昨日、福岡県議会6月定例会 代表質問で公明党松下正治議員が薬物乱用対策について質問、特に市販薬や処方薬の過剰摂取で県内1167人が令和4年度に救急搬送されたと答弁がありました。
背景には、学校や職場での人間関係や家庭の問題など「生きづらさ」を抱え、苦痛から逃れたい思いで乱用に走るなど社会的孤立があると言われており、対策は喫緊の課題です。引き続き、対策に取り組んで参ります。
以下質問答弁の骨子です。
次に、薬物乱用対策について伺います。
昨今、大学の運動部員の大麻所持などの事件が相次いで発覚し、若者への蔓延防止が急務となっています。薬物犯罪は長らく覚せい剤が中心でしたが、近年大麻が急増、2021年には検挙人数が過去最多に達し、日本は「大麻乱用期」にあると言われています。特に検挙された人の約7割は30歳未満で若者の急増は際立っており憂慮する事態となっています。
大麻には精神障害などの恐れに加え依存性もあり、覚せい剤などの「ゲートウェイドラッグ」と呼ばれ、深刻な薬物乱用につながるものと懸念されます。
以下、質問します。
1.本県における覚せい剤事犯、大麻事犯それぞれの検挙者数とその推移、再犯者率、年齢層など、本県の薬物乱用の現状について、知事はどのように認識されているのか伺います。
2.ネット上で流れる薬物の情報の遮断は困難であり、興味本位の使用を防ぐためにも学校や家庭で正しい情報を徹底して啓発していくこと、特に急増する大麻に焦点をあてた対策が重要です。若年層への啓発の取り組み、及び特に大学生への取り組みについて知事に伺います。
併せて、児童生徒に対する薬物乱用防止教育について、どのように取り組んでいるのか、教育長に伺います。
3.薬物は依存性が高く、薬物乱用を減少させるためには再犯者の減少、依存症対策が重要です。本県では執行猶予判決を受けた薬物事犯の初犯者を対象に依存症からの回復、社会復帰に向けた支援を行っていますが、その進捗状況を伺います。このほか大麻事犯で検挙補導された少年の再乱用防止にどのように取り組まれているのか知事に伺います。
4.県警本部長に伺います。メッセージアプリ等を介して、学生が容易に入手している現状からも違法薬物の密売は深刻な状況です。こうした入り口となるSNSに対するサイバー捜査を含め、取り締まりを一層徹底すべきですが、県警本部長の決意を伺います。
5.この項の最後に、違法薬物でなく、麻薬成分の入った一部の市販薬、睡眠薬や向精神薬などの処方薬を過剰摂取することで違法薬物と似た状態となるオーバードーズについて伺います。入手しやすく、ネット上で乱用を助長する情報が流れたことで、若年層などに広まっています。過剰摂取は臓器障害や脳にダメージを与え、呼吸、心臓の停止で死に至る危険があると指摘されていますが、国立精神・神経医療研究センターが行った調査では、市販薬、処方薬を主たる薬物とする依存症患者が急増しており、中でも10代の患者の主たる薬物は市販薬、処方薬が約7割、20代患者で約6割と若年層が多くなっています。学校や職場での人間関係や家庭の問題など「生きづらさ」を抱え、苦痛から逃れたい思いで乱用に走るなど社会的孤立が背景にあると言われており、対策は喫緊の課題です。
市販薬乱用の実態を把握するとともに、対策にどのように取り組むのか、知事の見解を求めます。
(服部知事答弁)
問1 福岡県の薬物乱用の現状について
○ 昨年の覚醒剤事犯の検挙者数は412人と減少傾向にあるが、依然として高い水準であり、再犯者率は80.6%と高く、30代以上が約9割を占めている。
○ また、大麻事犯の検挙者数は349人と増加傾向にあり、過去最多の一昨年に次ぐ検挙者数となっており、再犯者率は32.4%、20代以下の若年層が約7割を占めている。
○ 大麻は、より作用の強い覚醒剤使用の入口となるゲートウェイドラッグと呼ばれることから、若年層へ向けた対策が重要となる。また、覚醒剤は再犯者率が高く、再乱用防止対策が必要であると認識している。
問 若年層への薬物乱用防止の啓発について
○県では「福岡県薬物乱用防止第五次五か年戦略」に基づき、若年層に向けた大麻を中心とした薬物乱用防止の啓発に取り組んでいる。
○小中高等学校においては、薬物乱用防止教室を開催しているが、その講師を対象とした研修において、より大麻に重点を置いた内容に見直すとともに、薬物乱用防止教室用の資料も改訂している。
○また、一昨年度から、県が作成した「大麻の誘いに対する断り方」を伝える啓発動画を、若者がよく利用するSNSを用いて発信しているところである。
○さらに、昨年度、大麻の健康への影響や、誘いへの対処法を解説した大麻乱用防止教育用DVDを制作し、県内の全ての中学校に配付している。
○大学生につきましては、夜の繁華街で彷徨う少年少女達と向き合い、夜回り先生と呼ばれている水谷修氏を講師にお迎えして、薬物乱用防止講演会を毎年開催している。また、大麻に特化したリーフレットを、啓発窓口として県内全大学に配置していただいている連絡調整員を通じて、新入生全員に配付している。
(教育長答弁)
問 児童生徒への薬物乱用防止教育の取組について
○ 大麻の乱用が高校生段階にも見られる実態を踏まえ、本県公立学校では、小学校高学年から高校生までの児童生徒を対象に、年1回以上、学校薬剤師や警察官等による薬物乱用防止教室を開催している。
○ また、毎年実施している教員を対象とした研修会においては、大麻の心身への影響だけではなく、インターネットやSNS等の普及により大麻が身近に迫っていることなど、最新の情報を提供している。
併せて、各学校における更なる指導の充実を図るため、県が制作した「大麻乱用防止教育用DVD」の活用や誘われた際の具体的な対処法等について、講義・演習を行っている。
○ 県教育委員会としては、単に知識の習得だけでなく、薬物乱用を絶対にしないという意思決定や行動選択ができる資質・能力の育成を目指し、今後も薬物乱用防止教育を推進してまいる。
(服部知事)問 薬物の再乱用防止の取組について
○ 県では、福岡地方検察庁から情報提供された初犯者に対して、面談や定期的な状況確認を行うとともに、精神保健福祉センターや医療機関等が実施する回復プログラムや治療に繋ぐ支援を行っている。
○ 平成30年度の事業開始から今年8月末までに、 246人の情報提供を受け、全員に面談及び支援計画の作成を行い、そのうち84人を回復プログラムや治療に繋げたところである。
○ 大麻事犯で検挙補導された少年に対しては、全国で初めて、一昨年度から、少年が取り組みやすいようにイラストを多用したワークブックを作成し、これを活用した少年用回復プログラムF―CAN(エフキャン)を、県警少年サポートセンターにおいて実施している。
(警察本部長答弁)
問 違法薬物の密売等の取締りに対する県警本部長の決意について
○ 現在の薬物情勢にあっては、誰しもがインターネットを利用してt覚醒剤や犬麻などを容易に手に入れることができる憂慮される状況にある。
○ 県警察としては、サイバーパトロールを積極的に進めるなど、薬物の密売等に係る情報収集を強化するとともに、入手先に関する末端乱用者からの捜査などにより、薬物犯罪組織への取締りを強力に推進していく所存である。
(服部知事答弁)問 市販薬の乱用について
○ 県内の各消防本部からの情報によれば、処方薬を含めた医薬品の過剰摂取が原因と疑われる昨年度の救急搬送者数は、 1, 167人で、女性が約7割を占め、30代以下の若年層が多くなっている。
○ 今年2月、国において、かぜ薬や咳止めの薬など、「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲が見直されたことから、県では、薬局・薬店に対して、若年者には、氏名、年齢、購入理由を確認するなど、適正に医薬品が販売されるよう周知、徹底を行ったところである。
○ また、小中高等学校で実施している薬物乱用防止教室の講師に向けて、昨年度、市販薬乱用の危険性についての研修を実施した。
○ 市販薬の乱用については、若年層及び女性が多いという実態を踏まえ、今後は、SNSを活用して、医薬品であっても適切に使用しないと死に至ることもあるといった危険性の啓発など、国、県、政令市の取締・教育・行政等の機関で構成する薬物乱用対策推進本部が連携し、しっかり取り組んでまいる。