フレイル予防へ 自宅で簡単!3つのつぼ押し
西洋医学はエビデンス(証拠)に基づく医療で、投薬や手術などにより病気を治します。
一方で、東洋医学は約2000年前からの経験に基づく実証的な医学で、病態や体質にアプローチし、体のバランスやエネルギー(気)の流れを整えることをめざします。
つぼは東洋医学に分類され、体表に存在する特定の点のこと。これらの点を刺激することで、体のエネルギーの流れを良くして体調を整えたり、健康を促進したりできるとされています。最近では、つぼの科学的なエビデンスも研究されています。
ここで、フレイルを防ぐためのつぼを3つ紹介します【上のイラスト参照】。
■食欲不振の解消、疲労回復に有効
膝の皿のすぐ下の外側にあるくぼみから、指4本分下の所にあるのが「足三里」。胃腸の不調を改善して食欲不振を解消するとともに、足の歩き疲れなど疲労回復の効果も期待されています。別名「長寿のつぼ」とも言われています。
■腰の痛みを緩和
膝の皿の斜め下に出ている丸い骨の、さらに斜め下に指1本分下った所にあるくぼみが「陽陵泉」。腰だけでなく、膝や肩の痛みの緩和に有効です。
■足のむくみ改善
足の内側のくるぶしから指4本分上にある「三陰交」。足のむくみに加えて冷え性の改善が期待できます。
足の歩き疲れにも効きます。
■風呂上がりや寝る前がお勧め
つぼを押すタイミングは、疲労時や不調なときに数回行うのも良いですが、フレイル予防のためには、風呂上がりや寝る前などリラックスするタイミングがお勧めです。強く押し過ぎずに心地良い程度の強さが望ましいです。
■ばんそうこうと米粒でも
また、シニア世代の中には、「指が痛くて押せない」といった方もおられるかもしれません。その場合は、ばんそうこうに米粒を1粒貼り、左右対称になるよう、つぼに3日間貼るだけでも同じ効果があります【下のイラスト参照】。これにより、体の痛みなどが改善されます。
自分に合ったつぼを見つけて健康な体をつくりましょう。
公明新聞2024/03/17 5面転載
どうしたらいい?突然の花粉症
■近年は若年化し誰でもなり得る
花粉症には、三大症状といわれるものがあります。「目のかゆみ、鼻水、鼻づまり」です。これらに関連して涙や目の充血、目やに、喉の後ろに鼻水がたまることで、せきが出たりします。日本で多いのは、スギやヒノキによるものです。
発症までのプロセスとして考えられているのは、人間の体には、不要なものが入ってくると、それを外に押し出そうとする免疫機能があります。
本来は、有害物質だけに対してなのですが、花粉のように、それ以外にも過剰に反応してしまい、くしゃみや、せきなどで、体内に入らせないようにします。いわゆるアレルギーに対する働きです。普段は体内にないものが突然大量に入るので、外敵だとみなす傾向があるのではないかと思います。
また近年は、発症年齢が若年化していて、統計的に早い人で、免疫機能が確立される3~4歳児の段階でかかる場合もあるといわれています。反対に、成人になってから発症しても不思議ではありません。
■専門医にかかり、薬や適切な対処を
多くの人が花粉に極力触れないよう、マスクや対策用眼鏡などを着用すると思います。また家に入る前、服に付いた花粉を払ったりする人もいます。しかし医学的にそれだけでは、予防のための効果は期待できません。桁違いの量の花粉が飛んでいるので、防ぎきれないのです。
症状には個人差があるので、まずは専門医に診てもらうことが大切です。例えば、目の症状が一番気になるのであれば、眼科にかかります。同時に、鼻水が出たりして、つらく感じる場合は、その旨も眼科の医師に相談すると、基本的には複数の科にかからなくても、セットで薬を処方してくれます。
また、医療機関で診てもらう時間を取るのが難しく、ドラッグストアなどで市販薬を服用する人もいるでしょう。市販薬も医療機関で処方される薬と同様の成分が含まれているので、問題はありません。
ただし、経済的に考えれば、花粉症は医療保険の対象となるため、市販薬よりも安く済みます。
そのほか、薬で症状が抑えられなければ、最近、主流となっているのが舌下免疫療法です。現在は、スギやヒノキといった樹木の花粉に対して効果がみられます。飛散時期にかかわらず、1日1回アレルギー反応が出ない少量のスギ花粉を体に取り込み、慣れさせるものです。3~5年の期間がかかりますが、症状の根治が期待できます。
併せて、花粉症もアレルギーの一種であるため、日頃から免疫を高める行動が望ましいといえます。免疫のバランスを整える食生活や十分な睡眠を取ることなどを心掛けましょう。
■各季節だけでなく年間を通じて飛散
花粉は、春先だけ飛ぶイメージを持つかもしれません。しかし、種類が異なるだけで、ほぼ一年中飛散しています。そのため、年間通じて悩まされる人もいます。
時期は地域によって多少違いますが、スギやヒノキは春中心にピークを迎えます。
また、ブタクサやヨモギなどのキク科とカナムグラは、夏から秋にかけて、オオアワガエリやカモガヤなどのイネ科は種類が多いため、春から秋まで長い期間飛散しています。
転落事故を未然に防止! ホームドア整備進む 都営地下鉄の設置率が100%に/2次元コードで低コスト化
■浅草線、当初予定の20億円から270万円
都営地下鉄浅草線の本所吾妻橋駅。ホームに入ってくる電車のドアには日常生活でよく目にする「2次元コード」が貼られている。ホームの天井近くには3台のカメラが設置され、2次元コードから車両やドアの数などの情報を読み取ることで、各列車に合わせてホームドアが開く仕組みだ。
この方式は、都交通局が民間企業と共同で開発。都交通局によると2次元コードを使ってドアを開閉する技術の導入は“世界初”だという。
都営地下鉄は2000年からホームドア設置を進め、19年度までに3路線で整備を終えた。ただ、残る浅草線は都営を含む五つの鉄道事業者が相互乗り入れし、車両編成やドアの位置なども異なり、車両の改修が必要になる。このため、費用面などで各社との合意が得られず、計画が進まずにいた。
そこで都交通局が目を付けたのが2次元コードだ。必要な情報を入れたコードをカメラで読み取り、ホームドア側で対応することで、車両側の改修が不要になり、低コスト化が可能となった。
浅草線を走る各事業者の車両のうち、都営地下鉄のものだけを見ても、約20億円を見積もっていた車両の改修費が、2次元コードの印刷などの費用270万円へと大幅に削減できた。各事業者の費用負担もわずかになるため、合意が取れ、今年2月には、都営地下鉄全線でホームドア設置率が100%になった。
今回の方式の開発に携わった都交通局の岡本誠司さんは、「ホームドアが安全のために役立つことは分かっていても、費用面で整備が進まないところもある。(同方式が)課題解決の一助になれば」と語る。
同方式は、JR東海など他の鉄道事業者でも導入が進んでおり、国土交通省の担当者は、「低コスト化につながる好事例の一つ」と評価する。
■技術的な課題解決へ/都議会公明党の提案で「検討会」
都議会公明党(東村邦浩幹事長)は、駅ホームドアの設置について、21年都議選の重点政策の一つとして掲げた「チャレンジ8」に盛り込むなど、粘り強く推進してきた。その結果、13年度末時点で30・1%だった都内の鉄道駅のホームドア設置率は、22年度末には51・6%まで向上した。
今年度中にJR・私鉄の14駅でホームドアが新設される見込みで、来年度は都の補助制度を活用し、18駅で整備が進む予定。12日の都議会予算特別委員会で、公明党の松葉多美子議員の質問に都側が答弁した。
また、ホームドアの整備が進まない背景には、ドア位置の異なる車両への対応など“技術的な課題”があることから、公明党は21年2月の都議会代表質問で、課題解決に向け、都と事業者による検討の場を設けるよう提案。同年に「検討会」が立ち上がり、昨年3月に対応策がまとめられた。
同月の都議会予算特別委員会では、一層の整備促進を求める公明党に対し、都側が、こうした技術的な対応策と財政支援を両輪として、事業者に整備計画の充実・前倒しを求めると答弁していた。
■(政府目標)25年に全国計3000カ所/公明、補助率アップなど実現
全国の鉄道駅のホームドア設置状況は、22年度末で1060駅・2484カ所に上っており、政府は25年度までに3000カ所まで拡大するとの目標を掲げている。
ホームドアについては、公明党が推進した「交通バリアフリー法」(00年)や「新バリアフリー法」(06年)で新設の鉄道駅への設置などが義務付けられ、その後も国会議員と地方議員が連携して、国や自治体で整備促進への予算確保などを強力に進めてきた。
20年11月には、衆院国土交通委員会で公明党の岡本三成氏が、ホームドアの整備加速に向け、鉄道事業者の財政負担が障害になっているとして、国の補助制度を拡充するよう要望。当時の赤羽一嘉国交相(公明党)が「予算獲得に頑張りたい」と答弁した。こうした訴えを受け、22年度から、市町村がバリアフリー基本構想に位置付けた鉄道駅については、3分の1だった国の補助率を2分の1に引き上げるなど、整備への支援充実が進んでいる。
日本のアニメや映画 世界に誇る文化。若手育成強化を
宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が2003年の「千と千尋の神隠し」以来、2度目の長編アニメ映画賞、山崎貴監督の「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」がアジア勢で初めて視覚効果賞に、それぞれ輝いた。受賞を祝うとともに、日本文化の魅力と発信力を一層高めていきたい。
漫画やアニメ、映画などの「メディア芸術」は日本が世界に誇る文化である。「ドラゴンボール」の作者、鳥山明さんの訃報には各国から悲しみの声が上がった。
日本の作品は海外でも人気が高く、さらに成長が見込める分野だ。経団連はメディア芸術分野の海外での売り上げ規模を33年までに20兆円に増やす目標を掲げる。達成すれば自動車の輸出額(23年は17・2兆円)を超え、日本の輸出額全体の2割に及ぶ。
同分野のさらなる発展には、若手クリエイター(制作者)の育成に力を入れる必要がある。特に低収入や労働環境の改善が課題と指摘されている。
日本アニメーター・演出協会の調査では、20~24歳のクリエイターの平均年収は196・6万円、25~29歳は292・8万円で、国税庁が調査した全産業の平均に比べて70万~100万円近くも低い水準だ。
締め切りに追われ長時間労働が続くなど、厳しい労働環境から体調を崩す人も少なくない。創作意欲に報いるための、さらなる環境改善が欠かせない。
クリエイターの活動を支えるため、文化庁は文化芸術活動に関して生じる契約トラブルなどに弁護士が対応する相談窓口を設置している。発注側との適正な取引につなげてほしい。
人材育成に向けては、独立行政法人「日本芸術文化振興会」に基金を創設。海外展開を視野に入れた若手クリエイターの挑戦を複数年度にわたって支援する。
これからの日本のメディア芸術を担う新しい人材の発掘、育成に一段と力を入れてほしい。
スマート農業 生産水準の維持・向上へ普及を
政府は8日、スマート農業の技術の普及に向けた新たな法案を決定し、国会に提出した。法案では、技術の活用を促すための基本理念と国の責務を定めるほか、生産者らが策定した実施計画を国が認定し、融資や税制面などで優遇が受けられるようにする。
わが国の農業は深刻な担い手不足に直面している。農業を主な仕事とする人は今後20年間で4分の1程度(約30万人)にまで減るという。多くの人手を要する従来の方式では生産水準を維持できず、食料の安定供給を確保することは困難だ。
解決には生産性向上と担い手確保が不可欠であり、スマート農業が果たす役割は大きい。公明党は、昨年5月と12月に行った政府提言で普及に向けた法制化や支援拡充を訴えており、法案の早期成立を期したい。
スマート化が進めば力仕事の負担が軽減され、女性や高齢者など幅広い人材の確保につながろう。気象や熟練農家のノウハウなど、栽培に関するデータの活用や伝承も可能になる。
政府は2025年に、ほぼ全ての担い手がデータを活用した農業を実践するとの目標を掲げるが、解決すべき課題は少なくない。
例えば、必要な機器や機械、サービスは高価格な場合が多く、価格の低減やリース(長期の賃貸借契約)も含めた普及方法の検討が求められる。農業経営の法人化による農地の集約と経営規模の拡大も重要だ。
高齢化が進む農業の現場では、新技術の導入をためらう実態が見受けられる。ITリテラシー(知識や活用する能力)を高める取り組みも必要である。
作物ごとに、使える技術に差があるのも課題だ。水田・畑作の分野は充実してきたものの、果樹栽培向けは少ない。技術開発を一層進める契機にしたい。
デジタル社会の基盤 国産クラウドの育成支援を
膨大なデジタル情報処理を担うのがクラウド・サービスだ。クラウドには「雲」だけでなく「集約されたシステム」といった意味があり、スマホなどとネットワーク上で接続された巨大コンピューターによって、デジタル情報を管理・処理するサービスである。
効率的な情報処理に不可欠なクラウド・サービスだが、課題もある。米国のマイクロソフトなど海外勢が大半を占めていることだ。 海外サービスへの依存で懸念されるのが、トラブルが起こった場合の対処の遅れだ。昨年には、SNSのLINEの個人情報が、サイバー攻撃を受けた海外サーバーから漏れ、国民に不安が広がった。国産のクラウド・サービスを増強し、安全性や使い勝手を高める必要がある。
サイバー攻撃は、年々増加傾向にあり、国家的な重要情報の漏えいをどう防ぐかも大きな課題だ。
参院での審議が進む来年度予算案には、経済産業省の「経済安全保障の実現」に123億円が盛り込まれている。サイバー攻撃などから個人や企業の重要情報を保護するために、国産クラウド・サービスの環境整備を含めた対策を進める方針だ。国民が安心できる体制を整えてほしい。
経産省は国内企業の「さくらインターネット」を対象に、2026年までの助成金支援を通じた国産クラウド・サービス育成の後押しを新たに決めた。東京大学に対しては、クラウド・サービスの能力向上に必要な量子コンピューター開発の支援も行っている。今後は技術開発を支える人材育成も大きな課題となってくるだろう。
世界に比べて後れを取る国産クラウドの拡充が必要である。
「東日本大震災13年」党声明
公明党は、岩手、宮城、福島を担当する国会議員と地方議員のネットワークの力で復興を前へ、前へと進めてきました。宅地造成やインフラ整備などハード事業が総仕上げの局面を迎える一方、なりわい再生や地域のコミュニティー構築は道半ば。今も「心の傷」を抱える人が少なくありません。地域や個人の間に「復興の温度差」が生じており、被災者を決して孤立させることなく、“一人”に寄り添う支援が、一層重要です。具体策として「災害ケースマネジメント」の普及・啓発、長期的な子どもの心のケアに取り組みます。
東北の被災地は、過疎と高齢化、人口減少の「課題先進地」でもあります。2025年度までの『第2期復興・創生期間』の正念場を迎える中、「復興のまちづくり」を、わが国の「新たな社会モデル」として仕上げてまいりたい。
東京電力福島第1原発事故に直面した福島の復興は緒に就いたばかり。福島の復興なくして日本の再生はありません。その大前提は安全で着実な廃炉の進展です。双葉、大熊両町の中間貯蔵施設に搬入されている除染廃棄物は、45年までに福島県外での最終処分が法律に明記されています。廃炉と最終処分地の選定は、国が責任を持って、最後までやり遂げるよう働き掛けてまいります。
帰還困難区域に設定される「特定帰還居住区域」について、希望する住民の帰還を促進するため、国による除染やインフラ整備を後押しします。また、長期間に及ぶ原発処理水の海洋放出については、国際原子力機関(IAEA)などと連携し、科学的な事実に基づく情報の積極発信に努め、国内外の理解の醸成を図ります。
浜通り地域の産業基盤の再構築と、科学技術立国の再興をリードする福島イノベーション・コースト構想の具現化へ、専門人材の育成や交流人口の拡大が不可欠。その中核的な拠点となる福島国際研究教育機構の機能を最大限に発揮できるよう、施設整備の促進と長期的・安定的な運営をめざします。
公明党は、能登半島地震の復旧・復興へ総力を挙げていますが、東日本大震災の経験を生かし、知見を共有してまいります。さらに、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の切迫が指摘されるなど、わが国は、いつ、どこで自然災害が発生するか分かりません。防災・減災における国の司令塔機能のあり方についても議論すべきと考えます。
公明党は、東日本大震災の発災以来、「大衆とともに」の立党精神のままに被災者一人一人へ寄り添ってきました。これからも「防災・減災、復興を政治、社会の主流に」を掲げ、「人間の復興」の具現化にまい進する決意です。
2024年3月11日 公明党
子育て支援を抜本強化 政府の「こども未来戦略」
■(予算規模)先進国でトップ水準に/公明の「応援プラン」反映
2023年の出生数(速報値)は75万8631人で、8年連続の減少、過去最少となりました。進展する少子化に歯止めをかけることが急務です。そこで政府は「30年代に入るまでの6~7年が、少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」として、「こども未来戦略」に基づき、24年度から3年間で集中的に取り組む施策を示した「加速化プラン」をまとめています。
加速化プランは、子どもの幸せを最優先する社会の実現へ、公明党の「子育て応援トータルプラン」の一部施策が先行実施する形で反映されています。年3・6兆円の予算規模となる加速化プランの実施により、日本の子ども関係予算はOECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデンをしのぐ水準となります。
■(財源)社会全体で支える
少子化対策を進めるために必要となる安定財源の確保に向けては、徹底した歳出改革(1・1兆円)や既存予算の最大限の活用(1・5兆円)に加え、全世代が加入する医療保険制度を活用して企業や国民から徴収する「支援金制度」(28年度に1兆円)を創設して確保します。
支援金を巡っては、社会全体で子ども・子育てを支える理念の下、現在、詳細な制度設計を進めています。公明議員の国会質問を受け政府は、加速化プランによる子ども1人当たりの給付拡充額は平均約146万円に上ると明言。「子育て世帯にとっては、拠出額を上回る確かな支援拡充になる」と答弁しています。
■(経済的支援)児童手当支給、高校3年まで
全ての子どもを支える経済的支援として、公明党が推進してきた児童手当を抜本的に拡充します。具体的には、今年10月分から所得制限を撤廃し、支給期間を高校生年代まで延長。第3子以降は月額3万円に増額します。支給回数についても年3回から年6回に変更し、拡充後の初回支給は12月に支給されます。
■(給付型奨学金)中間層に対象拡大
教育支援では、大学や専門学校など高等教育の無償化を拡充します。24年度には、給付型奨学金と授業料減免の対象を多子世帯や理工農系の学生の中間層(世帯年収約600万円)まで拡大。貸与型奨学金の減額返還制度も、利用可能な年収上限を400万円に引き上げ、経済的な負担軽減を図ります。さらに25年度には、多子世帯を対象に大学などの授業料や入学金を所得制限なしで無償化します。
このほか、伴走型相談支援と、妊娠・出産時に計10万円相当を給付してきた事業を強化させる形で恒久化し、切れ目ない支援を実施します。
■(サービス拡充)「誰でも通園」創設、保育の質向上
子育て世代の声を受け止めて支援サービスが拡充されます。保育所などに通っていない子どもへの支援強化では、親の就労要件を問わず保育施設を時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」を創設。現在、試行的事業として一部自治体で実施していますが、25年度に制度化し、26年度から全国の自治体で実施する予定です。
保育の質向上では、職員の配置基準を見直し、4~5歳児では24年度に「子ども30人に保育士1人」から「25人に1人」に改善します。
多様なニーズにも順次対応を進めます。例えば、低所得のひとり親世帯が対象の児童扶養手当について、所得限度額の引き上げなど支給要件を緩和し、多子世帯の加算を増額。産後ケアを全ての人が利用できるよう提供体制を整備するほか、ヤングケアラーの支援強化も推進します。
■(共働き・共育て)育休給付金を手取り10割へ
育児休業の取得が当たり前になるよう支援策を抜本的に強化します。給付では両親が共に育児休業を14日以上取った場合に、育休給付を手取りの実質8割から10割に引き上げ。業務を代替する周囲の社員への応援手当に関する助成拡充や代替期間の長さに応じた支給額の増額も行います。
柔軟な働き方の体制整備では、フレックスタイム制やテレワークなど複数の制度を事業主が設けて労働者が選べるようにし、子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した際には時短勤務時の賃金の10%を支給。子どもが病気の際に取得が認められる看護休暇は、対象を就学前から小学3年まで引き上げ、他の理由でも使えるようにします。
このほか自営業・フリーランス支援として国民年金保険料を一定期間免除。雇用保険の対象者拡大も進めます。
乳幼児突然死(SIDS)予防へ
■異常知らせる「センサー」も活用
1日の昼下がり。千葉県木更津市立わかば保育園では、1歳児の子どもたちが寝息を立てていた。昼寝の時間は、保育者が定期的に子どもたちの体に触れて、呼吸や姿勢を確認して回る。酒井直美園長は、SIDSをはじめ突然死のリスクがある睡眠中は「職員の気が張り詰める」と話す。
SIDSは窒息とは異なり、顔の表情などが変わらないまま静かに呼吸が停止するため、異常にすぐ気付くことが難しいとされる。このため、睡眠中の見守り強化に向け、体動が静止したりすると警報音が鳴る「呼吸センサー」を導入する施設が増加。導入には、国の保育対策総合支援事業費補助金が活用できる。
同市では市議会公明党も推進し、同園を含む7施設で導入。同園では0歳児と1歳児で活用し、服に取り付けたセンサーが体動を検知し、5分おきに体の向きなどが端末上に表示される。酒井園長は「センサーによるダブルチェックで、職員の精神的な負担が軽減されている」と語る。睡眠の記録も出力できるため、手書きだった記録業務の負担が減ったという。
保育施設での死亡事案は睡眠中に多い。このため、保育現場では、睡眠中に突然死を起こす可能性がある3歳未満までを対象に予防の取り組みが行われている。睡眠中の死亡報告件数の推移を見ると、2013年が16件だったのに対し、22年は2件に減少している。
■公明推進で対策強化/政府、リスク低減策呼び掛け
SIDSの予防啓発を巡っては、政府は毎年11月を対策強化月間と位置付けて発症リスクを低くするポイントなどの普及啓発活動を実施している。同月間は、公明党の推進で設けられた。
こども家庭庁は、予防方法は確立していないものの、①1歳になるまでは、あおむけに寝かせる②できるだけ母乳で育てる③保護者らは、たばこをやめる――の三つのポイントを守ることで発症率が低くなるとするデータがあると呼び掛けている。
公明党は、予防知識の普及によってSIDSが激減した海外の事例を参考に、国内でも啓発の取り組みを進めるよう主張。その結果、政府は1998年から全国的な予防キャンペーンを開始した。啓発活動前の97年に538人に上った死亡者数は、2022年には47人に減少。乳幼児の死亡原因としては、第3位から第4位に低下した。
<インタビュー>
■“入園初期”特に注意を/「託児ママ マミーサービス」 中村徳子代表
保育施設の入園時期とSIDS発症の関係性について調べた私どもの調査では、SIDS発症は入園1週間以内の発症率が高く、さらに1カ月以内が約半数を占めていた。調査結果から、環境の変化に伴う子どもへのストレスが発症要因の一つとして示唆された。
入園初期は子どもの体調が崩れやすい。“預かり初期のリスク”について、社会全体に知ってもらうことが重要であり、特に保護者の職場の理解と協力が欠かせない。また、一部の自治体では実施しているが、保護者の復職・就職前の「慣らし保育」の実施など、子どもにかかる負担を軽減する方法を行政には検討してもらいたい。
近年、睡眠中の死亡事案が減っているのは、保育者の頑張りと保護者の協力が大きいと考えられる。SIDSについて改めて伝えたいことは、目視のみでは気付くのが難しい点と、うつぶせ寝だけでなく、どの体位でも発症するということだ。
保育者は「うつぶせ寝ではないから大丈夫」といった“思い込み”の判断は禁物だ。保育者の補助として呼吸センサーの活用も有用と考えられているが、センサー使用時も子どもに触れて確認することは予防の観点からも重要だ。保育者が睡眠チェックに専念できる体制を実現するためには、行政の理解と協力が不可欠だ。
SIDS予防の取り組みは、窒息など他の事故防止や体調急変時のいち早い発見にもつながる。予防に関する情報は家庭での取り組みの参考にもなるため、保護者にも積極的に提供するべきだ。また予防と合わせて、発症に備えた対応の確認も欠かせない。SIDS対策について詳しく知りたい人は、当会のホームページを参照してほしい。
公明新聞2024/03/09 3面転載