(愛知県 文化芸術振興条例事業スタート)歴史の町を歩き短歌詠むツアー/観光や国際交流、福祉、スポーツ 他分野と連携
公明新聞 2018年12月05日 7面
愛知県は、3月に制定した文化芸術振興条例に基づく初のまち歩きツアー「歴史を短歌でひもとく有松のまち歩き」をこのほど名古屋市で実施した。参加者は江戸時代の風景が残る町並みを歩き、短歌作りを楽しんだ。同条例には公明県議の提案により「他分野との連携」が盛り込まれており、この観光分野のツアーのほか、スポーツ、福祉、国際交流の各分野でも文化芸術連携推進事業が展開された。
■名古屋市有松地区
伝統的工芸品の有松・鳴海絞(メモ)の産地であり、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている名古屋市緑区の有松地区。江戸時代に繁栄を誇った有松の町並みは、天明年間、1784年の大火事により多くの建物が焼失。復興の際、壁を土で厚く塗り固め、屋根を瓦葺きにするなど火災を防ぐための建築様式が取り入れられた。当時の家屋が今も残り、県を代表する歴史的建造物が並ぶ。
今回のツアーには20人が参加。まず東海地域の短歌の第一人者である大塚寅彦氏の短歌レクチャーを受けた後、有松の町を散策し、ツアーガイドから江戸時代の歴史を交えた説明を聞きながら建造物などを見て回り、普段は立ち入れない有松・鳴海絞の製造所で職人の話を聞いた。
最後に、町歩きで感じたことを盛り込んだ短歌を詠み、大塚氏が添削・講評。「直すところがない、素晴らしい短歌です」と同氏がうなる作品も生まれた。
春日井市から来た40代の女性は、短歌作りに初挑戦。「有松を訪れたことはありましたが、短歌を作るという視点で歩くと景色が違って見えました」とツアーを楽しんだ様子。女性は「有松・鳴海絞で作られたのれんや手拭いが、家屋など町のあらゆるところで目に入ります。美しい模様が並ぶ様子が伝わるように」との思いを込め、「有松の 雪花のおどる いろは道 今でもあせず 藍染川は」と詠んだ。
同条例の基本理念の一つが文化芸術と観光、福祉、スポーツ、教育など各分野との連携。その具体化としての文化芸術連携推進事業が、11月には観光分野と連携したこの短歌ツアーを含め4分野で実施された。
国際交流分野では、名古屋市にある日本語学校で生徒が扇子作りや日本舞踊を体験できるイベントを開いた。福祉分野では、障がい者施設の入所者・スタッフで結成したロックバンドの演奏会を開催。スポーツ分野では、新城ラリー2018(自動車レース)で伝統芸能である花祭(国の重要無形民俗文化財)を披露した。
■公明県議が提案
これら連携推進事業のきっかけをつくったのが公明党の岡明彦県議。岡県議は昨年12月の定例会で、障がい者の芸術作品展などを例に挙げ「文化芸術は他の分野と結び付くことで、さらに大きな力を発揮する」と主張。県が制定を表明していた文化芸術振興条例について、他分野との連携を明記し、積極的に推進するよう求めていた。
(メモ)有松・鳴海絞 江戸時代初めの1608年、商人・竹田庄九郎らによって誕生した絞り染め。100種類に及ぶ技法で、美しい模様が描かれた生地を作る。江戸時代、この生地を用いた浴衣や手拭いが旅人らに大好評で、有松の繁栄の基礎を築いた。現在も雪花絞の浴衣などが注目を集めており、振り袖やハンカチなどは、外国人観光客からの人気が高いという。国が指定する232品目(11月7日現在)の伝統的工芸品の一つ。