首都直下地震の対策強化へ

■人命、建物、経済など最新の被害想定に対応
首都直下地震は、内陸の断層が動き、地中の浅いところで発生する「直下型」と、地下深くの巨大な板状の岩盤であるプレートの境界で起きる「海溝型」のどちらのケースもあり得る。
特に、直下型は切迫性が高いとされており、政府は地震の規模を示すマグニチュード7クラスの地震が「今後30年間で70%程度」の確率で発生すると予測。最新の被害想定を昨年12月に公表した。
主な被害が想定される東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県からなる東京圏には約3690万人が暮らし、建物数は約965万棟に及ぶ。中央省庁や企業の本社が数多く集まっていることから、首都中枢機能に与える影響も甚大だ。
政府の想定では最大震度7が観測され、最悪のケースで死者は約1万8000人、全壊や焼失といった建物被害は約40万棟に上る。経済的被害は約83兆円だ。近郊から通勤・通学している人も多く、帰宅困難者は約840万人に及ぶ。
さらに、避難生活による体調の悪化などで亡くなる災害関連死について初めて試算し、死者は約1万6000~4万1000人となる可能性が示された。
一方、建物の耐震化などが進んだ効果もあり、前回の2013年に公表された被害想定と比べて死者数が2割、全壊・焼失棟数が3割減少するなど改善も見られた。ただ、15年に基本計画で掲げた、死者数と全壊・焼失棟数を10年間で「おおむね半減」とする目標には届かなかった。
とりわけ人的・物的被害の約7割は「火災」が原因とされており、火災リスクをいかに減らせるかが課題だ。
■死者数「半数以下」に
そこで、政府は11年ぶりに基本計画を改定した。対策を重点的に進める緊急対策区域に指定している東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県の全域と、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、静岡の6県の一部を中心に取り組みを強化していく。
同計画の柱は、最新の被害想定で見込まれる死者数と全壊・焼失する建物数をそれぞれ「半数以下」に減らすことだ。これまでよりも踏み込んだ内容で、具体的な施策目標の数も47から189に拡充。政府は対策の実効性を高めるため、目標の進捗を毎年確認する。
■感震ブレーカー設置拡大、在宅避難の促進に注力
特に注目したいのが、大きな地震の揺れを感知すると自動的に電気を遮断する「感震ブレーカー」の普及だ。分電盤やコンセントに取り付けて使用することが可能で、揺れに伴う電気機器からの出火や停電復旧後に起こりやすい通電火災の発生防止につながる。政府の試算では、感震ブレーカーの設置率が100%になれば、死者数・焼失棟数ともに約7割減少するという。
しかし、内閣府が昨年公表した調査によると、首都近郊1都9県における感震ブレーカーの設置率は約20%にとどまっており、今回の計画で35年度までに「おおむね設置」をめざす。
一方、災害関連死を防ぐには避難所の環境改善が欠かせない。被災者が尊厳ある生活を営むための国際基準「スフィア基準」を考慮し、全市区町村で必要なトイレやベッドを備蓄した上で、避難所で温かい食事を提供することも明記した。
ただ、被災者が多数発生して避難所不足が懸念されることから、避難所に入れない被災者の命を守る重要性を指摘。在宅避難の促進に力を入れるとし、食料品を3日分以上備蓄している家庭の割合を100%にするほか、全てのマンションにおける年1回以上の防災訓練の実施も盛り込んだ。
近年、災害時にSNS上で偽・誤情報が拡散されることにも対応。政府が状況を把握し、打ち消すための情報を発信する仕組みを構築する考えだ。
首都直下地震への対策強化に向けて党復興・防災部会長の佐々木雅文参院議員は、「一人一人が『自分ごと』として捉え、社会全体で防災意識を向上させることが重要だ」と強調。
その上で「党として、事前防災と発災時から復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔を担う『防災庁』の設置を主張するとともに、各地で感震ブレーカーといった防災機器の普及を後押しし、設置・購入助成を行う自治体も広がっている。議員のネットワークを生かし、国と地方の両面から防災・減災に全力を尽くしていく」と話している。









