマネージャーに対し、社会保険労務士や社会福祉士など仕事と介護の両立を支援する専門家による研修を行うこと。
13.県内市町村や関係団体等と連携を取り、在宅就労支援を積極的に推進することにより、障がい者や難病患者等の雇用を促進すること。また、本県の行政機関、教育機関、民間企業において、障がい者の法定雇用率の達成及び向上に努めること。
14.水素社会の実現へ向け、エネルギー政策の人材育成、技術の集積を図り、世界をけん引していくこと。また脱炭素社会の実現に向けて、電気自動車等への購入費補助や急速充電設備の補助、更に県有施設における充電インフラ設備の整備推進に取り組むこと。
15.県営住宅の改修工事が計画的に進められているが、住居者の高齢化が進んでいるため、バリアフリー化の推進をはじめとした改修工事を計画通りに行うこと。
16.多様な個性が生かされ、一人も取り残さない教育を充実させること。
- 不登校や病気療養の子どもたち、特別支援教育が必要な子どもたち等の学びを確保する環境整備やICTの活用を推進すること。
② 障がいの有無にかかわらず、一緒に学ぶインクルーシブ教育の推進の ため、全県下の小中学校の通級指導教室を自校通級方式とすること。
③ 自治体の判断で設置される特別支援学級のうち、増加する自閉症・情緒障害学級の担当教員の専門性を高めること。
④ 通学バスが利用できない医療的ケア児の通学支援に、介護タクシーなど専用車両と看護師を確保すること。
⑤ 学校の行事や慣習の中に根強く存在するジェンダーギャップの解消を図ること。
17.いじめ問題が多発していることから、学校現場においては、原因究明と問題解決に向けて最善の努力をすること。また、二度と起こらないように子どもたちへの教育に力を入れること。
18.教員の人手不足が深刻化し、危機的な状況にある公教育を守るため、教員予算を増やして、教育人材の確保と教員の労働環境の改善に向けた取り組みを進めること。
19.ニセ電話詐欺は、暴力団の資金源であることから、ニセ電話対策を知能犯担当の捜査二課と暴力団担当の捜査四課で担当し、徹底した捜査をすること。具体的なニセ電話対策防止策として『まっ太フォン』や迷惑電話を自動ブロックするシステムの普及に努めること。