高止まりする特殊詐欺に用心を!
■「迷わず警察に相談して」/プロ劇団が高齢者向け公演(東京都)
高齢女性の自宅にデパート店員を名乗る詐欺グループの男から電話が入る。「先ほど、お客様名義のクレジットカードで宝石を購入しようとした方がいました。身分証の提示を求めると、買い物をせずに帰られてしまいまして……」
ここで迷わず警察に相談しておけばよかったのだが、間髪入れずに“ニセ警察”から電話が。女性が「キャッシュカードはあるが、クレジットカードは持っていないし、デパートで買い物もしていない」と説明すると、詐欺グループは巧妙に話題をそらしながら作戦を変更。「不審な電話があったということは、あなたの個人情報が闇サイトに漏れている可能性があります。今すぐキャッシュカードを交換してください」と告げてきた。
入れ代わり立ち代わり、不安をあおられて混乱する女性。そこへ、全国銀行協会の職員を名乗り、キャッシュカードの引き渡しと暗証番号を教えるように求める電話がかかってきて……。
これは、東京都小平市で今月行われた、都の事業による防犯公演のひと幕。プロの劇団員による迫真の演技で飽きることなく、高齢者が詐欺被害に遭わないためのポイントを学べると評判だ。区市町村や警察署、町内会などの申請を受けて劇団員をイベントへ派遣している。
この日は、小平市の上水南町自治会連合会の求めに応じて公民館で上演。渡辺清会長は「楽しみながら特殊詐欺の実態が分かる。これで、皆さんが安心して新年を迎えられれば」と述べていた。
■電話からの被害が8割/通信事業者、番号表示など無償提供
警察庁によると、2023年における特殊詐欺被害者の約8割が65歳以上の高齢者で、特に高齢女性の被害が全体の半数以上を占める。さらに、特殊詐欺被害の約8割で電話が使われ、うち9割は固定電話にかかってきているという。
政府広報は「電話でお金に関する話が出たら全て詐欺」と心掛け、「自宅の固定電話は在宅時も『留守番電話』に」「家族でしか分からない合言葉を決めておく」などの防衛策が有効だと呼び掛ける。
被害の予防に向けては、民間企業も力を入れる。NTTは23年5月から、70歳以上の契約者と、70歳以上の同居者がいる契約者を対象に、相手の番号を表示させる「ナンバー・ディスプレイ」と、非通知の電話に対して番号を通知してかけ直すよう音声メッセージで応答する「ナンバー・リクエスト」のサービスをそれぞれ無償で提供する。
都道府県警察は、これらの取り組みを周知するとともに、利用に向けた支援を実施。その結果、「ナンバー・リクエスト」の契約数は、23年12月末時点で、1年前と比べて約20万件も増加した。
こうした施策や防犯公演のような啓発活動が奏功したこともあってか、24年1~10月までの特殊詐欺の認知件数と被害額は前年同時期より増加したが、高齢被害者の割合は約8割から67・7%まで低下した。
■SNS型が急増/公明、総合的な対策強化訴え
23年下半期から被害が急増しているのがSNSを悪用した投資詐欺や恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取るロマンス詐欺だ。24年1~10月の認知件数は8495件(前年比5611件増)、被害額は約1060億円(同734億円増)に上る。
こうした状況を踏まえ公明党は、新たな手口にも対応した詐欺対策の強化を訴えてきた。その結果、政府は6月、国を挙げて詐欺の取り締まりを強化する「国民を詐欺から守るための総合対策」を策定。金融機関やコンビニなどと連携した詐欺被害の未然防止や、SNS事業者への偽広告の速やかな削除要請などに取り組んでいる。
さらに公明党は、10月に行われた衆院選の政策集で「関係事業者などと連携した被害防止対策に加え、各種対策を抜本的に強化し、総合的な取り組みを推進する」と記している。