非常時の権力のあり方
コロナ禍は、非常時の権力のあり方を巡る課題も突き付けています。
日本は他国と異なり、全面的な強制力を持たない緊急事態宣言で対処し、自粛要請を受けた国民の自助努力で一定の拡大抑制に成功しました。このことについて、「自分たちの将来は自分たちで決めるということを、戦後、初めて真剣に考えるきっかけになったはず」「日本の民主主義のあり方を考える良い契機となったのではないか」(6月10日付公明新聞、先崎彰容[あきなか]・日本大学教授)など、前向きに捉える指摘があります。
一方、自粛要請については、翼賛的な発想の下、国民の同調圧力を利用する手法で、行政府の力を強めることにつながる可能性があるとの指摘があります。さらに、「非常時の権力は日常の中にとどまろうとする傾向があり、民主主義を破壊しうる」(4月20日付読売新聞、社会学者の大澤真幸[まさち]氏)との懸念も踏まえると、国民への自粛要請という手法であっても、ともすれば政治権力が恣意的に利用できる余地が残る懸念は拭えません。
日本が健全な民主主義国家であり続けるためには、情報公開を徹底して進めるとともに、非常時の対応を客観的に検証・総括していくことが求められます。感染拡大の収束後、一連の対応を冷静に検証し、次なる感染症や大規模自然災害も見据えた緊急事態時の権力のあり方について、国と地方自治体の役割分担なども含めて、落ち着いて議論を深めていくことは必要と考えています。ただ、日本の危機管理法制は法律以下のレベルで相当綿密に書かれていることも踏まえると、こうした議論と憲法改正論議を結び付けることには、慎重であるべきと考えます。

