昨年の能登半島地震では、災害関連死が直接死を上回り深刻な課題となりました。その背景には、高齢者や障がい者など要配慮者への福祉的支援の不足があります。

本年5月の災害対策基本法改正で、初めて「福祉サービスの提供」が明記され、DWAT(災害派遣福祉チーム)の支援が避難所に加え、在宅・車中泊避難者にも拡大。関連死の防止が期待されます。

公明党が訴えてきた「災害時の福祉充実」が法制度に反映されました。先週の代表質問でも取り上げ、自然災害が激甚化、頻発化する中、防災・減災の強化を訴えました。

 

次に、災害時の福祉サービスの提供について伺います。

東日本大震災以降、避難生活での身体的・精神的負担の増加によって引き起こされる「災害関連死」の防止が大きな課題となっています。能登半島地震では、6月10日時点で災害関連死が379人を超え、直接的な被害による死者228人を上回る深刻な事態となりました。災害関連死の要因の一つに地域の福祉機能の低下があり、高齢者や障がい者など要配慮者が十分なケアを受けられず体調を崩すケースが指摘されています。災害時に迅速な福祉的支援を提供することが極めて重要です。

能登半島地震では、社会福祉士や介護福祉士、保育士などの専門職で構成される「災害派遣福祉チーム(DWAT)」が避難所に派遣され、環境整備や相談支援などで大きな役割を果たしました。本県でも8チーム25名が石川県に派遣されたと聞いています。しかし、在宅や車中泊で避難生活を送る方々の状況把握に時間を要し、高齢者や障がい者に必要な支援が十分に届かない課題も明らかになりました。

こうした中、本年5月に成立した改正災害対策基本法では、災害法制に初めて「福祉サービスの提供」が明記されました。これにより、DWATの支援対象は避難所に加え、在宅や車中泊の避難者へも広がり、災害関連死の防止につながることが期待されています。

そこで知事に伺います。

  • 災害対策基本法や災害救助法に「福祉サービスの提供」が位置付けられたことについて、知事はどのように認識しておられるのか。また、福岡県災害派遣福祉チーム(福岡DWAT)について、円滑な活動のためのこれまでの取り組み状況と、法改正を踏まえ、専門人材の確保等、平時からの体制整備を進めていく必要があると思うがどのように進められるのか、ご見解を伺います。

今回の改正では、新たに「被災者援護協力団体の登録制度」が設けられ、NPO法人や社会福祉法人、医療・福祉団体などが、あらかじめ登録されることで、災害直後から行政と円滑に連携し、迅速に専門家による被災者支援にあたることができる仕組みとなりました。一方で、被災者の生活再建を進めるためには、アウトリーチによって被災状況や課題を把握し、生活再建に向けた計画を作成し、民間団体や福祉、法律の専門家らが連携して継続的な支援を行う「災害ケースマネジメント」の推進が欠かせません。令和6年2月議会の我が会派の代表質問においてその推進を質したところですが、その進捗はどのようになっているのでしょうか。

  • そこでお尋ねいたします。県では令和6年3月に「福岡県地域防災計画」を改定し、災害ケースマネジメントの取組を位置づけ、県及び市町村による災害ケースマネジメントなどの被災者支援の仕組みの整備を明記されました。本県でも自然災害が激甚化、頻発化する中、災害発生時に、災害ケースマネジメントが円滑に実施されるよう、具体的にどのように取り組まれているのかお伺いします。

知事答弁骨子

問1 災害時の福祉サービスの提供について

〇 令和7年7月の改正災害救助法の施行により、救助の種類に「福祉サービスの提供」が追加され、県は、災害救助法が適用された場合、これまでの避難所に加え、自宅や自家用車で生活する高齢者、障がい者などの要配慮者に対しても、相談対応や食事、排せつ、入浴の介助等の日常生活上の支援などの福祉サービスを提供することとされた。

このことは、自宅や自家用車で生活する要配慮者の速やかな状況把握と、食事や睡眠といった生活機能の低下や要介護度の重度化による災害関連死などの二次被害の防止につながるものと考えている。

〇 「福岡DWAT」については、介護福祉士や理学療法士等の団体で構成する福岡県災害福祉ネットワーク協議会を通じて、人員の確保に努めており、今年7月末現在、チーム員数は392名となっている。

また、日頃から災害福祉支援活動に取り組んでいる県社会福祉協議会と連携して、介護福祉士や理学療法士等の様々な専門職が、チームとして円滑な支援活動が実施できるようになるための研修を実施している。

これに加え、実践力を高めるため、県総合防災訓練において、市町村が行う避難所設置・運営訓練と連携したDWAT活動訓練を実施している。

〇 今回の法改正を踏まえ、これまで実施している研修プログラムに、在宅や車中泊避難者等を想定した内容を取り入れることにより、新たな活動場所において適切な支援活動が行えるよう、チーム員の知識習得等を図っていく。

 

 

問2 災害ケースマネジメントについて

〇 災害時には、訪問等により被災者の健康、住まい、就労などの生活課題を把握し、必要に応じ専門的な能力を持つ団体等と連携しながら、きめ細かな支援を継続的に実施する、災害ケースマネジメントの取組が円滑に実施されることが重要である。

〇 このため、県では、昨年度、標準的な実施例や手順等を示した「福岡県災害ケースマネジメントの手引き」を作成し、市町村及び社会福祉協議会等へ配布した。

その上で、災害ケースマネジメントの理解を深めるため、市町村等の職員を対象に研修会を実施し、手引きの解説のほか、ワークショップ形式で具体的被害を想定し、アウトリーチによる被災者の状況把握とそれに対してどのような支援が必要かとの検討を行った。

今年度も12月に同様の研修を行うこととしており、こういった取組を通じ、災害ケースマネジメントに対応できる人材の育成を図ることで、きめ細かな被災者支援が可能となるよう努める。

 

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