備蓄米の運用見直し 価格高騰の抑制につなげたい

農林水産省は先月末、深刻な不作や災害時などに限定していた政府備蓄米の放出に関する運用について、コメの円滑な流通に支障が生じた場合も市場に放出できるよう見直した。
農水相が必要と認めた場合、1年以内に政府が同等・同量の国産米を買い戻すことを条件に集荷業者へ売り渡せるようにした。公明党の提案を踏まえたものであり、高く評価したい。
備蓄米を放出する時期は未定だが、江藤拓農水相は3日、「いつでも出せるように準備を急がせる」と述べた。品不足でコメを買えなくなった昨年のような事態を防ぐとともに、適切な運用で長引く価格高騰の抑制につなげてほしい。
スーパーでの精米販売価格は昨年8月以降、南海トラフ地震臨時情報の発表などによる買い込み需要の発生で大きく上昇した。農水省によると、今年1月13日から1週間の販売価格は5キログラム当たり3627円で、前年同期比で79%高い。
値上がりが続く背景には投機的な動きがあると指摘される。2024年産の主食用米の収穫量は、前年産に比べて18万トン多いにもかかわらず、大手集荷業者による集荷量は21万トン減っており、農水省は、さらなる価格上昇を見込んだ一部の小規模な集荷業者らが在庫を積み増して、売り惜しみしているとみている。
この点、3日の衆院予算委員会で公明党の岡本三成政務調査会長は、備蓄米の機動的な放出で「投機的な動きができないような流れをつくってもらいたい」と訴えた。価格のつり上げを防ぐ上で重要な指摘だ。
これまで農水省が備蓄米の放出に慎重だったのは、放出に伴う価格の下落による農家への影響に対する懸念からだ。とはいえ、値上がりが続けばコメ離れが進む可能性がある。
消費者と農家の双方にとって納得のいく価格が形成されることが重要だ。農水省にはバランスの取れたかじ取りが求められている。