7月2日、日本自治学会による第11回シンポジウムに参加してきました。
テーマは「震災復興のしくみを問う」。
シンポジウムの内容は、下記の通り。
- 主催者あいさつ 日本自治学会会長 神野 直彦 氏 (地方財政審議会会長)
- 基調講演 総務大臣 片山 善博 氏
- パネルディスカッション
- 神野直彦氏(日本自治学会会長、地方財政審議会会長)
- 西尾 勝氏(東京市政調査会理事長)
- 室崎益輝氏(関西学院大学教授、内閣府中央防災会議専門調査会委員、日本災害復興学会会長)
- 森 民夫氏(長岡市長、全国市長会会長、東日本大震災復興構想会議検討部会長代理)
<司会>
城本 勝氏(NHK報道局記者主幹)
片山大臣の基調講演は大綱3点。①復興の基本的枠組みと仕組みについて、②大規模災害時などの非常時の対応について、③福島原発による避難住民の「1.5重の市民権」について。
大臣は「地域ごとに復興のニーズが異なる現在、国や都道府県主導ではなく、市町村が主体・主導する復興が大事であり、そのためには予算決定のプロセスなど、非常時の対応を決め、スピーディーに実施する体制が大事。しかし現在はそれができていない」、「福島原発の被害で全国に一時的避難している人はいつ戻れるか全く不明で、住民票を移動させていない人も多い。そのため避難先自治体で行政サービスが受けられない事態が生じている。住民票を移動させなくても避難先自治体で行政サービスを受けられる仕組み(1.5重の市民権)を作るべき」と。
震災復興の主体・主導は市町村であり、国や都道府県はそれをしっかり下支えするということは大賛成です。また「1.5重の市民権」についても全くその通りであり、ともに法整備が大事になってきます。大臣いわく「縦割りの弊害で各省庁の理解が得られていないのが現状であり、私の意見は少数派」と話していたことが残念です。
パネルディスカッションは各パネラーや来場者の想いも入り、予定時間をオーバーして充実した議論が展開。
各パネラーの印象的な話は、
室崎氏:復興の規範作りが大事。今までの都市計画や利益最優先の安全対策など、全て見直すべき。
非常時の制度を前もって確立すべき。住民理解が大前提、現場から考える復興であるべき。
仮設住宅も住民本位ではなく、国が設置場所もルールも決めたことで、問題が発生している。
森氏:被災者が元気になる⇒復興の主体者になる。その仮定が大事。
国の押しつけ支援はダメ(仮設住宅も押しつけ状態で問題あり)。
西尾氏:市町村が主体・主導の復興を21世紀臨調として提案している。
与野党とも復興の最終責任を国と位置付けているのは問題。
復興基本法は理念のみ。具体的権限などを明確化し仮称:復興特別措置法を制定すべき。
区域外避難者の生活を支えるためにも「1.5重市民権」は早期に形にすべき。
神野氏:復興は2段階に分かれる。
第1段階として応急前後策支援段階でスピーディーな対応が求められ、現在はこの段階。
第2段階はビジョンを形成し復興を進める段階で、これは落ち着いて進めていくこれからの段階。
今の政治はこれが逆になっている。
日本の復興は陳情型。これからは開発型陳情復興から分権型生活復興へ向かうべき。
今の政治はスピード感が全くない。
先日参加した法政大学大学院政策創造研究科のシンポジウムでは、
「復興の形を住民に問うと、『以前のような街・コミュニティに戻すこと』ということえが返ってくるのが多いが、
それは”復興”ではなく、”復元”であり、新しい震災後の国づくりと考え、産業・雇用復興も含め、
国・県がビジョンを示すべき」との見解がありました。
今回のシンポジウムでは、全く逆で市町村が主体・主導する震災復興のしくみが提案されていました。
街・コミュニティの形成、産業についても、そこで暮らし、働く人が納得しなければ、
仮設住宅問題に見られるように形骸化するだけだと思います。
また、住民本位だけで街の整備や産業を決めていくと、無駄や財政的な問題、
更には新たな産業育成・イノベーションなどによる産業創出・育成に繋がらないケースも出てくると思います。
国、都道府県、市町村の役割・責任を明確にし、神野会長の言われる分権型生活支援復興を進めるべきであり、
その上で農林水産業の法人化や産業クラスターの形成など、新たな取り組みを複合化させていってはどうかと感じました。