下水道管の老朽化 新技術も活用し着実に対策を

埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故は、下水道管の老朽化がもたらす危険性を浮き彫りにした。国民の命と暮らしを守るため、一層の対策強化が必要だ。
国土交通省は18日、一定規模以上の下水道管の調査を1年以内に実施するよう全国の自治体に要請した。徹底的に調べ上げ、問題が見つかれば速やかに対応していかねばならない。
調査対象は設置後30年以上が経過している直径2メートル以上の下水道管約5000キロ。このうち、管の構造や地盤の条件が八潮市の現場と類似するなど、優先順位の高い約1000キロについては、夏ごろまでに完了するよう求めている。
特に、交通量の多い幹線道路や子どもたちの通学路など、実際に陥没が起これば周辺の生活環境に甚大な影響を及ぼす箇所から調査を行い、再発防止に万全を期してもらいたい。
下水道管の老朽化対策を進めていく上で、今後、重要なのは、デジタル技術を活用した新たな調査方法の導入・開発だ。
標準的な耐用年数である50年を超える下水道管が今後、急増する見込みである一方、下水道事業に携わる技術職員が不足する自治体は多い。人材育成とともに、調査の効率と精度を高める技術の活用が求められる。
既に人工衛星や人工知能(AI)を使って成果を挙げる自治体もあり、政府は導入しやすい技術を集めたカタログを作り、今月中に公表する予定だ。多くの自治体に広がるよう財政支援も強化してほしい。
新たな技術開発では、公明党が提案する「非破壊検査」の高度化も重要だろう。同検査は超音波などを使って対象物を壊さずに内部の欠陥や劣化の状態を点検する技術で、より深い場所や複雑な構造物の調査が可能になると期待されている。
また、公明党は国土強靱化に向けた2026年度以降の計画で、下水道管の老朽化対策を進めるよう訴えており、政府は必要な施策を同計画に盛り込む方針を示している。予算をしっかりと確保し、対策を着実に進めてもらいたい。
公明新聞2025/03/22 2面転載