衆議院 予算委員会 第一分科会で質問
質疑内容
・防災庁が取り組むべき事前防災とはどのようなものを考えているのか
・ハザードマップの作成を周知させ、事前防災に生かすべきではないか
・実効性のある防災体制のためには防災訓練が必要だ
・防災庁は被災自治体とどのように連携し、自衛隊やボランティアの支援をどのように調整するのか。防災庁の役割や対応のイメージは
・在宅避難者をどのように把握し支援を提供するのか
・災害救助法に福祉が概念が入り、在宅で生活する高齢者や障がい者などの要配慮者に対する支援をどのように行っていくのか
・全国でトイレカー、キッチンカーの注文が殺到し、事業期間内に納入が完了しないのではないかという地方公共団体の声にどのように対応するのか
・赤澤大臣の防災庁設置に向けた意気込み
議事録
第217回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 令和7年2月28日
西園分科員 公明党の西園勝秀です。
私は、一九九五年に、国土交通省の前身である運輸省に入省しました。本日は、運輸省出身の大先輩であられます赤澤大臣に質問する機会を与えていただき、大変ありがとうございます。
まず初めに、防災庁が取り組むべき事前防災とはどのようなものかについて伺います。
私は、赤澤大臣がお書きになられた防災省創設に関する論文を拝読させていただき、大変感銘を受けました。この中で、赤澤大臣は、日本航空一二三便墜落事故、また阪神・淡路大震災で多くの貴い人命が失われた経験が原体験となり、あらゆる災いから一人でも多くの人命を救いたいという熱い思いが私の体の中で燃えていると表現されています。こうした思いを持つお方が防災庁の設置をリードしてくださることが大変心強く、赤澤大臣の防災立国にかける熱い思いに深く共感する一人として、本日は質問に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、復興庁に出向し、東日本大震災からの復興の教訓を取りまとめた復興政策十年間の振り返り、いわゆる復興政策十年史の編さんに携わってまいりました。被災地を回り、現地の皆様から様々な御意見を伺い、将来的に起こり得る南海トラフ地震などの大規模災害に備え、今、何をしなければならないのか、後世に何を伝えなければならないのか、本当に肌身で実感してまいりました。
東日本大震災の復興政策を振り返る中で、今でも深く教訓として心に残っていることがあります。それは、東日本大震災の津波で当時の町長と職員計二十八人が犠牲となった岩手県大槌町旧役場庁舎の解体をめぐる議論です。大勢の方が亡くなられた庁舎を見るのがつらいという方々と、震災の遺構として将来の教訓を残すために残すべきだと訴える方々との間で意見が分かれ、町を二分する大きな議論となりました。津波でこれ以上ない辛酸をなめた被災者である現地の皆様が、更に一重、つらい選択を迫られる事態に追い込まれました。
私は、語り部の方から多くのお話を伺いましたが、そのうちの数名の方がおっしゃっていたことが胸に刺さり、これまでずっと忘れられません。それは、本来であれば被災した皆が心を一つにして復興への歩みを進めていかなければならない、つらい思いを共有できる被災者同士だからこそ一緒に町づくりをしていきたい、それなのに、町長を始めとする役場の幹部が皆亡くなり、意思決定をする人がいなくなったために、被災者同士が語気を強めて言い争うような事態に発展してしまった、もし事前にルールがあればこのようなことにならなかったのではないかと思うとそれが本当につらいんですと肩を落としておっしゃっておられた姿でした。
大槌町旧役場庁舎が解体されたのは、二〇一九年三月、東日本大震災から八年後です。被災後の復興の在り方を事前に決めていたとしたら、八年もの時間を費やす必要はなかったのかもしれません。この教訓を生かし、災害後の混乱を最小限に抑え、迅速で持続可能な復興を可能にする仕組みを構築するべきです。
政府は、防災業務の企画立案機能を飛躍的に高め、平時から不断に万全の備えを行う、本気の事前防災に徹底的に取り組むとともに、災害発生時の司令塔機能を抜本的に強化するために、令和八年度中に防災庁設置に向けた検討を行うとしております。そのためには、現在、各省庁が担う防災業務を俯瞰的に捉え、国や自治体等が作成する各種計画が整合的に適切に実施されなければなりません。何が必要で、今、何が足りないのかを、防災庁は正確に把握する必要がございます。そして、司令塔として、政府の災害対応をリードしていかなければなりません。
防災庁が取り組むべき事前防災とはどのようなものを考えているのか、御答弁をお願いいたします。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
災害に備える事前防災につきましては、物資の備蓄や訓練、避難生活環境の整備、防災DX、事前復興の推進などに取り組むことが重要と考えており、防災庁につきましては、これら防災業務の企画立案機能の抜本的強化に取り組むとともに、政府の災害対応の司令塔としての機能を担う組織としていきたいと考えております。
また、防災庁設置までの間も、令和七年度から、都道府県とのカウンターパートとなる地域防災力強化担当を置かせていただきまして、自治体と連携し地域の防災体制を強化するとともに、事前防災対策総合推進費を創設いたしまして、関係省庁等が行う事前防災の強化につながる取組を促進することとしております。
令和八年度中の防災庁の設置に向けまして、現在、有識者に集まっていただいたアドバイザー会議を開催をしておりまして、専門家の御意見をいただきながら、防災庁を中核として、国や自治体が連携して一体となった災害対策を効果的、効率的に実施できる組織づくりを進めてまいりたいと考えております。
西園分科員 ありがとうございます。
ただいま御答弁された事前防災の取組は本当に重要です。東日本大震災では、大量の瓦れきが発生し、その仮置場が不足していたことが原因で、復興が大幅に遅れました。広域災害にあっては、被災した自治体が単独で瓦れきの処理を行うのは不可能です。例えば、私が住む静岡市では、南海トラフ地震で発生が見込まれる瓦れきを仮置きできる場所は、想定される発生量に対して十分の一もございません。全国の自治体が同じような状況にあります。そのため、災害廃棄物の処理を被災自治体のみに負わせるのではなく、他県も含めた広域で行う仕組みが必要です。
現在、環境省は、南海トラフ地震などの広域災害を想定し、自治体が連携して災害廃棄物の処理を担う地域ブロック協議会を全国八か所に設けています。災害時の広域連携を確実に実行するため、各都道府県のカウンターパートとなる防災庁の地域防災力強化担当がこの地域ブロック協議会の枠組みに参画し、その推進に取り組むべきと考えます。
また、復興事前準備も、事前防災の中核を担う取組として重要です。例えば、応急措置や罹災証明書の発行、被災者情報の収集など、被災後に発生が想定される膨大な事務作業に事前に備えることで、被災後の職員の負担軽減を図ります。また、自治体における復興まちづくりに対応可能な人材を育成します。これにより、被災後、応急復旧と並行して同時に復興まちづくりに取りかかることで、復興までの時間短縮を図ることが可能となります。こうして行政の仕事が円滑に行われることは、被災者の負担軽減にも直結し、彼らの生活再建を強力に後押しすることにつながります。
現在、国土交通省は、復興まちづくりのための事前準備ガイドラインを策定し、各市町村に事前復興まちづくり計画を取りまとめるよう促しております。大規模災害における被害を最小限に抑え、発災後の円滑な復興を図るため、平時から土地利用やインフラの復旧の方針を定める事前復興まちづくり計画は、事前防災の重要な要素です。しかし、その必要性が十分に認識されておらず、全国千七百八十八の全ての自治体のうち、それを策定しているのは、作業中を含め、僅か三%にとどまっています。
先ほど御答弁いただいた各都道府県のカウンターパートとなる防災庁の地域防災力強化担当には、国土交通省と連携し、是非その推進を図っていただければと思います。
事前復興まちづくり計画の策定に当たっては、住民が被る自然災害のリスクを最小限に抑えることが重要です。具体的には、ハザードマップを活用し、危険度の高い地域を極力避けるとともに、仮設住宅や復興まちづくりの適切な場所を選定することが求められます。
しかし、全ての自治体が、洪水、土砂災害、高潮、津波、液状化などのハザードマップを一〇〇%作成できていないのが実情です。本気の事前防災を進めるというのであれば、まず最初にやるべきは、ハザードマップの整備だと思います。ハザードマップが生かされず、作成されていない自治体もある中、いま一度、ハザードマップの重要性を認識し、作成を周知させ、事前防災に生かすべきと考えますが、政府の御見解をお聞かせ願います。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
想定される地域のリスクと災害時に取るべき対応を可視化したハザードマップを作成、周知することは、災害による被害を軽減するために大変重要であると考えております。
ハザードマップの種類により活用方法に違いはありますけれども、例えば津波とか洪水を念頭に置きますと、住民の防災意識を高めまして災害時の適切な避難行動につなげるといった役割が期待されるところでございますし、避難の実効性を高めるための防災訓練への活用、あるいは住民の土地利用とか住まい方の工夫とか事前復興や発災後の町づくり等での活用などが期待されるところでございます。
引き続き、関係省庁とも連携しながら、ハザードマップの作成や活用について、御指摘を踏まえてしっかりと周知をしていきたいと考えております。
西園分科員 ただいまおっしゃったように、一口にハザードマップといっても、その種類は本当に多岐にわたります。それを作成するためには最新のデータや技術者の高度な知見が必要であり、予算もまた必要です。ハザードマップで危険な地域に区分されるとその土地の地価が下がるなどの理由から、ハザードマップの作成が困難なケースも多く見られます。大変な道のりであるとは思いますが、自治体に対し、どうかきめ細やかな御支援をお願いいたします。
次に、防災庁設置に当たり、防災訓練を通じた課題のあぶり出しについてお伺いいたします。
私は、役人時代、毎年秋に実施される防災訓練に参画し、多くの貴重な経験を積みました。訓練を通じて現場の状況を再現することで初めて気づく課題も多くあり、その重要性を改めて痛感した次第です。例えば、危機対応マニュアルが存在していても、実際に訓練を行うと、状況にそぐわず形骸化している部分があると判明したこともあります。また、部署間で役割が重複し、責任の所在が不明確なために対応が遅れるといった問題も少なくありませんでした。こうしたトラブルや行き違いを挙げれば、枚挙にいとまがありません。
防災訓練を実施する目的は、こうしたリスクを最小化し、実効性のある防災体制を構築することにあります。そのためには、現行の防災体制の課題や不足している点を正確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。国や自治体、ボランティアを始め、全ての関係者が参加する防災訓練を実施し、その結果を分析しながら継続的に改善を図ることが求められます。
防災庁の設置にあっても、こうした訓練を通じて明らかになった課題に的確に対応し、実効性のある防災体制を築くことが重要と考えますが、政府の御所見を伺います。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
御指摘をいただきましたように、防災訓練は、実災害での対応に備えるということと同時に、訓練を通じて得られた課題をそれぞれ改善につなげていくというためにも大変重要であると考えております。
先ほど申しましたように、来年度から内閣府防災において設置を予定しております都道府県のカウンターパートとなる地域防災力強化担当につきましては、備蓄、ボランティアとの連携とかのほかに、こうした訓練の取組、これも大変重要だというふうに考えておりまして、自治体と連携して、防災の訓練を実施しながら、課題の把握や施策の改善に努めていきたいというふうに考えております。
西園分科員 ありがとうございます。
ただいま御答弁にもあったとおり、自治体やボランティアとの連携、これが本当に鍵となってまいりますが、支援の実効性を高めるためには、具体的な連携の仕組みが求められると思います。その意味で、防災庁の設置に当たり、地域防災力強化担当を置く意義は大変大きいと思います。例えば、都道府県ごとのカウンターパートとなるこの地域防災力強化担当は、自治体やボランティアとどのように協力し、訓練や備蓄の強化を進めるのか。また、地域ごとに異なる課題に対応するための情報共有の仕組みや、訓練の成果を防災政策にどのように反映させるのか。
こうした課題に対応するには、防災庁が司令塔となり、各省庁の職員が専門性を発揮しながら、政府全体で漏れなく、重複なく防災活動を進めることが求められます。特に、被災現場では混乱が生じるため、防災庁が被災自治体と緊密に連携し、必要な業務を各省庁に的確に指示する必要がございます。
例えば南海トラフ地震が発生した場合、防災庁は被災自治体とどのように連携し、自衛隊やボランティアの支援をどのように調整するのか。現時点で想定している防災庁の役割や対応のイメージをお聞かせください。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
南海トラフ地震等の大規模災害により被災した自治体が機能を維持し、防災対応を適切に実施していくためには、各自治体における業務継続体制の確保、あるいは自治体同士の広域連携、官民連携の強化に向けた取組の推進が重要と考えております。
このため、自治体間で応援を行う応急対策職員派遣制度、国による応援組織体制の整備、あるいは民間企業との連携協定の締結、また避難所運営等を担う地域のボランティア人材の育成研修等の取組を進めているところでございます。
防災庁設置準備アドバイザー会議におきましても、あらゆる主体が連携した総力戦での災害対応、あるいは、プロである民間企業等による餅は餅屋の災害対応、官民連携のコーディネート機能の重要性などについて、有識者の先生方からも御意見をいただいているところでございます。
こうした御意見も踏まえつつ、引き続き、様々な角度でいろいろな御意見をいただきながら、防災庁設置に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
西園分科員 ありがとうございます。
災害時には、多くのボランティアが被災地に駆けつけ、復旧復興活動を支えています。その受入れ拠点として、災害ボランティアセンターが被災地の市区町村福祉協議会に設置されることが一般化しています。
例えば、東日本大震災では、このセンターの設置により全国から集まった延べ約百五十万人のボランティアが適切に配置され、瓦れき撤去や炊き出し、心のケアなど、多岐にわたる支援が実施されました。さらに、学生や企業ボランティアが漁業支援を行い、ふんばろう東日本支援プロジェクトでは、被災者一人一人のニーズに応じた物資提供が行われました。
また、熊本地震では、益城町ボランティアセンターが設置され、避難所での炊き出しや仮設住宅での見守り支援を実施しました。さらに、NPOや大学生ボランティアが、倒壊家屋の片づけを行うだけでなく、高齢者や障害者などの方々に寄り添い、精神的なケアも行いました。
一方で、個人情報保護の観点から、行政が中心となって行わなければならない支援もございます。その一つが、在宅避難者への支援です。令和六年能登半島地震では、避難所に行かず自宅で避難生活を送られる方や、地域住民が自主的に開設した避難所に身を寄せておられる方が多数おられました。しかし、在宅避難者の状況把握が難しく、十分な支援が行き届かない課題が浮き彫りとなりました。今後、防災庁はこうした在宅避難者をどのように把握し、適切な支援を提供していくのか、政府の見解をお聞かせ願います。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
避難者の皆様の状況の把握に当たりましては、訪問等によるアウトリーチの実施や、被災者の方からの情報発信を行っていただく仕組み、あるいは民間支援団体との情報連携体制の構築、そうした枠組みの構築について、平時から検討を進めておくことが重要であると考えております。
また、マイナンバーカードやマイナ保険証、スマホなどのデジタル技術を活用いたしまして、避難所に来た方のみならず、在宅とか車中泊の方も含めた被災者全体の情報を把握できる体制を整備していく必要があるというふうに考えております。
避難生活の支援に当たりましては、場所、避難所から人、避難者のそれぞれの人への支援といったふうに考え方を転換していくことが重要だというふうに考えておりまして、避難所以外で避難生活を送る方も含めまして、避難者の皆様の状況把握をしっかりと行いまして、被災者一人一人に対して適切な支援が実施できるように、防災庁の設置に向けて議論をしていきたいと考えております。
西園分科員 御答弁ありがとうございます。
ただいまおっしゃってくださったように、場所から人への支援に考え方を転換すること、これはとても重要なことだと思います。
近年の大規模災害では、高齢者や障害者など要配慮者の避難生活が長期化し、適切な福祉サービスを受けられないケースが多発しています。例えば、東日本大震災では、福祉避難所の開設が遅れ、一般の避難所で適切な介護を受けられない高齢者が多数発生しました。また、熊本地震では、車中泊を余儀なくされた障害者が血栓症を発症する事例が相次ぎ、移動支援や見守りの必要性が改めて指摘されました。
こうした状況を受け、公明党は、発災後に要配慮者への支援が後回しにされる課題を重く受け止め、災害のたびに福祉支援の充実に向けた対応を推進してきました。
そして、昨年三月の参議院予算委員会で、当時の山本香苗参議院議員が、災害救助法の救助の種類に介護などの福祉支援が含まれていないことを指摘し、災害法制に福祉を明記するよう強く求めました。これに対し、当時の岸田文雄首相は、国会で初めて法改正に言及。その後、政府は、本年二月十四日、被災者支援の充実などを柱とする災害対策基本法改正案を閣議決定しました。
そこで、厚生労働省にお伺いします。災害救助法に福祉の概念が取り入れられることで、在宅で生活する高齢者や障害者など要配慮者に対する支援をどのように行っていくのか、御見解をお聞かせ願います。
岡本政府参考人 お答え申し上げます。
現在、災害発生時におきましては、災害派遣福祉チーム、DWATの避難所への派遣につきまして必要な費用を国庫が負担するなど、災害時の福祉的支援に取り組んでいるところでございますが、被災者の中には、先生御指摘の、在宅でありますとか車中泊で生活を送られている方々もいらっしゃることから、こうした方々に対しても十分な支援を行っていく必要があると認識しております。
災害救助法における救助の種類としまして福祉サービスの提供を追加することを内容とする改正法案が今国会に提出をされており、在宅や車中泊などの在宅被災者などへの相談支援に係る費用が国庫負担の対象となるものと考えております。
在宅被災者等への支援を含め、今後とも、高齢者、障害者などの要配慮者への支援について着実に行えるよう、取組を進めてまいりたいと考えております。
西園分科員 ありがとうございます。要配慮者への支援、どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、トイレカー、キッチンカーについて質問させていただきます。
災害時の避難生活では、トイレ不足や衛生環境の悪化が深刻な課題となります。東日本大震災や熊本地震では、仮設トイレの不衛生さから排尿を控え、膀胱炎や脱水症状を引き起こす事例が発生しました。令和六年能登半島地震では、トイレ不足が問題となったことから、自治体や企業がトイレカーを派遣しました。水洗式で清潔に使用でき、バリアフリー仕様も可能なため、高齢者や障害者にも対応できます。今後の防災対策として、トイレカーの全国広域での配備が急務です。
また、被災地では食料確保が大きな課題となり、食材を持ち込み、現地で調理できるキッチンカーが重要な役割を果たしています。移動可能な調理施設を有し、迅速かつ衛生的に温かい食事を供給できるため、被災者の支援に貢献します。災害時には栄養バランスも重要で、キッチンカーは多様な場所で柔軟に支援できるため、今後の防災対策には欠かせない存在です。
トイレカーやキッチンカーの全国広域での配備については、令和六年度補正予算で新地方創生交付金の中に地域防災緊急整備型が創設されたと承知しております。地方公共団体からは、全国でトイレカー等の注文が殺到しており、予知された事業期間内に資機材の納入が完了しないのではないかという不安の声も聞かれます。どのように対応するのか、政府の御見解をお聞かせ願います。
高橋政府参考人 お答えをいたします。
御指摘をいただきましたように、昨年度の補正予算におきまして、新地方創生交付金、地域防災緊急整備型を創設いたしまして、避難所の環境整備、これを強力に推進していくこととしておるところでございます。現在、地方公共団体に対しまして事業計画の募集を行った上で、採択団体の決定に向けて審査を行っているところでございます。
御指摘をいただきましたように、今回の申請では、トイレカーとかキッチンカーとか、能登半島地震でも活躍した災害対応車両につきまして多くの要望をいただいておるところでございますけれども、車両の生産に時間がかかる等の不安の声も私どももお聞きし、承知をしているところでございます。
今後、採択団体を決定した上で、現場の声をよく伺いながら、事業の執行をしたものについても柔軟に進めてまいりたいというふうに考えております。
西園分科員 御答弁ありがとうございます。
トイレカーの納入を危惧する自治体の声を是非聞いていただき、交付金の執行に当たっては、繰越手続などで柔軟な対応を取っていただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
現在普及しているトイレカーは輸入車が大半だと思いますが、私は先日、トイレトラックを製造している日本の中小企業にお話をお伺いしました。トイレトラックについては、国内に統一した規格がないため、一部の部品は輸入に頼っているとのことでした。防災立国を目指す日本として、トイレカーについては国産車両での技術開発が進むよう、政府がリードすべきと考えます。
また、防災立国を目指す大前提として、過去の災害の教訓を生かすことは当然のことと思います。その意味から、新たにできる防災庁は、復興庁を始めとする関係省庁、民間企業、団体、ボランティアなど、これまで復旧復興に携わってきた全ての人々が蓄積した教訓や知見に学び、それをベースに防災政策をつくり上げるべきと考えます。
本気の事前防災を目指す赤澤大臣の防災庁設置に向けた意気込みをお伺いいたします。
赤澤国務大臣 西園委員の今日の御質問を聞いていて、本当にプロなんだな、ライフワークにされているんだなということを思いました。冒頭、運輸省の私の後輩であることも御紹介いただき、港湾技官としてお入りになったんですね、その後復興庁の参事官も務められて、本当に防災をライフワークとする先生の御質問、本当に全身耳で聞かせていただいていたところでございます。私も防災をライフワークとする政治家の一人でありますので、今日の御質疑をしっかり我々の中に取り込んで生かしていきたいというふうに思った次第であります。
瓦れき処理をする土地が十分確保できていないとか、そういう問題は本当に大きな問題で、事前に解決しておくべきことと思いますので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
災害大国である我が国が防災技術の研究開発を進めることや、それから、復興庁に蓄積されているものを含め、これまでの災害対応の経験や知見、教訓をフルに活用していくことは極めて重要なことであるというふうに考えております。我々が想定しなきゃいけないという巨大な自然災害、南海トラフの巨大地震もありますし、首都直下地震、あるいは、地震学者の方たちに言わせると、こちらの方が早いかもしれないと言われている日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、さらには富士山噴火など、大規模自然災害の発生が懸念される中で、平時から万全の備えを行う本気の事前防災に取り組むとともに、政府の統一的な災害対応の司令塔としての機能を担う防災庁の設置に向けた準備を、全力で、スピード感を持って進めているところでございます。
防災庁の組織づくりに当たっては、東日本大震災を含む過去の災害対応の知見や経験、教訓をしっかりと生かした上で、避難生活環境の改善、それから災害専門ボランティアの育成、防災教育の充実、官民連携の促進、防災DXの推進などに加えて、御指摘いただいた、私が昔に書いたものに、思いを込めて書いていましたが、防災技術の研究開発、社会実装、国際展開などの取組を強化することとしております。
私からすると、本当に、瓦れきの中から迅速に生存者を見つけて助け出すようなロボットがなぜ災害大国の日本からまだ生まれていないのか、そういう問題意識はもう十年来持っているところでありまして、しっかり思いを形にしていきたいと思っています。
防災庁の設置により、人命、人権最優先の防災立国を実現するとともに、我が国を世界一の防災大国とするべく取り組んでまいりたいと思っております。
西園分科員 赤澤大臣、大変ありがとうございます。赤澤大臣の防災立国にかける熱い思いを拝聴し、大変うれしく思います。
赤澤大臣は、先ほどの防災省創設に関する論文の中で、国家国民を挙げて一刻も早く防災立国を実現することにより、日本国内で生まれ、いち早く実用化されて進化を遂げた世界最先端の我が国の防災技術が、災害に悩まされる世界中の国々に輸出されて我が国の国富を創造する、さらに超ハイスペックの防災技術と民生技術の相互転用により更なる異次元の国富が創造されるという展開が確実に期待できると述べておられます。私も全く同感でございます。
高度経済成長期に技術立国として世界をリードしてきた日本がいま一度その技術力を発揮できる分野の一つとして、防災分野が挙げられると思います。南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害は、いつ起こるか分かりません。その大規模災害に備え、災害リスクを最小限に抑える防災技術の開発に国は全力を注いでいかなければなりません。
それと同時に、国民の皆様の更なる防災意識の向上も、これらの大災害を乗り越えるためには絶対に必須です。防災庁が先頭に立って防災意識の啓発を進めていかれることを願い、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。