本日(9・16)福岡県議会は代表質問2日目で、公明党から塩出麻里子議員(小倉南区)が質問に立ちました。

その中で、最低賃金引上げについて質問しました。物価高を克服するためには物価上昇を上回る賃上げが必要です。福岡県では8月20日に令和7年度の最低賃金を65円引上げ、1,057円とする答申がありました。
最低賃金の引き上げは、単に最低賃金の引き上げだけでなく、例えば月収20万円の方は22万円、25万円の方は28万円と給与水準全体の引上げにつながり、また年金額の引上げにも連動するなど、物価高の中、働く人の暮らしを下支えする重要な判断です。企業が引き上げに対応するため、特に中小企業の利益率を高める取り組み、生産性向上と価格転嫁への支援が不可欠です。

知事の速やかな取り組みを求めます。

 

最低賃金引上げ並びに企業収益向上について質問します。

8月20日、福岡労働局において福岡地方最低賃金審議会が開かれ、令和7年度の最低賃金を現行の992円から65円引き上げ、1,057円とするよう答申が行われました。引き上げ幅は、中央最低賃金審議会の目安63円を2円上回り、11月16日に発効する見通しです。

物価高を克服するには、物価上昇を上回る賃上げが不可欠です。最低賃金の引き上げは、中間所得層を含む給与水準全体の底上げにつながり、年金額の引き上げにも連動するなど、物価高の中で働く人々の暮らしを下支えする重要な判断です。政府は2020年代に全国平均1,500円を目指す方針を示し、骨太の方針にも明記し、また、中央の目安を上回った都道府県には「政府の補助金による重点的な支援を行う」としています。

また、最低賃金の引上げに企業が対応していくためには、企業の利益率を高めていく必要があり、価格転嫁と同時に生産性向上支援が欠かせないと考えます。中小企業・小規模事業者の生産性向上へ、利益率を高めるために国、県で様々な補助金が計上されています、省力化投資補助金では、使い勝手がいいようにカタログ型支援やオーダーメイド型支援で提供され、利用されています。また事業再構築補助金、モノづくり補助金と十分に準備されています。しかし地域を歩くと必要な中小企業の方がその補助金の存在を知らないことが多く、その対象の方々にしっかりと選択肢を周知すること、例えばSNSや動画等の活用や、支援策を十分に活用できるよう伴走支援を強化すること、特に、人手不足が深刻な運輸・物流や介護・福祉など産業分野に重点的な支援を行うことも重要です。さらに、アメリカとの関税問題などを背景に、製造業を中心に受注減やコスト削減圧力が懸念されています。

併せて、物価高騰が続く中で、企業が自発的かつ持続的に賃上げできるよう環境の整備が不可欠です。しかしながら、価格転嫁が難しい企業も多く、大きな課題となっています。経済産業省が本年4月に行った調査によれば、人件費の増加を含むコスト上昇分を販売価格に全額転嫁できた企業は25.7%、一部でも転嫁できたと答えた企業が83.1%、全体の転嫁率も52.4%と半年前より3ポイント増加も、転嫁ができない企業との二極化が進み、また多重下請け型のサプライチェーンでは、2次、3次と下請階層が深くなるほど転嫁率が低くなる傾向も指摘されており、転嫁が困難な企業への対策は急務です。

そこで知事に伺います。

1.まず、今回の最低賃金引き上げをどのように受け止めておられるのか、ご所見をお伺いします。

2.本県中小企業の生産性向上へ補助金等の利用状況をお示しください。また、中小企業に十分に活用されるよう、どのように周知に取り組んでいるのか、ご所見をお聞かせ下さい。

3.最低賃金の引き上げの対応として、本県企業の価格転嫁を進めていくため、これまでどう取り組んできたのか、また今後どのように取り組んでいくのか。また、中小企業の支援を強化すべきと考えますが、知事のご見解をお伺います。

この項の最後に、県発注の公共工事についてお伺いします。

本県は最低制限価格を事前公表しているため、最低制限価格に入札価格が集中し、結論としてくじ引きで落札者が決定されている事例が多く見受けられます。

そこで知事にお尋ねします。

4.昨年度の県発注工事において、くじ引きにより最低制限価格で落札された件数の割合と総額をお示しください。また、最低制限価格で工事を受注した場合、人件費や様々な原価上昇分について、受注事業者が適正な利益を確保できる水準となっているのか、お伺いします。

5.次に、くじ引きによる決定では、積算を適切に行わずに入札を行うなどの問題があります。そのため、くじ引きを発生させている原因である、最低制限価格の事前公表をやめるなどの、入札制度の見直しを検討する必要があるのではと考えます。知事の見解をお尋ねします。

 

知事答弁骨子

問1 今年度の最低賃金の引上げに対する受止めについて

〇 本県の最低賃金については、福岡地方最低賃金審議会において、公労使の委員により、地域の実情に応じて十分に調査と審議を尽くした結果、65円という過去最大の引上げ額が示され、1,057円に決定された。

今回の引上げにより、かねてより県としても目指していた最低賃金1,000円以上が達成されたところであり、と定の進捗が見られたことは評価しているが、物価上昇を上回る賃上げを実現するためにも最低賃金の継続的な引上げが必要であると考えている。

〇 また、国に対して、首都圏及び近畿圏との地域間格差の是正を図るよう求めてきたところであるが、今回の引上げにより、福岡県の東京都に対する比率は85.3%から86.2%に、大阪府に対する比率は89.0%から89.8%となり、地域間格差が縮小されたことについても評価しているが、本県からの人口流出や人手不足を解消するためにも、引き続き当該格差が縮小される必要があると考えている。

 

問2 中小企業の生産性向上に資する補助金の利用状況と周知について

〇 県では、「中小企業生産性向上支援センター」の支援企業を対象に、「AI画像処理による食品自動選別機」や「パソコン操作の自動化システム」の導入など、令和元年のセンター開設以来、215件の補助を行っている。

〇 また、「中小企業省力化投資補助金」、「事業再構築補助金」、「ものづくり補助金」といった国の補助金については、「産業用ロボット」や「無人搬送システム」など、過去3年間で704件、設備導入やシステム構築等に活用されている。

〇 こうした国や県の補助金を広く周知するため、県では、ホームページ、メルマガ、SNSを通じて情報提供を行っているほか、補助金の概要や申請方法を分かり易く紹介するチラシを作成するとともに、県庁や工業技術センターに相談窓口も設置し、補助金活用の提案から申請まで伴走支援を行うなど、中小企業の皆様に対して補助金の活用を促しているところである。

〇 また、商工会議所・商工会をはじめとした県内経済団体においても、ホームページやメルマガを通じて補助金を周知するとともに、経営指導員が日ごろの支援活動の一環として、補助金活用の提案を行っている。

〇 今後も、このような取組を通じて、関連する補助金の更なる周知、活用促進を図り、県内中小企業の生産性向上を積極的に支援してまいる。

 

問3 価格転嫁の取組について

〇 一昨年2月、県の呼びかけにより、官民労13団体で締結した「価格転嫁の円滑化に関する協定」の下、これまで、

① 発注企業の代表者が、適正取引を宣言し、受注企業の価格交渉しやすい環境づくりに有効な「パートナーシップ構築宣言企業」の登録促進、

② 中小企業の価格交渉を伴走支援する「価格交渉・賃上げ応援専門家派遣」、

③ 「価格交渉支援ツール」や「価格交渉ハンドブック」など、中小企業の価格交渉に役立つツールの周知

などに取り組んできた。

また、価格転嫁の必要性について、消費者の理解が進むよう、直接県民の皆様に訴える「街頭啓発活動」にも取り組んでいる。

こうした取組により、本県の宣言企業数は、協定締結時の662社から、9月4日現在で2,558社まで増加している。

〇 しかしながら、中小企業からは、

・ パートナーシップ構築宣言企業が増え、価格交渉はしやすくなったが、2次請け、3次請けも視野に入れた十分な価格決定ができていない、

・ 下請けまで含めた業界全体の機運醸成が必要、

・ 消費者の適正価格での取引への理解が浸透しておらず、価格が上げづらいなどの声をお聞きしている。

また、福岡商工会議所が今年1月に公表した価格転嫁の状況に関する調査結果によると、増加したコスト全体の価格転嫁が5割以上できた企業の割合は昨年度と比べ0.2ポイント増の47.2%にとどまっている。

こうしたことから、中小企業の価格転嫁は道半ばであると考えている。

〇 このため、今年度は、これまでの取組に加え、業界全体の更なる機運醸成が図れるよう、「価格転嫁円滑化推進フォーラム」や、中小企業の価格交渉力を向上させる「業界ごとの特性を踏まえた講習会」を開催することとしている。

また、消費者の理解も欠かせないことから、今年度も引き続き、「街頭啓発活動」に取り組むこととしている。

〇 今後も引き続き、中小企業が持続的に賃上げできるよう、官民労13団体で連携し、価格転嫁の円滑化に向けた取組を進めてまいる。

 

問4 最低賃金の引き上げに対する中小企業の支援の強化について

〇 先ほど述べた「価格転嫁」の取組を進めるとともに、県内の中小企業が、「生産性向上」や「売上げ向上」に取り組み、収益力を高めていただく必要がある。

〇 まず、中小企業の更なる「生産性向上」のため、来月、「中小企業DX推進センター」を開所し、DX専門アドバイザーが企業現場に出向き、きめ細かく伴走支援を行う。

〇 さらに、「売上げ向上」のため、地域中小企業支援協議会において、新たな事業展開に向けた経営革新計画策定や実行支援に取り組んでいる。

「グローバルコネクト福岡」においては、バイヤーを招へいした商談会の開催など中小企業の海外展開支援にも取り組んでいる。

〇 こうした取組を後押しするため、国の補助金や、県単独の「中小企業生産性向上・賃上げ緊急支援補助金」等により、設備導入などを支援している。

〇 今後、国の「最低賃金」の引き上げに対応する中小企業・小規模事業者を後押しする支援策」の具体的な内容が明らかになり次第、速やかに国と連携を図り、更なる支援策について検討してまいる。

 

問5 最低制限価格による受注について

〇 昨年度の250万円超の競争入札における県発注工事のうち、最低制限価格でのくじ引きによる落札件数は、全体の入札件数3,371件の45%にあたる1,536件となっている。

また、金額ベースでは、全体の落札金額1,347億円の26%にあたる354億円となる。

〇 最低制限価格は、物価上昇などを反映した最新の労務費や材料費などを用いて積算した直接工事費や諸経費に、工事の品質確保や、受注事業者が企業として継続するために必要な経費を考慮し、国が定めた基準に準拠した率を乗じて算出していることから、適正な利益を確保できる水準と考えている。

 

 

問6 最低制限価格の事前公表の見直し検討について

〇 県では、過去の累次の不祥事に鑑み、最低制限価格を探ろうとする動きを防止するため、段階的に最低制限価格の事前公表を行い、平成18年以降、競争に付す全ての建設工事について事前に公表している。

〇 国の指針では、事前公表により、適切な積算を行わずに入札を行った事業者が受注する事態が生じるなどを理由に、事後公表を求めているが、県では入札の際に事業者から提出される工事費内訳書を用いて、適切な積算となっているかを確認している。

〇 このようなことから、入札に係る不正防止を図るため、事前公表を引き続き実施し、入札制度の適切な運用に努めてまいる。

 

 

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