落雷被害 ドローン用いた軽減技術に期待

日本では落雷が多い年で約100万回起きている。警察庁によると、雷害の死者は昭和の時代には年間十数人に上っていたが、今では雷害の危険性の周知が進んだ結果、少なくなっているという。それでも雷害で命を落としたり、重症を負ったりする人が毎年いる。
一方、雷害による通信設備などの故障や建物の火災といった被害の総額は毎年1000億~2000億円に上ると推定されている。
しかし、雷害を防ぐのは難しい。10日に奈良市にある学校のグラウンドに雷が落ち、部活動をしていた中学生と高校生の男女6人が病院に搬送されるという事故があったが、現場にいた教師は「急に雨が強くなったと思ったら、いきなり雷の音がして生徒たちが倒れた」と当時の状況を説明している。ゲリラ豪雨が頻発する現在の気象では、いつ、どこで落雷が起きるのか予測するのは難しいことを物語っている。
雷害対策としては従来、避雷針の設置が進められてきた。ただ、屋外のイベント会場など避雷針を設置できない場所も少なくない。そこで注目したいのは、NTTが18日に、雷雲の近くにドローンを飛ばして雷を誘発し、安全な場所に誘導する実験に世界で初めて成功したと発表したことだ。
雷を受けるドローンは導電性のワイヤーで地上の設備とつながっており、雷はワイヤーをつたって安全な場所へと誘導される。ドローンは雷が直撃しても故障せず、飛び続けることができる。実用化は2030年頃になるという。
NTTは、ドローンを用いた雷の誘発と誘導を「重要インフラや街への落雷そのものをなくす技術」として開発を進めている。その実用化に期待したい。