平成27年度第四回定例会本会議 一般質問において
大田区議会公明党の椿真一です。
10月末には、区内の小中学校の運動会もひと段落し、全力で競技に挑む児童・生徒の姿に感動を覚えたのは言うまでもありません。子供たちが夢や希望を持って、健やかに育っていける街づくりを推進しようと改めて決意した次第であります。
それでは質問通告に従い順次質問させていただきます。まずは貧困の連鎖について質問します。
先日、ある外国人のご婦人からご相談をいただきました。
その方は、日本に来て18年、ご本人と小学5年生の母子家庭で、区の支援についてのご相談でした。月収は約14万円、それに児童手当などの控除を足しても合計 約19万円程度で生活を行っているとの事です。生活保護の提案は辞退され、もう少し頑張ってみるとの事でした。生活保護費に満たない収入でも自力で頑張っていこうとするその姿に頭が下がります。
さて、2013年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が制定されました。第1章、第1条には「子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備する」という文言から始まり、第2条には「子供の貧困対策は、国 及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取り組みとして行わなければならない」と、行政に対しても積極的に取り組むよう義務化されています。
貧困の経済格差は子供の教育格差につながり、その子の成長に大きく影響を与え、さらに成長後の就職にも直結し、「貧困の連鎖」が再び繰り返されているわけであります。
今までも本区議会において、この貧困の連鎖問題については、会派を超えた諸先輩方により、さまざまな角度から議論がなされて来た訳でありますが、子どもたちの輝く未来を実現するためにも、今後も議論を重ね、貧困家庭への支援を強化していくことは重要であると考えます。
本年度より本区の生活保護家庭の児童に対する学習支援の対象は、小学生までに拡充され4年・5年・6年生の生活保護世帯児童に対し、年間10万円の支援がなされる事となりました。さらに中学1年・2年生に対しては昨年までの年間5万円から10万円に引き上げられたことは素晴らしいことと評価いたします。そこで質問します。現在の生活保護世帯の小学生4年5年6年生児童は何人いて、その内、何人の児童が学習支援を受けられるようになったのか、お聞かせください。
また、高校への進学後、様々な理由により高校を中退していく子供たちをいかに防いでいくのかも重要と考えます。これは大変な問題でありますが、家庭においての心の安定も一つの解決策かもしれません。経済的にも生活が安定し、保護者が生き生きと社会の中で働く姿を見せるのも子供にとっては大きな励みになるものと思います。
冒頭に紹介した母子家庭には母親の正社員への就労支援も含め進めさせていただきました。
また、この家庭のように生活保護と同等の又はそれ以下の収入でありながら生活保護費を受給されていない「ひとり親家庭」の児童に対する学習支援が行きとどいてないことは大きな課題と考えます。生活保護世帯の児童は学習支援されているのに対し、そうでない貧困世帯の子ども達には支援がありません。生活保護世帯以外の貧困世帯の児童にも同じように学習支援があるべきと考えますが、所見をお聞かせ下さい。
また、今後も国際化にあたり、外国人母子家庭の母親への学習支援も大きな課題と考えます。その方々は「会話ができても読み書きは苦手」というのがほとんどです。母国ではハイスクールを卒業された方々も何人もいます。しかし、日本語の読み書きが出来ないばかりに、区や町会、学校からの連絡が来ても読めない状況で、重要なお知らせが漏れるケースもありがちと伺いました。本区には糀谷中学校に夜間学級があり、様々な理由で学習できなかった方々を対象に「学びなおし」を行っております。また、来日して間もない外国籍の生徒に対し、全ての学習の土台となる日本語力の育成も図っています。そこに行けば日本語も学ぶことができるのです。しかし、小さな子を抱えた場合、夜に家を空けることができないという事情もあります。そこで提案ですが、昼間に大人を対象とした「学びなおし」教室を作ってはいかがでしょうか。読み書きが出来るようになる事はまさに就労支援のスタートラインに立つ事にもつながり、新たな働き手を創出する結果となります。さらに本区の進める「母子家庭及び父子家庭高等職業訓練促進給付金等事業」と組み合わせれば、国家資格も習得するチャンスも生まれ、看護、福祉、保育、助産、など人材不足的な職種の就業推進にもつながると考えますが、所見をお聞かせください。
次に子供たちの食事についてですが、子供たちが毎日どのようなロケーションでどのような食事をいただいているのかも重要です。子どもたちの給食がない夏休み期間中に「夏痩せ」という言葉があるように、貧困状態の子供たちは家庭だけの食事では栄養が取れず、給食が唯一まともな栄養のある食事というケースも多くみられます。また、ひとり親家庭では子供の孤食の問題もあり、精神的にもその子の成長に大きく影響を及ぼしているのも事実であります。さらに、身勝手な親のせいで就学前の幼児たちが餓死する事件も後を絶ちません。
本区には子供の居場所も兼ねた「夕食を推進している団体」があると聞き伺ってきました。子供300円、大人500円で夕食が食べられるだけでなく、子供の居場所があるということが素晴らしいと思います。夕食を食べ終わり空いたテーブルで宿題をしている子など、そこには安心した表情の子供たちがいました。近隣との関係が希薄になっている昨今、親の親としての教育も追い付いていないケースを考えると、我々も、もっと積極的にかかわっていいのではないか。このような団体を区として支援する方法はないものか考えさせられます。食事の支援についての所見をお聞かせ下さい。
次に、本区の「ひとり親支援施策」に関してですが、ホームヘルパー派遣は子供が小学校3年生以下の児童とその扶養者の世帯が対象と決められています。小学校3年生までとの理由は恐らく4年生以上であればある程度の家事はできるという事が理由かと想像つきますが、突然専業主婦の奥さんが亡くなった、会社員の父子家庭において、葬式の翌日から定時退社はなかなか出来るものではありません。仕事と家庭の両立の緊急性がある場合は子供の年齢だけで判断するのではなく、生活支援のシェルター的観点からも、例えば1か月など一定の期間を決め、要請に応じ、ホームヘルパーの派遣を行ってはいかがでしょうか。所見をお聞かせ下さい。
次に、婚姻歴のないひとり親家庭の場合ですが、税法上の寡婦控除の適用がなく、婚姻歴のあるひとり親家庭と比べ納税額が増え、その結果、税額に応じて負担する保育料など生活にかかる負担が重くなっているのも貧困の要因です。この件については、昨年3月20日、第186回国会においての安倍総理の答弁に「婚姻歴のないひとり親、について寡婦控除相当分の所得を控除する取り扱いを行うことが適切かどうかについては各市町村において判断されるものと考えている」とのご答弁でした。であるならば、本区においても婚姻歴のないひとり親家庭に対する保育料の負担額や助成額の算定を行うべきと考えますが、所見をお聞かせ下さい。
今、全国の自治体でも「貧困の連鎖」と「ひとり親家庭支援」の問題は大きく取り上げられ、ワンストップ化が叫ばれていますが、本区には4つの地域庁舎があり、この地域庁舎は福祉面では非常にすぐれた機能を発揮し、福祉面でのワンストップ化は先進的と考えます。子供の貧困問題は複合的に考えないと解決できないことから、この地域庁舎をベースに「子育て」、「教育」、「就労」の連携がとれるようにすれば優れたワンストップ化となり、区民にとっても相談しやすいものが出来ると思いますが、所見をお聞かせ下さい。
そして、最も困難な問題は、近所付き合いもなく、網の目からこぼれ落ちる、誰にも相談できず孤立状態の若いひとり親家庭に対する救済についてです。そのような母親は行政からどのような支援が受けられるかも知らないケースも多く見受けられます。そのような母親に対し、ファーストコンタクトである母子手帳の取得、又は出生届から切れ目のない関わり方が孤立の防止に必要と考えます。SOSの出し方がわからない若いひとり親に対する本区の取り組みについてお聞かせ下さい。
自公政権が積極的に進める「子供の未来応援国民運動」のHPを拝見すると最初に書かれている言葉は「明日の日本を支えていくのは今を生きる子供たちです」とあります。
まさしく子供に対する支援は未来への投資と考えます。これからも子供たちが安心して学べる環境づくりに推進して参りたいと決意し、次の質問に移ります。
本区における地球温暖化対策について質問させていただきます。
大田区では11月7日に行われた「OTAふれあいフェスタ」において、公用車として初めて燃料電池自動車「トヨタMIRAI」の納車式が行われました。たくさんの方々に見て体感して頂きましたが、さらに11月15日には東調布第3小学校で行われた「エコフェスタワンダーランド」においても展示され、ここでも区民の皆様に次世代の水素エネルギーを身近に感じていただいた事は言うまでもありません。今後も水素社会のシンボルとして区民の皆様に愛され活躍することを期待します。
また、水素エネルギーに最も重要な燃料充填口のバルブシステムは本区の企業の製品が採用されたとの事で、ものづくり大田としてもうれしい限りであります。
そこで重要となるのが水素ステーションのインフラ整備であります。これは、燃料電池自動車の社会における付加価値を決める重要な要素であり、本区においても東京23区で4か所目となる水素ステーションが池上8丁目に来年1月の完成を目指し建設中であります。その件で地域住民の方より「市街地の真ん中で危険ではないのか」との声をお聞きしました。
確かに水素と聞くだけで、危険なイメージが付き物ですが、ガソリンと比較しどの程度危険なのでしょうか。水素の危険性とその安全対策についてお聞かせ下さい。
さて、地球温暖化による気象変動は主に人間の作り出す温室効果ガスによって引き起こされている訳ですが、世界的にもこの20年間は温室効果ガスの削減について、ほとんど進歩が見られなかったと言っても過言ではありません。
しかし、間もなく「気候変動枠組条約第21回締約国会議」いわゆる「COP21」がパリで開催されます。
COP21の大きな特徴は、京都議定書に続く、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みが、全ての国の合意の基にどのように作られていくかがポイントであります。今まで不参加だった米中印が加わることによって、ようやく地球規模でのスタートラインに立つことが出来たと言っていいでしょう。近年の目に見える環境変化として、スーパー台風や豪雨、干ばつ、異常気象など、いよいよ待ったなしの状況という事も事実であります。このまま有効な手立てをせず、温室効果ガスを排出し続けると2100年には地球の平均気温は4.8度上昇するとIPCCレポートに発表されました。そうなるとどのような事が起こるのか、まず植物の分布に変化が見られ、干ばつによりアマゾンなどの森林は草原へ、そして砂漠へと進む可能性は大いにあるでしょう。それに伴い昆虫やそれを食べる小動物、そして爬虫類、哺乳類と絶滅も含め生態系に劇的な変化が起きます。
また、海面の上昇により、土地の面積は減少。世界の人口は増えているのに、異常気象により穀物などの食物の生産量は激減という事態も十分想定されます。また、日本においてもマラリアやデング熱・コレラなどの熱帯特有の感染症も覚悟しないといけなくなるでしょう。そして今も地球の平均気温は上昇しています。今すぐ全人類が地球規模でCO2削減に取り組んだ場合、2100年の平均気温の上昇は2度に抑える事も可能とのIPCCの予測に期待し、地球規模で取り組まねばならないと考えます。
しかし、現在の国内事情を見ますと、3・11以来、原発から離れ、火力発電への過度な依存が続く中、2013年度の温室効果ガスの排出量はとうとう過去最高を記録し、今もなお進んでいます。
2020年の東京五輪パラリンピックのキーワードは「環境問題」と言ってもいいでしょう。我が国が高度成長期に経験した公害や環境問題に対し、真摯に取り組み格闘してきた最先端テクノロジーを、世界中からやってくる外国の要人やマスコミに発信していく使命も感じてやみません。大きな取組や方針は国が決定しますが、現実の生活に根付いた低炭素社会、そして水素社会の成功例は我々の役割と考えます。
エネルギーを含めた環境問題は今後も常に考え、実行・改善・挑戦し続ける必要があると思います。
そこで本区における創エネですが、公共施設の屋上を利用した太陽光発電、民間住宅における太陽光発電設備や家庭用燃料電池の費用補助事業、小学校等でのイベントや民間企業向けのエコセミナーなど区民の意識啓発事業に積極的に取り組んでいることは評価に値すると思います。しかし、民間住宅の太陽光発電においては国、東京都の補助がなくなり、進捗率も頭打ちの状態で次のステージへの方向性が見えないのも現実ではないでしょうか。そこで、送電ロスやコージェネレーションなど考え、経済産業省においても次世代のエネルギー源として明確に位置づけられた「燃料電池」の推進に注力するべきと考えます。
そこで提案ですが、区所有の大型施設における非常用発電機の見直しから取り掛かってはいかがでしょうか?
大型施設には非常用発電機が必ず設置されていますが、その燃料は重油か軽油です。これを業務用燃料電池に変更し、内外に対し模範を示していくのも重要と考えます。
先日、業務用燃料電池を実際に運用しているソフトバンクの本社ビルを見学して来ました。発電機ながらエンジンがないため騒音もほとんどなく、37階建ての高層ビルの真横に設置してありました。ビル全体の電源の約11%を通常電源と併用して発電し、その分のCO2は43%も削減できているとの事でした。また、災害時には非常用発電機としての機能も発揮し、災害に強い町づくりにも活用できるのではないかと感じました。
このように、業務用燃料電池の開発は進み、その導入は地方自治体の管理施設や民間企業で既に始まっています。ソフトバンク以外にも国内には大阪府中央卸市場や福岡Mタワービル・慶応大学等が導入しています。米ではウォルマートやグーグル、アップルなども導入しています。
本区においても、既存施設の平時から発電するバックUP電源として、また、大田市場や空港跡地などのメイン電源として業務用燃料電池を検討する価値はあると考えますが、所見をお聞かせ下さい。
今、我々が取り組んでいるのは4代も5代も先の子孫のためであることは言うまでもありません。2020年を前に、来年は伊勢志摩サミットが三重県で、再来年は世界最大規模のエネルギー展である「ガステックジャパン」が幕張で開催される予定であります。いやがおうにも地球環境に対する機運は高まってくるものと思います。
本区が、世界に向けて新エネルギーのリーディングイノベーションの発信地として、環境面でもエネルギー面も優れた住みよい街になるよう願いつつ私の質問を終了させていただきます。
ありがとうございました。