先般、成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定は違憲で無効とした東京地裁判決に
対し、政府が控訴を行った。
実に残念な判断だと言わざるを得ない。
成年後見制度は、それまでの禁治産制度を根本的に見直し、1999年の民法改正により設けられた
ものだ。
具体的には、病気や高齢で判断力の衰えた人に対して、法的な権限を持ってサポートする
「後見人」が本人に代わって、財産管理や福祉サービスを受けるための事務処理を行うものだ。
制度の目的として、自己決定の尊重、残存能力の活用及びノーマライゼーションという障がいが
あっても誰もと等しく生きることができるようにとの理念に基づいて、定められたものだった
はずである。
選挙権は、国民主権と議会制民主主義の根幹をなす、もっとも重要な国民の権利である。
後見される立場になったからと言って、民主主義社会の一員として最も大切な権利を奪っては
ならないと思う。
調査によると、20歳以上の精神障がい者は、305万人に上り、認知症高齢者は2015年には
345万人に達するとされている。
成年後見制度の果たす役割は、ますます重要になってくる。
今回の判決の中では、成年後見制度とは本人に財産管理ができるかどうかが一つの判断基準に
なっており、その能力と選挙権を行使する能力とは、異なっていると、明確に指摘されている。
選挙制度と趣旨の異なる成年後見制度を混同して、成年被後見人から一律に選挙権を
奪うことは、確かに憲法14条等に反する疑いが強い。
政治の責任で、被後見人の選挙権の回復のため、早急に研究・検討を進めるべきだ。
そして、政府には、制度の利用者から投票権を奪ってきたという事実を、更にこのたびの判決の
重みを、厳粛に受け止めてもらいたい。